フッフッフの話

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「死顔」

2006-11-26 18:38:24 | 
 吉村 昭の遺作短編集「死顔」(新潮社)
最後の作といわれる「死顔」は、両親や兄弟の死について書かれている。
特に次兄の死を題材にして、延命治療から葬儀などの死生観が綴られている。

「柩の中の死者は、多かれ少なかれ病み衰えていて、
それを眼にするのは礼を失しているように思える。
死者も望むことではないだろうし、しかし、抵抗することもできず
死顔を人の眼にさらす。…………死は安息の刻であり、
それを少しも乱されたくはない。
自分の死顔を、会うことの少ない親族はもとより、
一般会葬者の眼にふれることは避け、二人の子とそのつれ合い、
孫達のみに限りたい。そのためには、死後できるだけ早く焼骨してもらい、
死顔は死とともに消滅し、遺影だけが残される。」


 吉村氏の遺書とも読める内容である。
同じ短編集に納められている「二人」という作品も、同じ次兄の死を扱い、
兄弟と言いながら違う人生を生きてきたのだとの認識。
 
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