そっと静かに書こう

　孫のエイチ君から口止めされた。
「あちこちに喋って歩かないでよ。ブーコさんはお喋りだから」
ブーコさんの口はむずむずしているが、喋ることはできない。
しかし、書くことは止められていないので、そっと静かに書こう。

　エイチ君は、高校の推薦入試を受けた。担任も”少し厳しいですね”とのお言葉であった。
母親などは、受験料がもったいないので推薦入試は遠慮したらとも言っていた。
しかし、エイチ君は誰の言葉にも耳を貸そうともしないで、受験した。
試験当日は、雪の降る寒い朝であった。
”路面凍結で滑りやすいから用心してね”との言葉も差し控えた。
試験終了後、「面接で何を訊かれたの」と言うと、「志望動機」との返事。
「なんて答えたの」「頭が真っ白になって、何を言ったかわからん」とのことである。
そして、”まずダメだね”

　昨日発表。担任から母親に電話があり、合格を知らされる。
母親は、見間違いということはありませんねと、半信半疑である。
昨夜書類を持って帰ったので、間違いではなさそうである。

　喜ぶべきことであるが、これから入学式までの２ヶ月間、どのように過ごすかが大きな問題である。
まさか、来る日も来る日もカメラをぶら下げて、写真に夢中になり、
夜になると鉄道模型をクルクル回して、夢中になっていると、
中学校での学習も忘れてしまうのではないかと心配である。