彦根の歴史ブログ(『どんつき瓦版』記者ブログ)

2007年彦根城は築城400年祭を開催し無事に終了しました。
これを機に滋賀県や彦根市周辺を再発見します。

『戦国怪談話』その2 安義橋の鬼

2011年08月23日 | 『戦国怪談話』
まずは戦国時代よりも前、たぶん平安時代の後期が舞台と考えられるお話を『今昔物語集』から話してみましょう。


『安義橋の鬼』
現在の近江八幡市と竜王町の境を流れる日野川には、古くから安義橋が架かっていました。  
しかしこの橋には夜になると女性の姿をした鬼が現れるため、日野川を渡るための大切な橋でありながら誰もが敬遠する橋となったのです。

ある晩のこと、近江守の屋敷では何人もの男たちが、安義橋の鬼の噂を肴に酒を飲み交わしていました。そこに一人の武士が名乗り出て、今から橋を訪れて鬼が居るのかどうかを確かめることとなったのです。周囲の男たちや近江守は面白がって、男を橋まで行かせることにしました。男は、近江守から足の速い馬を譲り受け、馬の尻に油をたっぷりと塗って颯爽と馬に跨って闇の中を出掛けて行ったのです。

安義橋に辿り着くと、橋の上にはとても美しい若い女性が立っていました。女性は男に気が付くと「私を送って下さい」といいます。男は「これこそが噂の鬼であろう」と思い、一目散に馬を走らせてその場を駆け抜けると、後ろから鬼が追ってきたのです。鬼の姿は身が九尺(3m)、指は三本で爪の長さは五寸(15cm )ほどだったそうです・
鬼は、追いついて馬の尻を掴もうとしたのですが、尻には油が塗ってあったためにつるっと滑って男は無事に逃げ果せたのです。

しかし、この日から男の家では不幸なことが続きます。男が陰陽師に占ってもらうと、陰陽師は「あなたは鬼に祟られていて今夜命を失うでしょう」と言われました。そして「命を奪われないためには屋敷を封印して何があっても屋敷を開けずに夜明けまですごすように」との指示を受けたのです。
男は、妻と共に屋敷を封印しました。その夜、男の弟が屋敷の門を叩きますが男は追い返します。そして弟は家来を連れてまたやってきましたが、これも追い返します。三度目になって「母上が明日をも知れぬ病であるのに、兄上はなぜ私の話を聞いてくれない」と言い、これに驚いた男は弟とその家臣たちを屋敷に招き入れまた屋敷を閉ざしたのです。
今夜は屋敷から出られないとのことで、男と弟は酒を酌みまわして夜を明かすことにしました。妻が眠ったあとしばらくして、男の部屋から争った音が聞こえます。妻が慌てて部屋に行くと、男が弟の上に乗って妻に「刀をよこせ」と言ったのです。刀を手にした妻が躊躇っていると、今度は弟が上になったかと思うと、その姿が鬼に変化して男の首に喰らい付き、その首をちぎって「あぁ嬉しい」と言って去って行ったのでした。弟が連れてきた家臣たちは、動物の骨に変わっていたのです。

この後、安義橋に鬼が出ることはなく、現在も“安吉橋”と名を変えて、人々の重要な生活道路になっています。

何年か前に行った時は石橋だったのですが、いつの間にか通りやすいアスファルトの道に変わっていました。

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