或る「享楽的日記」伝

ごく普通の中年サラリーマンが、起業に向けた資格受験や、音楽、絵画などの趣味の日々を淡々と綴ります。

枯葉の中の青い炎

2007-06-25 05:54:25 | 010 書籍
なんかカッコイイ題名でしょう?2005年に発売された辻原登の短編小説集のタイトル。読みたい気持ちにさせてくれる。前に記事にした恩田陸の「朝日のようにさわやかに」のあとがきで、彼女が短編を書くのに参考にしたと紹介されていたもの。この人も読むのは初めて。芥川賞作家だったんだ。知らなかった。まあ自分は文学にうといから。こういうつながりでもないとね。

全部で5編あって、気に入ったのが最初の「ちょっと歪んだわたしのブローチ」と次の「水いらず」。前者は夫に愛人ができて1ヶ月の期間限定で夫を若い女にレンタルする妻の話。あり得ないシチュエーション。言い出す夫も夫なら、許す妻も妻。なんて思って読んでいたら、最後にはしっかりつじつまが合って。女の性ってホント怖い。ヒドイ目に遭う。光っていた描写が、その妻を誘惑する中年の不動産屋。舞台となる愛人宅が何故か世田谷線の松蔭神社前だったこともあって妙なリアリティ。

後者は山小屋という特別な舞台で、亡き妻の妹と予期せぬ再会をした男が、彼女の匂いに本能を再燃させる話。こちらもかなりシチュエーションに無理がある。でも脳で匂いを感じ取り動物的な性衝動にかられる、その倒錯に男の性を強く感じたなあ。

これら2つの話に共通して出てくるのがラピスラズリ。幸福をもたらす石らしいけど、ここでは強烈なアンチテーゼ。前者では南青山の骨董通りで夫婦が見つけるという設定。いいですね、このシチュエーションはありそうで。ここまで読んだら、ひょっとして全てラピスつながりの連作?なんて思って期待したけど。「日付のある物語」、「ザーサイの甕」、「野球王」、そして表題作。別人かと思える文体と雰囲気。まったく楽しめない。巷では、最後の2つが野球モノとして人気が高いみたいだけど。

まあ読者もいろいろいるわけで。結局読み終えて脳裏に残ったのは勝手に想像したラピスラズリの抜けるようなブルー。街でこれを身につけたドキっとするような女の子にでも出会わないかな、なんてお得意の”つながり”妄想はやめておきましょうね。

ラピスラズリ  枯葉の中の青い炎枯葉の中の青い炎