はなバルーンblog

藤子不二雄や、好きな漫画・アニメの話がメイン(ネタバレもあるので要注意)

『映画ドラえもん のび太と 奇跡の島 アニマルアドベンチャー』感想

2012-03-05 19:17:04 | 藤子不二雄
 例年通り、昨日は今年の新作ドラえもん映画『のび太と奇跡の島 アニマルアドベンチャー』(以降、『奇跡の島』)を観に行ってきた。
 今回は、名古屋・大阪・東京と三大都市圏の藤子ファンが名古屋に集結した、ある意味では非常に豪華なメンバー(?)での映画鑑賞だった。以下、映画の感想を書いておく。これまた例年通りにネタばらしをしているので、未見の方は注意されたい



 まず、全体の感想を一言で述べると、「意味不明」。この一言に尽きる。
 すでに黒幕組合さんにばらされているので恥を承知で書いてしまうが、今作は見ていて非常に眠たく、あろう事か中盤はすこし意識がとんでしまった。決して前日に徹夜したとか言うことはなく、それどころか映画に備えるために少し長めに寝ていたにもかかわらずだ。はたしてこれは自分だけのことだったのかと観賞後に聞いてみたら、他にも「眠くなった」という人がいて、ホッとした。
 ともかく、ウトウトしていた時間も含めて途中の15分くらいはまともに映画を観ていないので、この後の感想は、その事を頭に置いた上でお読みいただきたい。本来ならきちんと全編を観なおした上で感想を書くべきだろうが、とても貴重な金と時間を消費してもう一度観る気にはなれないので、勘弁してください。

 今作の悪いところをあらためて挙げると、第一に全体のストーリーが意味不明だった。冒険の発端からして、「タイムホールでのび太の部屋につれてきたモアを、22世紀(?)の島へ連れて行く」のだから、わけがわからない。元ネタとなった「モアよドードーよ永遠に」と違って、のび太たちが絶滅動物を集めた島を作るわけではないのだから、素直にモアを元の時代に帰せばいいと思うのだが。
 全編このような調子で、「こうしたから、こうなった」ではなく「こうなるために、こうする」と言うご都合主義で話が進んでいき、全体として短い話をツギハギしたような印象で、何を見せたいのかが伝わってこなかった。
 登場キャラクターも、話の展開のために動かされている感じで、いつもの五人すら、自分の知っているドラやのび太達ではなかった。映画になると格好良くなる…ではなく、島からこっそりカブト虫を持ち出すのび太とか、のび太のドラだよりを異常なまでに非難するしずかたちとか、誰が観たいんだ。

 今作は、少年時代ののび助が冒険に絡むという、今までにない要素があった。これは、ある意味今作の目玉と言っていいと思う。
 のび助の動かし方次第では面白い展開になるかもしれないと思って、この点に多少なりとも期待して観ていたのだが、この新要素も残念な結果に終わった。ストーリーのほとんどはダッケ=のび助でなくとも成り立つ展開であり、最後にのび太がダッケ=のび助と知った場面も取って付けたようだったし、その後現代に戻ってもパパとのやりとり一つもないので、のび太が少年時代の父を見てどう思ったのか、のび太の心の成長があったのか、さっぱり伝わってこなかった。

 さらに、アクションシーンのお粗末さも、特筆すべき点だろう。のび太が崖から落ちようとしている時にダッケだけが助けに行って、それをボーっと見ているドラえもん達とか、カブ太が大きくなってメカと戦っている時にはその足下をうざったく動いているだけだったりとか、どうやったらこれほど緊張感のないコンテを切れるのか、実に不思議だ。他にも、チアガールてぶくろをはめているはずのしずかの応援が全然効いていないとか、突っ込みはじめるとキリがない。

 そもそも、今回の冒険の舞台となった「ベレーガモンド島」はいつの時代にあるのだろう。不思議に思ってパンフレットを読んでみたが、「未来の世界」としか書いていない。と、なると、今回は珍しく22世紀を舞台にした冒険だったのだろうか。そのあたりも、なぜこんな島があるのか、とかロッコロ族とはどんな種族なのか、などの説明がないので、さっぱりわからない。あまりに根本的な疑問なだけに、これらのことは私がウトウトしていた時に説明されたのではないかと思って聞いてみたが、どうもそうでもなかったようだ。
 おかげで、ゴールデンヘラクレスが捕らえられた時に島のバリア(らしきもの)が消えて絶滅動物が弱る場面なども、意味不明だ。モアをカブト虫一匹でダメになる島に送るより、元の時代に戻した方が絶対にいいと思うのだが。

 と、そろそろ疑問がループし始めたので、このあたりで感想も終わりにしよう。今作を過去のわさドラ映画と比べると、展開の意味不明さでは『のび太の人魚大海戦』といい勝負だろう。ただし、『人魚』よりも敵がスケールダウンしている分、今作の方がショボく感じることは否めない。怪魚族は一応宇宙征服を狙うやつらだったからなあ。
 今作は、前述のようなツギハギ的な物語と、無駄に過去のドラ短編や大長編から取り入れた要素の数々とで、余計に何を見せたいのかがさっぱりわからない作品だった。過去の要素では、特に『のび太の大魔境』からそのまんまセリフを引用した「これから何が起こるにしても、ぼくらはずっといっしょだよ」を使ったのは、元が非常に好きな場面なだけに許せない部分だった。

 今作の唯一の収穫は、ゴンスケグッズが多数作られたことくらいだろうか。多すぎて全部は買えないので、マグカップだけを買ったが、使ってみるとなかなかいい感じだ。


 と言うわけで、今作はネタ映画に突っ込みを入れて楽しみたい人にはお薦めだ。素直にドラえもん映画で楽しみたいという人は、昨年の『新・鉄人兵団』の映像ソフトを見ていた方がよっぽど有効な時間の使い方だと思う。ドラ映画としては全くお薦めできない。