はなバルーンblog

藤子不二雄や、好きな漫画・アニメの話がメイン(ネタバレもあるので要注意)

藤子・F・不二雄大全集 第1期 第7回配本 感想

2010-02-14 23:28:02 | 藤子不二雄
 遅くなってしまったが、以前に予告したとおり、今月からは『藤子・F・不二雄大全集』の感想を、毎月書いていく。今回は第7回配本、これで第1期も後半突入だ。ちょっと前までは刊行開始を今か今かと待ちわびていた気がするが、時の経つのは早い。



・『ドラえもん』第5巻

 「学年繰り上がり方式」編集、今回は1965年度生まれの人が読んだ『ドラえもん』。前にも書いたが、自分の生まれた年はもっと先だ。こんなに分厚い本で5巻も出ても、まだ先は長い。この全集であらためて『ドラえもん』の作品群がどれだけ膨大なものか、実感させられている。
 この巻の単行本初収録作品で特にお気に入りなのは、2話目に入っている「むしめがねにへんしん」。こういうバカバカしい話は大好きだ。最後のコマで、ちゃわんむしジャイアンを放ったらかしてみんなが飛んでいくところは何度見ても笑える。幼年向けの2ページ作品は埋もれていたものが多くてもったいなく思っていたので、こうやって単行本化されたのは嬉しい。欲を言えば、カラーで見たかったところだが。

 単行本初収録作品以外でも、過去の単行本と違いがある話がいくつかあるが、その中では「のび太放送協会」が目にとまった。FFランド版では「NOHK」だった「のび太放送協会」の略称が、今回はズバリ「NHK」になっている。「NHK」が手書きなので、おそらく初出の状態に戻したのだろう。こういう細かいところの仕事がこの全集のいいところだ。
 他には、巻末の特別資料室に「姫子とドラえもんのまんが教室」が再録されたのも見逃せない。合作漫画「ドラえもんの逆襲」の「服を脱いだドラえもん」は非常にインパクトが強い。ドラえもんが「餅」にしか見えない。お遊び企画とは言え、作者が直々に描いているのがすごい。F先生もよくもこんなドラを描いたものだ。
 同じく特別資料室で「ドラとバケルともうひとつ」も紹介されていたが、こちらは突っ込みが足りなかったと思う。迷(?)企画「スターたん生」は、初出版の「ジ~ンと感動する話」と合わせて完全収録して欲しかった。「ドラとバケルともうひとつ」は、他の月の紹介も不十分だし、全部合わせて復刻して欲しい。全集の一冊としては難しいかも知れないが。



・『オバケのQ太郎』第4巻

 この巻を語るには、何と言っても「国際オバケ連合」復活の話題は避けて通れない。
 旧『オバQ』は、近年まで作品全体が読めない状況にあったので、全集の各巻各話全てが記念すべき復活を果たしたと言えるが、そんな中でもこの話は特別だ。黒人差別問題で抗議を受けて単行本が回収される原因となった話だけに、どのような形で収録されるか非常に気になっていたが、旧単行本からの変更点は「人間でいえば、人食い人種にあたる」→「オバケを食べちゃうオバケじゃよ」の一箇所のみ。この程度の修正で出せるのだったら最初から抗議など突っぱねていればよかったのに、と思わずにはいられない。
 「バケ食いオバケ」がよくて「人食い人種」がNGなのは、実在するかどうかの違いなのだろうが、実に曖昧な線引きだと、この全集における他の「自主規制」も含めて、表現というものの難しさをあらためて考えさせられた。
 堅苦しい話はともかく、「国際オバケ連合」は旧『オバQ』の中でも好きな話なので、あまり原型が損なわれずに復活したのはよかった。「食べてしまえ」のギャグが消されなかった点は素直に喜ばしいし、世界平和を願うオバケたちの姿は微笑ましくて、読んでいていい気分になる。人種差別どころか、人類もオバケもみな兄弟と謳った作品なのだから、これからも広く読まれて欲しい。



・『パーマン』第5巻

 「小学館コミックス」掲載分。この全集ではこれまでで一番薄い本となっている。巻ごとに厚さが違うと本棚に並べた時にやや気になるが、これまでの単行本と違って掲載誌ごとにまとめた結果なので、これはこれで正解だと思う。
 この巻は「くるわせ屋」の収録が一番の注目点だ。てんとう虫コミックスでは1995年の増刷でカットされ、FFランドには最初から収録されなかったいわくつきの作品。「国際オバケ連合」ともども気になっていたが、「バケ連」がセリフ一箇所の変更で済んだのに対して、「くるわせ屋」はかなり多くのセリフが変更されてしまった。元の状態を知っているせいで、読んでいて違和感を覚える。
 一番大きな変更点は、くるわせ屋が狂わせる対象が「人生」になった点だろう。「くるわせ屋」の名前を残す以上、何を狂わせるのかに触れないわけには行かないわけだ。この変更の是非はともかくとして、さぞ苦心して考え出したのだろうなと、ある意味感心してしまった。そりゃあ、頭が狂ったら人生も狂うよなあ。同じ「狂う」という言葉でも、人の頭が発狂するのはダメで「人生」ならOKと言うのも非常に微妙な線引きだ。やはり、自主規制は難しいものだ。

 規制の話だけで終わってしまうのもどうかと思うので、この巻全体にも触れておこう。
 巻頭の「ウラトルPを見たい」は初見。旧『パーマン』は図書館で全話チェックしたつもりだったが、「小学館コミックス」だけ忘れていた。カラーテレビが出てくるあたりに、時代を感じさせられる。この話のような日常エピソードから、「水爆とお月さま」のような重大事件、「エベレスト決死行」の大冒険までバラエティ豊かなところが面白い一冊だった。『パーマン』と言う作品の懐の深さを感じさせられた。