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ときめきの日々を過ごしたい

雨がない。

2006-05-30 12:03:06 | Weblog
地涸れてアスパラガスの顔が出ず

今年の五月は雨が少なかった。こちら北信州はアスパラガスの産地で農家の経済を支えています。今のところ例年の半分の収穫のようです。収穫したとしても細いので等級が上がらずお金にならないらしい。今、地方の経済は疲弊していると叫ばれているなか「泣きっ面に蜂」状態です。もう20年もの間、夏はアスパラ農家で冬になると私共の店へ手伝いに来ていただいている佐藤さんに電話したら悲鳴を上げていた。
コラム!!」
 一本歯の巨漢と律儀なオジイサマ

 先日、散歩中にとても妙な人を見かけた。その人は素足に下駄を履いていた。その下駄が問題だ。なんと一本歯の下駄だ。天狗の絵で見るような一本歯の下駄は、生まれて初めて見るものだった。
 横から見るとそれはT字型になっている。歯の部分が厚ければ問題はないが、その厚さは1センチくらいで、しかも長さ15センチほどの驚異的な高さがある。下駄をそのまま置いたら、必ず前後へ倒れてしまう危なっかしい代物だ。低い竹馬のような高さだが、その上に相撲部か柔道部みたいな巨漢が乗っていた。
 その巨漢はだぶだぶのズボンに7分丈のコートを着て、両手をポケットに突っ込んでいた。身長を15センチもかさ上げしているから、その姿はとても異様だ。
 普通でもすごく危ないのに、彼は両手をポケットに突っ込んでいるから、見ているだけでもハラハラする。すれ違う人も、何事かと呆れて立ち止まって見ていた。
 彼がカッツカッツと下駄の音を立てて歩くたびに歯が前後に揺れ、当然、体もフラフラ揺れて前後に傾く。彼の向かっている方向と同じだったので、私はハラハラしながら後をついて行った。彼が目指している方向にスーパーがある。そこへ寄るのかと思っていたら、前を通り過ぎた。

 えっつ、まさか!!

 すぐその先は河川敷に通じる道で、長い下りの石段がある。しかし彼は先に進み、石段の上に出た。そこでちょっと立ち止まったが、そのまま下りはじめた。ポケットへ両手を突っ込んだまま!!
 私は1昨年、新宿で転倒して足の膝を割り、昨年の暮れにも転倒して額を割り、頬を削ったばかりだから、このような危険な状況には黙っていられない。
 しかし、彼は何かの修行中なのだろうか?
普通なら好奇心がムズムズして、この辺で彼に声をかけているはずだが、ずっと、
かなり長い間、彼の歩調に合わせて後をついてきたのに、とうとう話しかけることが出来なかった。巨漢の印象がとても怖ろしく思えたからだ。

 しかし、世の中は広い!

 河川敷の近くで、巨漢とすれ違ったオジイサマが話しかけた。
「おや、今では珍しいものを履いているね」
 巨漢はオジイサマをまったく無視したが、その様子はやはり恐ろしいというべき雰囲気だった。巨漢が去った後、私はオジイサマに話しかけた。
 何かの修行なんでしょうか?でもよく恐くありませんでしたね。私は恐くてとうとう話しかけられませんでした」

「ワハハ、私はもう82歳だから、誰でも話しかけますよ」

(何があっても、覚悟が出来ているってこと?)

 そこで、オジイサマとあれこれお話をした。オジイサマは最後に言った。

「アナタは飾らなくていいね。うちの家内はちょっとしたスーパーでも化粧をしていくから、やめろと言っています」
「あらぁ、ご立派じゃありませんか、できるなら私もそうしたいです」
「いや、あなたはそのままでもいいですよ。そのままでも見られるから」
(えっつ?どういうこと?お化粧しても代わり映えしないってことなの?)
「家内は私にもうるさくて、もっときちんとしたカッコウをしろと言います」
「でも、とてもすてきな装いですわ」
 オジイサマは息子さんのおさがりというダウンジャケットに、毛糸で編んだ帽子をかぶっていらっしたが、お年を感じさせなくて、とても素敵だった。
 話をしている間に薄暗くなってしまった。「では、これで」とご挨拶をしたが、オジイサマはとても律儀なお方だった。「気をつけて」とおっしゃりながら、わざわざ帽子をツルリと取って、ぺこりと頭を下げられた。薄闇の中で、ヘッドが<ピカッ>と光を放った。

 帽子を取ると人間の印象は変るものですね。別人がそこにいるのかと思いました。近ごろは暴走しがちな高齢者も多いようですが、とても心が和むひと時でした。

 <竹田紀香>


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2 コメント

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良い話。 (まい)
2006-05-30 21:38:46
 このコラムを読んで”ほほえましい”気持ちになりました。なんか心が暖かくなるというか上手く表現できないのですが・・・そんな感じです。
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まいさんへ (マーヤン)
2006-05-31 06:10:38
コメントどうも。世の中まだまだ面白いこと沢山あるものですね。オジイサマとコラミニストの他人同士の関係が暖かいですね。もしそこへ1本歯の巨漢が入ったとしたら雰囲気が冷たくなりますね。でも人生のベテランオジサマは知恵を出して、その巨漢を何気なく穏やかな雰囲気に持っていく術があると思います。
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