しなやかに世風になびく芒かな
この詩は九十八歳になる栃木のおばあさん「柴田トヨ」さんの「とくだね!](フジテレビ系列)で紹介され、大反響」 産経新聞「朝の詩」から生まれた白寿の処女詩集です。家内が新聞で知ったのか、直ぐ「アマゾン」から取ってくださいと頼まれた。詩の一部を抜粋しました、感動が沢山詰まった詩集です。
私
九十を過ぎてから 詩を書くようになって 毎日が 生きがいなんです 体は やせ細って いるけれど 目は人の心を 見ぬけるし 耳は 風の囁きが よく聞こえる 口はね とっても達者なの「しっかり してますね」 皆さん ほめて下さいます それが うれしくて またがんばれるの私
先生に
私を おばあちゃんと 呼ばないで「今日は何曜日?」 「9+9はい幾つ?」 そんなバカな質問も しないでほしい 「柴田さん 西条八十の詩は 好きですか?」 小泉内閣をどう思います?」 こんな質問なら うれしいわ
思い出
子どもが 授かったことを 告げた時 あなたは「ほんとうか 嬉しい 俺はこれから 真面目になって 働くからな」 そう 答えてくれた 肩を並べて 桜並木の下を 帰ったあの日 私は 一番 幸福だった日
忘れる
歳をとるたびに いろいろなものを 忘れてゆくような 気がする 人の名前 幾つもの文字 思い出の数々 それを 寂しいと 思わなくなったのは どうしてだろう 忘れてゆくことの幸福 忘れてゆくことへの あきらめ ひぐらしの声が 聞こえる
神 様
昔 お国のために と 死にいそいだ 若者たちがいた 今 いじめを苦にして 自殺していく 子供たちがいる 神様 生きる勇気を どうして 与えてあげなかったの 戦争の仕掛け人 いじめの人たちを 貴方の力で 跪かせて
母
亡くなった母とおなじ 九十二歳をむかえた今 母のことを思う 老人ホームに 母を訪ねるたび その帰りは辛かった 私をいつまでも見送る 母 どんよりとした空 風にゆれるコスモス 今もはっきりと覚えている
あなたに
出来ないからって いじけてはダメ 私だって 九十六年間 出来なかった事は 山ほどある 父母への孝行 子供の教育 数々の習いごと でも 努力はしたのよ 精いっぱい ねえ それが 大事じゃないかしら さあ 立ちあがって 何かをつかむのよ 悔いを 残さないために
家 族
嫁と倅の 諍いがあった日は 空は たちまち くもってしまう お母さん 心配かけて ごめんなさい 嫁が 声をかけて くれた翌日 日射しが私を つつんでくれる 縁があって できた小家族 いつまでも 澄んだ空の下で 暮らしたい
秘 密
私ね 死にたいって 思ったことが 何度もあったの でも 詩を作り初めて 多くの人に励まされ 今はもう 泣きごとは言わない 九十八歳でも 恋はするのよ 夢だってみるの 雲にだって乗りたいわ