今日、生まれて初めて簡易裁判所での小額訴訟の原告としての体験をしました。
何と今から1年ちょっと前の、小さな交通事故がその原因でしたが、小さな交差点での接触事故で、お互いの言い分が対立したまま、自動車保険の過失割合も定まらず約1年が過ぎてしまったため、保険会社のすすめもあって、簡易裁判所に昨年暮れに私が原告(申立て人)として、訴状を提出したのです。
簡易裁判と言っても、裁判という言葉に多くの経験のない人は、裁判までしなくても、お互い話し合って適当に和解できれば、示談と言う形で解決できるのに、何故裁判なの?と思われるかもしれない。
しかし双方の基本的な事故が起きた認識の事実や過失責任に対して、全く相反する見解が出て、双方の主張が真っ向から対立した時は、止むを得ず第三者による客観的裁定というか、判断をしていただく以外に、すっきりした解決にはならないと判断したからである。
しかし金額の問題ではなく、お互いの主張にかけ離れた事実と反する、または事実誤認や判断ミスなど、各々が気づかない問題や落ち度がある場合もあるので、何が正しくて、何が原因で、この小さな接触事故が起きたのかが、出来れば明確になってほしいとの願いからの提訴であった。
全く初めての経験だったが、テレビや映画などで見る、裁判所のシーンなどとは全く異なる、普通の少し広い感じの会議室の半分の場所に円卓が置かれていて、そこに原告、被告双方の本人と弁護士などが向かい合う形で座り、中央に裁判官、そして横に書記官や今回の場合は有識者と思われる交通事故関連の調停などの経験者が座っておられた。
まず裁判官が簡易裁判所による小額訴訟について説明された後、訴状と事故発生見取り図をもとに、原告側の訴えを聞かれ、その後被告側の主張や反論?を聞かれる順序で、審理は続いた。
原告の訴状に対して、被告は弁護士を立てて、答弁書を事前に裁判所に提出しており、原告側にもその言い分というか、主張は文書で届けられていた。
1時間近く双方の主張と状況説明を聞かれたあと、裁判官がお互いでの話し合いでの解決を当事者の確認の上で進められ、一端退室した後、各々の話し合いに対する歩み寄りの交渉や条件を裁判官か調停経験のある有識者に話し、再度各々の妥協点を裁判官が確認した上で,解決案が示されるのであった。
和解案というか、解決案に納得がいかない場合は、裁判官が「判決」を言い渡すことも当然あるわけだが、今回は止むを得ず「判決」まで求めず妥協案というか、調停案で決着をみることになったのである。
双方が自分達の主張を100パーセント曲げずに戦えば、数時間とは言え論争の上での判決の言い渡しに至るのだが、多くの場合は、こうした話し合いによる妥協点というか、お互いの主張を少しづつ遠慮して、
解決へと歩み寄ることになるらしいのである。
結論、結果がでて、事務手続き上の確認事項がなされて、被告側の修理代金などの過失責任による按分の金額が計算されて、相殺による差額金の支払いが要請され、この場での裁定は終わったのである。
最近は、こうした交通事故による過失割合の係争だけでなく、IT時代のネットセールス等のトラブルの急増で、簡易裁判所の小額訴訟制度は件数も増加して、なかなか訴訟しても裁判所の日程的スケジュールが間に合わず2、3ヶ月先になるケースも多いと聞いた。
でも日本ではまだまだ、たとえ小さな事件でも金銭的負担や事実認識の主張の権利が充分保障されないままに、たとえ嘘であっても言い通した方が圧倒して、真実、事実を主張していても負けてしまう場合も多々ある様な気がしてならないのである。
アメリカは既に100年もの、この小額訴訟「Small claims court」の歴史があり、テレビでもよくこの光景が見られるほど一般化しているそうですが、日本では平成10年一月からの制度のスタートで、まだまだ日が浅く、定着していない感がありました。
裁判所の書記官によれば、小額訴訟のニーズは当初予想していたよりも、はるかに多くのトラブル、もめごとが簡易裁判所に持ち込まれており、今後一層、「小額訴訟」は庶民の、金銭に纏わるあらゆるトラブル、係争事件において、第三者調停機関として、便利かつ平易に提訴したり、問題解決手段として利用されるツールとなること間違いないと実感した次第です。
私は初めて、簡易裁判所とは言え、原告としての裁判の当事者として裁判官に誠意を持って訴え、被告側の意見、主張も聞き、裁判官や調停係りの有識者と思われる方の客観的判断にも耳を傾けて、一定の裁定を決定できたことに満足し、またこの機会に身近な小額訴訟という裁判を経験し学べたことと感謝しています。
でも、本当は提訴したり、係争する必要が生じるような事象が発生しないのが一番ですね。