みなさん!、「山口さんちのツトム君」って覚えていますか?と聞いて、すぐに歌える世代と、おぼろげに知ってる世代、また全く興味のない方、うんと若くて知るよしもない世代がありますよね。
突然「山口さんちのツトム君」秘話を思い出したのは、昨夜のフォーク名曲集にも関連してるんですが、私が20代から30代にかけて関わっていた、音楽出版の仕事で、その当時は今は中年登山やエッセイストとしても活躍中の「みなみらんぼう」さんのマネージメントをしていた頃の話なんです。
その当時と言っても、今からおよそ30年前、みなみらんぼう氏は「酔いどれ女の子守唄」の作詞作曲者で自らも「ウイスキーの小瓶」をシンガーソングライターとして歌ってデビューされた直後でした。
フジテレビの子ども番組の童謡的な曲と共に、NHKの「みんなの歌」に曲を提供することになり、彼はこの曲でどうかと「まだ見ぬUFO」という秘蔵の曲をデモテープに吹き込み打診したのである。
「まだ見ぬUFO」なる曲は、その当時も今も関心のある人々には、いろいろと話題になっているUFO、つまり未確認飛行物体を、愉しく夢のあるお話として取り上げて、編曲的にもその当時としてはカッコよくシンセサイザーで飛んで行く様をイメージさせる秀作であった。
しかし暫くしてのNHKの担当者からの返答は「NO!」であり、何故不採用かと問えば、何と「NHKは科学的根拠のないものを扱うテーマの曲を取り上げられない」との驚くべき内容の返事がきたのである。
ちょっとビックリ!したけれど、天下のNHKさんがおっしゃるのならば止む得ないと、この曲の提供は断念し、私がそうだ、「さっちゃん」のようなほのぼのとした童謡ぽいのがあれば、いいのではと提案し、彼が生み出したのが、「山口さんちのツトム君」だったのである。
「山口さんちのツトム君、この頃少し変よ、どうしたのかな?」で始まる、この名曲はNHKテレビでは田中ケイコさんの可愛いアニメと共に、たぶん川橋啓史君という男の子が歌っていたのだが、レコードとしては斎藤こずえちゃんが歌ったのが一番売れたので、彼女のヒット曲となってしまったのである。
しかし実は、今は個性的俳優として活躍する、あの「北の国から」「寅さんシリーズ」「ドクターコトー」で名を馳せた、吉岡秀隆君も、この「山口さんちのツトム君」を歌っていて、彼の芸能界デビューは、たぶん6歳の時の、この歌だったはずである。
また、この「山口さんちのツトム君」が各社競作で都合100万枚以上の大ヒットになったため、「柳の下のどじょう」よろしく第2弾としてのアンサーソングを作ることとなり、あの「みんなの歌」のかわいいアニメとしても登場している、ツトム君を「遊ぼう!」と誘っているお姉さん役の女の子を主人公にした曲を制作することとなったのである。
出来上がった曲は、とってもラブリーな曲で、ツトム君の元気がなかったのは「田舎に行ってたママが帰ってきたら、たちまち元気になっちゃって・・・」と歌詞で歌われるような、かわいい男の寂しい心境を明かしているのだが、さてこの女の子の名前は?と言うことで、実は私の娘の名前から「ユミちゃんの引越し」という「山口さんちのツトム君」の続編が出来上がったのである。
「今日はユミちゃんがね、遠い町に引越しだよ、・・・」と歌いだす、この「ユミちゃんの引越し」を知る人は、「山口さんち・・」を知っている人の中でも少ないと思われるが、私達にとっては「山口さんち・・」より身近な曲になってしまって、その後私達ユミちゃんを含む一家は、実際に「山口さんち・・」の印税のおかげもあって、「引越し」たのである。
みなさんにとっても、記憶に残る歌、歌詞、またその歌がきっかけで、人生の大きな転機になった曲がおありかもしれないが、少なくとも「みなみらんぼうさん」にとっては、この「山口さんちのツトム君」が大きな転機になったであろうし、私たち家族にとっても大きな人生の岐路のひとつになったような気がしているのである。
懐かしい名曲「山口さんちのツトム君」と「ユミちゃんの引越し」である。