私の好きな、仙叟好みの柏葉姥口釜です。
和銑(わずく)の古いお釜で、大切にしています。
大切にということは、毎年必ず出して使うということです。
骨董で見つけましたが、和銑のお釜は使うほど味が出るようで、
手に入れたときより、ずっとよく見えます。
「和銑(わずく)」とは、砂鉄から製錬するという、
日本古来の技法を用いて精製した鉄のことをいいます。
明治時代以後、輸入された鉄鋼石を原料とする「洋銑(ようずく)」に比べて、
手間がかかり、作ることのできる量が限られています。
洋銑に比べてさびにくいのが特徴です。
初釜で、小間の薄茶席には姥口釜を使おうと思っていますので、
初めて使う方が慌てないように、出してきました。
柄杓の掛け方が違うだけですが、一度使っておけば、間違えずに済みますね。
「なんで姥口があるのに、爺口がないのかしらね」と疑問。
入れ歯のないおばあさんの口のような姥口ですが、
おじいさんの口も同じですものね。
そうしたらある方が、
「おじいさんは爺口になるほど長生きではないからでしょう」
ですって。
何ともお気の毒なことで。
最近は歯を長持ちさせたり美しく見せる、小物や技術が進歩しましたから、
姥口なんていうおばあさんも少なくなりましたけれど。
そういえばお抹茶に「祖母昔(ばばむかし)」がありますね。
家康ゆかりの上林の濃茶ですが。
やはり、はは・・そしてばば・・がいい。
年を取ったら、女の方がちょっと得だと思えて来ました。