利久道歌「こころざし深き人にはいくたびもあわれみ深く奥ぞ教うる」
お茶友からこんな話を聞きました。
あるときお点前を教えていただいていた時、
先生のおっしゃることが違っているのではと思ったけれど、
でもその時は「はい」と直してお点前を終えたそうです。
その日家に戻ると、先生からお電話があり、
「今日のお点前、間違えてお教えしたところがあります、
訂正しておいてくださいね」と。
その方は、
「自分がおかしいなと思った気持ちが態度に出たのかも」
と言っていましたが、それはそうではなくて、
その方の日頃のお稽古の真剣さゆえだと思いました。
教える、教えられるということは、お互いの心構えが反映されますね。
真剣な方には教えるほうも真剣です。
それは反対にも言えることで、
真剣に丁寧に教えられると、習うほうも真剣になるようです。
ですから、その話で利休道歌を思い出し、
辛抱強く何度でも、きちんと教えなくてはと、新めて思いました。
こんなこともありました。ある方を教えていた時、
とてもお上手で、あまり直すところもなくお点前を終えました。
次の方は、気になるところが多く、
それは先になさった方より、ずっと日が浅い方でしたので。
終わって、スムースに終えた方は今日は上手にできて、嬉しいと思い、
たくさん注意された方は落ち込んだかと思ったのですが、
そうではなかったようです。
何も言われなかった方のほうが、ぽつっと冗談のように、
「先生私みすてられたのですか。」と。
以前教師をしていた時に、いつも子供に言いました。
「注意されているうちに直しなさい、あきらめて注意されなくなったらおしまいよ」と。
ですから、注意をしなかった時は、良くできたからだとわかるように、
ちゃんと言葉に出して褒めてあげなくてはいけないのです。
そんなことも思い出しました。
どんなに酷暑の日々でも、稽古場はいつも真剣勝負なのですよね。
暑さも忘れる時間でありたいです。
それでも風炉の火の前に座ると、
エアコンも効かないくらい暑いですけれどね。
皆さんは「冷汗です」とおっしゃいますが。