A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

【追悼】近藤等則さんの想い出~ICPオーケストラ/地球を吹く/ペーター・ブロッツマン/灰野敬二/ビル・ラズウェル/中原昌也/豊住芳三郎/ポール・ニルセン・ラヴ/浅川マキ/沖至etc.

2020年10月19日 00時17分49秒 | 素晴らしき変態音楽


近藤 等則(こんどうとしのり)生誕:1948年12月15日、死没:2020年10月17日(71歳没)

近藤等則の個人的なイメージは、70年代後半から80年代半ばにかけて、海外を舞台に前衛的なサウンドを追求した”フリージャズ侍”というもの。意志の強そうなキリッとした眉の精悍な顔つきと新体道で鍛え上げた肉体がその印象を裏付けた。80年代前半は海外のフリージャズ・ミュージシャンの招聘を行い、今は無き法政大学学生会館ホールなどでライヴを数多く企画していた。筆者は1982年5月のミシャ・メンゲルベルク&ICPオーケストラの初来日公演やペーター・ブロッツマンとの共演をはじめ何度か観た記憶がある。フリー系ミュージシャンは他にもいたが、近藤だけが海外の猛者の向こうを張って孤軍奮闘している印象を受けた。しかし、1984年に結成した近藤等則&IMAは、フリクションのレックも参加し、ファンキーでカッコ良くはあったが、往年のプログレバンドが80年代にこぞってMTVポップ路線に転向するのに似た”前衛の敗北”のように感じてしまった。アヴァンポップという胡散臭いネーミングにも馴染めなかった。

90年代に入り、プログレ組の中で唯一MTVに魂を売らなかったフレッド・フリスの『ステップ・アクロス・ザ・ボーダー』に呼応して、「越境」を合言葉に世界中の音楽が交感を始め、フリスはもちろん、ビル・ラズウェル、ジョン・ゾーン、アート・リンゼイ等が音楽の境界を大きく広げた。1993年に近藤がそれまでの活動すべて打ち切り、アムステルダムへ音楽拠点を移したのがこの「越境運動」に関係あるかは分からない。近藤の話では「人に向かってだけ演奏することに疑問を覚えた」というのが動機のひとつだという。イスラエルを皮切りに世界中の大自然の中でエレクトリック・トランペットを吹き、地球の鼓動と共振・共鳴する『地球を吹く(Blow the Earth)』の旅を続けた。

2007年に日本の自然を相手に演奏を始め、ドキュメンタリー映画『地球を吹く in Japan』を制作。2012年にアムステルダム生活を終了し帰国。日本でのライヴ活動を精力的に行うとともに、2014年に音楽ダウンロード販売サイト「近藤等則レコーディングス Toshinori Kondo Recordings」をスタートさせ、多数の作品をリリースしてきた。筆者は2011年から2017年の間に何度も近藤のライヴを観てきた。筆者のフリージャズ体験の原点である近藤等則の想い出をブログ記事から抜粋することで、筆者なりの追悼文の代わりとさせていただきたい。(敬称略)

ビル・ラズウェル+近藤等則+山木秀夫+DJ Krush@渋谷WWW 2011.5.17(tue)
アンビエント風のベースのハーモニクスで始まったステージは、うねるように表情を変え、ヘヴィーなビートにのって激しいトランペットのブロウと切れ味鋭いスクラッチ・プレイが炸裂、さらに怒涛のベース・ソロやドラムの連打が満員の会場に響き渡る。近藤さんのトランペットを生で聴くのは20数年ぶりだったが、当時のストイックなプレイに比べ多彩な音色が宙を舞う演奏が印象的だった。70分強のステージを見終わった若い観客が「凄かったね~」と語り合っているのがこの日のライヴの凄さを象徴してした。

百鬼夜行の回想録~フリージャズ編:ICP BOXとICP オーケストラ(2012年12月18日記)
近藤が手がけたプロジェクトがミシャ・ベンゲルベルクとICPオーケストラの初来日ツアーである。ミシャ・メンゲルベルグ(p)、ハン・ベニンク(ds)、ペーター・ブロッツマン(sax)、マイケル・ムーア(sax)、ケシャバン・マスラク(sax)、近藤等則(tp)など総勢10名からなるビッグバンド。半分以上は初めて聞く名前だった。1982年5月8日(土)、会場は日本教育会館一ツ橋ホール。超満席だった。それまでレコードやテープでフリージャズやインプロを聴いてきて、シリアスで冷徹な世界こそ「前衛」であると思い込んでいたがそれを見事なまでにぶち壊す衝(笑)撃的な演奏だった。テクニックや音のでかさも凄いが何よりも視覚的に面白い。何度も会場が爆笑の渦に巻き込まれた。

本田珠也+近藤等則+灰野敬二+ナスノミツル@新宿Pit Inn 2014.1.21(tue)
エアシンセから始まり、宙を舞うトランペットがリードする展開からハードコアな四つ巴の鬩ぎ合いへと突き進む。渦巻くサウンドの嵐の中で灰野が「たった一度しかない今という宝物~」と歌った瞬間に四人のスピリチュアル・ユニティが完成した。哀愁のトランペットのアンコールを含み60分の旅路の果てから生還した四人の顔は全力を出し切った心地よい疲労感に輝いていた。ジャズでもロックでもなくただひたすら「音楽」というセッション。途轍もなく大きな奇跡を目撃したのではなかろうか。

ペーター・ブロッツマン+近藤等則+豊住芳三郎/マニ・ノイマイヤー+八木美知依@SDLX 2014.3.12(wed)
田原坂の戦いの西郷軍による抜刀斬り込み攻撃を思わせる切っ先鋭い音の刃は、「地球を吹く」で聴ける大地を包み込む雄大なサウンドとは別次元。70年代にトランペット一本持って単身海外に渡り道場破りのように現地の即興現場に斬り込んだ武闘派インプロヴァイザーの顔が表に浮き出る。巨体から銃撃するマシンガンタンギングと電気操作で歪み木霊するペット炸裂音が獣の咆哮のように反響し合い、野性のジャングルか砲弾飛び交う戦場へ紛れ込んだかのような錯覚に陥る。

近藤等則『地球を吹く in Japan』上映会&ソロ・ライヴ@青山CAY 2014.4.18(fri)
日本の自然は柔らかい音じゃないとコミュニケーション出来ないと言う。しかも季節によって音色を変えなければならない。そんな繊細な日本の自然の力に惹かれて3年に亘り続けた即興演奏の旅の記録がドキュメンタリー映画『地球を吹く in Japan』。時系列的な旅紀行ではなく、幾つかの時間・場面がカット&ペーストされお互いに反響し合い、映画の中では殆ど語られない近藤の心と音楽の動き・変化がじわじわ伝わってくる。プログラムされたリズムや電子音に呼応したトランペット演奏は、かつての刃のようなフリーインプロヴィゼーションとは全く印象は異なるが、山や川や草木との対話による紛うこと無く本当の「即興演奏」である。

近藤等則+ペーター・ブロッツマン+中原昌也@恵比寿LIVE GATE 2015.4.21(tue)
中原のソリッドな電子ノイズと、近藤の浮遊するエレクトリック・トランペットが飛び交うエレクトロの嵐の中で、ブロッツマンが独り屹立する勇猛な風景を幻視したが、ステージ上ではもっと混然一体のアトモスフェアが生またのではなかろうか。それは対峙とか共感とか友愛とか交歓という言葉では表現しえない『未知の創造の場』の現出ではなかったか。

【闇夜のジャズ・カヴァー集】近藤等則『あなたは恋を知らない』/KYOTO JAZZ SEXTET『MISSION』(2015年04月29日)
俺はこのアルバムでも闘ってるつもりだよ。世界中の誰もやってないスタンダード・カヴァーをやったと思っている。ジャズのスタンダード集は数えきれないほど出ている。そして、その99%がアコースティック・アンサンブル。で、俺はそれをエレクトリック/エレクトロニックでやった。同じスタンダード・カヴァーでも、まるっきり違う背景で作ったつもり。アコースティック楽器でそのままスタンダードをやっても面白くもなんともないしね。(近藤等則談)

【トランペットの皮算用】ドン・チェリー/レスター・ボウイ/沖至/近藤等則(2015年06月10日記)
新体道で培った壮観な面持ちには、常に闘い常に交歓してきた男=漢の生き様が皺のように刻み込まれている。無伴奏ソロ作『Fuigo From A Different Dimension』(79)に於けるペットの可能性と不可能性を暴露するかのような挑戦は、今となっては忘れかけた過去かもしれないが、世界の中の日本に少しだけ引っ掻き傷を残した功績は後の世に語り継ぐべきだと信じている。

近藤等則@Red Bull Studio 東京 Hall 2015.11.29(sun)
スケールの大きな宇宙サウンドに留まらず、電子ノイズに拮抗するべく細かいタンギングで音の肌理を操作して、音階無き旋律を吐き出すトランペット奏者の心の奥底に棲みついている極端音楽家の魂を解放する。これは単なる立体音響のデモンストレーションではない。音楽家の脳内ヴィジョンを実体武装化することで、人間のイマジネーションを無限に拡張する神の所業への挑戦かもしれない。

ペーター・ブロッツマン+ポール・ニルセン・ラヴ+近藤等則「音の哲学に向けて」@専修大学生田キャンパス 2017.4.23 sun
ブロッツマンの生音に近いブロウと近藤のエレクトリック・トランペットが鬩ぎあう真ん中でふた回り以上若いニルセン・ラヴが、音のスクリーンを粉砕するドラミングの妙を発揮する。1時間あまりのセットは、緩急を繰り返す度に表情を変化させ、アコースティックとエレクトリック、ロングトーンと微分音、破壊と創造、喧嘩と仲直り、聖と俗、超自然と日常、といった形而上・形而下の概念を形成するように思えた。

浅川マキさんが逝っちゃった(2010年01月19日記)
私は1980年の「ONE」というアルバムが好きだ。川端民生(b)、山下洋輔(p)、近藤等則(tp)、山内テツ(b)という面子によるフリージャズをバックに歌うマキさんの佇まいはアングラの香りがプンプン漂う魅力的なものだ。

近藤等則さんの思い出(2011年03月10日記)
実は私は一度近藤さんを引っぱたいたことがある。混雑した井の頭線の列車の中でたまたま同じ車両になり、私が降車するときに吊り革を掴んでいた手が偶然に近藤さんの頭にぶつかったのだ。「スミマセン!」と謝ったものの、近藤さんの苦々しげな顔が忘れられない。

ラッパから
飛び出してくる
自然の音

今宵はレコードを廻しながらご冥福をお祈りします。
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【The Art of the Record Groove】レコードの溝の美しさ~バルトーク/レジデンツ/19 JUKE/野鳥/ゾルタン・イェネイ/エヴァン・パーカー/シュトックハウゼンetc.

2020年10月18日 03時01分48秒 | 素晴らしき変態音楽


「米国でアナログレコードの売り上げがCDを上回る」ーー9月10日にアメリカレコード協会(RIAA)が発表したニュースが話題になっている。しかし筆者にとっては、90年代は確かにCDに夢中になったが、常に中古レコード店をチェックしてアナログレコードを買い続けていたし、2000年代に入って以降は完全にレコード中心の音楽ライフを送っている。では筆者はなぜレコードに惹かれるのだろうか?アナログならではの音に温もりがある/レコードをプレイヤーに乗せて針を落ろすという手作業が楽しい/ジャケットが大きくてアートっぽい、などなどいくつかの理由がある。しかしそれ以上に大きな理由は「溝」が好きだからかもしれない。レコードを聴く行為は多分にエロティックな要素がある。レコード盤の中心の穴にターテーブルの突起を挿入する行為はもちろんだが、刻まれた溝を針で摩擦することで音が出るという原理自体がかなり性的である。愛するレコード盤をやさしく愛撫しながら溝の奥の襞のスイートスポットを刺激するダイヤモンド針になりたい、と願うヴァイナル愛好家は少なくないに違いない。

世の中にはレコードの溝を見るだけで収録曲がわかる特殊能力を持つ人がいるらしいが、我々凡人は溝を眺めてその造形を楽しむことしか出来ない。そのために溝を電子顕微鏡で拡大してミクロの世界を楽しむ方法もある。
アナログレコードの魅力に肉薄するフェティッシュな写真集『針と溝』
アナログレコードの溝をプレーヤーの針がうねうね動く様子を顕微鏡で見るとこんな感じ

Electron microscope slow-motion video of vinyl LP


しかし筆者は、そんな特殊器具を使うことなく、肉眼で溝を見るだけで得も言われぬ歓びを享受することが出来る。中古レコード店で検盤(レコード盤の状態を確認すること)するとき、予想外の素晴らしい溝に出くわしたとき、思わず「あはん」という喘ぎ声を漏らしてしまって店員に怪訝な目で見られたことも一二度ではない。そんな「溝フェチ」の筆者が出会ったセクシー(素敵)な溝を持つレコードたちを紹介したい。とはいっても彼らの魅力を写真に写すことは難しい。やはり実際にレコード盤にそっとやさしく手を添えて、宥めたり賺したりしながら、いろんな角度で嘗め回すように視姦することでしか「溝」の魅力は分からないことを前もって申し上げておこう。

●バルトーク Bela Bartok / ミクロコスモス Mickrocosmos
197? / Hungary : Hungaroton ‎– LPX 11405-7 / 3 × Vinyl, LP Box Set


ハンガリーの作曲家バルトーク・ベーラが1926年および1932年から1939年にかけて作曲した全6巻、153曲の小品からなるピアノのための練習曲集。父親のレコード・コレクションの中にあった。3枚のLPに153曲、片面に平均25.5トラックの細かい溝が刻まれているレコード盤を見て、当時中学生だった筆者は、生まれて初めて「溝萌え」を感じた。無味乾燥な練習曲の羅列がシュールな前衛色を帯びて聴こえる。ただし曲ごとにトラック分けされていないレコードもあるので要注意。



Bartok - Mikrokosmos (complete, with score)



●ザ・レジデンツ The Residents / コマーシャル・アルバム Commercial Album
1980 / US : Ralph Records ‎– RZ-8052-L


アメリカの前衛音楽グループ、レジデンツが80年に発表したアルバム。1分間の曲が40曲収録されている。高校の頃一番好きなバンドだったので輸入盤の入荷日に買った。片面20トラックの溝が5曲ずつ均等に整列する構成美は、CMソングというコンセプトに相応しく、規制された工業製品(レディメイド)を意味しているように思える。



Residents - Commercial Album



●19 / Juke
1980 / Japan : LM-1213


現代美術家の大竹伸朗が70年代末に結成した前衛音楽ユニット19 / Jukeの1stアルバム。6秒から2分48秒までの曲がA面26曲、B面19曲収録されている。レジデンツの構成美とは違って溝の幅は様々。レディメイド/ポップアート風のジャケットと好対照をなす。スタジオ録音をずたずたに切り張りしたようなサウンドと共に、筆者の音楽嗜好を方向づけたレコードである。



19/JUKE 'S/T' 1st LP 1980 (FULL ALBUM/COMPLETE) Japan Experimental No Wave Punk



●Jac Holzmon / Authentic Sound Effects vol.6
1964 / US : Elektra ‎– EKS-7256


サウンド・エフェクト(効果音)集。A面20トラック、B面18トラック。30秒前後のスポーツ、乗り物、ストリートノイズなどの音源の中に、メジャーリーグの試合と飛行機の着陸がそれぞれ4分、8分長めに収録。そのため溝が不均衡になっているのが味わい深い。



Jac Holzman ‎– Authentic Sound Effects Volume 6 [12"]



●野鳥の歌 Birds Concert
1969 / Japan : ビクターレコード JV-201-7


最近のマイブームは鳥の鳴き声レコード。メーカー違いで5~6枚集めたが、鳥の種類ごとに分けて片面に12トラックずつ収録された日本野鳥の会収録のこの2枚組がジャケットがシンプルでお気に入り。溝の幅の微妙な違いが、自然の摂理を表しているのかもしれない。



野鳥の歌:谷間に響く:wild bird calls



●Evan Parker ‎/ At The Finger Palace
1980 / US : The Beak Doctor ‎– The Beak Doctor 3, Metalanguage ‎– ML 110


イギリスのフリーミュージック界を代表するサックス奏者エヴァン・パーカーのソプラノサックス・ソロ。1982年に来日、筆者は観に行かなかったが、気になって明大前モダーンミュージックで購入したのが本作。循環呼吸奏法で切れ目なく続く高周波数のフリークトーンはサックスではなく謎の怪鳥の囀りのように聴こえる。写真では分かりにくいが、これほどギザギザで暴力的な溝は他に見たことがない。



Evan Parker - St Michael And All Angels, Chiswick, London, 11 October 2001



●シュトックハウゼン Karlheinz Stockhausen ‎/ ヒムネン<賛歌> Hymnen
1969 / Germany : Deutsche Grammophon ‎– 139 421/22


ドイツの現代作曲家カールハインツ・シュトックハウゼンが1966-7年に制作した電子音楽/ミュージック・コンクレート作品。世界各国の国家を素材に電気変調した長尺作品。片面1トラックの中で、次々と曲調が変化する様がランダムな溝の模様に刻まれていて、見ているだけで世界旅行をしている気分になる。



Karlheinz Stockhausen - HYMNEN (Elektronische und konkrete Musik) Region 1 + 2



●Den Nørrejyske Øs Stororkester For Opløst Mønstermusik
2009 / Denmark : Yoyooyoy ‎– Mønstermusik 01 / 4 × Vinyl, 12", DVDr, DVD-Data


デンマークの即興演奏家集団による音源・素材集LP4枚組。中古レコード店で4枚組で1480円という安値で発見。検盤して溝の面白さに一目ぼれして内容も確かめないで即購入した。400曲がLocked Groove(針が進まないで同じところをリピートする閉じた溝)になっているが、トラックによって1回転~数分と異なっているので、盤面の溝が信じられないほど面白い模様を描いている。音源はアコースティック楽器の即興なので、どこを切っても興味深い。封入されたグラフィックスコアでこの音源を使って作曲ができるらしい。



Stororkester



●Zoltan Jeney / Impho 102/6, Orpheus' Garden, A Hundred Years' Average, End Game
1979 / Hungary : Hungaroton ‎– SLPX 12059


ハンガリーの現代音楽家ゾルタン・イェネイの作品集。Discogsで購入し、届いたレコードを取り出してあまりの美しさに昇天した。A面鐘の合奏/室内楽、B面リングモジュレーター/ピアノ・ソロ、溝が綺麗に二つに分割されている。ミニマルを極めると溝も静寂の色を帯びるのだろう。

 

Zoltán Jeney - A Hundred Years' Average



●Zoltan Jeney / OM
1986 / Hungary : Hungaroton ‎– SLPX 12708


同じくゾルタン・イェネイの超ミニマリズムが100%発揮された超絶作。AB面各26分、2台のオルガンによる反復フレーズが情け容赦なくリピートされる。思考も感情も聴覚以外の五感もすべて無に帰するしかない残酷さは、しかしレコード盤面に刻まれると、上質なビロードかなめし革のように艶のある光沢を放つ。レコードの溝とは思えない滑らかな美肌は”The Art of the Record Groove”(レコードの溝芸術)のひとつの究極に違いない。

 

OM - két elektromos orgonára - 1. rész


溝の中
異能音楽
飼育する

●Burton Greene Quartet / Burton Greene Quartet
1966 / US : ESP Disk ‎– 1024


アメリカのフリージャズ・ピアニスト、バートン・グリーンのデビュー作。Marion Brown(reeds)、Henry Grimes(b)などが参加。82年に手に入れて以来、ESPの中でも5本の指に入るほど好きなアルバム。当時一緒に即興ユニットOther Roomをやっていたギタリストの高島暁(タカシマサトル)君に貸したら「なに、この溝?」と驚かれた。確かに光に透かすと盤面に波打つ模様が浮き出る。しかし、アブストラクトな即興ジャズだから、反復ビートの波動ではないだろう。かと言ってノイズは全く出ないので傷や汚れでもない。他にこんな模様が出てくるレコードはない。何らかの秘密のメッセージが込められているのだろうか?わかる方がいたら教えてください。

 

Burton Greene Quartet - Cluster Quartet
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【私のポストパンク禁断症状#9】Phew『Phew』『VOICE HARDCORE』~眩暈の巫女の禱が世界をノックアウトする。★本日、灰野敬二とコラボレーション!

2020年10月13日 02時17分26秒 | ガールズ・アーティストの華麗な世界


Phewと言えば、自分史の中では、1979年高校2年の時、The Clashの2ndアルバム『Give'Em Enough Rope』を買うつもりで訪れた吉祥寺の輸入レコード店ジョージアで、Vanity Recordsから発売されたばかりのアーント・サリーのLPを見つけて、ジャケットのベレー帽の少女に一目惚れして、買おうかどうか迷ったあげく、The Clashを購入した、という思い出がある。あの時、仄かな恋心に身を任せる勇気があったら、あまりに貴重な初期日本のパンクの名盤を同時代に聴くことが出来ただろうに、と後悔の念に駆られたこともある。

実際にPhewの歌声を聴いたのは1980年の坂本龍一プロデュースのシングル『終曲/うらはら』だった。YMOはみんなが聴いていたので好きじゃなかったが、暗黒フォークのテクノ版と言えるこのシングルは好きだった。同じPass Recordsから81年に出たソロ・アルバム『Phew』は、82年大学1年の時にアルバイトを始めたライヴハウス吉祥寺GATTYのカウンターに、灰野敬二『わたしだけ』、阿部薫&吉沢元治『NORD<北>』、ジェファーソン・エアプレイン『シュールリアリスティック・ピロー』等と一緒に飾ってあったのをカセットテープに録音して聴いた。コニー・プランク、ホルガー・チューカイらドイツ人による音楽は、坂本龍一以上にテクノっぽく聴こえて、クールで抑揚のない歌というよりヴォイスを聴かせるPhewはアンドロイドの巫女の禱だった。同時に聴いた灰野の呪術性や阿部の情念性と共に、80年代初頭の地下音楽の香りとして筆者の感性に色濃く刻まれている。

84年にアーント・サリーのLPが再発されてやっと聴けたときには、もっと早く聴くべきだったという後悔と共に、ポストパンクのクールビューティーというイメージの彼女の心の中の熱いロック魂を感じて、戻れない青春時代(笑)に思いを馳せたりもした。しかし80年代後半になるとインディーズやバンドブームが訪れ、自分の興味が肉感的なサイケデリックロックに向いていったために、Phewの活動を追うことが少なくなっていった。しかし心のどこかにPhewの存在は常に引っかかっていた。

1993年2月17日裸のラリーズの川崎クラブチッタ公演のサポートアクトがPhewだったので、初めてライヴが観れると期待していたのだが、開演直前にラリーズ側(水谷孝)とトラブルがあったらしく、土壇場で出演キャンセルになった。Phewが出演予定だった約1時間ずっと無音でストロボが明滅していた。立ちっぱなしで疲れ切った観客に向けて放射された裸のラリーズの演奏は、音圧で会場の入り口の扉が開閉を繰り返していたほどの爆音体験だった。



Phewのライヴを初めて観たのはたぶん2005年2月新宿ロフトで灰野敬二/Reck/PillのバンドHead Rushの対バンで出演したMOSTだったと思う。New Wave/ポストパンクのイメージを払しょくする熱いパンクロックに胸熱だった。
Head Rush & Mostを新宿ロフトで観てきたよ(2005年2月12日記)

次は2009年10月11日新宿ロフトでのDrive To 2010でPhew(vo)、Bikke(g)、石橋英子(key)のBEP。クールなPhewのヴォーカルに仄かな母性を感じた。この日の対バンは灰野敬二とチコヒゲ(フリクション)のデュオだった。
DRIVE TO 2010:灰野敬二×チコヒゲ他@新宿ロフト 09.10.11(sun)

2010年11月7日早稲田大学学園祭でPhew+山本久土。2010年12月18日新代田FeverでMOST。2011年5月28日渋谷WWWでのPhew×高橋悠治は世界の反戦歌や抵抗の歌を歌う孤高のコンサートだった。
ヘアスタ、湯浅湾、Phew@早稲田祭 2010.11.7.(sun)

kuruucrew/MOST/ooioo他@新代田Fever 2010.12.18(sat)
Phew×高橋悠治@渋谷WWW 2011.5.28(sat)

2014年11月24日に六本木スーパーデラックスでPhewとジム・オルークのデュオを観た。対バンは灰野敬二と石橋英子デュオ。エレクトロニクスを駆使した電子音による新たな表現に驚いた。2015年1月10日六本木スーパーデラックスでは映像アーティストRokapenisとのコラボレーションで砂嵐のようなパフォーマンスを聴かせた。対バンはアンラ・コーティス+灰野敬二。2015年10月4日のスーパーデラックスではヴィンテージシンセとヴォイスのソロ演奏。対バンは空間現代×灰野敬二。Phewのエレクトロニクス演奏は会場限定で発売されていたCDRで聴くことが出来る。その時々の実験精神をそのまま録音したような、音の日記のような私家盤である。
灰野敬二+石橋英子/PHEW+ジム・オルーク@六本木SuperDeluxe 2014.11.24(mon)
アンラ・コーティス+灰野敬二/PHEW/ジョン・イラバゴン他@六本木SuperDeluxe 2015.1.10(sat)
空間現代×灰野敬二/PHEW@六本木SuperDeluxe 2015.10.4(sun)

2017年にリリースされたアルバム『VOICE HARDCORE』はタイトル通り声(ヴォイス)に特化した新しい世界を聴かせてくれた。声だけを素材としてミックスされた捻じれたバックサウンドに廃品回収のアナウンスや狂者の呟きのようなポエトリーを乗せた音楽は、かつて感じたアンドロイドの巫女のオーラが深い地底からマグマのように吹き出すSonic Volcano(音響火山)だった。エレクトロニクスとヴォイス、Phewにとってはどちらも同じ自分自身であるに違いない。

2020年9月にリリースされた最新作『Vertogo KO』は2017~2019年に録音された音源をコンパイルしたアルバム。エレクロニクスとヴォイスの関係がバランスよくミックスされた作品群は、タイトル通り「Vertigo(眩暈)」こそがPhewの音楽の核であることを示している。「自分で見聞きする、目に見える世界だけが世界のすべてではない」と語る(MIKIKIインタビューより)Phewが生み出す眩暈は、混迷の世界にとっての救いの光なのかもしれない。

Phew - Vertigo KO


眩暈から
聴こえる声の
美しさ



さて、筆者のPhewライヴ観戦記でもお分かりのように、Phewと灰野敬二との対バンは多々行われている。調べた限りで最初の対バンは1981年8月15日 東京・日比谷野外音楽堂での「天国注射の昼 VOL.3」だと思われる。灰野は不失者、Phewは竹田賢一率いるA-musikとのコラボで出演。他の出演はKEIKO、グンジョーガクレヨン、山崎春美+白石民夫&タコ、PUNGO+近藤達郎、コクシネル、FULLX、VEDDA MUSIC WORKSHOP、原田依幸+片山広明+菊池隆、じゃがたら+和田幸子、BAKUZU、カヌーレ、SHGHING-P ORCHESTRA、坂本龍一、巻上公一、鳥居夷、伊藤はじめ、アウシュヴィッツ、まだ。

40年近く何度も対バンしている二人が初めてデュオとしてコラボレーションする本日の「にじのつきeden vol.2」。入場チケットはソールドアウトだが、アーカイヴなしのライヴ配信チケットは本日20時まで購入可能。”魂を操る司祭”=灰野敬二と”眩暈の巫女”=Phew、それぞれ孤高の道を歩み続ける二者の共演は見逃せない。

10月13日(火) 東京・下北沢440
〈にじのつきeden vol.2〉 Phew 灰野敬二

有観客ライブ(40人限定)+有料ライブ配信(アーカイブなし)

開場 19:30 / 開演 20:00
入場チケット:前売¥3,500(1D別)/ 当日¥500up ※SOLD OUT

配信開始:20:00〜(※アーカイブなし)
配信チケット:¥2,000+投げ銭
ZAIKO:( https://440-fourforty.zaiko.io/_item/330718)
販売期間  9/28 20:00〜 10/13 20:00
配信期間 10/13 20:00〜 10/13 23:00(終演まで)

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【Disc Review】灰野敬二&ジ・オブザーヴァトリー HAINO KEIJI & THE OBSERVATORY『権力は生きている AUTHORITY IS ALIVE』

2020年10月11日 02時33分14秒 | 灰野敬二さんのこと


Haino Keiji & The Observatory
Authority is Alive

12” Vinyl / Digital Ujikaji Records UJI-017LP

Side A: Over Here
Side B: Over There

Haino Keiji : Guitar, Vocals
Dharma : Guitar
Cheryl Ong : Drums
Yuen Chee Wai : Guitar

Recorded live at Playfreely – The Transparency of Turbulence, 29 Nov 2019.

https://theobservatory.bandcamp.com/

アジアから大きなものへの異議申し立て
2019年11月28,29日の二日間シンガポールのベテラン・アートロックバンドThe Observatoryが主催する実験・即興音楽フェスティバルPlayfreely Festivalが、シンガポールのヴェニュー72-13で開催された。シンガポール、インドネシア、マレーシア、中国、台湾、香港、日本のアーティストが参加し、”The Transparency of Turbulence(乱流の透明性)”というテーマを冠した今回のフェスは、蔓延しつつある権力主義、大国のエゴ、イデオロギーの暴力により引き裂かれる東・東南アジア地域のミュージシャンを合体させ、世界を正しい方向へナビゲートするという野望があった。

シンガポールは世界でも有数の裕福で清潔な国として知られる。しかしその裏には国家による徹底的な管理があるという。清潔な街並みを保つためにごみのポイ捨てや交通違反はおろか、大道芸やデモ行為にまで多額の罰金を科している。また経済成長を支えているのは、近隣の国フィリピンやインドからの低賃金の出稼ぎ外国人労働者である。富裕層に比べ劣悪な環境に暮らす外国人労働者の宿舎で新型コロナ感染が爆発的に拡大したという報道もある。The Observatoryのメンバーが富裕層に属すのかどうかは分からないが、少なくとも彼らはそうした国家権力の横暴に異議を唱えていることは確かである。

90年代に勃興したシンガポールのロックシーンを代表するミュージシャンにより2001年に結成されたThe Observatoryは、これまで8枚のアルバムをリリースし、日本やヨーロッパを含む国際的なツアーを行うとともに、東・東南アジアのミュージシャンのネットワークを作ってきた。リーダーのユエン・チーワイ(Yuen Chee Wai)は、大友良英らと共にアジアン・ミーティング・フェスティバルの共同ディレクターとして活動する。以前から灰野敬二のファンであり、2017年9月に札幌で開催された「Asian Meeting Festival 2017」で灰野と共演して以来コラボレーションの機会を模索していたという。今回のシンガポールでの共演は、2019年にヴォーカリストが脱退し、インストゥルメンタル・トリオとなったThe Observatoryにとってはまさに新たなスタートと言えるステージだった。

『権力は生きている(The Authority Is Alive)』と題された本作は、2019年11月29日のコラボレーション・ライヴを収録したアルバム。灰野が英語で歌う歌詞には、”あっち、そっち、そこ、ここ”、”私と今 どっちがどっちに滲んでる”といったお馴染みのフレーズと共に、最近よく歌われる”義務より礼儀正しく”という言葉も聴きとれる。権威を振りかざす”大きなもの”への警告は、灰野の40年以上の音楽活動の中で核となるテーマの一つである。チーワイをはじめとするThe Observatoryのメンバーや、集まったオーディエンスとの接点となったことが、全編を貫く静かな興奮と緊張感の中に感じられる。

プリペアードギターとドラムのポリリズム、フィードバックのクラスター、緩急に富んだ音の断続、The Observatoryの演奏に宿るアミニズムに感化されて、灰野が発するシャープな言葉と雷のようなシャウトは「魂を操る司祭」と呼ばれる彼のシャーマン性をこれまで以上に強く感じさせる。世界を侵食する”大きなもの”に対する除霊の儀式ともいえるライヴコンサートから半年も経たないうちに、全世界が新型コロナウィルスの脅威に侵されるとは誰も想像しなかっただろうが、この日のステージがそれを予感していたことが、インサート写真で示唆されている。それを奇跡と呼ぶか必然と捉えるかはあなたに任せたい。

Haino Keiji & The Observatory - Authority is Alive. Out on Ujikaji, 30 September 2020.


45回転12インチ・アナログレコード。両面インナーシート(歌詞付)封入。限定200枚。マスタリングはノルウェーのノイジシャン、ラッセ・マーハーグ(Lasse Marhaug)。

アジアから
異議申し立て
届いたよ

【灰野敬二Live Schedule】

10月13日(火) 東京・下北沢440
〈にじのつきeden vol.2〉 Phew 灰野敬二

有観客ライブ(40人限定)+有料ライブ配信(アーカイブなし)

開場 19:30 / 開演 20:00
入場チケット:前売¥3,500(1D別)/ 当日¥500up ※SOLD OUT

配信開始:20:00〜(※アーカイブなし)
配信チケット:¥2,000+投げ銭
ZAIKO:( https://440-fourforty.zaiko.io/_item/330718)
販売期間  9/28 20:00〜 10/13 20:00
配信期間 10/13 20:00〜 10/13 23:00(終演まで)


10月26日(月)渋谷 公園通りクラシックス
『事 ある 事』~灰野敬二、吉田隆一、SOON KIM

有観客ライヴ(配信無し)

開場:19:00 / 開演:19:30(終演21:30予定)
前売り:3,000円 当日:3,500円 1ドリンク別

定員30名要予約!
お問合せ:03-6310-8871
http://koendoriclassics.com

灰野敬二 (g,vo,etc)
吉田隆一 (baritone sax)
SOON KIM (alto sax)


12月20日(日)東京・秋葉原CLUB GOODMAN
doravideo presents “ 秋葉原グッドマン大復活祭 ”
 

【出演】ドラびでお / 灰野敬二 / 大友良英 / 坂田明 / 山川冬樹…他
OPEN 18:00 START 19:00
¥6,000(ドリンク込)限定50名プレミアムチケット

クラブグッドマン&スタジオリボレ再開支援【Birth Cry Project】クラウドファンディング
https://camp-fire.jp/projects/view/327780


12月30日(水) 東京・高円寺ShowBoat
灰野敬二 Keiji Haino-2020年最終公演


【出演】
※後日発表

【時間】開場 18:00/開演 19:00
【料金】前売¥4,500/当日¥4,800(税込・別途ドリンク代¥600)

【チケット】
■ShowBoat
電話、メールによる予約、代引郵送販売受付中(14:00~23:00受付)
※プレイガイド販売なし
※チケットの整理番号はご購入順になります。予約では整理番号がつきませんのでご注意ください。
※代引郵送にてご購入希望の方は、メールにて下記をお送り下さい。
(別途発送手数料¥580)
《公演日・公演名・住所・氏名・電話番号・購入枚数》

【問い合わせ】
ShowBoat
■Tel 03-3337-5745(14:00~23:00)
■Mail info@showboat.co.jp

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【地下ジャズDisc Review】46分無変化の嵐!!!!独逸発ミニマル・ドローン・ハードコア・ビッグバンド~ザ・ドーフ / フィル・ニブロック『バオバブ / エコーズ』

2020年10月10日 00時32分36秒 | ネコ動画


『The Dorf / Phill Niblock ‎- Baobab / Echoes』
CD/DL : Umland Records 31
text by 剛田武 Takeshi Goda

The Dorf:
Marie Daniels – vocals
Hanna Schörken – vocals
Maika Küster – vocals
Oona Kastner – vocals/ keys
Julia Brüssel – violine
Martin Verborg – violine
Ludger Schmidt – cello
Emily Witbrodt – cello
David Heiss – trompete
Moritz Anthes – posaune
Max Wehner – posaune
Adrian Prost – posaune a
Lex Morsey – tuba
Sebastian Gerhartz- saxofon
Felix Fritsche- saxofon
Florian Walter- ewi/ saxofon
Stefanie Heine- saxofon
Luise Volkmann- saxofon
Andreas Wahl – gitarre
Christian Hammer – gitarre
Raissa Mehner – gitarre
Serge Corteyn – gitarre
Oliver Siegel – synth
Guido Schlösser – keys
Fabian Neubauer – keys
Anja Kreysing – keys
Gilda Razani – theremin
Achim Zepezauer – electronic
Kai Niggemann – electronic
Johannes Nebel- bass
Volker Kamp – bass
Simon Camatta – drums
Marvin Blamberg- drums
Jan Klare – saxofone airmovement
Denis Cosmar – sound

Disc 1 : Baobab
1. Baobab

Disc 2 : Echoes
1. Rich
2. F-Lan
3. Split

Baobab by Phill Niblock
Rich/ F-lan/ Split by Jan Klare
Recorded at Domicil, Dortmund on September 19, 2019
Recorded and mixed by Denis Cosmar
Graphic design by Achim Zepezauer

The Dorf公式サイト
The Dorf bandcamp

ドイツの異能集団即興ビッグバンドのミニマル・ドローン・ハードコア
ザ・ドーフ The Dorfは2006年にサックス奏者・作曲家のヤン・クラーレ Jan Klareを中心にドイツのルール地方(ドルトムント~エッセン)の即興演奏家の集合体として結成された。毎月ドルトムントのクラブDomicilでセッション・コンサートを開催するうちにメンバーが固定され定期的に活動する大規模編成のビッグバンドになった。2017年に初来日したサックス奏者フローリアン・ヴァルター Florian Walterも2010年からこのバンドに参加しており、彼から30人のビッグバンドと聞いたとき(⇒インタビュー)、”ドイツ版渋さ知らズ・オーケストラ”とか“21世紀のGlobe Unity Orchestra”というイメージが頭の中に浮かんだ。しかし、試聴サイトで彼らの演奏を聴いてみて、渋さのお祭り感覚やGlobe Unityの集団即興とは全く異なる、静的でシリアスなサウンドに驚いた。ジャズや即興音楽というより、コンテンポラリー/現代音楽の要素を強く感じさせるスタイルは、同じドイツのベルリンを拠点に活動する実験音楽アンサンブル、ツァイトクラッツァー Zeitkratzerに近い。1997年に結成され、クラシック/現代音楽/フォークミュージック/ロック/ノイズといった様々なジャンルと並列に取り組み、スタイルやジャンルを超越したコラボレーションを実践する10人組のツァイトクラッツァー(⇒ライヴレポート)と同じように、30人編成のザ・ドーフもジャンルを横断したユニークな試みを追求している。

Covid-19のため配信ライヴとして開催された今年のメールス・フェスティヴァルでは、初日の2番手として登場し、ベートーベン250周年に因み、交響曲第5番「運命」を大胆にデフォルメした演奏で、コロナ禍で苦しむ世界をカリカチュアライズしてみせた。密を避けるべく30人のミュージシャンがステージエリアに微妙な距離を保ちながら、クソ真面目な表情で逸脱したパフォーマンスを繰り広げる映像から、”Social Distancing”という標語を逆手に取ったレジスタンス精神が伝わってきた。緊急事態宣言真っただ中の日本から観ると、遥か彼方の異世界の非日常的な光景に感じられて、コロナ禍以前の日常が崩れつつある現実に改めて気づいた瞬間であった。

自粛解除後初のザ・ドーフの新作が、2017年に自ら設立したレーベルUmland Recordsからリリースされた(ドイツ語でDorfは「村」、Umlandは「周辺」という意味)。2019年9月19日ドルトムントDomicilでのライヴ録音で、アメリカの前衛作曲家/映像作家フィル・ニブロック Phil Niblockの作品を素材とした2枚組90分の大作である。1933年に生まれ、60年代からデューク・エリントン、サン・ラからジョン・ケージ、オノ・ヨーコまで先鋭的な音楽家とコラボレーションするニブロックは、世界的なミニマル/ドローン・ミュージックの大御所として知られる。

Disc 1は、ニブロックが2011年にオーケストラのために作曲した23分のドローン組曲「Baobab」を、なんと倍の46分に拡大したライヴ・パフォーマンスを収録。筆者はヘッドフォンで聴取した。当然我々は録音された音源で聴くわけだから、ライヴ会場と違って長時間ほとんど変化のないドローンが続く間、神経を研ぎ澄まして演奏だけに集中することは難しい。最初の内は視界に入る日常風景や周囲のノイズに気が散っていたが、次第に嵐や地響きのような音のクラスターが頭の中で反響しはじめ、20分を過ぎた辺りから耳たぶが熱くなり、思考回路に雲がかかり、意識が朦朧としてくる。演奏されていないはずのサイレンや汽笛や雷鳴や地鳴りや叫び声の幻聴。その心地よさに身を任せるが不思議と睡魔は感じない。40分を過ぎたころから、今度は終わりが来るのが楽しみになってくる。そして唐突に音が消えると、頭の中にピーッという残響だけが残された。コンサートの場でこの演奏を体験するとまた違った感慨があるだろうが、人体に与える幻覚効果は同じかもしれない。

The Dorf/ Phill Niblock - Baobab (The Dorf & Umland)


20分の休憩のあと、第2部では「Baobab」にインスパイアされて、ヤン・クラーレが作曲した楽曲が3曲演奏された。つまり「Baobab」の「残響=Echoes」という訳である(Disc 2)。M1「Rich」はスタッカート音の断続的なループ演奏。「Baobab」の人力リミックスといった趣向。M2「F-Lan」も同じく断続音のループだが、非連続的なリズムと音程の変化により、エモーショナルなダイナミズムを持っている。ヴォーカルを交えたミニマルオペラは、CANやファウスト、NEU!などクラウトロックに通じる。M3「Split」はさらにスピードと音数を増し、フィリップ・グラス『浜辺のアインシュタイン』のパンク・ヴァージョン、もしくはミニマル版Mass Projection(集団投射)のように感じた。

かねてよりドローン・ミュージックは究極のストイシズムだと感じていたが、ザ・ドーフによるエネルギーあふれる解釈により、究極のハードコアでもあることを実感した。単なるジャンルの越境や融合に留まらず、音楽の本質を露わにするザ・ドーフの思索的諧謔精神が今後世界にどんな幻覚効果を与えるのか、興味は尽きない。(2020年7月4日記)
*初出:JazzToyko 2020年7月4日

動不から
有無ランド経由
鈍ロック

【特報】The Dorf & Umland Festival 2020開催!
10/15 thu. Domicil, Dortmund (Camatta/Amadou/Illvibe live und Torgeir Vassvik & Ludger Schmidt live)
10/16 fri. Zeche Carl, Essen (The Dorf live)
10/17 sat. Steinbruch, Duisburg (WIR HATTEN WAS MIT BJÖRN und The Unwetter und The Umland Session Band live)

The Dorf & Umland Festival 2020 (Official Trailer)

*ストリーミングの有無は確認中です。
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【地下サイケライヴ体験3days】平野剛/チミテル/MAI MAO/bugs cry what/内田静男/分水嶺/水晶の舟

2020年10月09日 01時49分51秒 | 素晴らしき変態音楽


2020年最後の四半期、10月に入ったばかりで地下音楽愛好家には見逃せないイベントが三日連続で開催された。新たなる地下音楽を求めて新イベント『NEO UNDERGROUND』と盤魔殿レーベル『Les Disques Du Daemonium』をスタートした筆者にとっては、命を投げ出しても見届けたい3daysである。実際に三日連続で地下現場に通うと、地下アイドル現場とは異なる種類の心地よい疲れと共にブレインダメージに似たフラッシュバックを経験することとなった。地下音楽エキスの効果が消えないうちにこの3日間の印象を書き留めておくとしよう。

10月5日(月) 下北沢pianola records
平野剛 ピアノソロ公開録音 at pianola records


新型コロナ緊急事態宣言直前の4月1日の下北沢にオープンしたレコード店pianola recordsはマニアックな品揃えの中古レコードと共に、自主レーベルconatalaから知られざる日本の地下音楽をリリースしている。しかしながら平野剛の新作のリリースを考えているとは思わなかった。前日夜にツイートを見て月曜日の朝10時半からの公開レコーディングに駆け付けた。

平野剛


狭い店内に置かれたアップライトピアノから紡ぎ出される繊細な音の雫。壁に飾られたレコードたちも美しいメロディに喜んで、ますますいい音で鳴りそうだ。最初は緊張していた平野は、演奏を重ねるにつれリラックスし、休憩を挟みのべ1時間半に亘るレコーディングを完了した。リリースが楽しみ。


10月6日(火) 荻窪club Doctor
荻窪サイケデリック!


中央線沿線の地下音楽&地下アイドルの拠点の一つ荻窪club Doctorでニューロックシンジケートの川口雅巳企画の即興系イベント。サイケデリックと名付けたのは、ジャズやフリーミュージックには収まらない広範な音楽性を持つミュージシャンによる即興演奏を言い表すのに相応しい。

チミテル(川口雅巳、山澤輝人、千草)


関西ハードコアやアンダーグラウンドシーンと繋がりのある異色のサックス奏者・山澤のやさぐれたブローと、川口の鋭角的な轟音ギター、叩くというより撫でまわすような千草のドラムが醸し出すオルタナフリージャズロックに痺れた。

MAI MAO(テラダキョウスケ、内田静男)


テラダのエレキギターには目と髪の毛がある。それだけで共感たっぷり浴び地獄だが、異能ベーシスト内田とともに膨大なエフェクターを通して生み出される有機的なエレクトロニクスサウンドの嵐は、聴き手の心を曼荼羅模様の桃源郷にいざなった。

bugs cry what(吉本裕美子、狩俣道夫)


吉本が操るダクソフォンは断末魔の叫びにしか聴こえない。対する狩俣のフルートやピアニカを通した声が共調し、断末二重唱を形成する。ウクレレを爪弾きながら狩俣が歌う「エメラルドの伝説」に吉本の悲しげなギターインプロが絡み哀愁の荻窪の夜を涙した。


10月7日(水) 大久保ひかりのうま
"水の声vol.1"サイケデリック邂逅の日


分水嶺、終古のオミット等で活動する宮岡永樹(よんじゅ)の初企画。20代の若さでPSFレコード以来の地下音楽を継承する彼が敬愛するミュージシャンを対バンに選んだという。

内田静男


異能ベーシスト内田静男の本領発揮のベースソロ演奏。セミアコースティックベースがトランク1個分のエフェクターボードを通して、思いもよらぬ周波数の音波で空気を震わせる。氾濫した音の濁流に飲み込まれる気分。ノブを操るソックスの爪先も見どころ。

分水嶺


正規ベーシストが不在の為、サポートドラムとベースが参加。不定形な演奏はマヘルやシェシズを思わせるが、若さ故のタブララサぶりが何より新鮮。宮岡永樹のサイケデリックギターとピアニスト桜井晴紀の儚いヴォーカルに天国が近づく思いがした。

水晶の舟


1999年に紅ぴらこ(g,vo) と影男(g,vo)により 結成された水晶の舟。ライヴを観るのは10年ぶりだろうか。今は亡き高円寺ペンギンハウスで何度も観たので、ひかりのうまがペンギンハウスにワープしたような気分になった。ワンコードで延々と続く呪文めいたサウンドは、幻惑と共に精神の安寧をもたらす。

水晶の舟+宮岡永樹


最後に水晶の舟と宮岡永樹のコラボ。倍近い年齢の強者二人に負けずファズギターを鳴らす姿に次代の地下音楽の希望を見た気がした。

▼10月14日まで視聴可能
「"水の声vol.1"サイケデリック邂逅の日」(10/7 wed. ON AIR)


ピアノーラ
荻窪サイケと
水の声

本日!10月9日(金) 阿佐ヶ谷 天
「水の声vol.2」Avant-free improv.& songs


*予約完売。配信があるかもしれません。
Yonju Miyaoka presents..
Masami Kawaguchi × Makoto Kawashima
Bloom Creation
Rob Noyes
Yonju Miyaoka × Riku Seki × Naoki Yamaguchi
19:00 open
19:30 start
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【地下ジャズDisc Review】『マキガミサンタチ / ガブリとゾロリ』~多面体ロックバンド、ヒカシューから生まれた迷宮トリオの全脳音楽。

2020年10月06日 00時56分53秒 | 素晴らしき変態音楽


Text by 剛田武 Takeshi Goda

CD: Makigami Records MKR0015

MAKIGAMISANTACHI :
MAKIGAMI cornet, theremin, koukin, piano, overtone flute, voice
FREEMAN guitar, sampler, toys
SAKAIDE bass, electronics, toys

1 水枕
2 ガブリ
3 ごんごんと
4 梅雨のトンネル
5 夜の蠅
6 うつくしき眼
7 からたちの雨
8 とかげが光る
9 かぼちやの花
10 棒立ちの銀河
11 牛の全身
12 虹に踏まれて
13 かくなる上は
14 独特であること
15 ザリガニの論法
16 蜜柑のみどり
17 隠そうとして
18 フクロウの引っ越し
19 水晶は歌う
20 羊から錆
21 ゾロリ

Gaburi 1 to 12 from Yokohama Airegin 2016.5.5 recording
Zorori 13 to 21 from Daikanyama UNIT 2016.1.24 recording

Produced by MAKIGAMI KOICHI
Mastered SAKAIDE MASAMI
Illustration : ISONO YOKO
Art Direction & Design : OUCHI TOMONARI
Special thanks : MAKIGAMI AYAKO

巻上公一公式サイト

多面体ロックバンド、ヒカシューから生まれた迷宮トリオの全脳音楽。

昨年デビュー40周年を迎え、新たなディケイドに向けて意気揚々と2020年に突入したヒカシューだが、3月の初のエストニア公演に於いて、新型コロナウィルス感染拡大の為に公演中止の憂き目にあった。結果的には緊急事態宣言発出の前日だったお陰でコンサートは1回だけ開催できたが、翌日封鎖された都市からは人影が消え、帰国予定の航空会社が全フライトをキャンセルしたため、急遽別の航空会社の便を手配して日本へ帰ることが出来たという。誰もいないタリン港で撮影したPVが公開されている。

HIKASHU/Kajad ei peatu ヒカシュー/なりやまず


エストニアでの出来事と、それに続く日本の緊急事態宣言に伴う公演自粛は大きな障壁ではあったが、3か月後の6月11日に吉祥寺Star Pine’s Cafeでの定期公演「マンスリーヒカシュー」を配信のみで再開し、7月以降は有観客&配信で開催、併せて各メンバーの演奏活動も再開している。9月16日~20日には、昨年終了の危機を何とか乗り越えた<Jazz Artせんがわ2020>の開催も決定。まるでコロナ禍の壁に穴を穿ち突き崩そうとするように、ヒカシュー&巻上公一の信念がライヴハウス受難の時代を救おうとしている。

エストニアのスタジオで録音した音源を含む秋発売予定のヒカシューのニュー・アルバムに先立ち、7月にリリースされたのがヒカシュー内トリオ、マキガミサンタチの15年ぶりの新作である。ライヴMCでは「謎のグループ」と呼ばれるこのトリオのメンバーが、巻上公一、三田超人、坂出雅海の三人であることは公然の秘密。童話絵本風イラスト・ジャケットや、遊び心のあるグループ名とアルバム・タイトルの印象から、なごみ系のユルい演奏を想像するが、内容は意外にも真剣勝負の即興演奏(もちろん持ち前のユーモアは感じられるが)である。特に1978年のヒカシュー結成以来のパートナーの巻上と三田は、ステージでの歯に衣着せないトークや漫才めいたやり取りから想像される幼馴染のような関係を考えると、ここで聴けるシリアスな演奏態度は「親しき仲にも礼儀あり」という諺を思い出させる。

前半1~12が2016年5月横浜エアジン、後半13~21が同年12月代官山UNITでのライヴ録音。いずれも1~5分の短い曲想がリレー形式で連続して演奏されており、メンバーが交代でテーマとなるフレーズを提示しているように聴こえる。50年近い歴史のあるジャズ専門ライヴハウスのエアジンではピアノ、コルネット、ギター、ベースをメインとしたアコースティック感覚の演奏。一方2004年オープンのクラブ仕様のライヴスペースUNITでは、テルミンやサンプラー、エレクトロニクスを多用した空間的なアンビエント演奏。会場の特性によって演奏スタイルを変化させるのが”生命ある即興演奏”の証しである。

MAKIGAMISANTACHI/GABURI & ZORORI


ヒカシューという特異なバンドで長年活動を共にする三人が、バンドを離れたひとりのミュージシャンとして素顔で対峙するマキガミサンタチのイマジネーション豊かな音楽は、聴き手の音楽脳(右脳)をやさしくマッサージする。その一方で楽曲タイトルのシュールな言葉遊びが、言語脳(左脳)のシナプスを震わせる。左右の脳のバイブレーションが共鳴して生まれる刺激の波が、聴き手の感情に新たなさざ波を起こす。それこそ彼らが言うオンガクのヨロコビである。(2020年9月4日記)
*初出:JazzTokyo #269

此の三者
ガブリと噛みつき
ゾロリと逃げる

LIVE SCHEDULE
●10月16日(金)
「ガブリとゾロリ」マキガミサンタチCD発売記念ライブ
骨董通りZimagine
19:00開場 19:30開演
予約3500円 当日4000円
ライブ配信 1500円(音声のみ)
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【着座アイドルワンマン公演】ネクロ魔『higan』@東京キネマ倶楽部 2020.9.23(wed)/爆裂女子『爆裂大乱闘-バーストコロシアム-』@渋谷WWW 2020.9.30(wed)

2020年10月05日 01時19分26秒 | ガールズ・アーティストの華麗な世界


ウィズコロナ環境下で未だにライヴイベントに制限が設けられている9月下旬、筆者の推しのグループがちょうど1週間違いでワンマンライヴを敢行した。どちらも入場者数制限付き、マスク着用、モッシュ・ダイブ・声出し禁止、着座でのライヴ鑑賞。コロナ以前はパフォーマー(アイドル)とオーディエンス(ヲタク)の相互作用で作り上げていたライヴ現場が、ステージ上からの一方通行の表現伝達になり共感崩壊(Communication Breakdown)してしまう不安もあったが、蓋を開ければ創造性が会場全体に満ち溢れ、これまでとは一味違うライヴ現場が表出した。方や新たなるパフォーマンス方法に挑戦して異次元の表現力を発揮し、方やこれまでの激しいパフォーマンスに磨きをかけることで、さらに先鋭的な表現体となりることを証明した。この先ライヴ環境がどのように変化していくかは誰にもわからないが、少なくともこの二組の女子アイドルについては、どのような事態になっても心配も不安も必要なく己の道を突き進むという確信を強くした満月の夜であった。

●NECRONOMIDOL


2020年9月23日(水) 鶯谷 東京キネマ倶楽部
NECRONOMIDOL ワンマンライブ「higan」

メンバーの過半数が入れ替わり新体制がスタートして5か月も経たないうちに東京キネマ倶楽部でワンマン公演とは、コロナ禍じゃなくても無謀と思える大胆な挑戦である。ひとり伝統を引き継ぐ現役メンバーも、すべてを新曲として一から覚える新メンバーも、重責とプレッシャーを背負いながらも、苦しい顔を見せもせず、輝く笑顔で楽しんで歌い踊る姿に心が潤おう。前半途中で何の前触れもなく披露された新曲「EX OBLIVIONE」にサプライズ。初の試みのステージドラマは、ストーリーの中にネクロ魔ソングのパフォーマンスを織り込んだミュージカル仕立てのシアターピース。聴きなれた楽曲が、物語のあらすじに挟まれて新しい意味を与えられて生き返る。輪廻転生を実感させるステージだった。




●爆裂女子


2020年9月30日(水) 渋谷WWW
爆裂女子 爆裂大乱闘-バーストコロシアム-

コロナ以前に発表された渋谷WWW公演をコロナ禍の為人数限定に変更し、チケットを再発行した爆裂女子。手間がかかる作業だが、結果として限定チケットはソールドアウト。”暴れまくりのパンクロックアイドル”というキャッチフレーズ通りの激しい現場が特徴なだけに、着座ライヴでどこまで魅力が発揮できるか不安だったが、ステージに登場したメンバーの堂々とした姿を見たとたん、不安な気持ちは吹っ飛んだ。これまで以上の迫力で歌い踊るテンションの高さが、パフォーマンス力の向上に支えられ、アスリートの演技を見るような安心感のある興奮に包まれた。MC明けに前置きなしに披露された新曲「最底辺ロマンス」はラップパートを取り入れた新機軸のナンバー。パフォーマンスを磨き上げることで、ベーシックはそのままで新たな世界へ旅立つことが出来る。爆裂現場の可能性は無限大である。



新機軸
磨き上げたら
新時代




【LIVE】爆裂女子2020.9.30渋谷WWWワンマンライブ「爆裂大乱闘-バーストコロシアム-」 ギシキ
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【JazzTokyo#270更新】UH(内田静男+橋本孝之)/JAZZ ARTせんがわ2020:JAZZ ART TRIO、福島泰樹・短歌絶叫コンサート

2020年10月04日 00時06分49秒 | 素晴らしき変態音楽

音楽情報サイト『JazzTokyo - Jazz and Far Beyond』最新号が更新された。特集は『追悼特集:沖至』『追悼特集:ゲイリー・ピーコック』。剛田武は下記の記事を寄稿した。

●UH(内田静男+橋本孝之)

#1141 UH(内田静男+橋本孝之)

2020年9月6日 (日)  東京・国分寺Live cafe giee

転がり続ける演奏体が作り出す自由の轍。
UHの二人は無意識のうちに自然体で転がる術を身につけたのだろう。そんな”Natural Born Rolling Stone”ぶりが、音と聴き手の心を解放するのである。

UH p2 国分寺giee 2020.9.6 sun



●JAZZ ARTせんがわ2020:JAZZ ART TRIO、福島泰樹・短歌絶叫コンサート

#1143 JAZZ ARTせんがわ2020:JAZZ ART TRIO、福島泰樹・短歌絶叫コンサート

2020年9月16, 18日 東京・調布市せんがわ劇場

奇跡的に開催された世界的にも稀有なこのフェスティバル
好きな音楽の基準は「分かるか分からないか」ではなく「心が動くか動かないか」である。JAZZ ARTせんがわは、縮小開催された今年も最高に心が動く瞬間を与えてくれた。

JAZZ ART 実行委員会 / JAZZ ART TRIO for ART TOKYO


ライヴこそ
いのちのよろこび
生命力

【関連動画】
UH(内田静男+橋本孝之)+剛田武 NEO UNDERGROUND vol.1



沖至追悼 JAZZ ART SENGAWA ITARU OKI MEMORIAL [Digest版]


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【地下ジャズDisc Review】クリス・ピッツィオコス・アルトサクソフォン・ソロ『スピーク・イン・タンズ(異言を語り、解釈の才能に期待する)』

2020年10月03日 02時19分40秒 | 素晴らしき変態音楽


Chris Pitsiokos / Speak In Tongues
CD/DL Relative Pitch Records RPRSS004

Chris Pitsiokos : Alto Saxophone Solo

1. To Charles Parker Jr.
2. To Anthony Braxton
3. To Roscoe Mitchell
4. To Ornette Coleman
5. To Eric Dolphy
6. To John Zorn

All track recorded on a portable recorder in live concert in New Haven on January 27th, 2019.
No edits, overdubs or effects.
Mixed and mastered by Ryan Power.
Executive Producer, Kevin Reilly

Relative Pitch Records Bandcamp

リスペクトを挑戦状に転化するアルトサックス・ソロの新境地
ダウンロードと限定カセットテープでリリースされた『Oblivion/Ecstasy』(2015)、ダウンロードのみの『Valentine’s Day』(2017)に続く、クリス・ピッツィオコスのアルトサックス・ソロアルバム第3弾がニューヨークの前衛ジャズ専門レーベルRelative Pitch RecordsからCDリリースされた。2019年1月27日にコネチカット州ニュー・ヘイヴンのライヴハウスState Houseで開催された、ギタリストのJoe MorrisとトランペッターのStephen Haynesの企画によるMultiplexという即興音楽イベントでのライヴ録音である。”音楽作品と友情の多重的な絆を結ぶ”というイベントの主旨に相応しく、演奏される音をひとつたりとも聴き逃すまいとする観客の熱意が会場を満たしているのを感じる。その空気に感化されたように、ピッツィオコスはアルトサックスからとめどない勢いで生命の音を吹き続ける。6つのパートに分かれた4~8分のソロ演奏が終わるたびに、観客の拍手とため息が熱を帯びていく様は、最初は意味不明だった異国の言葉が、相互理解を深めていくことで、次第に意味を成していく意志伝達プロセスの縮図のように感じられる。

高速タンギングの超絶フレーズ、サーキュレーションブレス奏法による濃厚な音のクラスター、耳を劈く高周波ノイズのフリークトーン、低く木霊するミニマル・ドローン演奏、天上に舞うフラジオ。様々な奏法やテクニックを注ぎ込んで紡ぎあげたソロ演奏は、ピッツィオコスの卓越した創造性から生まれた6つの短編音響小説である。

Chris Pitsiokos at MULTIPLEX1


ピッツィオコスは6つの断章それぞれに、6人のアルトサックス奏者に捧げるタイトルを付けた。聴けばわかるように、フレーズやテクニックや演奏スタイルに類似性があるわけではない。ピッツィオコス本人の言葉を引用すれば「影響力は必ずしも音楽に現れるわけではありません。感情や構造的な影響などと関係する場合もあるでしょう。タイトルは、演奏前や演奏中に意識していたのではなく、演奏後に名付けたので、演奏内容と明確な対応関係はありません。重要なことはリスペクトの気持ちを表すことでした。私にとって深く重要な存在であるアルトサックス奏者の名前が付けられていますが、その全員が常に私の演奏すべてに影響を与えています」。

アーティストにとって、影響を受けた先達との関係は複雑である。自らがアーティストとして音楽言語やスタイルを形作る成長過程で出会い大きな影響を受けた音楽家とは、たとえ直接会ったことがなくても、教師もしくは親子に近い関係になる。生徒にとっての教師、子供にとっての親と同じように、多大なインスピレーションを与えてくれることに感謝し尊敬する一方で、自分が成長するためには乗り越えなければならない「壁」として立ちはだかる存在でもある。ピッツィオコスは語る。「ジョン・ゾーンのことは確かにそう感じます。ジョンはあちこちで私をサポートしてくれて、とても友好的な関係ですが、それほど親密ではありません。今でも彼は僕に深い影響を与えていて、自分の作品のほとんどすべてを通して、常に彼の存在を感じています。愛と尊敬を持つ一方で、子供っぽい恨みや不満を感じることもあります。深いリスペクトと同時に、心のどこかにいつかやっつけてやりたい、という気持ちがあるのです。エディプスコンプレックスの一種でしょうね」。

この発言の通り、ジャケットに記された「Speak in tongues and hope for the gift of interpretation(異言を語り、解釈の才能に期待する)」という一文には、影響を受けた偉大な先達へのリスペクトと共に、必ず彼らを乗り越えてやる、というピッツィオコスの強い決意が込められているのである。(2020年9月5日記)
*文中のクリス・ピッツィオコスの発言は筆者との2020年9月4日付けE-mailから引用しました。
*初出:JazzTokyo No.269


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ディスタンス

▼クリス・ピッツィオコス最新動画
Chris Pitsiokos, Luke Stewart, Tcheser Holmes - at Red Hook Ferry Terminal - Sept 12 2020

Chris Pitsiokos - alto saxophone
Luke Stewart - electric bass
Tcheser Holmes - drums
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