A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

浜崎容子「BLACK OR WHITE」@渋谷Mt.RAINIER HALL 2019.7.4(thu)

2019年07月09日 01時34分40秒 | ガールズ・アーティストの華麗な世界


浜崎容子「BLACK OR WHITE」@渋谷Mt.RAINIER HALL 2019.7.4(thu)
2019/7/4(木)
会場:Mt.RAINIER HALL
会場/開演:18:30/19:00
タイトル:「BLACK OR WHITE」
チケット代金:¥5.500.

トラウマテクノポップバンド「アーバンギャルド」のボーカルにして絶対的アイドル、よこたんこと浜崎容子のソロ・ワンマン・ライヴ。今から8年前の2011年8月に初めてライヴを観て衝撃を受けて以来、熱心に通い詰めたアーバンギャルドの対バンででんぱ組.incと出会い、地下アイドルにハマるきっかけをくれた大恩人であるが、女子アイドル沼の深みに嵌るにつれて、アーバンの現場に赴くことはめっきり減った。最後に観たのは2016年10月青森での夏の魔物だったと思う。タマにYouTubeで動画を観る程度でアーバン熱は醒めていた。しかし1ヶ月ほど前にYouTubeのおススメに出て来た浜崎容子の新ビデオを観て、身体の下の方から熱いモノがこみ上げて来た。一見大人の女性、しかし声はショートケーキで、私生活は引きこもりまで行かなくともかなり非社会的に違いない。そんな影のある女性の歌を聴きたくなって、『BLIND LOVE』『Film noir ultime』2枚同時リリース記念ライヴに出かけることにした。


アーバンギャルドの欝フェス@渋谷club asia 2011.8.10(wed)

Mt.RAINIER HALLは「真夜中のヘヴィロック」で頭脳警察や非常階段、灰野敬二などを観た会場。意外なことに会場を埋めるのは落ち着いた雰囲気の初老〜中年男性と、サブカル女子OBとお見受けする個性的な女性が半々。アーバン現場を埋め尽くす血玉セーラーアーバンギャルやアーバンギャルソンは皆無である。中堅シャンソン歌手のリサイタルの雰囲気であろうか。身体が埋まりそうなフカフカのシートは座ると立ち上がる気がしなくなるが、今日のコンサートは総立ちになることはなく、ゆっくりと歌を堪能するには最適の環境だった。



ブラックまたはホワイトというコンサートタイトル通りに前半は黒のミニのワンピース、後半は白いロングドレスで登場。アーバンギャルドのキーボード奏者おおくぼけいを含む4人組バックバンドは派手さはないが、比較的少ない音数の絶妙なアンサンブルで歌をバックアップする。真ん中に立つ長身の浜崎容子の存在感は圧倒的。前半は時折後ろを向いて水を飲むだけで、とにかく歌に専念している模様。最新アルバム『Blind Love』は角松敏生のプロデュース。サブカルの歌姫とシティポップ/フュージョンの貴公子がどこでどう出会ったのか不思議だが、洗練されたプロデュースにより、浜崎のマニアライクな個性がオブラートに包まれ、万人が楽しめる普遍性を得たことは確か。かといって流行りのシティポップに迎合することなく、心の闇が透かしてみえる奥の深さを内包した文化系ポップワールドが描かれている。ライヴで聴くと闇と光がより接近して表裏一体になるが、あくまで黒か白で、決して交じり合って灰色になることがないゾロアスター的な二元論が展開される。ジキルとハイドではなく、浜崎容子と浜崎容子、同じ二人が一人になろうと睦み合うマジックが無限の色彩を描き出す浜崎容子の魅力である。

浜崎容子「バイブル」


後半の最後から2曲目に披露した「これは涙じゃない」のコケティッシュな言葉の内に秘められた悲しみが、甘いメロディに溶けてレイニア山脈の湧き水となって溢れ出す風景を幻視した。アルバムジャケットの暗闇に目を凝らせば浜崎の瞳が潤んでいることが分かるだろう。それは悲しみの涙ではない。その証拠に年末に東京大阪ONE MAN LIVE TOUR『Before dawn』(夜明け前)開催が発表された。喜びの涙は大歓迎である。涙は飾りじゃないのだから。

浜崎容子 FORGIVE ME


聴いてると
裸になりたく
なる歌声

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【えいたそモダニズム】Episode 27『いのちのかたち』乃木坂46/瀬川瑛子/BiSH/エレカシ/泉まくら/竹内まりや/9mm/クロマニヨンズ/ヒカシュー/でんぱ組

2019年07月08日 02時38分32秒 | ガールズ・アーティストの華麗な世界


でんぱ組.inc 全国ホールツアー UHHA! YAAA!! TOUR!!! 2019
6月26日(水) 東京・オリンパスホール八王子
18:00 Open / 19:00 Start
全席指定 7,560円(税込)



でんぱ組.inc、夢眠ねむ卒業後、6人体制となって初のシングル『いのちのよろこび』リリース日の6月26日(水)、東京・オリンパスホール八王子で「でんぱ組.inc 全国ホールツアー UHHA! YAAA!! TOUR!!! 2019」がスタートした。会場限定シングル『子♡丑♡寅♡卯♡辰♡巳♡』を購入するつもりだったが、ここ暫くグッズが枯れることの少ない地下アイドル現場に慣れ切っていたため勘が鈍り、開場時間の30分前にオリンパスホールに着いたらとっくに売り切れていた。2014年初の武道館公演で6時間並んでグッズを購入した熱意を忘れた訳ではないが、グッズへのこだわりは低下気味である。しかしえいたそ☆成瀬瑛美さんへの帰依の想いは変わらない。今も太陽神として日夜愛を捧げる修行生活を送っている。



2階席なのでレスをもらうのは難しいが、逆に推しメンだけを追うことなくステージ全体を眺められるので、新体制でんぱ組の個性がよく分かる。それは6分の1の距離感と一体感の混沌である。脱退したメンバーはどちらも突出した存在だった。特に夢眠ねむのグループのまとめ役として才能は、誰にも真似は出来ない。それゆえ新体制の6人のステージでのMCや転換は極めてユルい。そのユルさがそれぞれのメンバーの個性を際立たせ、今まで以上に仲良く親密な関係がメンバー間だけでなく、ファンとの間にも築かれている。かつて「W.W.D.」や「W.W.D.2」で歌われた緊張感が緩和され、より自然体に近い関係のグループに生まれ変わったようだ(同じことは新体制のネクロ魔にも当て嵌まる)。



さらに驚くのは音楽性の拡散ぶりである。ジャングル大帝/ライオン・キング路線の壮大なスペースオペラ「いのちのよろこび」をはじめ、超高速電波ソング「子♡丑♡寅♡卯♡辰♡巳♡」、人力アンビエントボカロチューン「形而上学的、魔法」、ウィズ・ストリングス・アカペラ「秋の葉の原っぱで」の新曲4曲に、以前からのロックチューンや電波ソングやピアノロックが混じりあい、カオスとしか呼び様のない振り幅の広さ。世界中のポップ/ロック/アイドル/ボカロその他のジャンルに於いて、作品ごとに音楽性を変えるカメレオンのようなアーティストはいるとしても、ひとつのコンサートでここまで無謀なダイバーシティを持つパフォーマンスを繰り広げるアーティストは殆どいないに違いない。しかもその混沌が、トータルとして見ると見事な宇宙的調和(コスモス)になっている。まるで星座のように、ひとつひとつは何億光年も離れていても、一点(ここ)から見ると「でんぱ組.inc」という形が紛れもなくしっかり描かれている。最新アルバム『ワレワレハデンパクミインクダ』まで宇宙をテーマに活動を行ってきたでんぱ組.incが辿り着いた先は原始時代のパラレルワールドだったが、宇宙旅行の軌跡は「いのち」という星座を描き出したのである。

でんぱ組.inc「いのちのよろこび」MV



でんぱ組.inc ニューシングル「いのちのよろこび」リリース記念イベント
2019年06月29日(土) タワーレコード渋谷店 B1F CUTUP STUDIO
12:30 ミニライヴ 
個別サイン会:
1部 13:00〜(予定) :成瀬瑛美、藤咲彩音、根本凪
2部 14:00〜(予定) :古川未鈴、相沢梨紗、鹿目凛



八王子のライヴから3日後の6月29日(土)でんぱ組.incのリリースイベントが渋谷タワーレコードで開催された。急遽決まったようで、前夜にえいたそのツイートで初めて知り、翌日の朝8時に家を出て渋谷へ向かった。雨まじりの日だったが、待機列はB1だったので濡れ鼠にならずにすんだ。整理番号が良くてかなり近くでミニライヴを楽しみ、その後サイン会に参加。えいたそと接触するのは4月の神神イべント以来3ヶ月ぶり。オレの顔を見るなりお題を言おうとした瑛美を遮り「お題はいのちで行くから」と告げる。7月にえいたそがワンマンライヴを開催する秋葉原クラブグッドマンが地下音楽のメッカであることを話すと「またいいハコの情報を教えてね」とおねだりされた。望むところよ、また瑛美に会いに行くしかあるまい。その日に備えて様々な『いのちのかたち』を検証しておくことにしよう。



【えいたそモダニズム】Episode 27『いのちのかたち』
●瀬川瑛子『命くれない』


1967年にデビューした女性演歌歌手。1986年には夫婦の情愛を描いた「命くれない」が1987年度オリコンシングルチャート年間1位を記録し、ミリオンセールスを記録して大ヒット。自身の代名詞的な曲となる。

「いのち」がタイトルの曲を検索すると「女のいのち」「花のいのち」「いのちの限り」など演歌の曲が多数ヒットする。古風な大人の恋愛はいのちを賭ける覚悟が必要なのであろう。その中で、えいたそと同じ「瑛」を名前に持つベテラン瀬川瑛子のヒット曲を選んだ。実は、この頃の瀬川瑛子は、歌詞にある「一途に添い遂げる女」とは裏腹に、私生活で結婚生活が破綻して夫とは別居状態に陥っていた。この時に「この歌を歌う資格があるのか?」などと自問自答し、「初めて歌を歌って苦しい、と感じた」と述べている。心と歌のすれ違い、やはり大人の世界は難しいね、瑛美さん。

瀬川瑛子 命くれない 演歌百撰



●乃木坂46 『命は美しい』


デビュー作『ぐるぐるカーテン』がオリコンウイークリーチャート2位。セカンドシングル『おいでシャンプー』から前作『何度目の青空か?』まで9作連続でオリコンウイークリーチャート1位を記録。1月7日にリリースとなった記念すべきファーストアルバムも大ヒットし、同チャート1位を獲得している。そんな今一番勢いのあるアイドルグループの乃木坂46のアルバム後初となるリリースは、通算11枚目のシングルになります。2015/3/18リリース。

大人に比べて少女たちにとってのいのちは、青春を最大限に楽しむ喜びの象徴。思春期に命を燃やすことが出来れば、大人になってもいのちが美しいままでいられるのだろうか。その答えは瑛美の心の中にだけ存在する。

乃木坂46 『命は美しい』Short Ver.



●BiSH『Life is beautiful』


“楽器を持たないパンクバンド”、BiSH初となる両A面シングル! 2018/6/27リリース。

乃木坂に比べてかなり素行が悪そうなパンクアイドルにとってもいのちは美しいものらしい。同僚のBiSとは比べ物にならない人気を博すBiSHであるが、オレとしてはBiS解散でソロ転向を噂されているペリ・ウブの同行の方が興味を惹かれる。

BiSH / Life is beautiful[OFFICIAL VIDEO]



●泉まくら『いのち feat. ラブリーサマーちゃん』


〝生きる言葉を 生きる音楽を 絶やさないよ〟泉まくら 1年ぶりの新曲はラブリーサマーちゃんを招いた〝いのち〟 2人のコラボはラブリーサマーちゃん『202 feat. 泉まくら』以来2度目の共作となる。2018/11/7リリース。

アイドルのように見えて地下アイドルとは異なる存在のふたり。SSWラップ女子にとってのいのちとは言葉を生む為の原動力なのである。いのちで歌う言葉にいのちが宿る。いのちの食物連鎖と呼んでみたい。

泉まくら 『いのち feat. ラブリーサマーちゃん』 (Official Music Video)



●竹内まりや『いのちの歌』


「いのちの歌」・・・NHKドキュメンタリードラマ「開拓者たち」主題歌。「輝く女性(ひと)よ!」・・・コーセー「グランデーヌ ルクサージュ」CMソング。ジャケットのイラストを手掛けたのは原田泰治氏。2012/1/25リリース。

近年海外からブームに火がついた「シティポップ」の代表アーティストとして注目を集める竹内まりや。しかしオレにとってはシティポップと呼ばれる以前に四畳半の下宿や町の風呂屋から登場したフォークソングの方が興味深い。なんとか海外で「日本のフォークブーム」を巻き起こしたいと考えている。いい案のある方いたらご連絡ください⇒twitter : @mirokristel

いのちの歌



●9mm Parabellum Bullet『生命のワルツ』


2004年にデビューした4人組ロックバンド9mm Parabellum Bullet(キューミリ・パラベラム・バレット)の6thシングル。ギタリストの滝がマネージャーに「高速道路を疾走している感じ」というお題を出してもらい、作曲された楽曲。作詞において菅原は「これまでにはなかったことだが、メンバーに向けて書いた」と語っている。2014/12/10リリース。

『えいたそモダニズム』はえいたそにお題を出してもらい、えいたそに向けて書いているから『生命のワルツ』は実質『えいたそモダニズム』である。7/16の秋葉原クラブグッドマンでの【マキシマムえいたそ10周年大大大記念祭! 〜この地でバビュするトキメキ伝説〜秋葉原でワンマンLIVE編!☆】では、この曲をえいたそに歌ってもらいたい(野心)。

9mm Parabellum Bullet - 生命のワルツ



●エレファントカシマシ『生命賛歌』


「生命賛歌」は、エレファントカシマシの31枚目のシングル。制作の経緯としては、ヴォーカルの宮本浩次が埼玉古墳群を訪れた際に、その風格やスケールに圧倒され、感動したために作られた楽曲であると言われている。2003/6/27リリース。(ジャケットは2009年のベスト盤)

いのちを讃える歌はでんぱ組の前にも多くのアーティストが歌っている。その中でエレカシの激情に満ちたいのち讃歌は生々しいパワーで眼前に迫ってくる。男が求めるいのちとはパワーと表裏一体なのかもしれない。

生命賛歌 /エレファントカシマシ



●ザ・クロマニヨンズ『生きる』


ザ・クロマニヨンズ、通算17枚目シングル。日本テレビ系テレビドラマ『3年A組-今から皆さんは、人質です-』主題歌。 2018/8/29リリース。

クロマニヨンズに限らず、ヒロト&マーシーの曲はいのちの輝きを放つ歌ばかり。パンクとはいのちの限りロックすることである。♪今生きる 生きてやる 呼吸を止めてなるものか(エイトビート)♪。生きる限り瑛美とロッケンローし続けるのが夢。

ザ・クロマニヨンズ「生きる」



●ヒカシュー『生きること』


結成30年を迎えて、いよいよ活動も本格的になってきたヒカ シュー。 「転々」(2006)「入念」(2007)に続いて、新作「生きること」をリリース。 前作「転々」と同じくニューヨークでの録音である。 ゲストにイクエモリのエレクトロニクスと、オキュン・リーのチェロが 加わり、大変奥行きのある世界を展開している。彼らの言うパタフィジック(形而超学) な歌の真髄が詰まっている。 *ジャケットは逆柱いみり氏の描き下ろし!2008/4/25リリース。

50代のヒロト&マーシーよりも年上の60代のベテラン変態ロッカーが歌ういのちは捻くれた怪奇現象になってしまう。いのちの限り生きることは、山あり谷あり嵐ありの多難な道かもしれないが、その中にある喜びに気付けば、こんな至福は他にない。巻上公一はそのことをえいたそに伝える為に歌ったという仮説を立ててみすと、オレの喜びは少しだけ増加する思いがする。

ヒカシュー「生きること」HIKASHU/Ikirukoto 04 NOV.2010


いのちとは
108つのかたちが
あるものさ

●でんぱ組.inc『太陽系観察中生命体』


2019/1/1リリースのでんぱ組.inc5枚目のオリジナル・アルバム『ワレワレハデンパグミインクダ』に収録。アルバムから4曲目のPVが作られた。ヒャダインこと前山田健一作詞、H ZETT M作曲。

宇宙生命体に姿を変えたでんぱ組メンバーが地球上の生命体を観察したナンバー。自らの姿を外から眺めることでヘンテコな地球生命体の自分たちの素晴らしさを再発見するというストーリーは「いのちのよろこび」への布石だった。でんぱ組の物語は、アーシュラ・K・ル=グウィン『ゲド戦記』や栗本薫『グイン・サーガ』に負けない英雄伝説になっていくのだろう。見届けるまでいのちを捨てられないね、瑛美さん。

でんぱ組.inc「太陽系観察中生命体」MV
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【JazzTokyo#255更新】『Juma / Selected Works』『Naoki Kasugai(春日井直樹) / Scum Treatment Vol.2』 

2019年07月07日 01時59分50秒 | 素晴らしき変態音楽


音楽情報サイト『JazzTokyo - Jazz and Far Beyond』最新号が更新された。カヴァー特集はメールス・フェスティヴァル 2019。他にエリック・アレキサンダーなど。剛田武はレビュー2本を寄稿。

●Juma / Selected Works

#1617 『Juma / Selected Works』

ミニマルミュージックを蹂躙する日本地下音楽の秘宝。
ここに記録された作品は、溢れ出る才能の結晶であり、例え極少数だとしても形にして世に送りだしたDD.Recordsの功績を含め、日本の地下音楽の秘宝として高く評価されるべきである。
K.YOSHIMATSU(DD.RECORDS) MUSIC Archive

Aqua Cosmos BY JUMA( D.D.RECORDS DT16―1981)


●Naoki Kasugai(春日井直樹) / Scum Treatment Vol.2

#1616 『Naoki Kasugai(春日井直樹) / Scum Treatment Vol.2』

地下音楽のスカム(ごくつぶし)の自我流暴走サウンドコスモス。
秀逸なポップセンスを持つサイケデリック・ロッカーでもある春日井の歌心が多分に盛り込まれた本作は、ノイズ/実験音楽/アヴァンギャルド/電子雑音の範疇に収まらない多面的な自意識(自慰式)解放の極みである。
Daytrip Records公式サイト
Discogs : Naoki Kasugai

Naoki Kasugai / 「 film:music」「SCUM TREATMENT VOL.2」(ダイジェスト)


桃源郷
足踏み外して
落下せん

Various Artists - Disk Musik [DD. Records - 1985 - Japan]
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【今を生きる地下音楽の至福】Naoki Kasugai(春日井直樹):『film:music』『SCUM TREATMENT Vol.2』『Walk』

2019年07月06日 02時24分03秒 | 素晴らしき変態音楽



地下音楽のごくつぶし(スカム)が雌伏して私腹を肥やした至福の年月を紙幅が尽きるまで書き連ねたい

2018年4月にリリースされた名古屋在住のミュージシャン春日井直樹のアルバム『DADA 1981』は、彼が1981年、高校生の時に録音した音源だった。14ヶ月後の2019年6月末、春日井の最新録音アルバムが2作同時リリースされた。それをレビューしようとパソコンに向かっていると、1981年から2019年の間の38年のタイムスパンが脳神経を痙攣させ、キーボードを叩く指の縺れが誘発される気がする。

些か(というか全くの)脱線するが、読者に馴染み深いと思われるジャズ・ミュージシャンに譬えれば、筆者が38年の歳月に逡巡する理由が少し理解していただけるかもしれない。オーネット・コールマンのデビュー作『Something Else!!!! 』は58年、38年後の1996年は『Sound Museum: Hidden Man』と『Sound Museum: Three Women』の2作をリリース。マイルス・デイヴィスのソロ・デビュー作『The New Sounds』がリリースされたのは1951年、その38年後の1989年にリリースされたのは『Amandla』と『Aura』の2作であり、その3年後の92年に 最終作『Doo-Bop』を残してマイルスは他界してしまう。サン・ラのデビュー・アルバム『Jazz by Sun Ra』が1956年、38年後の1994年を迎えることなく、93年5月にサン・ラは没してしまう。ジョン・コルトレーン『Coltrane』(57)、エリック・ドルフィー『Outword Bound』(60)、アルバート・アイラー『Something Different!!!!! 』(60)に至ってはデビュー作から38年後には天国に召されていた。

一体何が言いたいのか、とうとう頭が狂ったのかと当惑される読者もいると思うが、最初の作品から40年近くの間、制作意欲を失わずに音楽を作り続けることは、並大抵のことではない。死や病に蝕まれる危険もあれば、意欲や気持ちが失せてしまう可能性もある。マイルスやオーネットのような世界的評価を確立したミュージシャンなら兎も角、地下音楽の沼の最深部にひっそりと暮らす山椒魚のような異端音楽家の場合、40年間表現・創作活動を続けるためのモチベーションは一体なんなのだろうか。「世界への怒り」か「死への恐れ」であろうか?もしくは「承認欲求」や「破戒勧告」かもしれない。頭の中で沸騰するモチベーションの気泡がパチンと弾ける度に、破裂音が大脳皮質の皺で変調され、異常な周波数を伴う音波となって、シナプスを通じて、記憶の底の古傷がずきずきと痛み始める。

●Naoki Kasugai (春日井直樹)/ 「 film:music」

DAYTRIP RECORDS DTR-LP009
限定200枚アナログLP盤  定価税込2800円

架空の80年代映画音楽サウンドトラックアルバム。80年代のカセットテープ及び4トラックカセットMTRを使用して当時のサウンドを再現。NAOKI KASUGAIの架空の中で作られた存在しないインダストリアル映画の音楽集。全8曲。特典として2曲入りカセット付。(レーベルコメントより。以下同)

DD.Records時代の制作方法を採用し80年代インダストリアル音響を再現した作品。TG、CABS、DOME、DAFといった名前が頭に浮かぶが、筆者の脳裏に最も鮮明に浮かび上がったのは、大竹伸朗らによる音響ユニット19/JUKEの4thアルバム『SOUNDTRACK』だった。欧米のインダストリアルやジャパノイズよりも個人的に大きな影響を受けた19/JUKEを想起させる作品を耳にすることは滅多にない。春日井が意識したかどうかは分からないが、本能的に接近してしまう獣の習性に、同じ穴の狢の絆を感じてしまう。


●Naoki Kasugai (春日井直樹)/ 「 SCUM BTREATMENT vol.2」

DAYTRIP RECORDS DTR-LP010
限定200枚アナログLP盤  定価税込2800円

ジャケット及びインナーの全てがハンドメイドで作られ1枚1枚違うコラージュ・アートがほどこされております。全てが1点モノで同じジャケットは1枚もありません。NAOKI KASUGAIのスカム・ワールドがあなたの目と耳をレイプする。

破戒(破壊ではない)的な逸脱音響が奔流になって地下音楽の定めを蹂躙する潔さに魂が浄化される。具体音や電子雑音、断末魔の叫びや爆発音がコラージュされたカオスの中に、春日井のポップセンスが溢れ出すサイケデリック絵巻である。1枚1枚全て異なるハンドメイド・コラージュ・アートのジャケットを含め一期一会のレア感たっぷりの芸術作品。「スカム=灰汁・ゴミ・汚物・人間の屑・ごくつぶし」と称しているが、地下音楽愛好家にとってはスカム・ミュージックの神の福音に他ならない。雌伏する私腹の至福を祝福するしかない。

Naoki Kasugai / 「 film:music」「SCUM TREATMENT VOL.2」(ダイジェスト)

JazzTokyo Disc Review:#1616 『Naoki Kasugai(春日井直樹) / Scum Treatment Vol.2』

もう<元DD.Recordsの〜>とだけ呼ぶのは辞めにしよう。春日井直樹は今を生きる地下音楽の最高のごくつぶし(褒め言葉です)なのだから。

★購入・問い合せはDAYTRIP RECORDS公式サイトまで

スカム神
先立つ至福
恨みっこなし

●Naoki Kasugai (春日井直樹)– WALK series 2018 / mp3 data


2018年4月〜2019年6月の14ヶ月間に10枚ものアルバムをアナログ・オンリーでリリースした春日井の制作意欲は正直言って正気の沙汰ではない。その半分が過去の作品の再発とは言え、全てリマスターし、曲順を変えてのエディット作業は、新たにレコーディングするよりも労力と知力を必要とするに違いない。それらに加えて2018年11月7日〜12月7日の31日間毎日『Walk』としてカセットテープ作品をリリースし続けた。60分の散歩のフィールドレコーディングにドローン・アンビエント・ノイズ加工をした各限定1本の激レア作品だが、31曲31時間の作品を纏めたmp3discで販売されている。春日井言うところの『肉体のビート「足音」+「環境音」とアンビエント・ノイズの融合』は、真剣に対峙して聴くと気が狂うが、作業用BGMとして流し聴きしたら仕事の効率が上がりそうだ(ただし仕事の質は保証しない)。

naoki kasugai(春日井直樹): walk2018/11/14


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dip/Boris/中山晃子@渋谷WWW 2019.6.24 mon

2019年07月03日 01時13分34秒 | 素晴らしき変態音楽


dip / Boris / Boris with ヤマジカズヒデ / 中山晃子(Alive Painting)

OPEN/START18:30 / 19:30
ADV./DOOR¥4,000 / ¥4,500(税込 / ドリンク代別)
LINE UPdip / Boris / Boris with ヤマジカズヒデ / 中山晃子(Alive Painting)



1987年から活動していたDIP THE FLAGを前身として1991年にヤマジカズヒデを中心に結成されたdip。1992年より活動開始し、海外でも高い評価を得るBoris。どちらも「サイケデリックロック」をキーワードに異なるベクトルで30年近く活動を続けてきた。日本のロックの裏番長と呼んでもよかろう。会場の渋谷WWWは元映画館シネマライズ。その特性を活かした中山晃子のAlive Paintingがステージの背景全体を時に生き物のようにのたうつ色彩、時にモノクロームの砂嵐、時にダダスティックな幾何学模様で埋め尽くし、異端ロックの魔物が発する圧倒的な音の響宴は、夢の中の怪奇と幻想の世界にメタモルフォーゼした。

●dip


Vo&Gヤマジカズヒデはこれまで何度か灰野敬二との共演で観たことがあるが、dipのバンドとしてのライヴを観たのは2012年のDipトリビュートライヴ以来。ドラマーのナカニシノリユキは、90年代初頭筆者のバンドFlower Tripの主催ライヴ「アートロック宣言」で何度か対バンしたバンドMagic Mushroom Syndromeのドラマーで高円寺20000Vの店員だった。その縁で当時から一方的な共感を持つdipのヴェルヴェット・アンダーグラウンドやシド・バレット、NYパンクに影響されたギターロックは90年代の洋楽志向のリスナーをも魅了した。7年前はオルタナノイズロックをやっていたが、この日の演奏はクラウトロックやポストロックに通じる反復ビートの上にヤマジの歌心あるギターとヴォーカルが乗るスタイル。浮遊するメロディーは唯一無二の酩酊感を与えてくれた。

dip - HASTY (MV)

dipトリビュート・アルバム・リリース・パーティ@渋谷クラブクアトロ 2012.8.31 (fri)

●Boris


Borisを観るのも5年ぶり。ヘヴィロック/ストーナーロック/ドゥーム/ハードアンビエントなど様々なジャンルを含有するBorisのスタイルは21世紀の5分の1が過ぎ、サイバーパンクに描かれたヴァーチャルリアリティが現実のものになりつつある今こそメインストリームとなる可能性を秘めているように感じる。聴覚を圧する爆音で百八つの煩悩を吹き飛ばし、ギターのWataの天使の溜め息ヴォイスで浄化し、火花を飛ばす銅鑼の連打で昇天する。5年前と変わらない爆音ライヴのカタストロフを天井の高い開放的なホールで味わえる幸せを噛み締めた。細腕からは想像もつかない暴力的なファズギターを顔色一つ変えず弾きこなすWataの佇まいは、地下音楽の女性アーティスト、浅川マキや森田童子、PHEWや工藤礼子の伝統を引き継ぐクールビューティの極みである。

Boris "どうしてもあなたをゆるせない” from 『tears e.p』

Boris@東高円寺U.F.O.CLUB/BiS@代々木公園野外ステージ 2014.1.11(sat)

●Boris with ヤマジカズヒデ


スペシャルコラボとしてBorisとヤマジが合体。Wataが歌うCanis Lupas「天使」のカヴァーは清純なアシッドフォーク、BYG「花・太陽・雨」は壮大なプログレ組曲。爆音のキメを執拗に反復するWataとTakeshiに挟まれて俯いてギターをストロークするヤマジの孤独な影がショーケンの魂を召喚するかのように思えた。

ヤマジカズヒデ - 天使 (original by Canis Lupus)


誰が言う
ロックは死んだと
嘘ばかり


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