90年代初頭自分のバンドFLOWER TRIPでサイケデリック・ロックを標榜していた頃、モダーンミュージック/PSFのコンピCD『Tokyo Flashback Vol.2』を聴いた。<東京Psychedelicシーンをリードする11アーティストを収めた、強力オムニバス>と題されたCDは言わずとしれた灰野敬二の不失者や工藤冬里のマヘル・シャラル・ハシュ・バズ、サイケデリック・スピード・フリーク=ハイライズをはじめ、初期のゆらゆら帝国まで曲者バンドばかりで、フリーフォームなアングラ臭は自分たちが対バンするのは畏れ多い気がした。その中で特に気に入ったのがOVERHANG PARTYというバンドだった。ブックレットの紹介ページが、他のバンドに比べ整然としていたことも一因だが、ハリのあるヴォーカルと上昇していく演奏が、ロックぽくてかっこよく聴こえた。しかし当時は自分のバンドに忙しくとて彼らのライヴを観に行くことはなかった。
OVERHANG PARTYのライヴを初めて観たのは、2000年代初頭にバンドを辞め仕事も落ち着き灰野敬二を始めとする東京地下音楽のライヴに通うようになってからである。会場は吉祥寺Sliver Elephant。当時も今もプログレッシヴ・ロックの聖地と言われるライヴハウスである。しかもほとんどが対バンなしのワンマンライヴ。思えば他の会場で彼らを観た覚えがない。筆者がたまたまシルエレにしか行かなかったのかもしれないが、OVERHANG PARTYはきちんとリハーサルしてたっぷり長時間ライヴを魅せるバンドという印象がある。当時のメンバーは福岡林嗣(vo.g)、山ノ内亮(g)、山崎巌(ds)、Sachiko(b)の4人。開演前のBGMは篠田昌已のコンポステラで「へえ、ロックだけじゃないんだ」と思った記憶がある。轟音ギターのアドリブもあるが、彼らの特徴はしっかりしたメロディと歌詞が聴き取れる凛としたヴォーカルだった。社会的なテーマを歌うことも多いが、説教臭さはなく、なぜかドストエフスキーやトルストイといったロシアの小説家を思い出した。
当時は光束夜や割礼、ザ・スターズ、マーブル・シープなどサイケデリック系のバンドが活動していたが、OVERHANG PARTYの反コマーシャリズムのポップ感覚は、筆者にとってひときわ魅力的だった。しかし、徐々に活動は散発的になり2007年に解散した。
ネット情報で福岡が諸橋茂樹(ds)と魔術の庭を結成したことを知ったがしばらく観る機会はなかった。2012年に新大久保EarthdomでUP-TIGHT、Los Droncosとの対バンで初めて観ることが出来た。OVERHANG時代からのヴォーカルは変わらないがサウンドがよりラウドになり、ハードドライヴな疾走感が増していた。それは2013年に山崎怠雅がギターで参加してから更に加速した。現在のメンバーは福岡林嗣(vo.g)、ルイス稲毛(b)、諸橋茂樹(ds)。
●OVERHANG PARTY『Live 1994.8.22 At Showboat』
Pataphysique Records – 003-300 (1995)
福岡(vo.g)、西野公二(b)山崎(ds)、のトリオ時代の高円寺SshowBaotでのライヴ・アルバム。いずれも彼らの代表曲。スタジオ録音の入念なサウンドも素晴らしいが、ライヴならでは臨場感のある録音で迫ってくる本作は、色気のあるアートワークと共に筆者の一番のお気に入り。
OVERHANG PARTY 1995 August 4 Show Boat Tokyo
●魔術の庭『Sylvania 7027 Live』
8mm Records – 8mm 049 (30 Nov 2011)
イタリアのレーベルからリリースされたライヴLP。メンバーは福岡(vo.g)、影山ヒロユキ(b)、諸橋(ds)。こちらも高円寺ShowBoatでのライヴ録音である。フィードバックを多用したギターロックはOVERHANGのエッセンスを別の時空へ解き放つようなエネルギーに溢れている。
魔術の庭 Majutsu no Niwa " SYLVANIA 7027 LIVE " light show with dbqp full ver movie
福岡は1994年Pataphysique Recordsを設立し、OVERHANG PARTYの作品に加え、白石民夫のソロ、工藤冬里のNOISE『天皇』の再発、コサカイフミオの宇宙エンジン、光束夜の金子寿徳と福岡のソロ、群、Dowserのアルバムをリリース。レーベルは2002年に活動を一旦停止するが、2015年に再始動した。
パタフィジック
メタフィジックの
裏返し
【緊急告知】
8月1日(水)19:00~ DOMMUNE
Pataphysique Records、Musik Atlach特集生中継!
出演:SACHIKO(Musik Atlach)、剛田武(地下音楽への招待、地下ブロガー)
2018/08/01 (水)
■19:00~23:30 zoo tapes presents
「Plateaux of NOISE23 / 現代ノイズ進化論23」
NEdS監修Pts.16 初期ノイズ・インダストリアル・ミュージック・アヴァンギャルド、セレクト。
1982年German New Wave特集Pts.2
TALK : 佐々木秀典(zoo tapes)、臼田文明(NEdS RECORDS)、
鶴田恵一、SACHIKO(Musik Atlach)、
剛田武(地下音楽への招待、地下ブロガー)
声の出演:宇川直宏(DOMMUNE)
~THE WIRTSCHAFTSWUNDER、DER MODERNE MAN、TOMMI STUMPFF、
SILVIA、FRIEDER BUTZMANN、SPRUNG AUS DEN WOLKEN、MALARIA!、
MOEBIUS - PLANK - NEUMEIER ZERO SET
■zoo tapes presents「Plateaux of NOISE23 / 現代ノイズ進化論23」
大好評の「現代ノイズ進化論」!今回は4時間半スペシャルとして、生放送をお届けしますので、お見逃し無く。 本題の進化論コーナーでは、前・第22回/5月30日の続編、1982年ドイツから選曲!初期ノイズ・インダストリアル・ニューウェーブ・アヴァンギャルド群を掘り出し、歴史時間軸に沿って解析する未曽有の永久保存版ノイズ番組です。これまで既に計15回=30時間以上かけて1982年German New Wave Pts.2に突入!今回、愈々ノイズ黄金時代が浮かび上がってきます。そう、世界中が1980年に潮流を生み出したサウンド達に刺激を受け、あらゆるジャンルが枠を超え逸脱し、表現が細分化され、隙間が埋まって行く….このプログラムを観て、そんな時代の趨勢が感じ取れるはず!UK・WAVEは凄まじい勢いを見せ、負けじと西ドイツ・WAVEの破壊力はポップテクノも巻き込んで、超個性的かつ普遍の祖として、世界市場に浮上してきます。今回も、 時間の 許す限りお聞かせ・紹介いたしますが、まだまだ未分化であったノイズ/AVANTの原液のような世界が当時其処には存在してたのです。今回も以前に増して真に見逃すべからず!二度と体験出来ないお宝音源群をお届けします。 番組前半はPSFレーベルのさらに奥の院、Pataphysique Records、Musik Atlach特集、SACHIKO(Musik Atlach)登壇!&現代ノイズコーナーはNEdS RECORDS2018年新譜特集!
(Text by NEdS RECORDS & DOMMUNE)
観覧予約 http://www.dommune.com/reserve/2018/0801/
LIVE SCHEDULE
●August 2018 3 days @ogikubo club DOCTOR
6bodies60minutes6months VOL.4
2018.8.14(TUE)
バラナンブ (藤井政英・南部輝久・山崎怠雅)
Green Flames (成田宗弘・田畑満・乾純)
2018.8.15(WED)
魔術の庭 (福岡林嗣・ルイス稲毛・諸橋茂樹)
ASTRO
2018.8.16(THU)
内田静男ソロ, 今井和雄ソロ
各日開場19:00 開演19:30 料金¥2000+D 3日間通し券¥3000
August 14, 2018
BANARAMP / Green Flames
August 15, 2018
Majutsu no Niwa / ASTRO
August 16, 2018
Shizuo Uchida / Kazuo Imai
企画:club Doctor / Pataphysique Records / Taiga Yamazaki / neconeco records
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