A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

フローリアン・ヴァルター/直江実樹/橋本孝之/川島誠@東北沢OTOOTO 2018.12.2(sun)

2018年12月05日 02時15分38秒 | 素晴らしき変態音楽


Florian Walter : Sax. Cl. Other
直江 実樹 (Miki Naoe : Radio)
橋本 孝之 (Takayuki Hashimoto : Sax. Harmonica)
川島 誠 (Makoto Kawashima : Sax.)

O 19:00 S 19:30
¥2,000 w/ 1 free drink

ドイツのエッセンをベースに活動するサックス奏者フローリアン・ヴァルター日本ツアーの初日。OTOOTO/音音は東北沢の住宅街にある小さな会場。即興音楽専門に主に土日ライヴを開催している。最近このようなDIYのベニューが少しずつ増えているようで、筆者の最寄駅・武蔵境にも810Outfit cafeという即興専門のカフェがオープンしたらしい。そのうち行ってみたいと思う。

今回ヴァルターは彼女と一緒に来日。彼女はドイツのラジオ局で番組を持っており、日本の地下音楽の取材を兼ねての来日とのことで、リハ中に駅中のカフェで1時間ほどインタビューを受けた。拙著『地下音楽への招待』で取り上げた70年代末〜80年代から現代の地下アイドルまで説明したが、日本語でも難しい主観たっぷりな思いが英語で何処まで伝わったか分からない。面白かったのはドイツでは同じ地下音楽でも即興音楽と作曲されたジャズと現代音楽との間に大きな隔たりがあり、ミュージシャンもオーディエンスも殆ど被らないということ。インプロもノイズも電子音楽もパンクもごった煮のイベントが普通にある日本は特殊かもしれない。そんなカオスな日本を見たいなら、滞在中に地下アイドル現場に行くべきだと力説したら目を輝かしていた。プログレッシヴアイドルxoxo(Kiss&Hug) EXTREMEを推薦しておいた。



話し終わって会場に戻ると10人以上のお客さんで椅子席ほぼ満員。知り合いも何人かいて初めてのOTOOTOだがホームの気分がした。

●フローリアン・ヴァルター+直江実樹


短波ラジオ奏者の直江を観るのは久々。今まではノイズ系のライヴで観ることが多かったので、アコースティック楽器のサックスとの共演だとどのように演奏しているのかよく分かって興味深い。リハの時ヴァルターたちも「テルミンみたい」「いつ頃のラジオ?」「カセットテープも使うの?」と興味津々だった。ラジオの高周波のピー音がサックスのフリークトーンと融合して兄弟のように聴こえる。丁度ラジオの時報が鳴ったときは思わず時計を確認する人もいて、正に今この瞬間だけの演奏が繰り広げられていることを実感した。ヴァルターは踊るようなステップを踏んでリズミカルなタンギングと循環呼吸のミニマルフレーズをリピートする。ラジオを抱えて取り憑かれたようにヘドバンする直江との不定形なデュオダンスは、即興音楽が踊れないダンスミュージックであることを詳らかにした。ヴァルターの酷い寝癖とトレードマークのニット帽を外した直江の天然パーマが無意識にシンクロしていたのが可笑しかった。

●フローリアン・ヴァルター+橋本孝之+川島誠


前回の来日ツアーでサプライズ的に実現した日独アルトサックス・トリオの再現。魂の重みに軋み床にしゃがみ込む川島の陰影と、反対に天井ヘ向けて薇状の奇跡を描く橋本の浮遊、両者に挟まれて飄々と歌うヴァルターのテクニカルプレイ。本領発揮は細かい運指で断続的に空間を切るパーカッシヴなリズム感であった。三者が一斉にブロウする瞬間には、会場のレベルオーヴァーの箱鳴りが大脳皮質と脳幹の隙間に歪みを生んだ。快感には他ならないが、溺れることなく観察できるのは、白い壁の覚醒効果に違いない。大きさ的に吉祥寺GATTYに似ているが、すべて真っ暗だったGATTYに比べOTOOTOの解放感の秘密に隔世の念を禁じ得ない。

●フローリアン・ヴァルター+橋本孝之+川島誠+直江実樹


川島がリードヴォーカルのように堂々とした泣きのソロを奏で、橋本はハーモニカ、ヴァルターはアルト、直江は短波ラジオを粛々と演奏。これまでのキレキレの即興とは異なり、伝統を踏まえた上でアンチモードのアンサンブルへの恩返しをしているようだ。4人それぞれの立ち位置や空気感のポルーションの色分けがハッキリしているので、このカルテットでレコーディングしたら面白いと思う。

ツアー日程はこちら⇒フローリアン・ヴァルター 来日ツアー 2018

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