A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

NOTヒップホップ~菊地成孔DCPRG「SECOND REPORT FROM IRON MOUNTAIN USA」

2012年03月30日 00時50分59秒 | 素晴らしき変態音楽


以前インパルス・レコードからのデビューにあたるライヴ盤を紹介した菊地成孔氏率いるDATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN改めDCPRGの5年ぶりのスタジオ・アルバムがリリースされた。まずは何よりジャケットが優れものだ。気鋭のイラストレイターDragon76のライヴペイティング(動画参照)による90年代SF漫画風のイラスト、カヴァーカードの裏はジャズの名門インパルスの昔のアナログ盤の裏面のデザインそのままに"THE NEW WAVE OF JAZZ IS ON IMPILSE!"というキャッチフレーズ。「アメリカの鉄の山からの第2の報告書」という意味のタイトルにスロッビング・グリッスルのデビュー・アルバム「The Second Annual Report Of Throbbing Gristle」を思い出すのは私だけだろうが、菊地氏らしい深読みしたくなる晦渋なネーミングである。
[4/1追記:読者の方からの指摘でこのタイトルがレナード・C・リュインの著作「アイアンマウンテン報告書」に由来することを知った。不勉強を反省したい。]

音を聴く前にいくつかの雑誌やサイトのレビューを読んだら殆どが「DCPRGがヒップホップ・アルバムを作った」という紹介になっていて大変身したような印象を持ってしまったが、実際に聴いてみるとヒップホップに聴こえるのはラッパーが参加した部分だけで演奏自体は今までの近未来ジャズを進化させたサウンドなので安心した。ヒップホップといってもこのポリリズムとも違ったアブストラクトな変則ビートじゃ踊れないじゃん。いやもしかしたら最近のヒップホップは高度にリズムが複雑化してこんなサウンドなのかもしれないぞ。個人的に殆ど無知のジャンルだからヘタなことは書けない(w

DCPRGのメンバーは菊地成孔 (cond, CDJ, key)、坪口昌恭、丈青 (key)、大村孝佳 (g)、アリガス (b)、千住宗臣、田中教順 (ds)、大儀見元 (per)、津上研太、高井汐人 (sax)、類家心平 (tp)の11人。ツイン・ドラム+パーカッションというリズムに重点を置いた編成である。前述したようにアルバムにはゲスト・ラッパーとしてSIMI LAB (シミラボ)、JAZZ DOMMUNISTERS(MC YOSIO*O & MC菊地)& 兎眠りおん(ボーカロイド)が参加。MC菊地とは他ならぬ菊地成孔氏本人で、アルバム1曲目で作品の前口上をラップしている。たぶん多くのレビューアーはこの1曲目だけ聴いてこのアルバムがヒップホップ作品だと思い込んでしまったのだろう。この曲もそうだがラップの裏に流れるサウンドはヒップホップとはとても呼べない複雑怪奇なものである。クラブ・ミュージックでもなくフリージャズでもない彼らのサウンドは、やはり良く言われるようにエレクトリック・マイルスの進化形なのであろう。マイルスを聴いたことがないので何とも言えないが(w。その変態的なリズムの上を駆け回るリード楽器の演奏が凄い。特に3曲目「殺陣 / TA-TE CONTACT & SOLO DANCERS」、ラスト・ナンバー「デュラン」(マイルスのカヴァー)で聴ける大村氏のギターの暴れっぷりはその辺のヘビメタ・ギタリストよりずっと刺激的である。

アルバム全体を聴くとラップの導入は単に楽器のひとつとしての要素であり、菊地氏が描きたかった風景は3/11以降のこんがらがった世界を音楽的に再構築することだったのではないかと思う。4月にレコ発ライヴがあるのでステージでこの音世界がどのように再現されるのか観てきたい。



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菊地氏が自己のサイトで某音楽雑誌に対して絶縁状を叩きつけたのは興味深い。私も稀に辛辣な記事を書くことがあるが、氏の文章力・洞察力には全く持って脱帽(有料 笑:菊地氏のdiary参考のこと)である。
コメント (4)
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