浅草の人混みに疲れたら、浅草寺を裏に抜けて言問通りを北へ。
何にもなさそうな、向こう側に渡ることをお勧めしたい。
柳並木があったりして、ちょっと雰囲気。 豆かんの「梅むら」なんぞもこっちの方にある。
地図を漫然と眺めていて、屋号でびびっと来た「酒や・ぬる燗」。
燗好きの私としてはこれ素通りするわけにはまいりません。
私よりだいぶ若い店主が一人。
この豆腐汁の椀がお通し代わりらしい。 飲み助には汁ものが有難い。
なかなかいい滑り出しだね。
すっきりした東京風で、店主は一家言ありそうだが、お勧めの酒聞いても返って来なかった気がする。
帰ってネットを見ると「愛想がない…」と書いてたが、その通り愛想はない。
だが、この年になると無愛想の愛想というのがあるのも判る。
客の自由に放っておいてくれるが、決して無視してるのではなく、常連だけ厚遇する訳ではない。
数多くの酒と、酒を呼ぶ酒肴を揃えていて、注文にはきちんと応えてくれる。
ボケボケになってしまったが、カツオの刺身のつけ醤油。
旨い。これは日本酒でないといけない。
秋田の銘酒「まんさくの花」を燗で所望すると、ピタリのつけ具合で出てきた。
そして、お、ほやの造りがあるぢゃないか…。
こいつばかりは、関西の人間は扱い方を知らないと見え、まともに食えたためしが無い。
これもまた、酒のために生まれてきたような気がする。まずメシには合わんだろう。
最初喰った時は鉄棒舐めてるのか…と思ったが、だんだん好きになった。
藤ジュン、イイ男である。 ぼんぼん育ちだから妙に屈折していないところがいい。
彼がバークリーに留学中、ものわかりのいい親は留守宅でどんちゃん騒ぎの宴会催し、
何度もお邪魔した。 そんな親たちも年々傷んでくる。 介護なんぞの話も飛び出す。
順番とはいうものの、現実はなかなか厳しいものだ。
浅草まで行ってるのに、飲み慣れた能勢の銘酒「秋鹿」。
これも燗に申し分ない。
いい店だが、ニイチャンちょいと気取りが激しいなぁ~。
若い頃ならカチンと来てたが、今は微笑ましく、にやにやしてしまった。
まだ肩の辺りに力が入ってる感じがして、それを感じさせるようではまだまだ。
そこの力が抜けりゃ、一段上の素晴らしい居酒屋になるだろう。
締めはたのんだのか、自動的に出てきたのか。
しじみ汁、豆腐入り。 双方とも肝臓には有難い。
気持ちよく店を出た頃には、とっぷりと暮れて、もはや午前さま。
こういう小ざっぱりした玄関まわりの店が、なかなか関西にはない。
浅草寺、深夜。
いい夜だった。
でも、浅草に泊まらなけりゃ、こんな景色見られなかったよ。
もっとも酔って、安宿のベンチに、座ったまんま朝方まで寝てしまった。
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