マーベラスS

King Of Western-Swing!!
歌と食と酒、それに声のページ。

正しき居酒屋のたたずまひ

2010-04-17 01:25:41 | Weblog




わが師、滝澤一は・・・などと書くと、お前なんか弟子に持った覚えはない、と言下に叱られるだろうが、出来そこないでも門下なのでこの際、師匠である。何を教わったかというと、伊丹万作という映画作家と酒の飲み方ぐらいなのだが。師は、映画評論に健筆奮いながら、「読み捨て、書き捨て」を旨とした。グレアム・グリーンに詳しく、満映のことを調べながらも、今から書くだけの体力ないわ、とうそぶいて、文字になったものへの執着はなかった。ドタバタ喜劇をやってる頃に、一度だけ新聞で褒めていただいた。

今日もまた、師に連れて行ってもらった酒場へ。




かつては松竹海老という銘柄だったが、今は梅乃宿(奈良)の酒を使っている。
いいぢゃないの、梅乃宿。酒の変化はほとんど感じない。
昔の方がもう気持ち甘かったかもしれぬ。




日頃は酒の2,3本もやって、小鉢の2つも突けば退散するのだが、
この日は気のおけぬ同級生、男ばかりが数名。無粋な長っ尻に及んだ。



まず、居酒屋三大つまみの一つに挙げたい、ぬた。
酢味噌と甘口の酒があう。
ギュッと噛むとネギの芯がひゅるり飛び出してくる辺りも、味のうち。



これも三大メニューに挙げたい、こちらのベストセラーの一つ、きずし。
東西のハーフ(言い方だね、ったく)である私には、きずしという言い方が馴染めず、
ずっと締めさばで来てしまった。店の壁に「さばきずし」なんて書いてあると、「手こね・ずし」みたいに
「さばき・ずし」に感じ、不思議な気がした。



ああ、これも忘れ難い、焼売。 ちょっと一芳亭風だが、もう少しぽってりとしている。
ヘタすりゃ三個を三口で終わってしまうので、自然、下に敷いたキャベツを辛子醤油で食うことになる。
これがつまみになる。貧乏くさいと笑わば笑え。

こういう酒亭でつまみを次々に頼むヤツはバカである。
酒を飲みに来たのであって、腹が減ってるならおまんまを食いねぇという訳だ。
だが、この夜は複数いたのでついついやってしまった。ここからは、バカのお披露目のようで、
耳ヘンに心やわぁ(鳳啓介)の心境。



よこわ造り  酒肴の黒板で一番高価なものだ。といっても700円ぐらいかな。
東京ぢゃあり得ない値段。



かますご  お祖母ちゃんが練炭で炙って、食わされた覚えがある懐かしき一品。
カマスの子ではなく、いかなご、新子。このサイズになると、ふるせ、になるのかな。



カキフライがあった頃だな、行ったのは。
大体、どのくらい遅れているかがバレる。
10個は食いたいが、いい年さらして、それはぐっと我慢。



小いわし ちゃんと炙ってある。こいつを噛み締める感じがいい。
わたの苦み相まって、人生のほろにがさを酒で洗い流す感じがまたよき哉。


   熱燗に酔うていよいよ小心な   高野素十


亡師は短歌俳句に親しみ、読み捨て書き捨てと言いながらも、晩年、周りの強い勧めで毎日新聞の連載「映画歳時記」をまとめ、上梓。俳句をリードに、映画作品を鮮やかな語り口で描いた。自作の句を一編も載せないあたり、さすが奥床しい。





コロッケ こういうのは、ここで頼むのは憚られてずっとスルーしてきた。
ソースがかかり、ポテサラも付いてきて、泣かせる。




千枚漬け  ちょっとこうした京都っぽいものがあるのも愉し。

BGMなどなし。酒客の話し声のみ。
ときどき思い出したように、ちんちん電車が走る音が聞こえる。

変貌を遂げる阿倍野で、ここだけが奇跡のように残っていてほしいが、
どうやらそういう訳にもいかないところまで来ているようだ。
この上質なアトモスフィアを失うことは、大阪の損失である。飲み助はそう断言する。




              明治屋   大阪市阿倍野区阿倍野筋2



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