マーベラスS

King Of Western-Swing!!
歌と食と酒、それに声のページ。

60年変わらぬ梅田駅前シリーズ

2016-03-04 02:43:12 | 大阪 梅田





茫日、新梅田食道街でビール銘柄当てコンテストがあるからと誘われ、エントリーした。

キリン・アサヒ・サッポロ・サントリー4社のビールを当てるというもの。

まずキリンとアサヒのドライは簡単だろうと思ったが、なんのなんの、とたんに判らなくなった。

結局、後者2社銘柄は当たり面目を保ったが、判ったのはほとんど僅かな差しかないということだ。

 

さて、新梅田食道街の100軒のうち、最古参の一軒がここ「とり平総本店」。

当代のお祖父さんが始めたという店ははや、60年オーバー。

最初から珍しかった合鴨を出す、ちょっと高級路線を歩んだ。

昨今のように塩ではなく、タレ一本やり。

 



 

鶏より脂っこいのであるが、さらっとしていてイヤな脂ではないのが合鴨の持ち味。

日本酒で迎え撃つもいいが、店主の中村元信さん、ワインに通じているので

ここではワインを飲むことがままある。

タレと赤の相性もバツグン。

おっと、弟が並びで「中村屋」というワインバーをやっている。

そこでも合鴨の秀逸な酒肴が出される。 

 



 

どこもかしこも賑わいを見せているが、ここは食道街の端っこにあるため、

あんまり顔が差さないのがよろし。 

次々に客にせかされることなく、割合ここでは気持ちがのんびりする。

 

 


口直しの大根おろし。

私はしつこくお代わりしてしまう。

 

 

備長炭の猛烈な火力の前で、格闘する主人 中村さん。

ここのは炭と鶏との距離が短い。ほとんど接着しそうな勢いで何度も返す。

いつまでもこの場所があってくれることを祈りつつ、有難くいただく。

本心では阪急もJRもこの一角も新しくしたいだろうが、そうはいかない。

人の集まるところ、キレイばかりでは息が詰まる。

体臭のするような手触りのある場があるのも、ひとつの街にとっては大事なことだと思う。

 

新梅田食道街 とり平総本店







 


南地の粋を伝えるごはん処

2016-03-04 00:39:20 | 大阪ミナミ

玄関先の植木鉢に下町っぽさを感じさせるが、

ここは大阪南地・道頓堀の西。






暖簾に染め抜かれた創業明治三十五年の文字

本当に久々に訪れてみた。20年は来ていなかった。





大黒橋の近くにあったことから、この屋号。

道頓堀の劇場近く、芝居関係者も多く、古くは食満南北、

辰巳柳太郎、池波正太郎…しかし色紙の一枚も飾るでもなし

古い絵ハガキが額になっているだけ。






おひるのかやくご飯に小鉢二品、味噌汁、漬物で千円のセットが

お得である。この日はきんぴらごぼうに茄子のたいたん。

こういうのが出てきては、いけません。






燗酒など所望するわけです。

一人なのですから遠慮することはありません。

遅い昼どきですが、二組ほどの客がいます。

ほどなく、かやくご飯が出てきます。





蓋をとると、ふわ~っとイイ香りが立ち昇ります。

なんでもないかやくご飯だけど、そこにはさりげないコツが

散りばめられている気がします。

具はどれも小さく刻まれ、ゴボウで香り・こんにゃくで食感・

油揚げで脂っ気を補い、細かいもみ海苔がまた香りを加えます。


一粒ずつが分かるちょっと固めの炊き方がいいんです。

そいつをふわっと空気を含むように大き目の飯椀に盛ってある。

ベタベタせず、箸離れがいいんです。

う~ん…と、唸らされました。







味噌汁がまた、ここならでは。

玉子入りなんてのは、おつなもんですね。

白味噌の中に半熟卵の入った白玉、赤玉(赤だし玉子入り)、

この季節は粕汁もある。

南地の遊び人あたりが、精つけるために卵落としてくれ、と

なったのでは、と勝手に想像。






なんでもないこんな香の物でも、ちょっとひねってある。

そんな心意気が嬉しいというものではないですか。

織田作の『夫婦善哉』に出てくる千日前の「だるまや」は

実際には「だるま」というかやくご飯の店だったが、

バブルの頃に廃業。僕の記憶ではこちらの方の味が上。

向こうはもう少しベタッとしてた気がします。


サラッと食べ終えますが、アッサリとした中に滋味深いものあり、

胸がいっぱいになります。

無残に変貌を遂げる南地ですが、ここに良心が残っていたような

大阪、まだまだ捨てがたい、ええとこあるやん…そんな気さえします。







「大黒」のかやくご飯、昨今、お忘れではないですか。