マーベラスS

King Of Western-Swing!!
歌と食と酒、それに声のページ。

二人で一人前のお好み焼き

2009-03-27 05:01:56 | 

梅田お初天神裏  言い訳のように、ぽんぽんと柏手を打ち呑みに行く



北サンボア、瓢亭の夕霧そば、酒肆門、北龍、八栄亭の焼き鳥…
小さな店がギュッと固まって肩寄せ合う風情が好きだった一角。



この日も静かに暖簾が揺れていた



70代の主人夫婦、長年、お初天神に手を合わせてから店を開けた。

野菜と魚介の炒め物を「ふきよせ」なんて、ちょっと粋な名前だ。



昭和26年の開店。 大阪のお好み焼きの老舗、最期の日



運よく鉄板の前に座らせてもらった。暑い。これじゃ夏場は辛かろう。
血糖値が下がるので、砂糖水を飲んで立ったという。過酷だ。



ビールで餃子。お好み焼き屋なのに名物は焼き餃子。
餃子も食べたことがないのに、初代である主人の母堂が、
中国人に習って店で出した。もろみで食べさせるのも面白い。



お好み焼き、焼きそばは小ぶり。
かつてあった新地の「以登家」といい、元は腹を膨らませるものではなかったのだろう。

花街で差向いで一杯やりながら焼いたり、焼かれたりする大人の玩具的なスナックだった。だから生野辺りの玄関の三和土をいじって鉄板を
置いたお好み焼き屋などとは、そもそも成り立ちがちがう。



ぶた



いか  そう、昔は豚玉などと言わず、豚は豚、いかはいかだった。




焼きそば  細かく刻んだキャベツが目に留まる。

こうすると火の通りも早いし、キャベツと豚肉・・・つまりは
餃子の餡も同じ原材料で流用できたのではないかとみる。

どう見てもご主人、器用そうに見えない。
最後の日も刻んだキャベツを鉄板の脇にぶわっとこぼしてた。
このベテランにして、愛すべき不器用さではないか。
名コンビぶりはどこか往年の島田洋介・今喜多代を思わせた。




戦後の貧しさ、経済復興、高度成長、万博景気、オイルショック、
バブル経済、破綻・・・様々な時代の揺れを見てきた店。
冷酒をたのんだ。最後の一本なんで売り切ったら終わりという。
その長い歴史に瞑目し乾杯す。



福助、最期の日。

外に出たら行列が。もう、この週末には解体作業に入ると聞いた。
鉄板は北新地のどこかのママがもらい受けたという。何処かの店の厨房にでも納まるのだろうか。鉄板は生き続ける。




小さな女将は、長身の亭主を見上げ、「二人三脚というけど、
私らは二人でやっと一人前なんですよ」と嗤った。

忙しい毎日から解放されて、安堵のあまり、
老け込まないようにして下さいね。大きなお世話か・・・。



           お好み焼き「福助」   北区曽根崎2 お初天神裏


コメント (3)
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