マーベラスS

King Of Western-Swing!!
歌と食と酒、それに声のページ。

あげもんも一流になりゃ

2009-01-29 22:15:43 | 

江戸掘のビル街に立派な門構え。ここが関西天ぷらの本山と
知らない人も多いとみえる。



元は御霊神社界隈にあった天ぷらの「天寅」。
キタもミナミもまだ繁華ではない時代、船場の旦那衆は神社の一角にあった文楽を楽しみ、界隈で一杯飲みして帰ったという。
御霊神社に始まり、神戸、芦屋、北新地を経て、江戸掘と移った。



まず一室に通され、昆布が入った白湯が出てくる。



生湯葉 蟹脚肉のあん仕立て 三つ葉 山葵 



正月の名残の八寸
柚子釜は鮭酒粕漬 海老黄身羹 黒豆松葉 鯛の子煮 厚焼卵



寒平目うす造り  酢橘 紅葉おろし ぽん酢

頃合いを見計らって天ぷら場の方へと移動。
Uの字になったカウンター内には職人が立ち、油が沸かしてある。

明治生まれの実業家たちは、先に別室で商談をし、
「さぁ仕事の話はここまで。部屋を変えて天ぷらを食べよう」と
いうのを好んだという。



さて天ぷらの部。基本セット。銀製の器、左からレモン・塩・大根おろし
手前の呑水の中は天だし



油は紅花油100% 
一組ごとに油を取り換えるのが一宝の流儀。 



車えび  
天ぷらはやはり海老がなければ始まらない。
そのまま食べたが、なるほど海老の甘さがひき立つ。
皿には天寅の刻印入り。戦前から使い続けているのだろうか。

きす
即座に食し、撮り忘れる。



舞茸 たらの芽  

塩で食べるたらの芽の、淡い苦味が春だな・・・



貝柱  

これも塩でいただくと、持ち味がはっきりと分かる。



たまらず酒を所望。 関西の天ぷらの先駆者であるここの先代、
関辨次郎翁は、屋台で庶民の味であった天ぷらを一代で政財界、
皇室が来店する店にまで押し上げた人物。
とにかく頑固で怖かったそうだが、並のスケールではない。

鱈白子 大葉 海苔 
天ぷらはとにかく大火傷しても、即座に食べるが掟。
それが季節ものの白子と来たら、尚のこと。
なんなら職人に口に放りこんでもらいたい・・・よって、撮り忘れ。



饅頭  特注している一口大の饅頭もここの個性的天種。



中にはこし餡  
甘みをちょっとコースの間に挟む面白さがある。



レタスはただちぎったものに、ラッキョウを合わせたもの。
ドレッシングでは油と油になるので、あっさりと。
しかし・・・なんたるシンプルさ。



ぐるりを囲む8人ほどの食べるテンポのちがう客を、同じタイミングで終わらせねばならない。しかも対面の商売である、会話ができ、もちろん油には細心の注意を払い、揚げ切るタイミングを逃す訳にはいかない。
この商売、寿司職人よりも難しいかもしれない。



窓の外の樹には鵯。静かである。町中でのどかなこと。

さつま芋も写真なし。
時間をかけて焼いた焼き芋と聞き、間髪入れず食べてしまった。



海老しそ巻き  
こちらではほとんど変わり天ぷらの類はやらない。
王道天種が続く。




関西天ぷらは軽く、衣も薄く、しかも油も植物油。
素材の味を生かし、塩で食べさせ、しかも酒に合う。そこが関西天ぷらの真骨頂。おのずと江戸天ぷらとはちがう。
だが塩一辺倒ではない。天だしにはお金がかかっている。

そもそもは江戸で魚も鮮度が悪く油ももたれた、そのために大根おろしはそのまま食べたものらしい。それが天つゆに入るようになった。
たくさん入れて、酒のアテにもなる。




生麩  
東京に出て外食を覚えたボクとしては、江戸の天ぷらの方が圧倒的に好みだったが、ここへ来てちょっと認識を改めつつある。
胡麻油で高温でカリッと揚げて、濃い丼つゆにジュッと浸けた天丼はむちゃくちゃ旨いが、あれが酒に合うかというと、どうもそうでもない。浅草、八丁堀、茅場町、渋谷、新宿、本郷、あちこちで天ぷら屋も行ったが、今やほとんどは軽い関西風を取り入れた店が多かった。時代の流れなのであろう。天寅は時代の先を行っていたともいえる。



穴子。カレー粉などで食わせる店もあるが、そういうこともしない。
う~ん、あくまでも直球一本、横綱相撲なのだ。

シメは天丼も魅力的だったが、若女将のご意見を聞き、ここは天茶に
することにした。そもそも東京には天茶など存在しない。ごま油で揚げた茶色い衣の厚い天ぷらでは油が浮いて仕方ないだろう。



芝海老の小さいかき揚げ 海苔 山葵  煎茶 

たまらない・・・



グジャグジャとつぶして、サラサラと掻っこむ。

これは小粋で洒落た、お大尽の食い物だなぁ。
遊んだ人の食い物だと思った。ガキには分かるめぇ。



香のもの



柚子シャーベット



シメのかき揚げを揚げ、食事を出したら、職人はさっと下がる。
立つ鳥跡を濁さずというが、汚れも匂いもなく、見事にこの場で揚げものをしていた気配を消して退く。そこがまた見事である。


天寅転じて、一宝。
この名は阪急創始者の小林一三の一と、宝塚の宝から名付けられたという。天寅時代から数えて約150年。押しも押されもしない関西随一の天ぷら。

旦那衆はいつしか姿を消し、世の中サラリーマン社長ばかりになり、今また料亭接待など難しい時代になっているが、関西の食文化を伝える一軒としていつまでも健在ぶりを発揮していただきたい。

銀座交詢社ビルや心斎橋そごう、阪急インターナショナル、上海などに支店があるが、旦那気分を味わいたいならぜひ一度本店へ。
帰りに天かすなどを貰って帰り、「これが目に入らぬか、一宝の天カスや、頭が高い!」などとほざき、畳そこらじゅうに撒き散らかしてみたい。




        天ぷら一宝    大阪市西区江戸掘1



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アメリカ村の真ん中で

2009-01-29 03:20:42 | 


シュワシュワシュワ・・・・



世に多いワインバーという業種。ワインは好きだが何処となく気取りがキツくて、なんだかなぁという感じ。大体男同志で行くとへんな感じ。
ずいぶんとくだけたバルなどは出来てきたが、ここはきちんとしたワインの知識がありながら、とてもくだけたいいバー。
やっと来れたので祝いの泡。冷えたモエ・ド・シャンドン。



食事を済ませて来たので、ほんとに軽く。
食後酒的に使えるのもいいところ。



白はカリフォルニア・ナパのベリンジャー04年 
コクがある辛口、グラスのせいもあるだろうが、香りがすばらしく
広がる。


お腹に貯まらないものをとお願いすると、ピクルスが。



シャトー・ラグルゼット
フランス南西部、カオールのワイン。
渋味もしっかりしたタイプ。
カルチェの会長が第二の人生を送るために買ったワイナリーなんだと。



トリッパの煮込み。食事もちゃんとできるのがいい。



呑み頃のワインがごろごろ。たとえ知らなくたって、主人樋口さんに
「こんな感じ、あんな感じ」と言えば、要求を満たすだけの
ワインが登場する。



ブルゴーニュ、オート・コート・ド・ニュイ06
味は覚えていましぇん・・・。
コートドニュイというと、バブルの頃に暗躍した大阪の料亭女将
尾上縫(オノエ・ニュイ)を思い出すのは私だけでしょうか。
一人で4000億円とか動かしたとんでもない婆さんだった。




あとで友人に言われて、はっと思ったのだけど、
店内やたらと明るい。ワインバーってライトを落とし間接照明って
いう感じなのに、ここは煌々と明かりが。
ワインの色もラベルも見えていいんだけど、隣り合う人の顔もはっきり
見えすぎるきらいがある。関西ソムリエ界の重鎮樋口さんではあるが、
重く構えず、地口、つまりはダジャレがマシンガンのように飛び出す。



コーヒーリキュール。お隣の方が呑んでいたので相方がたのむ。
エスプレッソも出すので、ウォッカベースにコーヒー。苦味に甘さが負けてしまわぬよう、砂糖も使ってある。珈琲豆が一粒浮かせてある。



こんな街(アメリカ村)にあって、ワイン好きな大人の客が集まる店。
それでいて、おつにすましてないのがよろし。
見た目重視なもんで、東京にはこんな店なかなかないな。
ダジャレにいちいちカチンとくる人は向かないかも・・・。
食事にもアフターにも、呑めない人は日焼けでも。


     ワイン・ダイニング そむりえ亭  大阪市中央区西心斎橋2


コメント (1)
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