
4月8日は仏教をお開きになられた釈迦牟尼世尊(お釈迦さま)がお生まれになられた日で、多くの人々が「花まつり」という行事に触れてお釈迦さまの生誕をお祝いする。勝福寺のように、8日の当日に花まつりを行うところもあれば、その前後、或いは月遅れの5月に行うところもあろう。

今回は、高野山真言宗『檀信徒必携』より花まつりの部分を引き、紹介させていただきたいと思う。
4月8日は、お釈迦さまの御誕生日であります。お釈迦さまは、今から2500年前、花咲匂うルンビニーの里でお生まれになりました。
昔から4月8日をお花まつりといって、色とりどりの春の花で飾った花御堂を作り、誕生仏をお祀りして甘茶を灌いでお祝いをいたします。小さな国ながら釈迦族を統治するカピラ城の皇太子としてお生まれになったのでありますが、お生まれになるとすぐ七歩お歩きになり、右手は天を指し、左手は地を指して「天上天下唯我独尊」とお叫びになったと伝えられています。
このお言葉は、今もって多くの人たちに誤って使われ、また誤った解釈をされています。「この世の中で自分ほどえらい者はいないんだ。我こそ天下国家を統治する指導者である。」と独り善がりの言葉として使用されていますが、これは全く誤りであります。
天上天下ということは自分の上、自分の下、すなわち全宇宙ということであります。全宇宙のいのちと恵みを一身に受けて、一人の人間として生まれて来た素晴らしさ、尊さをお叫びになったのであります。これはお釈迦さまだけのことではなく、私たち一人ひとりの人間は、人間として唯一無二の心と身体を持って生れ出たことの喜びの声であったのであります。あわれにも獣として生まれたものは、その身体を整えることも、心を律し、言葉を正しくすることも知らないで一生を終えるのであります。
生まれながらにして私たちは一人ひとり、尊い身体、言葉、心を持って生まれて来ているのでありますから、生まれながらにして一人の仏として生まれて来ているとの自覚が仏教の基本であります。仏教では仏と人の区別差別をしない、これが仏教であり、その心は東洋の心として総べての東洋思想の根本となっているのであります。

さらに、お釈迦さまが7歩、歩かれたということは、生まれながらにして、地獄、餓鬼、畜生、修羅、人、天の心の迷いというべき六道輪廻の世界を、ただ、ぐるぐると迷い歩くだけではなく、これを既に一歩踏み出されて、真実の人の人たる道を歩こうとされる心とお姿を表しています。
29歳で、お城を出られたお釈迦さまは六年間、山に籠って人の道、仏の道を求められ35歳の12月8日、遂に仏さまとなられました。4月8日のお花まつりは釈尊の御誕生をお祝いするとともに、人間生命の讃歌を謳う聖日というべきでありましょう。


今年の花まつりには、約500本ものスイートピーをお供え頂いたこともあり、優雅な雰囲気の中で、大勢の方々も心地よくお参りされたことだろう。