自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★「ワクチン3回、3連休」観光で金沢はにぎわうが・・

2022年03月20日 | ⇒ドキュメント回廊

   新型コロナウイルスの感染対策として石川県内全域に適用さている「まん延防止等重点措置」はあす21日までで、ようやく「マンボウ」が解除される。ただ、感染者が減っているのかというとそうでもない。きのう19日の県内の新規感染者325人で、1週間の新規感染者は2430人と高止まりしている(19日付・石川県公式ホームページ)。今回3回目となったマンボウも長かった。1月27日から実に54日間だ。1回目は去年5月16日から29日間、2回目は8月2日から60日間だった。言葉は不謹慎かもしれないがすっかり「マンボウ慣れ」になった。

   そのマンボウが最近は少し脳裏から遠ざかった感じが個人的にはする。それは、新聞・TVメディアやネットにはウクライナ侵攻に関する情報があふれているからだろう。しかも、ウクライナとロシアをめぐ情勢は刻一刻と変わっている。そのせいか、コロナ感染情報は少なくなり、日常生活でもほとんど話題に上らなくなった。

   3連休の初日のきのう夕方5時半ごろ、金沢の繁華街・片町を車で通った。すると、おでん屋の前はどこも長蛇の列だった。金沢21世紀美術館=写真・上=や、「忍者寺」で知られる妙立寺=写真・下=などの観光名所もにぎわっていた。大学生の春休みも重なったせいかこのところ急に観光客が増えたという感じだ。うがった見方だが、16日に震度6強の地震あった東北では新幹線が一部区間で運休となっていて、東北観光から北陸観光にシフトがあったのかもしれない。マンボウが全国的に解除され、金沢の春の観光シーズンも到来する。自身もワクチンは3回打ち、3連休なのであすはどこかドライブにでも、と。 

   しかし、やはり気になるのは、人々が動き、密集すれば再びコロナ感染も再拡大するということだ。感染力が強いオミクロン株が世界的に流行して1月にピークとなったものの、再び増加の傾向にあるとメディア各社が伝えている。

   さらに、「デルタクロン」と呼ばれる新たな株による感染がアメリカ、フランス、デンマークなど欧米で確認されている。「デルタ株」と「オミクロン株」の両方の特徴を併せ持つ(3月16日付・朝日新聞Web版)。これが、日本にやってくると再び「コロナ恐怖心」が高ぶる。

   それにしても3連休だと言うのに近所の子どもたちの遊び声が聞こえない。石川県では感染者のほぼ4人に1人が10歳未満の子どもたちというから、おそらく学校などでは、外で遊ばないように子どもたちに呼びかけているのだろう。そして、きのうから金沢市では5歳から11歳へのワクチンの集団接種が始まった。3週間空けて2回接種する。今月25日から小中学校では春休みが始まる。しばらくは「じっと我慢の子」だ。

⇒20日(日)夜・金沢の天気    くもり時々はれ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

☆「森のたまご」が投げかけるアニマルウェルフェア問題

2022年03月18日 | ⇒ニュース走査

   ゴッホら著名な画家は自然の花を描いたが、アメリカのポップアートの旗手といわれたアンディ・ウォーホル(1928-87年)はメディアの世界に咲く花を描くのが得意だった。マリリン・モンローやエルヴィス・プレスリー、ジョン・F・ケネディー…。しかし、彼のシルクスクリーンで描かれたのは華やかな花だけではなく、メディアで騒がれた事故や暴動、事件など徒(あだ)花も多かった。そして、ウォーホルは有名な言葉を残した。「In the future everyone will be world-famous for 15 minutes.(将来、人は誰でも生涯の中で15分間は有名になれる時代がくる)」

   そのウォーホルの作品が競売にかけられると地元紙の北國新聞(17日付)が報じている。記事を読んでさっそくオークションを開催する会社の公式ホームページをチェックした。会社は「シンワ・ワイズ・ホールディングス」。競売は今月30日午後2時からと午後6時からの2回、羽田空港第1ターミナル内6Fギャラクシーホールで開催される。ウォーホルの作品は後半の部でオークションにかけられる。

   出品紹介のページには、ハリウッド女優のエリザベス・テイラーのポートレイト「Silver Liz」(1963年制作)が掲載されていた。その想定落札価格はなんと23億円から34億5千万円と記載されている=写真・上=。作品を所有しているのは、このブログ(3月12日付)で取り上げたイセ食品の前会長、伊勢彦信氏92歳だ。世界の「エッグ・キング」と称される実業家で、世界的な名画や彫刻、陶磁器の収集家としても世界的に知られる。オークション会社の会長でもある。

   そのイセ食品とグループ会社は今月11日、債権者から東京地裁へ会社更生法を申し立てられ、同地裁から保全管理命令を受けた。「帝国データバンク」Web版(11日付)によると、M&Aなどで業務内容を拡大するなか金融機関からの借り入れが増加。新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて卵価が下落、資金繰りが悪化していた。負債はイセ食品とグループ会社の2社の合計で453億円(うち金融債務は260億円)とみられる。

   伊勢氏は去年6月までイセ食品の会長に就いていたので、債務の連帯保証をしていたであろうことは想像がつく。そうであればコレクションを売却処分して返済に当てるだろう。今月30日に東京でウォーホル作品の落札価格が決まれば、ニュースは世界を駆け巡るに違いない。各国のテレビニュースは「15分間」、伊勢氏の話題を特集にするかもしれない。

   以下憶測だが、15分間のうち落札関連は5分間ほど、残り10分間は養鶏・鶏卵の飼育環境とビジネスについてではないだろうか。生物多様性や動物愛護の観点から家畜にストレスをかけない「アニマルウェルフェア(Animal Welfare、動物福祉)」が世界的な動きになりつつある。問題視されるのは、狭いケージにニワトリを閉じ込めて生産性を上げる養鶏・鶏卵のシステムだ。このビジネスで成功し、世界の美術品を収集する原資を創ってきたとなれば、今後、ウォーホル作品の落札価格と相まって国際世論はどのように展開していくだろうか。一連のイセ食品をめぐる騒動は世界に問題提起をもたらすのではないか、と読んでいる。

⇒18日(金)午後・金沢の天気   あめ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

★東北の震度6強、そして能登半島の揺れ

2022年03月17日 | ⇒ニュース走査

   けさ届いた東京の知人からのメール。「昨夜11時半ごろの震度6強。宮城と福島を襲った地震ですが、皆さん無事ですか。少し揺れてるな・・・ちょっと変な揺れ方があって終わりかな、と思っていたら強い揺れ(都内は震度3)が長いなと感じる地震がありました。ケータイの緊急地震速報は、揺れが終わったころに『叫んで』くれました。皆さん、どうされましたか」

   先日のブログ(3月8日付)でも取り上げたが、3月の地震は恐怖だ。気象庁によると、16日午後11時36分ごろ、福島県沖で発生した地震で、宮城北部と南部、福島中通り、福島浜通りで最大震度6強の揺れを観測した。震源は北緯 37.7度、東経 141.6度でマグニチュード7.4、震源の深さは60㌔だった。

   揺れは石川県でもあり、震度3が珠洲市、震度2が七尾市、輪島市、羽咋市、中能登町、能登町、震度1が金沢市、輪島市の舳倉島、かほく市、津幡町、志賀町、穴水町だった。震度3の珠洲市の危機管理室や県危機対策課には被害の情報は入っていない。

   震度6強を観測した福島県沖の地震は去年2月13日にも発生している。発生時間は午後11時8分。このときも能登半島の尖端、珠洲市では震度3だった。その時の福島県沖の震源地は北緯 37.7度 東経 141.7度でM7.3、震源の深さは60㌔と今回とほぼ同じだ。

   今月8日午前1時58分、珠洲市を震源とする震度4の揺れがあり、マグニチュード4.8、震源の深さは10㌔だった。この地震で震度3が新潟県の長岡市と糸魚川市、上越市、震度2や震度1の揺れは東北や関東など広い範囲に及んだ。能登半島では2007年3月25日に輪島市沖でM6.9、震度6強の地震があり、同じ年の7月16日、同じ日本海側で新潟県中越沖地震(震度6強)と続いた。その後、能登半島の先端では2020年12月ごろから再び地震が活発化し、震度1以上の揺れは去年は年間70回、ことしに入り29回観測されている。地震の専門でない者が軽々に語るべきことではないが、能登半島の揺れ、そして福島県沖の地震は連鎖反応なのだろうか。

⇒17日(木)夜・金沢の天気    くもり

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

☆ロシアの「ジャンヌ・ダルク」が投じた一石

2022年03月16日 | ⇒ニュース走査

    まさに現代のジャンヌ・ダルクではないだろうか。勇気ある女性だ。ロイター通信Web版日本語(15日付)=写真=によると、ロシア国営テレビ局「Channel One」の14日夜のニュース番組で、アナウンサーの後ろに、「NO WAR」と手書きのプラカードをかざした女性が突然映り込んできた。「戦争を止めて」と声をあげた。7秒で画面が切り替わった。国営テレビは、ロシアはウクライナの非軍事化と「非ナチ化」、ロシア系住民の保護のために戦っているとするロシア政府の見解を一貫して報じている。この報道姿勢に身内から反乱を起こした。

   女性はテレビ局のディレクターでマリーナ・オフシャニコワ氏。ネット上にビデオ声明も発表していて、「ウクライナで起きていることは犯罪だ。ロシアは侵略国であり、侵略の責任はウラジーミル・プーチンにある」「テレビ画面でうそを話すのを許してきたのが恥ずかしい」と述べ、ロシア国民に反戦活動を呼びかけている。父がウクライナ人、母がロシア人であることを明かしている。彼女は警察によって当日拘束された。モスクワの裁判所は翌15日、無許可で抗議活動を行ったとして3万㍔(280㌦)の罰金を科して釈放した(同)。

   むしろプーチン氏からにらまれているのはテレビ局幹部ではないだろうか。国営テレビ「Channel One」は日本で言えば、NHKのような存在である。夜9時からの番組なので、まさにNHK報道番組『ニュースウオッチ9』ではないか。動画を見る限り、オフシャンコワ氏が手書きのプラカードを掲げ、反戦を訴えたが、ニュースを読み上げる女性キャスターはオフシャンコワ氏の行動を無視している。テレビカメラもそのまま撮っていた。7秒後に画面が切り替わった。通常で考えれば、スタジオにプラカードを持って入ることをなぜ他のフロアスタッフが阻止しなかったのか、なぜカメラマンは7秒もそのままカメラを向け続けたのか。

   以下はあくまでも憶測だが、「予定調和」の流れを感じる。オフシャンコワ氏やカメラマン、ほかのスタッフが訴えた「7秒間の反戦ドラマ」ではなかったか。ロシアの民衆はネットでウクライナ侵攻の真相が分かっていても、大統領には逆らえず、見て見ぬふりをして沈黙してきた。それがもう限界に来ている。オフシャニコワ氏の果敢な行為は突発的に見えるが、計画的でもある。民衆に怒りのマグマが相当たまっていて、これが導火線になるのではないか。

   フランスのマクロン大統領もジャンヌ・ダルクのイメージを想起したのだろうか、朝日新聞Web版(16日付)によると、マクロン氏はオフシャニコワ氏の保護のために外交努力をする考えを示し、「次のプーチン氏との協議で具体的な提案をする」と語ったという。

   一方のロシア政府はそう甘くはない。ロシアでは今月、ロシア軍の活動に関して、ロシア当局がフェイクニュースと見なした場合に、最大15年の禁錮刑を科せる法律が施行された。オフシャニコワ氏の活動そのものが偽情報の拡散と当局が判断する可能性がはらむ(同)。ロシアの世論が今後どう展開していくのか。新たなロシア革命へとつながっていくのか。

⇒16日(水)午後・金沢の天気   はれ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

★国連安保理はドロ沼状態から這い出せるのか

2022年03月15日 | ⇒ニュース走査
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

☆「石川県知事選」「金沢市長選」で何が変わるのか

2022年03月14日 | ⇒ドキュメント回廊

   前回ブログの続き。NHK金沢はきょう午前1時43分のWeb版で石川県知事選で馳浩氏の当選を伝えている。馳浩氏(無所属・新)19万6432票、山野之義氏(無所属・新)18万8450票、山田修路氏(無所属・新)17万2381票となっている。そして、同4時21分に全国ニュースWeb版で当選のニュースを流している。「保守分裂の構図となった石川県知事選挙は、元文部科学大臣の馳浩氏が、初めての当選を果たしました。石川県では、28年ぶりに知事が交代することになります」

   地元紙など各紙も大見出しで報じている。「新知事に馳氏 山野氏と7982票差」(北國新聞)、「知事に馳氏 保守分裂大接戦制す」(読売新聞・号外)、「馳氏知事当選 大激戦 山野氏、山田氏抑え」(北陸中日新聞)=写真=。もともときょうは新聞休刊日だった。全国紙は号外、地元紙は特別発行というカタチで取り上げている。では、28年ぶりの知事交代でどのような変化が起こるのだろう。

   谷本知事は多選批判もあったが、逆に言えば28年間にわたって信任を受けて、ロングランのプロジェクトを展開してきた。「能登と金沢・加賀の格差是正」をスローガンに能登半島の道路や空路などインフラ整備を積極的に進めてきた。さらに、金沢城の復元は史実を尊重することで価値を高めると同時に、伝統工芸の技を継承するという絶妙なコンセプトに取り組んできた。なので、旧・自治省出身の政策立案に長けた知事というイメージが谷本氏にはある。中央政界ともつかず離れずバランスをとってきた。 

   では、馳氏はそれを継承できるのか、できないのか、しないのか、するのか。そこがよく分からない。他の候補に圧倒的な大差ならば、「あなたにお任せ」というのが民意かもしれないが、これだけ僅差だと、谷本路線をひっくり返すことはできるのだろうか。問われているのは、行政経験のない馳氏が行政マンをどううまく使い回し、新たなコンセプトを創り上げていくか、だろう。

   馳氏を応援した能登のある首長は「馳氏の面倒見のよさにはとても感謝している」と話した。ほかの人からも同じ話を聞いた。おそらく面倒見のよさは根っからのキャラなのだろう。それだけに地元の信頼を裏切らない県政運営が問われる。一方で、選挙期間中は安倍元総理ら自民党幹部らが続々と応援に入った。けさの地元民放のインタビューに応じた馳氏は「朝一番で森元総理に選挙結果を報告した」と答えていた。番組を見ていて、中央政界に寄り添った県政運営になるのではないかとも気になった。基地や原発問題などをめぐっては、地元と中央の間に立って県政が揺れることもしばしばある。

   今回の知事選の県全体の投票率は61.8%だ。トリプル選挙の金沢よりさらに高い。能登・金沢・加賀でさまざまな課題解決への政治手腕がこれから問われる。同時に軋轢も出て来るだろう。「気に入らない、面倒なことにはチョップ」、これだけは勘弁願いたい。任期は今月27日から4年間となる。

⇒14日(月)夜・金沢の天気    くもり

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

★ドキュメント3・13「石川県知事選」「金沢市長選」

2022年03月13日 | ⇒ドキュメント回廊

   きょうは石川県知事選ならびに金沢市長選、そして同市議補選のいわゆる「トリプル選挙」の投開票日。午後2時すぎ、一票を投じるため出かけた。くもり空だったが、外は暖かさを感じた。自家用車で外気温を見ると20度だ。投票場は小中学校の体育館=写真・上=。ひっきりなしに人が行き交っていた。投票率は高いのではないかと想像した。知事と市長という首長ダブル選挙の相乗効果もあるだろう。何しろ、前回の知事選(2018年3月)では金沢市の投票率は30.6%、金沢市長選は(2018年11月)は24.9%とそれぞれ最低を記録していた。投票を終えて再び外に出る。心地よい風が吹いている。この陽気が人々を投票に誘っているのかもしれないとふと思った。

   午後8時00分、NHKの大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の冒頭で速報が流れた。「金沢市長選 新人・村山卓氏 当選確実」=写真・中上=。投票が終わった途端に当確の速報を流すということは、NHKの出口調査でトップと2番目の差が少なくとも10ポイント以上ついていたということだ。NHKは「選挙のNHK」と呼ばれるほど、出口調査や開披台調査などを独自で実施して「当確」を出している。なので、候補者は民放の当確ではななく、NHKの当確を確認して初めて万歳をするのが習わしになっているほどだ。それにしても、投票終了直後での当確はちょっと速すぎる。本人も選挙事務所に現れてはいないだろう。

   一方の知事選は激戦が予想されている。開票作業を見学するため、金沢市営中央市民体育館(同市長町3丁目)に出かけた。市内のすべての投票箱が集められ、開票作業が行われる。午後8時40分に到着したがまだ始まってはいなかった。トリプル選挙の開票だけに体育館のフロアはほぼ埋まった状態だ。開票台の一列の机に30数人が並んでいる。それが、12列ある。その脇にはサポートするスタッフが控えている。ざっと500人の市職員がいるのではと推測した。

   その開票作業を取材するために、メディア各社の記者やカメラマンがすでに集まっていた。同時に開披台調査をするスタッフも集まっていた。開披台調査は開票作業をする職員の手元を双眼鏡で覗き込んで、投票に書いてある候補者の名前を読んで発声する。この声が口元のマイクから無線でメディア各社の選挙報道フロアに届き、受信したスタッフが数値化していく。金沢の開票場のほかに県内の主な自治体の開票場にスタッフを張り付けているだろう。

   午後9時30分、開票作業が始まった=写真・中下=。28年ぶりに新人同士の争いとなった知事選には、元文部科学大臣の馳浩氏と、元参院議員の山田修路氏、元金沢市長の山野之義氏の3人が競り合っている。メディアの開披台調査スタッフは、開披台で開票作業をする職員の手元を双眼鏡で覗き込んで、「ヤマノ、ヤマノ、ハセ、ハセ、ヤマダ、ヤマダ」と名前を発している=写真・下=。数分経つと、場所を移り別人の手元をのぞく。こうすることで、市内の地域の偏りがなくなる。NHKの腕章をした開披台調査スタッフを数えると10数人いた。

   自身は双眼鏡を持たない。調査スタッフの横にさりげなく立って、名前を聞く。すると、おおむね見当がつく。「山野4割、馳3割、山田2割」かと。間もなくして、市の選管が投票率を掲示板に貼り出した。知事選「58.48%」、市長選「55.95%」。前回より知事選で28ポイント、市長選で31ポイントもアップしている。

   ベンチでひと休みしていると、隣にいた民放の調査スタッフの女性が声をかけてきた。初めて開票場に来たと言い、「選挙番組の裏側を知ることができて、勉強になります」と。そして、「でも、とてもアナログな現場ですよね」とも。同感だった。デジタル投票に移行すれば、おそらく開票作業は瞬時に終わるだろう。

   午後11時ごろに帰宅した。能登地区と加賀地区のそれぞれの候補の得票率はどうなっているのかとテレビやネットをチェックしたが、知事選の当確は流れていない。相当な接戦なのだろ。アルコールを入れたせいか、うとうととそのまま寝込んでしまった。

⇒13日(日)夜・金沢の天気      くもり

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

☆卵が先か、「ピカソ」が先か

2022年03月12日 | ⇒ニュース走査

   5年前の話になるが、「ピカソに会える茶会」という、ちょっと気を引くタイトルの茶会が金沢21世紀美術館の茶室「松涛庵」であった(2017年12月)。床の間に飾ってあったのはピカソの作品『貧しき食事』だった=写真・上=。ワインと一切れのパンを前にした男女の姿が描かれている。男は目が不自由で顔は右の遠くを向いているものの、左手は女の肩に、右手は腕に寄せている。「青の時代」と言われたピカソの初期の作品で、社会の底辺にいる人たちを題材とした作品が多い。作品はこの時期の有名な版画として知られる。ごく限られた数だけ摺られた希少なものと解説があった。濃茶を頂きながら、名画を堪能させていただいた。

   2つ質問をしたことを覚えている。一つは、「なぜ、この作品を床の間に飾ったのか」と。すると「ピカソの初期の作品であり、初心に戻ってお茶会をするという企画意図と合ったため」とのこと。2つ目に「そもそもこの貴重な絵はどこからお借りしたのか。あるいは個人所有なのか」と。「高岡にありますイセコレクションの伊勢氏に直接お願いして、お借りした」との返事だった。

   イセコレクションは、「森のたまご」のブランドで知られる鶏卵大手「イセ食品」(東京)の前会長、伊勢彦信氏が収集した世界的な名画や彫刻、陶磁器のこと。作品は伊勢氏が代表理事を務めるイセ文化財団(東京)が管理し、創業の地である富山県高岡市のグループ会社のギャラリーで一部を展示している。

   そのイセ食品とグループ会社は11日、債権者から東京地裁へ会社更生法を申し立てられ、同地裁から保全管理命令を受けた、と北陸のメディア各社が報じている=写真・下=。「帝国データバンク」Web版(11日付)によると、M&Aなどで業務内容を拡大するなか金融機関からの借り入れが増加。新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて卵価が下落、資金繰りが悪化していた。負債はイセ食品とグループ会社の2社の合計で453億円(うち金融債務は260億円)とみられる。

   イセ食品の伊勢彦信氏をめぐっては、2019年4月に国税から税務調査を受け、7億円の申告漏れが指摘された。別のグループ会社がアメリカ・ニューヨークのビルを購入・転売して得た利益の一部が配当として伊勢氏に渡っていた。1980年にアメリカでグループ会社を設立し、卵の販売量で全米2位となっている。

   話はイセコレクションに戻る。現在92歳の伊勢氏は世界で注目されてきた筋金入りの美術品コレクターである。ふと気になるのは、更生手続きをきっかけにピカソなどのコレクションを売却処分するのか、あるいはコレクターとして意地を通すのか。卵が先か、「ピカソ」が先か。

⇒12日(土)午後・金沢の天気     はれ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

★「誰一人取り残さない」SDGs的な選挙活動の現場

2022年03月11日 | ⇒トレンド探査

   金沢市長選の個人演説会に誘われ、昨夜、市内のある集落を訪ねた。場所は中山間地、いわゆる里山だ。乗用車のナビを使って、曲がりくねった山道を走行する。午後7時からの演説会に間に合うように出かけたが、すっかり周囲は暗くなっていた。ぎりぎりに到着した。会場は市北部にある加賀朝日町の公民館。廃校になった小学校校舎だ。地域の人たち20人余りが集まっていた。

   個人演説会を開いたのは、永井三岐子候補。テーマは「公共交通について考えよう」だった。なぜ山間地の集落でこのテーマなのか。この地域の唯一の公共交通であるJRバスが7月から廃線となることが決まっている。そこで、永井候補はこの地域課題をテーマに住民との意見交換を求めて演説会を開いた。「公共交通は都市の装置です。民間企業の資金やアイデアを求めるのも一つのアイデア」と事例を紹介した。「チョイソコ」は愛知県豊明市でトヨタ系の民間会社が運営しているオンデマンドによるバス運行のシステム。通院や買い物の移動に困る高齢者を救いたいと同市が民間企業と連携している。

   地元の人からも声が上がった。「バスに乗っても乗客は多い時で3人くらい。空気を運んでいるようなものでバス会社には申し訳という気持ちもある」と廃線についてはやむを得ないと話した。また、「バスの本数が少なくなるほど、利用する人が減ってきた」 「中山間地にまだ新しい家が空き家になっている。これをどうにかしたい」 「里山には環境や教育、観光など、その特色を活かした活用がある。どう工夫すればよいか」 など、バス問題だけでなく地域の活性化など意見は多岐に及んだ。

   確かにバスの問題は地域課題の一つであって、その根底には過疎化・人口減少の問題がある。それにしても思ったことは、これは永井候補にとって失礼な言い方かもしれないが、選挙運動期間も残り2日と限られているのに、10数世帯しかない小さな集落でなぜ時間を費やすのか。市内の中心街でもっと人を集めて、訴えた方が遊説効果があるのではないか、と。

   そう考えているうちに、これは本人の根っからのポリシ-なのかもしれないと思い浮かんだ。永井候補は金沢にある国連大学研究所の事務局長だった。SDGsの実践を掲げてきた。今回の選挙でも、公約に「SDGsファンドを創設し、課題解決ビジネスを興す」と掲げている。SDGsの原則は「誰一人取り残さない」だ。小さな集落の課題こそ放ってはおけないと考えたのだろうか。とすれば、まさにSDGsを実践した選挙活動なのかもしれない。

⇒11日(金)夜・金沢の天気     はれ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

☆「人に忠誠を尽くさない」新韓国大統領の法治国家への道

2022年03月10日 | ⇒ニュース走査
   韓国の新しい大統領に野党「国民の力」の前検事総長、尹錫悦(ユン・ソギョル)氏が選ばれた。韓国・中央日報Web版(10日付)=写真=によると、得票率は尹氏が48.56%、与党候補が47.83%で文字通りの僅差だ。票差にして24万7千票余り。投票率は、連日30万人の新型コロナウイルス感染者が出ているにもかかわらず、77.1%と高い。韓国の有権者はなぜ政権交代を選択したのか。そして、政治経験がまったくない尹氏に何を委ねたのか。
 
   メディア各社のこれまでの報道から印象的な尹氏のイメージは、権力に遠慮することなく司法の刃(やいば)を向けてきたことだ。朴槿恵(パク・クネ)政権下での「崔順実(チェ・スンシル)ゲート」では朴前大統領を拘束起訴(2017年3月)。この実績により、文在寅(ムン・ジェイン)大統領によってソウル中央地検長に抜擢された尹氏はさらに李明博(イ・ミョンバク)元大統領も拘束起訴した。2019年6月に検事総長に任命されてから、矛先は文大統領の側近にも向けられた。曺国(チョ・グク)前法務部長官の捜査を手初めに、蔚山市長選挙介入疑惑、月城原発経済性ねつ造疑惑など次々と捜査のメスを入れた。曺氏の後任の秋美愛(チュ・ミエ)法務部長官と対立して去年3月に辞職した。
 
   大統領から任命を受けても、権力と対峙した尹氏は「私は人(権力)に忠誠を尽くさない」という言葉を放って国民に知られるようなった。尹氏が大統領になることで期待されるのは、「法治国家」という共有の概念ではないだろうか。権力の不正や腐敗を正す法治である。司法、行政、立法の三権分立は日本では中学の公民の教科書にも出て来る。ところが韓国では大統領に権力が集中している。時々の政権の都合により法解釈が曲げられたりすることのない国であること、これこそ政治経験のない尹氏に国民が委ねたことはではないか。
 
   尹氏は選挙期間中、国際法や国際協定なども遵守する姿勢を打ち出した。とくに日米韓の安全保障の協力強化は、北朝鮮の核ミサイルに対する協調態勢を念頭に置いてのことだろう。さらに、冷え込んだ日韓関係の修復を図っていくと述べている。日本とすれば、日韓の戦後補償問題は「完全かつ最終的に解決された」と規定した1965年の日韓請求権・経済協力協定で解決済みとの立場であることに変わりないが、「シャトル外交」を進めながら相互理解を再構築することはマストだろう。
 
   油断ならないのは北朝鮮の動きだ。文大統領の任期は5月7日までだが、政権運営としては実質的に何もできない「レームダック状態」に陥る。「日米より、こっちを向け」と韓国に何か仕掛けて来るかもしれない。そして、ことしに入って弾道ミサイルを9回発射している北朝鮮は新大統領めがけてどのような難題を放つのか。
 
⇒10日(木)夕方・金沢の天気      はれ
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする