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自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆桜散らす春の嵐 トランプ関税は「終わりの始まり」なのか

2025年04月15日 | ⇒ニュース走査

金沢で風雨が吹き荒れている。気象庁によると、寒冷渦がきょう15日にかけてに西日本から東日本に進み、この時期としては強い寒気が流れ込んでいる。近所の神社ではこの風雨で桜の花が舞い散り、境内は桜の花びらの絨毯のようになっていた=写真は金沢市の地黄八幡神社、午前11時ごろ撮影=。まさに桜散らす春の嵐だ。きょうが桜の見納めとなりそう。

話は変わる。どこか似たようなストーリーだ。韓国の尹錫悦大統領が発した「非常戒厳」の宣布(2024年12月3日)とアメリカのトランプ大統領が発した「相互関税」のことだ。似たようなストーリーのその1は「いきなり」と「急ブレーキ」だ。尹氏は政府の方針に反対し続ける最大野党「共に民主党」を国政をマヒさせる「反国家勢力」と指弾し、戒厳令を出して国会などに軍や警察を投入した。国会が2時間半後に戒厳令の解除を要求する決議案を可決し、その後に解除された。

トランプ大統領が仕掛けた相互関税という「貿易戦争」もいきなりで、世界的にショックを与えた。カナダとメキシコを除くほぼ全ての国・地域に適用する一律10%の基本税率と、アメリカの貿易赤字額が多い60ヵ国・地域に適応する上乗せ税率で構成される関税で、日本時間の9日午後1時すぎに発動した。ところが、発動からわずか13時間で、トランプ氏は上乗せ税率を中国を除いて90日間停止すると発表した。当面はベースラインの10%を適用する。それにしても、発動した直後に急ブレーキだ。この背景には、アメリカ国債の投げ売りなど、金融市場が不安定になったことが理由とみられる。この関税をめぐって、アメリカだけでなく各国の株式市場が乱高下するなど世界経済は大混乱に陥った。

似たようなストーリーのその2は「終わりの始まり」だ。尹錫悦氏の非常戒厳の宣布をめぐり、憲法裁判所は今月4日、弾劾訴追された尹氏の罷免を8人の裁判官の全員一致で決定した。憲法裁は、戒厳令は違憲で国会に対する軍の投入などについても違法かつ重大だと認めた。尹氏は即時失職し、60日以内に大統領選が行われる。大統領が弾劾・罷免されたのは2017年3月の朴槿恵氏以来2人目となった。

トランプ氏の「終わりの始まり」は国民の信頼を失ったことだ。今月2日に相互関税をかけると公表したとき、トランプ氏は「2025年4月2日はアメリカの『Liberation day(解放の日)』として永遠に記憶される」と演説し、関税実施の大統領令に署名した。それが90日間の停止となった。アメリカの政治的評価とすれば、これは「ブリンクマンシップ(brinkmanship)の失策」と映るだろう。ブリンクマンシップは「瀬戸際外交」と訳され、たとえば核兵器の使用も辞さないという印象で圧力をかけて外交交渉などで優位に立とうとする政治手法を指す。今回の貿易戦争ではブリンクマンシップで強気に出たトランプ氏が「いったん中止します」と振り上げた拳(こぶし)を下したのだから、アメリカ政治としては失策と映る。

関税措置をめぐり、今月17日から日本とアメリカの交渉がワシントンで始まる。トランプ氏が仕掛けた貿易戦争、これからどう展開していくのか。春の嵐は当分の間は止みそうにない。

⇒15日(火)夜・金沢の天気    風雨

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★「天空の城」のように夜桜に浮かぶ金沢城 世の騒々しさとは別世界の風景

2025年04月10日 | ⇒ニュース走査

きのうは夜桜を見学に金沢城に出かけた。前回(きのう)ブログでは午前8時ごろに撮影した金沢城石川門の櫓と桜だったが、同じ場所の夜の風景はまったく異なる=写真=。撮影は午後7時ごろだったが、ライトアップされた金沢城が桜の満開の上に浮かんで見え、まるでアニメ映画『天空の城ラピュタ』のようなイメージだ。そして、夜の見物客が昼間より圧倒的に多い。金沢城石川門と隣接する兼六園の観桜期における無料開園は夜間の見学(午後9時30分まで)も可能となることから、夜の兼六園を見るために訪れる市民や観光客が多いのだろう。ちなみに、無料開園は当初4月2日から8日までだったが、ソメイヨシノの満開が遅れたことから今月13日まで延長となっている。

話は変わる。おさらいになるが、アメリカのトランプ政権による相互関税は、カナダとメキシコを除くほぼ全ての国・地域に適用する一律10%の基本税率と、そのうちアメリカの貿易赤字が大きい約60ヵ国・地域に適用する上乗せ税率で構成される。相互関税は日本時間の9日午後1時すぎに発動した。ところが、発動からわずか13時間で、トランプ大統領は相互関税の措置を90日間停止すると発表した(メディア各社の報道)。

停止措置の対象となったのは、相互関税に対する報復措置をとらずに問題の解決に向けて協議を要請してきた日本などの国・地域に対して。ただし、一律10%の基本税率は実施される。発動したばかりの相互関税を90日間停止する判断の背景にいったい何が起きているのか。

「Bloomberg」web版日本語(10日付)などによると、この背景にあるのは、株式や通貨に加えて安全資産とされている国債まで売られる「トリプル安」がアメリカで起きているようだ。米国債はもともと安全資産とされ、経済危機時には世界マネーが入り込んで価格は上がる(国債利回りは下落する)。ところがこのところ売却のスピードが加速していてる。中国が関税への報復措置として米国債を売却しているとの可能性に言及する専門家の分析を紹介している。トランプ政権は、中国には追加関税を125%に引き上げると発表していて、両国のあいだの応酬はさらに激しさを増していくのだろう。

「トランプ関税」騒動は止まない。貿易戦争だけでなく、先のトリプル安のように株式や通貨、国債までもが攻撃材料となり、金融戦争へと展開していくのか。前回ブログでも述べた、1930年6月にアメリカが制定した高関税を導入する「スムート・ホーリー法」が世界貿易を停滞させ、世界恐慌をさらに拡大するという逆効果を招いた。その二の舞となるのか。

⇒10日(木)夜・金沢の天気     あめ

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☆どうなる世界経済の行方 「トランプ関税」の衝撃 

2025年04月09日 | ⇒ニュース走査

金沢の満開桜の風景のシンボルと言えば、金沢城と兼六園を結ぶ石川門側からのアングルではないだろうか。満開のソメイヨシノはまるで雲のようで、お城はその雲に浮かぶような。そもそも桜とお城は相性がいいとされる。パッと咲いて、パッと散る桜の散り際の見事さを、潔い武士の人生にたとえた言葉が「花は桜木、人は武士」。武家庭園の兼六園には「ケンロクエン キクザクラ」という遅咲きの桜がある。ソメイヨシノが散るころに花を咲かせ、3回色が変わり、花ごとパサリと落ちる。桜の季節を最後まで楽しませてくれて、潔く花の命を終わらせる。花の落ち方に美学を感じた金沢の武士たちに愛された桜だ。(※写真・上は、ソメイヨシノと金沢城石川門の櫓=9日午前8時ごろ撮影)

話は変わる。貿易赤字の多い国からの輸入品に対して課す「トランプ相互関税」の第2弾が発動した。日本時間できょう9日午後1時1分、日本の製品には24%の関税が課される。すでに自動車に対しては25%の追加関税が日本時間の3日に発動し、乗用車は27.5%、トラックは最大50%となっている。一連の追加関税の措置は日本だけでなく、世界60ヵ国余りに及んでいて、世界経済への打撃は必至だろう。

とくに狙い撃ちとなっているのは中国のようだ。中国がアメリカへの報復関税を8日までに撤回しなかったため、トランプ政権は対中関税をさらに50%追加し、合計の課税率は104%におよんでいる。それでも中国は「最後まで戦う」と引き下がらず、さらなる報復も示唆したことから、貿易戦争激化への様相となっている。(※写真・下は、ホワイトハウス公式サイトより)

トランプ政権が強気の相互関税を発動する法的根拠は「国際緊急経済権限法(IEEPA)」。IEEPAは、巨額の貿易赤字でアメリカの製造能力や国防産業の基盤が損なわれることが緊急事態に該当すると認定される。ただ、アメリカと関税には歴史がある。アメリカは1930年6月、当時の世界恐慌の経済の中で、国内産業を保護して高賃金を維持するため、高関税を導入する「スムート・ホーリー法」を発動した。アメリカが保護貿易に転じたことで、対抗上、各国も一斉に高関税を導入し、世界経済はブロック化が強まった。この後、世界貿易は停滞し、世界恐慌がさらに拡大するという逆効果を招いた。そして、第2次世界大戦へと向かうことになる。高校生の世界史の教科書に出てくる内容だ。歴史は繰り返すのか。

⇒9日(水)午後・金沢の天気    はれ

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★「独裁者」なのか、「改革者」なのか~アメリカ・韓国の大統領の振る舞い方

2025年04月04日 | ⇒ニュース走査

それにしてもよく分からないニュースだ。メディア各社の報道によると、韓国の尹錫悦大統領による「非常戒厳」の宣布(2024年12月3日夜)をめぐり、憲法裁判所はきょう4日、弾劾訴追された尹氏の罷免を8人の裁判官の全員一致で決定した。尹氏は即時失職し、60日以内に大統領選が行われる。憲法裁は戒厳令は違憲で、国会に対する軍の投入などについても違法かつ重大だと認めた。大統領が弾劾・罷免されたのは2017年3月の朴槿恵氏以来2人目だ。

よく分からないのは、尹氏が「非常戒厳」を宣布した理由だ。政府の方針に反対し続ける最大野党「共に民主党」を国政をマヒさせる「反国家勢力」と指弾し、戒厳令を出して国会などに軍や警察を投入した。が、国会が2時間半後に戒厳令の解除を要求する決議案を可決し、その後に解除された。このときの尹氏は大統領の権限をさらに超えた「独裁者」として立ち振る舞おうとしたのか、あるいはマヒした国政を改革するための手立ての第一歩として、「非常戒厳」の宣布をしたのか。独裁者になろうとしたのか、改革者になろうしたのか。

アメリカのトランプ大統領についてもよく分からない。今月2日に世界各国からの輸入品に対して「相互関税」をかけると公表し、各国に一律10%の関税をかけたうえで、国・地域ごとに異なる税率を上乗せした。トランプ氏はこのとき、「2025年4月2日はアメリカの『Liberation day(解放の日)』として永遠に記憶される」と演説し、相互関税を実施するための大統領令に署名した。アメリカは第二次世界大戦後に率先して関税を引き下げ、いわゆる自由貿易体制を構築した。それをぶっ壊し、先進国で最も閉ざされた孤立市場に変質した。

大統領権限で相互関税を発動する根底には、トランプ氏がこれまで何度も述べているように、年1.2兆㌦を超えるアメリカの貿易赤字や工業を中心とした国内産業の空洞化がある。このため中間層が破壊され、勝者と敗者を生み出す経済構造になったと憂い、これをトランプ氏は今回の演説でも「国家の非常事態」と強調した。そして、相互関税により6兆から7兆㌦がアメリカに流入するとの見通しを示し、「市場は活況となり、株価は上昇し、国は急成長するだろう」と語った。

しかし、今回の一律関税および相互関税が額面通りに実行に移された場合、もっとも割を食うのはアメリカ経済ではないのか。個人消費がGDPの7割を占めるので、輸入品の値上がりの影響を直接こうむることになる。そして今、アメリカ株の全面安、ドル安など金融市場に激震が走っている。このまま景気後退へと突入していくのか。

⇒4日(金)夜・金沢の天気   くもり

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☆追加関税は「二兎を追う者は一兎をも得ず」か 万博に能登の「日本最古おにぎり」

2025年03月29日 | ⇒ニュース走査

アメリカのトランプ大統領が豪語する「関税の壁」は本当に、より強い経済を自国にもたらすのか。アメリカの消費者にアクセスしたい企業は国内に生産拠点を構えるか、高関税を払うかの二択を迫られる。そうなれば、前者は雇用を生み、後者は税収を生む。これが「AMERICA  IS  BACK」、アメリカを再び偉大にするための戦略なのだという。そもそも、自由貿易協定を結んでいるカナダやメキシコに高関税の圧力をかけたことで、アメリカの信頼そのものが損なわれたのではないか。28日のアメリカ株式市場で、ダウ工業株が前日比で715㌦安、ハイタク株のナスダックは481㌦安と下げている。アメリカの景気の先行きや物価高への懸念が広がっているのではないか。「二兎を追う者は一兎をも得ず」、そんなたとえが浮かんだ。(※写真・上は、ホワイトハウス公式サイトより)

話は変わる。4月13日に開幕する大阪・関西万博で、日本のコメ文化を発信する「日本最古のおにぎり」が展示されると、石川県の地元メディア各社が報じている(29日付)。1987年に能登半島の中ほどに位置する中能登町の杉谷チャノバタケ遺跡の竪穴式住居跡から、黒く炭化したおにぎりが発掘された。化石は約2000年前の弥生時代のものと推定されている。出土したおにぎりは「チマキ状炭化米塊」(ちまきじょうたんかまいかい)と呼ばれ、現在は石川県埋蔵文化財センターで保管されているが、そのレプリカが同町にある複合施設「ふるさと創修館」で展示されていて、万博会場で展示されるのはそのレプリカとなる。(※写真・下は、出土したチマキ状炭化米塊=中能登町観光協会公式サイトより)

日本最古のおにぎりが出土したチャノバタケ遺跡の周辺は、能登における稲作文化の発祥の地でもある。邑知(おうち)地溝帯と呼ばれる穀倉地帯が広がる。地溝帯を見渡す眉丈山の山頂には国史跡の「雨の宮古墳群 」がある。北陸地方最大級の前方後方墳と前方後円墳で、4 世紀から5世紀(弥生後期)もののとされる。その古墳群のふもとには延喜式内の神社など古社あり、コメ作り文化の歴史を今に伝えている。その一つ、チャノバタケ遺跡近くにある鎌の宮諏訪神社では毎年8月27日に「鎌打ち神事」が営まれる。鎌で平野を開墾し、田んぼの害虫などが退散することを願った神事とされる。そして、コメの収穫に感謝する新嘗祭で神酒として「どぶろく」を造り続けている古社がこの地域では3社ある。

日本最古のおにぎりと同時に、日本酒のルーツでもあるどぶろくをコメ作り文化のシンボルとして二本立てで万博に展示してはどうだろうか。ユネスコ無形文化遺産に日本の伝統的な酒造りが登録され、その日本酒の原酒でもあるどぶろくの説明をすることは、とても意味がある。中能登町は「どぶろく特区」に登録されていて、どぶろくブランドをPRするチャンスかもしれない。

⇒29日(土)夜・金沢の天気    はれ

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☆北朝鮮の弾道ミサイルとの関わり 旧統一教会の「献金の闇」

2025年03月27日 | ⇒ニュース走査

前回ブログの続き。信者からの献金や霊感商法で集めた膨大な額の金は韓国の世界平和統一家庭連合(旧「統一教会」)の本部へと送金されている。それがどのように使われていたのか。2023年7月3日付「安倍事件まもなく1年 旧統一教会の『献金の闇』」で記事をまとめた。以下、再録。

これを宗教というのだろうか。宗教の名を借りた集金システムではないのか。(2023年)7月3日付の共同通信Web版によると、世界平和統一家庭連合(旧「統一教会」)の教団トップの韓鶴子総裁が6月末、教団内部の集会で「日本は第2次世界大戦の戦犯国家で、罪を犯した国だ。賠償をしないといけない」「日本の政治は滅ぶしかないだろう」と発言していたことが3日、関係者への取材や音声データで分かった。教団側は6月中旬、年間数百億円にも上るとされる日本から韓国への送金を今後は取りやめると説明していたが、トップが依然、韓国への経済的な見返りを正当化したことになる。

多額の献金は韓国の本部に集められた。それはどこに流れたのか。「文藝春秋」(2023年1月号)は「北朝鮮ミサイル開発を支える旧統一教会マネー4500億円」の見出しで報じている。旧統一教会と北朝鮮の接近を観察していたアメリカ国防総省の情報局(DIA)のリポートの一部が機密解除され、韓国在住ジャーナリストの柳錫氏が記事を書いている。旧統一教会の文鮮明教祖は1991年12月に北朝鮮を訪れ、金日成主席とトップ会談をした見返りとして4500億円を寄贈していた、と。(※写真は、北朝鮮が「極超音速ミサイル」と称する新型弾道ミサイル=日本の防衛省公式サイト資料「2019年以降に北朝鮮が発射した弾道ミサイル等」より)

さらにDIA報告書では、1994年1月にロシアから北朝鮮にミサイル発射装置が付いたままの潜水艦が売却された事例がある。売却を仲介したのが東京・杉並区にあった貿易会社だった。潜水艦を「鉄くず」と偽って申告して取引を成立させていた。韓国の国防部は2016年8月の国会報告で、北朝鮮が打ち上げたSLBM潜水艦発射型弾道ミサイルは北朝鮮に渡った「鉄くず」潜水艦が開発の元になっていたと明かした。この貿易会社の従業員は全員が旧統一教会の合同結婚式に出席した信者だった。

高額献金をめぐる旧統一教会の「深い闇」をどう断罪するのか。断罪がなければまた繰り返される。

⇒27日(木)午前・金沢の天気    はれ

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★黄砂でかすむ空からの「贈り物」 解散命令で旧統一教会問題は片付くのか

2025年03月26日 | ⇒ニュース走査

  金沢の街中が黄砂でぼんやりとかすんで見えた。きのう夕方に自宅近くの大乗寺丘陵公園から市内の中心部を見渡すと、水平方向で見通しが利く距離は8㌔ほどだったろうか。眺めていると目がかゆくなり、のどに違和感も感じた。黄砂は例年のことだが、厄介な「空からの贈り物」でもある。

金沢大学の教員時代に黄砂の研究者から聴いた話。黄砂に乗って浮遊する微生物や花粉、有機粉塵などは「黄砂バイオエアロゾル」と呼ばれる。ある研究者は発酵に関連する微生物がいることに気づき、能登半島の上空で採取したバチルス菌で納豆をつくり、金沢の食品会社と連携して商品化した。空から採取したので商品名は「そらなっとう」=写真・上=。納豆特有の匂いが薄いことから、機内食としても使われている。日本の納豆文化はひょっとして黄砂が運んできたのではないかとの研究者の解説を聴いて、妙に納得した。まさに「空からの贈り物」ではないだろうか。

話は変わる。東京地裁はきのう(25日)文科省の解散命令請求を受けて、宗教法人「世界平和統一家庭連合」(旧「統一教会」)に対して解散を命じた=写真・下=。安倍元総理の射殺事件(2022年7月8日)から端を発し、犯人が恨みを持っていたという旧統一教会にいよいよ解散が命じられるという展開になった。もう半世紀も前の話だが、自身も高校生のころにこの教団に洗脳されそうになった経験がある。ブログの2022年7月13日付「マインドコントロールのプロ集団」で当時の様子を書いた。以下、再録。

金沢の高校時代、校門に立っていた金沢大学の医学生だという信者が「人間の幸福とは何か」「生きる幸せとはどういうことか」と問いかけてきて、その言葉が自身の胸に刺さった。市内の教会に何度か通った。ところが、途中から信者たちの話しぶりが命令口調に変わって来た。「こんなことが理解できないのか」といった見下しの言葉になっていた。教会に通っていたほかの高校生たちも自身と同様に途中で「脱落」した。が、熱心に通っていた同級生もいた。その一人が後に日本の旧統一教会の会長に就任した徳野英治氏だ。奥能登の出身で純朴そのものだった彼がいつの間にか大人びた話しぶりになっていた。今にして思えば、マインドコントロールのプロ集団の中にどっぷりと染まっていたのだろう。

高校を卒業してからは会うこともなかったが、再び彼を見たのはテレビだった。旧統一教会の霊感商法が社会問題となり、2009年2月に警視庁の摘発を受け複数の教団信者が逮捕されるという事件があった。このとき、記者会見で謝罪する徳野氏の姿が報じられた。しかし、徳野氏の謝罪以降も霊感商法は止まっていない。全国霊感商法対策弁護士連絡会によると、1987年から2021年までの霊感商法による「被害件数」は3万4537件で、「被害総額」は約1237億円に上るという。物販には壺・印鑑・朝鮮人参濃縮液などが用いられている(Wikipedia「全国霊感商法対策弁護士連絡会」より)

霊感商法で旧統一教会は摘発を受けたが、当時、さらに問題になっていたことがあった。自民党と旧統一教会の癒着だ。反共産主義の立場を共有していて、教会側が選挙支援などを行っていた。自民の議員秘書の中には信者が入り込んでいるなどと、当時、新聞メディアなどが報じていた。いまでもその状況は変わっていないのではないだろうか。

政治と旧統一教会との関係性をネット検索すると、徳野氏が2016年6月、当時の安倍総理から首相官邸に招待されていた、との記事をいくつか見つけた。また、問題となった安倍総理主催の「桜を見る会」にも2015年と16年に旧統一教会幹部が招待されていたようだ。相当、政治に食い込んでいたことが分かった。

「信教の自由」は憲法20条で保障される権利である。しかし、教団という組織に入ってしまうと、基本的な人権や自由は保障されるのだろうか。とくに、カルト教団の組織の中では厳しい上下関係や寄付、さらに政治活動の動員といったことが現実にある。旧統一教会にマインドコントロールされていたのは、むしろ政治家ではなかったか。今回の事件を機に自民党は今後どうこの教団とかかわるのか、毅然とした対応が求められているのではないか。

⇒26日(水)午前・金沢の天気    はれ

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★愛犬と詣でる神社 人にも動物にも「能登はやさしや」の土地柄

2025年03月22日 | ⇒ニュース走査

能登半島の中ほどに位置する中能登町では、神酒として「どぶろく」を造り続けている神社が3社ある。3社は延喜式内の古社でもあり、酒造りの長い歴史を有する。能登半島は国連の食糧農業機関(FAO)から「世界農業遺産」(GIAHS)に認定されているが、まさに稲作と神への感謝の祈り、酒造りの三位一体の原点がここにあるのではないか、この地を訪れるたびにそう感じる。3社の一つである天日陰比咩(あめひかげひめ)神社で面白いイベントが開催されるとニュースで知って、きょう見学に行ってきた。

イベント名は「神社でオフ会 WANだフル ㏌ 天日陰比咩神社」。各地から愛犬家がペットと同伴で集まり、ワークショップに参加し、さらにお祓いも受けることができるという催し。拝殿に上がると、小松市から訪れたという男性が秋田犬とともにお祓いを受けていた。男性は「(ペットは)家族の一員なので、健康と無事を願ってお祓いをお願いしました」と話し、お祓いの後、愛犬とともに玉串を捧げていた=写真=。社務所では犬と子どもたちが触れ合う場や、専門家による愛犬の困りごと相談の場も設けられていた。イベントはあす23日まで。

イベント会場を眺めていて、飼い主と愛犬のほんのりとした雰囲気が漂い、「能登はやさしや土までも」という言葉を思い出した。天日陰比咩神社は石動山(せきどうざん、標高565㍍)のふもとにある神社である。石動山は古来の山岳信仰の霊場でもあった。いまも伊須流岐比古(いするぎひこ)神社の社殿や堂塔伽藍が建ち並ぶ。

「能登はやさしや土まで」という言葉が文献で出てくるのは、元禄9年(1696)に加賀藩の武士、浅加久敬が書いた日記『三日月の日記』だった。浅加は馬に乗って、当時は「御山」と呼ばれていた石動山へ参拝に上った。七曲がりという険しい山道を、道案内をする地元の馬子(少年)が馬をなだめながら、そして自分も笑顔を絶やさずに一生懸命に上った。武士は馬にムチ打ちながら上るものだが、少年は馬を励まし、やさしく接する姿に感心し、日記に「されば・・・能登はやさしや土までも、とうたうも、これならんとおかし」と綴った。「能登はやさしや」はもともと加賀に伝わる杵歌(労働歌)に出てくる言葉だった。

そもそも天日陰比咩神社では、高齢や身体に障害があり階段を登れない人や砂利道が歩きにくい参拝者に配慮して、拝殿の直前まで乗用車で行ける、「ドライブスルー神社」として知られる。慌ただしい日常とは別世界の、人にも動物にもやさしい雰囲気がこの地から漂ってくる。

⇒22日(土)夜・金沢の天気    はれ

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★「土産代わり」10万円の商品券 太っ腹な石破総理に有権者の目線はどう注ぐ

2025年03月15日 | ⇒ニュース走査

政治に対する有権者の不満や不信がくすぶっている。国政選挙以外でその不満や不信が数字になって表れるのが世論調査だ。直近の世論調査だと、時事通信の3月調査(7-10日)では、石破内閣の支持率は前月比0.6ポイント減の27.9%と横ばいだった。不支持率は同4.0ポイント増の44.1%で、去年10月の内閣発足以来、同社の調査では最悪となった。もちろん世論調査はメディア1社だけではなく他社との比較も必要だ。ちなみにNHKの3月の世論調査(7-9日)では、支持率は前月より8ポイント下がって36%、不支持率は10ポイント上がって45%だった。2社の調査で共通して言えるのは不支持率が支持率を上回っていることだ。

先月7日のトランプ大統領との日米首脳会談で、石破総理が日本による対米投資額を1兆㌦に引き上げると約束するなど、ある意味でトランプ氏と渡り合ったことで一定の評価はあった。しかし、その評価は支持率の上昇にはつながっていない。むしろ、経済的な貢献を率先して差し出すのはアメリカへの従属性ではないのかと、有権者には見えたのではないだろうか。

さらに、有権者の政治に対する不満や不信のくすぶりが一気に燃え盛ることになりそうなのが、石破総理による商品券配布の問題だ。メディア各社の報道(15日付)によると、石破氏は今月3日、総理公邸で行った自民党の当選1回の衆議院議員15人との懇談(会食)に先立ち、関係者を通じて、出席議員の事務所に1人10万円相当の商品券を届けたことが参院予算委員会(14日)などで指摘された=写真=。石破氏は14日、商品券の配布は「会食のお土産代わり」「私のポケットマネーで用意して渡したのであって、政治活動に関する寄付に該当せず、政治資金規正法に抵触しない」「私の選挙区の人もおらず、公職選挙法にも抵触しない」と釈明した。

政治資金規正法21条の2は、個人から政治家に対する金銭の寄付とその受領を禁止じている。石破氏は「お土産代わり」と述べているが、5千円から1万円だとあり得るかもしれないが、10万円となるとお土産の概念からかなり外れる。そもそも、商品券を金券ショップや買取業者に持って行けば換金できる。商品券の名目でお金を配っているようなものだ。

冒頭の話に戻る。この商品券問題が長引けば有権者の不満や不信が募り、内閣支持率はさらに低下する。内閣支持率の20%台は政権の「危険水域」、20%以下は「デッドゾーン」とよく言われる。ちなみに、前任の岸田内閣が退陣を表明した2024年8月の世論調査(読売新聞)は支持率が24%、不支持率が63%だった。

⇒15日(土)夜・金沢の天気   くもり時々あめ

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☆トランプ「常軌逸している」世論調査57% ついに矛先を乗用車めぐり日本に

2025年03月14日 | ⇒ニュース走査
「トランプ大統領の経済刷新に向けた行動はあまりにも常軌を逸してる」。ロイター通信Web版(13日付)によると、 ロイター社が世論調査会社と共同で行ったアメリカでの調査(3月11、12日・回答1422人)で、トランプ大統領の関税政策が貿易戦争を引き起こしていることについて、「being too erratic(あまりにも常軌を逸している)」との回答が57%に及んでいることが分かった=写真=。「そこまで常軌を逸していない」は32%、「分からない」あるいは無回答が11%だった。
 
調査では、共和党支持者も3人に1人がトランプ氏の行動が「あまりにも常軌を逸している」と回答した。同時に、トランプ氏の行動が「長期的には報われる」という意見に賛成するとの回答は、共和党支持者では79%に上った。政権運営の手法には好感が持てないが、政策の本質に賛同する共和党支持者が一定数いることを示唆していると伝えている(同)。
 
そのトランプ氏の貿易戦争の矛先がいよいよ日本に向けられてきた。メディア各社の報道(14日付)によると、トランプ氏は12日、ホワイトハウスで記者団に対し、アメリカにおける大量の輸入車について日本を「最大の輸入元の国の一つ」と名指し、「日本にはアメリカ車がない」「日本はアメリカ車を受け入れない」と不満を示した。アメリカ政府は4月2日をめどに25%程度の自動車関税の詳細を発表する方針で、日本政府は日系メーカーの対米直接投資の実績を訴えて関税の除外を求めているが、日米間の溝があらためて浮き彫りとなった(14日付・北陸中日新聞)。
 
日本は2024年、アメリカに137万台の自動車を輸出し、対米輸出総額は全体の3割を占める6兆円に上った。一方、日本はアメリカからEVの「テスラ」や「ジープ」などを輸入しているが、その台数は日本が輸出する台数の100分の1ほどにとどまるとされる。トランプ氏はここをやり玉に挙げて、現在乗用車に課している2.5%の関税を10倍にすると述べたのだ。日本は1978年以降、輸入車に対する関税を課していない。

乗用車の輸出入についてはトランプ氏の恨みは根深い。日経新聞電子版(2月20日付)によると、大統領1期目で「(日本は)日本市場でアメリカ車を売れないようにしている」として非関税障壁をやり玉にあげていた。輸入時の認証や安全、軽自動車への税優遇、環境を巡る規制が厳しいことなどが念頭にあるとみられる。アメリカ通商代表部(USTR)は2024年の報告書でも「アメリカの安全基準認証が日本の基準と同レベルであると認められていない」と車に関する障壁の指摘を続けている。

同じ輸入車でもドイツ車は日本市場で快走する。日本政府や自動車業界の関係者は「不公正な障壁はなく、日本の道路事情や消費者に合わせた商品づくりの問題」と反論してきた。通商の世界で車の非関税障壁を巡る日米のやり取りは、古くから続く論争でもある(同)。これからさらに、トランプ氏の「being too erratic」発言が続くのか。

⇒14日(金)午後・金沢の天気    はれ

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