電波割り当てをテレビ局からIOT、AI、ロボット事業者へ「Society5.0」シフト
本文を読んでいく。NHKを除く民間の放送局に放送規制を全廃する狙いが述べられている。規制はたとえば、一企業による多数のマスメディア集中を排除する第2条、政治的な公平を求めた第4条、番組基準の策定を義務付け、教養・報道・娯楽など番組ジャンルの調和を求めた第5条、番組審議会の設置を義務付けた第7条など多岐にわたる。これらの規制を廃する狙いは、「放送という制度を事実上なくし、インターネット通信の規制と一本化して、ネット動画配信サービスなどと民放テレビ局を同列に扱い、新規参入を促す構えだ」と報じている。記事ではさらに突っ込んで、「放送を電波からネットへ転換させ、空いた電波帯域をオークションで別の事業者に割り当てることも検討するという」と。
放送法の規制全廃に関して作業を行うのは政府の規制改革推進会議。5月ごろにまとめる答申に方針を反映させて、今年秋の臨時国会に関連法案を提出、2020年以降の施行を目指すとしている。冒頭で述べたように共同通信のスクープなのだが、規制改革推進会議のホームページを丹念に読むとその方向性はすでに示されている。
昨年(2017年)11月29日、総理大臣官邸で第23回規制改革推進会議=写真、総理官邸HPより=があり、農地制度の見直しなどに関する第2次答申を大田弘子議長から答申を受け取った後、安倍総理は次のように述べている。「Society5.0を実現するためには、電波の有効利用が不可欠です。国民の財産である電波の経済的価値を最大限引き出すため、電波割当ての仕組みや料金体系を抜本的に改革することが必要であります。これらは、いずれも待ったなしの改革です」「構造改革こそアベノミクスの生命線であり、今後も力強く規制改革にチャレンジしていく考えであります。委員の皆様には、引き続き、大胆な規制改革に精力的に取り組んでいただくよう、よろしくお願いいたします」(総理官邸HPより)。
「Society5.0」はすでに語られているように、IOT、AI、ビッグデータ、ロボットなどの革新技術を最大限に活用することによって、暮らしや社会全体が最適化された社会とされる。狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会の次の5番目のステップ「超スマート社会」を表現している。総理の発言をひと言で表現すれば、情報社会でテレビ局に割り当ててきた電波を、超スマート社会の実現のためのIOT、AI、ビッグデータ、ロボットの事業者に割り当てる、ということだ。
これに対し、現場のテレビ業界は複雑、混乱、不安、可能性などさまざまな思いを抱いていることは想像に難くない。何しろ民放テレビ局には60年余りの歴史があり、「電波の座」をそう簡単に明け渡すわけにはいかないだろう。今月27日のテレビ朝日の定例記者会見で早河洋会長兼CEOは記者から政府の放送事業の見直しの検討について意見を求められ、こう述べている。
「NHKとの二元体制で戦後の復興期から65年、娯楽や文化といったコンテンツを発信し視聴者にも支持され親しまれてきた。報道機関としても取材制作体制を整備し、大きな設備投資も行って、各系列間で切磋琢磨してきた。特に災害報道、地震や台風、最近では噴火、豪雪など、ライフラインとして公共的な役割を担ってきたという自負もある」「規制を撤廃するという話があるが、目を背けたくなる過激な暴力や性表現が青少年や子供に直接降りかかってしまう。それから外資規制がなくなれば、外国の資本が放送局を設立して、その国の情報戦略を展開することになると社会不安にもなるし、安全保障の問題も発生する。こうしたことに、いずれも視聴者から強い拒否反応を招くのではないかと思う」(テレビ朝日HP)
要約すれば、「テレビ事業を甘く見るな、安全保障にだって関わることだ、Society5.0とは次元が違う話なのだ」と早川氏が述べているように私には読める。
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