自在コラム

⇒ 日常で観察したことや環境問題、金沢大学での見聞、マスメディアとインターネットについての考察を紹介する宇野文夫のコラム

★「電波の座」めぐる攻防-上-

2018年03月31日 | ⇒ニュース走査
   おそらくこの記事は共同通信の抜きネタ(スクープ)なのだろう。今月23日付の各紙で「政府 放送規制を全廃方針」の見出しで、政府は政治的公平などを求めた放送法の条文撤廃に加え、放送局への番組基準策定の義務付けなどの規制をほぼ全廃する方針との報道があった。この見出しとリードを読んで、「いよいよ来たか」と直感した。

   電波割り当てをテレビ局からIOT、AI、ロボット事業者へ「Society5.0」シフト

   本文を読んでいく。NHKを除く民間の放送局に放送規制を全廃する狙いが述べられている。規制はたとえば、一企業による多数のマスメディア集中を排除する第2条、政治的な公平を求めた第4条、番組基準の策定を義務付け、教養・報道・娯楽など番組ジャンルの調和を求めた第5条、番組審議会の設置を義務付けた第7条など多岐にわたる。これらの規制を廃する狙いは、「放送という制度を事実上なくし、インターネット通信の規制と一本化して、ネット動画配信サービスなどと民放テレビ局を同列に扱い、新規参入を促す構えだ」と報じている。記事ではさらに突っ込んで、「放送を電波からネットへ転換させ、空いた電波帯域をオークションで別の事業者に割り当てることも検討するという」と。

   放送法の規制全廃に関して作業を行うのは政府の規制改革推進会議。5月ごろにまとめる答申に方針を反映させて、今年秋の臨時国会に関連法案を提出、2020年以降の施行を目指すとしている。冒頭で述べたように共同通信のスクープなのだが、規制改革推進会議のホームページを丹念に読むとその方向性はすでに示されている。

   昨年(2017年)11月29日、総理大臣官邸で第23回規制改革推進会議=写真、総理官邸HPより=があり、農地制度の見直しなどに関する第2次答申を大田弘子議長から答申を受け取った後、安倍総理は次のように述べている。「Society5.0を実現するためには、電波の有効利用が不可欠です。国民の財産である電波の経済的価値を最大限引き出すため、電波割当ての仕組みや料金体系を抜本的に改革することが必要であります。これらは、いずれも待ったなしの改革です」「構造改革こそアベノミクスの生命線であり、今後も力強く規制改革にチャレンジしていく考えであります。委員の皆様には、引き続き、大胆な規制改革に精力的に取り組んでいただくよう、よろしくお願いいたします」(総理官邸HPより)。

   「Society5.0」はすでに語られているように、IOT、AI、ビッグデータ、ロボットなどの革新技術を最大限に活用することによって、暮らしや社会全体が最適化された社会とされる。狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会の次の5番目のステップ「超スマート社会」を表現している。総理の発言をひと言で表現すれば、情報社会でテレビ局に割り当ててきた電波を、超スマート社会の実現のためのIOT、AI、ビッグデータ、ロボットの事業者に割り当てる、ということだ。

   これに対し、現場のテレビ業界は複雑、混乱、不安、可能性などさまざまな思いを抱いていることは想像に難くない。何しろ民放テレビ局には60年余りの歴史があり、「電波の座」をそう簡単に明け渡すわけにはいかないだろう。今月27日のテレビ朝日の定例記者会見で早河洋会長兼CEOは記者から政府の放送事業の見直しの検討について意見を求められ、こう述べている。

   「NHKとの二元体制で戦後の復興期から65年、娯楽や文化といったコンテンツを発信し視聴者にも支持され親しまれてきた。報道機関としても取材制作体制を整備し、大きな設備投資も行って、各系列間で切磋琢磨してきた。特に災害報道、地震や台風、最近では噴火、豪雪など、ライフラインとして公共的な役割を担ってきたという自負もある」「規制を撤廃するという話があるが、目を背けたくなる過激な暴力や性表現が青少年や子供に直接降りかかってしまう。それから外資規制がなくなれば、外国の資本が放送局を設立して、その国の情報戦略を展開することになると社会不安にもなるし、安全保障の問題も発生する。こうしたことに、いずれも視聴者から強い拒否反応を招くのではないかと思う」(テレビ朝日HP)

   要約すれば、「テレビ事業を甘く見るな、安全保障にだって関わることだ、Society5.0とは次元が違う話なのだ」と早川氏が述べているように私には読める。

⇒31日(土)朝・金沢の天気     はれ
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☆逆境に咲く花

2018年03月30日 | ⇒トピック往来

         ことしの冬は北陸豪雪。1月と2月に強烈な寒波に3度襲われ、金沢でも交通インフラなどは一時ガタガタになり、自宅周辺でも積雪量が150㌢になった。自然界にとっては逆境と思える環境の中で、自然の生命は力強い。金沢地方気象台はきのう29日午前、「金沢市で桜が開花した」と発表した。金沢地方気象台の敷地内にあるソメイヨシノの標本木に5、6輪の花が咲いたことで開花宣言となった。

    今年の開花は平年よりも6日早く、去年より6日早いのだ。確かにここ数日は青空が広がり、気温が20度近く上がった。まさに陽気だ。気温が上がったことでソメイヨシノの開花も急テンポで進んだようだ。きょう30日午後、兼六園周辺に出かけたついでに桜を見に行った。すでに、「ぼんぼり」が飾られ、満開を迎えるだけになっていた=写真=。それにしても、金沢地方気象台の発表によると、統計がある1953年以降で6番目に早い開花の観測だという。

   逆境に花を咲かせたのは北陸の桜だけではない。北朝鮮の外交攻勢もなんとなく状況は似ている。核とミサイル開発に対する国連安保理の経済制裁で苦境に陥り、何とか打開しようと韓国・平昌冬季オリンピックの参加をきっかけに、5月にも開催が予定されるアメリカのトランプ大統領と北朝鮮の金正恩党委員長による米朝首脳会談が電撃的に決まり、そして、これも電撃的に金委員長の中国訪問と習近平国家主席の会談。そして来月27日には韓国の文在寅大統領との南北首脳会談がセットされた。

   北の外交のスピード感には舌を巻くが、一体どんなことが交渉に上っているのか、どこのメディアも明確に報じてはいない。当然「北朝鮮の非核化」に向けた会談でなければ意義がないのだが、それが聞こえてこない。こればかりは、徒(あだ)花であって欲しくはない。

   逆転という花もある。きょうの春の選抜高校野球大会(8日目)で、地元の航空石川は高知県の明徳義塾と対戦し、9回裏に劇的な逆転サヨナラ3ラン。センバツ初出場ながらベスト8入りを決めた。お見事、拍手を送りたい。

⇒30日(金)夜・金沢の天気    はれ

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★国会の「まな板の鯉」あがく

2018年03月27日 | ⇒メディア時評
   きょう27日午後、循環器系のカテーテル検査がある。午前10時から点滴が始まるので病室で待機。「そろそろ始まるぞ」と思い、テレビのリモコンをオンにした。国税庁長官を辞任した佐川宣寿氏に対する参院予算委員会での証人喚問が午前9時30分に始まった。自民の丸川珠代氏が、森友学園との国有地取引に安倍総理や夫人の影響があったかを尋ねた。佐川氏は「昨年の国会答弁を通じて過去の文書を見ている。その中では一切、総理や総理夫人の影響があったとは私は全く考えていません」と否定した。

   また、丸川氏は国有地の取り引きについて国有地取引に関する決裁文書では書き換え前に「特例的」とか「特殊性」といった表現が記載されていたことについて「総理夫人の関与を意味しているか」と質問した。佐川氏は「通常は国有財産は売却するが、貸し付ける場合の期間は通達に3年間と書いており、その期間は特例承認をもらって変えることができる。特例とはそういう意味だと昨年も答弁している」と述べ、「本件の特殊性」という記述は政治家の関与を意味しているものではないとした。

   午前10時、点滴を受けながらテレビを食い入るように見た。証人喚問の中継を視聴していて、気になったのが、「私がどのように関わったかの問題そのものなので、告発されている身なので答弁は控える」「刑事訴追のおそれがあるので答弁は控えたい」と繰り返し答弁を拒んだことだ。佐川氏は補佐人の弁護士にたびたび助言を求め、「刑事訴追の恐れ」を繰り返し証言を拒否する場面が目立った。

   うがった見方かもしれないが、佐川氏については、理財局長だった当時「森友学園との交渉記録を破棄した」として、東京大学名誉教授らの市民団体が昨年10月、公文書等毀棄などの容疑で告発し、受理した大阪地検特捜部が調べることになっている。きょうの証人喚問の終了降、特捜部は任意で佐川氏に事情を聴くことが決まっていて、すでに本人に連絡が入っているのではないか。だから佐川氏の気持ちは国会ではなく特捜部に向いていて、国会で言質を取られないように必死に予防線を張っている。何しろ国家公務員の場合、刑事訴追が現実になれば、退職金がゼロになる場合もあるのだ。

   もう一つ。総理夫人付の政府職員がFAXと電話で問い合わせた財務省理財局の田村室長について、佐川氏は「田村、いや田村室長」と何度も繰り返した。かつての職場での上下関係とは言え、名前の呼び捨てを繰り返したことで、理財局の内部の雰囲気が十分に伝わってきた。上下関係が支配する怖い職場なのだと。午前11時40分ごろに参院予算委員会の証人喚問が終わった。

   心臓カテーテル検査のため昼食は抜きだった。点滴のまま車イスに乗せられ、検査室へ。午後1時、カテーテル検査が始まった。右手首の血管にプラスチック製のチューブ(カテーテル)が挿入された。造影剤を注入されると右手が急に一瞬熱くなった。血管を造影することで狭窄や閉塞(血管が細くなっている部分、詰まっている部分)が調べられた。20分余りの検査だったが長く感じた。検査を終えた医師はひと言。「早めに見つかってよかった」

   病室に戻りテレビをつけると、今度は衆院予算委員会で佐川氏の証人喚問が行われていた。私は検査台の上では完全に「まな板の鯉」で静かに横たわっていた。しかし、国会の「まな板の鯉」の佐川氏は最後まで「刑事訴追のおそれがあるので答弁は控えたい」とあがいていた。

⇒27日(火)夜・金沢の天気    はれ 
   
   
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☆「関与」の混同、国会の混乱

2018年03月26日 | ⇒メディア時評
     26日午後、循環器系のカテーテル検査のため金沢市内の病院に入院した。個室を予約していて、部屋に入った。バスやトレイ、テレビなどはあるが、シャンプーや石鹸などのアメニティ用品を持参するのを忘れ、病院の売店で買い整えた。一息ついて、テレビのリモコンボタンを押すと、NHKで国会の予算委員会の中継があり、社民党の福島瑞穂議員が質問をしていた。午後3時50分ごろだった。福島氏は、きょう(26日)午前中に大阪拘置所を訪れ、詐欺罪などで起訴され拘留中の籠池泰典被告と面会したと述べていた。

     その語り口調は、自信に満ちている印象だった。「きょうの接見をベースに質問をします。しっかりした証言を得ました」と言わんばかり。弁護士出身の議員なのだ。一連の国会質問のキーワードは「関与」と「改ざん」もしくは「書き換え」ではないだろうか。「関与」とは、安倍総理夫人の関与だ。近畿財務局による国有地の売却価格に絡んで、夫人が「いい土地ですから、前に進めてください」と述べ、夫人付の政府職員がFAXなどで関連部局に問い合わせした、ということが問題になっている。国有地取引に関する決裁文書では当初「いい土地ですから、前に進めてください」と記されていたが、その後に削除され、財務省の改ざん、書き換えが新たな問題として浮上している。

     夫人の関与は夫人付の政府職員によるFAXと電話による問い合わせが何よりの証拠だと福島氏も述べていたが、そもそも関与の定義があいまいで混乱している。夫人が名誉校長であった事実をもって「関与だ」と主張していた議員がいた。言葉の概念と経緯からして、国有地の価格引き下げに直接関わることが「関与」だろう。また、夫人付の政府職員にしても、問い合わせは「関与」に当たるだろうか。これが裁判へと展開すれば、おそらく関与の証拠にはならない。

     国会での質問で野党側が熱くなってはいるが、「関与」の言葉は定義があいまで、それぞれが勝手な解釈で使っている限り、議論は混乱するだけだろう。野党側は、安倍総理夫人による土地取引における関与をどこまで立証するのか、立証できなければ司法に託すべきだろう。

     朝日新聞が今月17、18日に実施した世論調査(電話)によると、内閣の支持率は31%(2月の前回調査44%)と急落、第2次安倍内閣の発足以降で最低となった。不支持率は48%(同37%)。政党支持率は自民32%(同35%)、立憲民主11%(同10%)、希望1%(同1%)だった。内閣支持率の低迷はさもありなんと思うのだが、野党への期待度も高まっていない。ただ政治の混乱、有権者にとってこんな不幸なことはない。

⇒26日(月)夜・金沢の天気      はれ
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★告発する理由

2018年03月25日 | ⇒メディア時評
    世の中が告発を煽る風潮になっている。もちろん告発は許される。企業の内部告発では、通報者が解雇など不利益をこうむらないための公益通報者保護法もある。ただ、問題は告発を煽るシステムがつくられ、誰かが利益を得る仕掛けとなっているのではないかということだ。そうなると、告発は正義でもなんでもない、ビジネスだ。

    最近不思議に思った告発は「レスリング女子の伊調馨選手へのパワハラ」問題だった。レスリング女子でオリンピック4連覇の伊調選手が日本レスリング協会の栄和人強化本部長からパワーハラスメントを受けたとする告発状が内閣府の公益認定等委員会に提出された(1月18日)。日本レスリング協会は公益財団法人であることから、告発状をあえて第三者の審議機関に出したのだろう。報道によると、告発状では、伊調選手が練習に通っていた警視庁の施設への出入りを、栄氏が禁じたと訴えている。

    これに対し、日本レスリング協会は告発内容を否定し、伊調選手も「告発状には関わっていない。しかるべき機関から正式に問い合わせがあった場合はご説明することも検討したい」としている。本人が関知しない告発状の意味は一体どこにあるのか。うがった見方をすれば、わざわざ内閣府に告発状を出し、同時に週刊誌にリークして、ことを大きくして世間の注目を浴びることに長けた「告発のプロ」が背後にいる。なぜそのような仕掛けをするのか、ニュースを聴いていぶかっている。ひょっとして、裏取引を仕掛ける告発ビジネスではないのか、と。内閣府の調査が待たれる。

    自称フリージャーナリストの女性が元TBSの記者の男性を、望まない性行為で精神的苦痛を受けたとして民事訴訟で訴えている問題。1100万円の損害賠償を求めた訴訟だ。報道によると、女性は2015年4月、就職の相談をしようと都内で男性と会食し、その後意識を失ってホテルで望まない性行為をされたと訴えている。この問題が浮き上がった当初はハリウッドで起きた「#MeToo」(ハッシュタグミートゥー)、セクハラ告発が日本でもムーブメントとして起きたとの新鮮な印象だった。顔をメディアに出しての告発で、勇気ある女性とも思った。

   ところが、事件性は徐々に消えていった。警視庁はこの件を男性による準強姦罪の容疑で捜査したが、東京地検は2017年4月、嫌疑不十分で不起訴処分。女性は5月に司法記者クラブで会見し、検察審査会に不服を申し立てたことを公表したが、検察審査会は9月に「不起訴相当」との議決を出した。女性はめげずに民事訴訟で訴えた。行動に少々違和感を感じたのは、2017年10月、日本外国特派員協会での記者会見だった。女性はそれまで「詩織」と名を明かしていたが、この会見で姓も明かした。そして席上、同じ月に手記を出版したことを公表したのだ。

   ニュースの流れを素直に読めば、一連の流れは著書を売るために出版社と組んだ、告発ビジネスではないかと誰もが想像するだろう。もちろん、元TBS記者の男性を擁護するつもりは一切ない。

⇒25日(日)午前・金沢の天気     はれ
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☆賛美歌をうたう

2018年03月17日 | ⇒ドキュメント回廊

    きのう(16日)高校時代の恩師が逝去され、葬儀に参列した。日本基督教団若草教会(金沢市)で営まれ、賛美歌「いつくしみ深い」など歌い、故人を偲んだ。心に残る感動深い葬儀だった。

   恩師は関丕(せき・ひろ)さん、享年86歳。7年前から循環器系の病気を患っていた。高校1年のときのクラス担任で英語の女性教師、カウンセリングでもよく相談に乗っていただいた。高校を卒業して20年後、テレビ局で番組づくりに携わっていたとき取材でインタビューする機会に恵まれた。1992年10月公開のアニメ映画『パッチンして!おばあちゃん』の原作者であり、そして主人公としてだった。

   関さんは、脳血栓で自宅療養中の母ヤスエさんと2人暮らしだった。母が発作で倒れ入院。教壇に立ちながら親の看護を続けた関さん自身も過労で倒れた。病院の事務員に関さんの教え子がいて、仲間や友人に呼びかけて、また関さんの友人たちも加わってヤスエさんの付き添いをするグループの輪ができた。

   ヤスエさんは視覚と聴覚を除いて全身が麻痺していた。介護を通じて、まばたきで「イエス」「ノー」のコミュニケーションで「会話」を交わすようになった。このまばたき会話のことをグループでは「パッチン」と称していた。ヤスエさんは熱心なクリスチャンだった。クリスマスの夜、キャンドルを持ったグループの人たちが集まった病室で、ヤスエさんは力をふり絞るようにして声を発した。それは「ありがとう」の「あ」という一語だった。関さんは母親の死後、その実話を単行本『光のなかの生と死』(朝日新聞社)として出版。その著書を読んで感動した、朝日新聞社の向平羑(むかひら・すすむ)氏が脚本を担当して映画化が進められた。

   まばたき以外にコミュニケーションの手立てがない寝たきりの母をめぐる関さん、そして周囲の人々との交流がリアルに描かれたアニメーションとなった。当時、親の介護と言えば子どもたちや親族が面倒をみるものという固定観念があった。それを覆すように、周囲の人々も支える介護のカタチとして描かれ、当時とても新鮮な感動を呼んだ。

   関さんは持病を抱えながらも英会話教室を主宰し、時には欧米に出向き、多様な人々とのコミュニケーションを何よりも大切にしていた。まっすぐに生き、教育に捧げた人生だった。「真理を行う者は光の方に乗る。その行いが神に導かれてなされたということが、明らかになるために」(ヨハネによる福音書)

⇒17日(土)夜・金沢の天気    はれ

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★この冬の覚え書き

2018年03月13日 | ⇒ドキュメント回廊

     それにしても、3月中ごろになった今でもこの冬の豪雪が話題になる。「庭の雪がまだ融けないね」「雪で庭木の枝が折れたよ」「雪すかしで折れたスコップはどう処分すればいいのか」といった金沢に住む仲間たちとの会話だ。

     1月と2月に強烈な寒波が3回やってきた。交通インフラなどガタガタになった2月7日、石川県内の公立の小中高校では3分の2に当たる232校が休校となった。金沢大学でも全面休講となった。自宅前は通学路なのだが、子どもたちの姿はなく、代わって通勤の大人たちが通りに目立った。マイカーやバスは通勤に使えず、徒歩で急ぐ様子だった。11日は朝から市内で一斉の除雪活動が行われた。自宅前の道路は30㌢ほどの高さの氷のように堅くなった雪道となっていたので、ツルハシで雪道を砕いた。

    なにしろ自宅周辺でも一時積雪量が150㌢になった。この雪で、雪吊りを施してある庭の松の枝が一本折れた。先日(3月11日)造園業の職人さんに来てもらって、雪吊りを外すための打ち合せをした。「雪吊りの松の枝が折れるほど大雪は初めてだった」と話すと、職人さんは「まだいい方ですよ。幹が折れたお宅もありますよ」と。折れた木の伐採と植え替え、剪定など豪雪の後始末で植木職人はこの春とても忙しいようだ。

    雪すかしでスコップを酷使したせいか、この冬で計3本折れた。3本とも強化プラスチック製で耐久性があると思って購入したのだが、柄とスコップ面の結節個所がもろくも。先月8日にスコップを買いに日曜大工の量販店に行った。すると「除雪用品は完売しました」と貼り紙がしてあった=写真=。こちらは必要に追われて買い求めに来たのに「完売しました」とさもうれしそうな文面はいかがなものかと思いながら、店員に尋ねた。「で、入荷はいつなんですか」と。すると店員は「全国的に品切れ状態のようで、いつになるかメドが立っていません」とこれまたニコニコと。こちらは困っているのに、店員の顔の表情にTPO(Time、Place、Occasion)が感じられない。

    「完売しました」もそうだ。「品切れでご迷惑をおかけしております」ならば角は立たないのにと思いながら店を出た。4時間後、別の商品を買いに再びこの店を訪れたところ、スコップが入荷していて、人だかりになっていた。運よく1本購入できたが、「入荷のメドがないと言っていたではないか」と再び割り切れない気持ちで店を出た。

    北陸豪雪は、家屋倒壊やアイスバーンの道路での転覆事故が相次ぎ、乗用車1000台が連なるなど全国ニュースになった。経済にも影響を与えている。きのう12日、北陸財務局が発表した「北陸3県の法人企業景気予測調査」によると、1-3月の景況判断指数(BSI)が非製造業でマイナス11に大きくぶれた。物流の滞りや宿泊予約のキャンセルが相次いだことが要因で、豪雪の影響力をまざまざと見せつけられた。

    スコップ3本、松の枝1本を折って、個人的に冬は終わり。庭の雪解けもあと少し。三寒四温で春本番を待つ。

⇒13日(火)午前・金沢の天気     はれ        

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☆「7選も最低投票率」「4選も67票差」どう読むか

2018年03月12日 | ⇒ニュース走査

    石川県知事選、そして輪島市長選がきのう11日、投開票が行われ、知事選は現職の谷本正憲氏が7回目の当選、輪島市長選は現職の梶文秋氏が4選を果たした。選挙はなんと言っても数字がすべてを物語る。結論から言う、知事選の投票率は過去最低の39.07%、輪島市長選は67票差の勝利だった。これを数字的にどう読むか。

    全国最多となる7選を果たした谷本氏の当選確実は投票が締め切られた午後8時00分、ほぼ同時にテレビ各社が選挙速報が打った。「石川県知事選 谷本正憲氏の当選確実」と。テレビ各社は投票段階で出口調査(投票所の出口で、投票を済ませた有権者に誰に入れたか記入してもらう)のデータを得て、2位の候補者と10ポイント以上の開きがあることを「基準」に速報テロップを流す。今回の知事選では、現職の対抗馬は無所属の新人で、共産党が推薦する候補者だった。開票結果を見ても、現職谷本氏は28万8531票、対抗馬の候補者は7万2414票、圧勝だった。

    ただ、投票率は過去最低の39.07%だった。とくに、金沢市の投票率は30.68%、隣接の野々市市は30.36%と両市がダントツに低い。金沢市の場合は県議補選もあり、投票の「相乗効果」が期待されたにもかかわらずである。天気も時折晴れ間ものぞき、選挙には決してマイナスではなかった。では、なぜ過去最低の投票率となったのか。現職の多選批判もあったかもしれないが、そんな単純な話でもない。なにしろ、過去最低の投票率でも現職は前回(2014年)より得票数を3300票伸ばしているのだ。

    市町別の投票率を比べてみると、全体に前回より4ポイントほど投票率を落としている市町が目立つが、7ポイント下がったのは金沢市、野々市市、かほく市、津幡町、内灘町だ。この5つの地域には共通項がある。それは、大学や短大、高専が立地している地域だということだ。選挙権を20歳から18歳に引き下げたのが2016年。それ以降、今回は初めての知事選。有権者数も前回に比べ1万7千人増えて95万人になっている。

    以下は憶測だ。投票率を下げた原因は、18歳、19歳の棄権率が高かったからではないか。とくに、県外からの学生たちにとっては現職の名前すらも知らないとう学生が多いのではないだろか。学生層にとって知事選は皮膚感覚として離れているかもしれない。自分がその身だったら果たして投票に行っただろうか。きのう午後、投票場に出かけたが、確かに若者らしき姿を見かけなかった。県選挙管理委員会による今回知事選の年代別投票率のデータ公開が待たれる。

    輪島市長選もデータとして興味深かった。市長選の投票率は69.92%だった。同市の知事選の投票率も70.16%と市長選と知事選の相乗効果が表れている。4選を果たした梶氏は元市役所職員、対抗馬も元市役所職員。同市に住む知人から聞いた市長選の下馬評は梶氏の圧勝だった。「なにしろ市会議員17人のうち12人が現職を担ぎ、対抗馬を支持しているのは1人だよ」と。そう聞かされていたので、テレビの速報テロップも知事選に次いで流れるだろうと予想していた。が、なかなか出ない。それもそのはず、現職8389票、対抗馬の候補者は8322票でわずか67票差。テレビ各社が梶氏当選の速報を打ったのは午後11時40分。わずかな票差のため、テレビ各社は票が確定するまで速報は打てなかったようだ。

    大接戦となった理由は何だったのだろうか。産業廃棄物処分場問題がくすぶっているのかもしれないと考えた。昨年2月19日に同市門前町大釜地区で計画されている産業廃棄物処分場の建設の是非をめぐり、住民投票が行われたが、投票率は42.02%で規定の50%を下回り投票は不成立となった。住民投票をめぐって、建設推進の市議らが「棄権」を呼びかけた経緯があり、当時「投票の自由を妨げる」と一部住民側から問題視する声が出ていた。梶氏はこの不成立の結果を受け、その後粛々と処分場の受け入れを進めている。

    そうした経緯での今回の市長選だった。対抗馬の候補者は「業廃棄物処分場は負の遺産だ」と訴えていた。薄氷の勝利であろうと選挙の勝ち負けははっきりしている。が、産業廃棄物処分場問題の根深さが噴き出した。そんな開票結果ではなかったか。

⇒12日(月)午後・金沢の天気    はれ

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★3・11 あれから7年

2018年03月11日 | ⇒ドキュメント回廊

  「3・11」、私はその時、大学で社会人向けの公開講座で講義をしていた。「東北にでかい地震が起きて、津波も来るらしい」と事務スタッフが講義室に入ってきて、耳打ちしてくれた。講義を中断して、受講生にその旨を伝えると騒然となった。講義を早めに切り上げた。自身も震災のことが気になって仕方がなかったからだ。

  その脳裏にあったのは前年(2010年8月)、「能登里山マイスター」養成プログラムの講義に能登に来ていただいた畠山重篤氏(気仙沼市)のことだった。講義のテーマは、「森は海の恋人運動」だった。畠山氏らカキの養殖業者は気仙沼湾に注ぐ大川の上流で植林活動を1989年から20年余り続け、約5万本の広葉樹(40種類)を植えた。この川ではウナギの数が増え、ウナギが産卵する海になり、「豊饒な海が戻ってきた」と畠山氏はうれしそうに話していた。畠山氏らが心血を注いで再生に取り組んだ気仙沼の湾が「火の海」になった。心が痛む。畠山氏らの無事を願っていた。

  ちょうど2ヵ月後の5月11日から3日間、宮城県の仙台市と気仙沼市を中心に取材した。震災から2ヵ月にあたりということで、各地で亡くなった人たちを弔う慰霊の行事が営まれていた。気仙沼市役所にほど近い公園では、大漁旗を掲げた慰霊祭があった。大漁旗は港町・気仙沼のシンボルといわれる。震災では漁船もろとも大漁旗も多く流されドロまみれになっていたものを市民の有志が拾い集め、何度も洗濯して慰霊祭に掲げられた。この日は曇天だったが、色とりどりの大漁旗旗は大空に映えた。

   その旗をよく見ると、「祝 大漁」の「祝」の文字を別の布で覆い、「祈」を書き入れたものも数枚あった=写真=。おそらく、市民有志がこの大漁旗の持ち主と話し合いの上で「祈 大漁」としたのであろう。漁船は使えず、漁に出たくとも出れない、せめて祈るしかない、あるいは亡き漁師仲間の冥福を祈ったのかもしれない。持ち主のそんな気持ちが伝わってきた。午後2時46分に黙とうが始まった。一瞬の静けさの中で、祈る人々のさまざま思いが交錯したに違いない。被災者ではない自分自身は周囲の様子を眺めそう思いやるしかなかった。

   公園から港方向に緩い坂を下り、カーブを曲がると焼野原の光景が広がっていた。気仙沼は震災と津波、そして火災に見舞われた。漁船が焼け、町が燃え、津波に洗われガレキと化した街だった。リアス式海岸の入り江であったため、勢いを増した津波が石油タンクを流し、数百トンものトロール漁船をも陸に押し上げた。以前見た関東大震災の写真とそっくりだ。「天変地異」という言葉が脳裏をよぎった。

   畠山氏とアポイントを取らずに出かけ、自宅を訪れると「さきほど東京に向かった」とのこと。行き違いになった。そこでアポをとっていただき、翌日12日朝、仙台駅から新幹線で東京駅に。八重洲ブックセンターで畠山氏と二男の耕氏と会った。畠山氏は津波で母を亡くされた。コーヒーを飲みながら近況を聞かせていただき、9月に開催するシンポジウムでの基調講演をお願いした。その時に、間伐もされないまま放置されている山林の木をどう復興に活用すればよいか、どう住宅材として活かすか、まずはカキ筏(いかだ)に木材を使いたいと、長く伸びたあごひげをなでながら語っておられたのが印象的だった。

   あれから7年、この間能登に2度来ていだき講演や講義もしていただいた。先日(3月3日)のNHK-ETV特集「カキと森と長靴と」で畠山氏がモノローグで語るドキュメンタリー番組が放送された。海は自らの力で必ず回復すると信じて養殖再開に挑む姿がそこにあった。津波という災害をもたらした海、生業(なりわい)の再興をかける海。「海との和解」、そんな畠山氏の思いを語りから感じた。

⇒11日(日)午後・金沢の天気   くもり

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☆潮目は変わったのか

2018年03月09日 | ⇒メディア時評

       アメリカのトランプ大統領の8日付の公式ツイッター=写真=そのものがリアルな国際政治だ。「金総書記は韓国代表に凍結だけでなく、非核化についても話した。また、この期間中の北朝鮮によるミサイル発射もない。大きな進展が見られるが、合意に至るまで制裁は続く。会議が計画中だ!」

   「凍結」は核開発の凍結、「合意」とは非核化の正式な合意、「最大限の圧力」とは国連の経済制裁による最大限の圧力のことだろう。このツイッターを素直に読めば、トランプ大統領は「オレは戦わずして勝った!」と誇示しているように思える。

   9日付の韓国「朝鮮日報」の電子版は、韓国の特使が8日、アメリカのトランプ大統領に北朝鮮の金正恩労働党委員長からの親書を手渡し、「金委員長は非核化の意思を持っている」と伝え、これに対し、トランプは5月までに金委員長と会う意向があると述べた、と伝えている。トランプ氏あての親書には、1)北朝鮮の非核化意思に関する内容、2)核とミサイル実験を中止するという内容、3)トランプ大統領と早期に会談を希望するという内容などが書かれているという。トランプのツイッターの文と、朝鮮日報の記事は一致するので、双方の内容には信憑性を感じる。

    また、朝鮮日報の記事で「米韓の軍事演習が継続される必要があることを理解している」とあることに疑問符がついた。軍事演習に関しては、最近まで北朝鮮の朝鮮中央通信は「南北関係改善の流れを必死に遮ろうとしている」(2月2日)とアメリカを非難していたではないか。

   国際政治の潮目が変われば、さまざまに逆転現象が起きる。南北首脳会談の合意(6日)を受けて北朝鮮リスクが後退したことから、機雷など生産する防衛関連株で知られる石川製作所(本社・石川県白山市)の7日の株価はストップ安(マイナス500円)となった。きょう9日も261円安、11%下げの2130円で引けた。北朝鮮に絡む懸念が後退するとともに、売りが膨らんでいる。昨年10月16日に4205円(終値)をつけていたのでほぼ50%の下落となった。

   この防衛関連株の様子を見れば、いわゆる「地政学的リスク」が弱まったということだろうか。一方で、毎日のように日本海側の海岸線に北朝鮮の木造漁船が漂着とのニュースが伝えられている。6日に石川県輪島市に漂着した船は全長4.5㍍、幅2.2㍍の小船だ。乗組員や遺留品は見つかっていない。こんな小船を冬の日本海の荒波に駆り出す北の政治体制はいったいどうなっているのか。北朝鮮沿岸の日本海漁場での操業権を中国漁船に売り、結果として北朝鮮の漁船は沿岸から遠く離れた漁場に駆り出されているとも伝えられている。

   平昌冬季オリンピックの南北合同参加をきっかけとした潮目の変わりで果たしてどれだけ北の危機を緩和できるのだろうか。現実に朝鮮半島の危機はより深まっているのではないか。木造漁船の漂着は「大量の難民船」の予兆ではないかの。日本海を眺めているとそんなことを考える。

⇒9日(金)午後・金沢の天気  あめ

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