自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆米中の架け橋失われる キッシンジャー氏が死去

2023年11月30日 | ⇒ニュース走査

   「バランス・オブ・パワー(勢力均衡)」という言葉を知ったのは半世紀も前、高校生のときだった。アメリカの大統領補佐官だったヘンリー・キッシンジャー氏が1971年7月に密かに中華人民共和国を訪れ周恩来首相と会談し、その後「来年2月にニクソン大統領が訪中する」と発表し、世界をアッと驚かせた。そのとき、日本のメディアも盛んに「アメリカのバランス・オブ・パワー」と取り上げた。当時、アメリカの最大の敵だったソ連より優位な地位を保つための現実主義的な外交で、「キッシンジャー外交」と評された。その後、ニクソン訪中が実現し、79年1月の国交正常化につなげた。

   ダイナミックな外交と裏腹に、予期せぬ事態も起きた。キッシンジャー氏がニクソン大統領の中華人民共和国への訪問を公表すると、国連がにわかに動いた。中国の場合、もともと常任理事国は第2次世界大戦の戦勝国である国民党の中華民国だった。それが中国共産党に追われ台湾に逃れた。71年10月にいわゆる「アルバニア決議」が国連で発議され、中国の代表権は中華人民共和国にあると可決され、中華民国は常任理事国の座から外され、国連を脱退することになる。中華人民共和国が国連に加盟し、台湾の常任理事国を引き継ぐことになった。アルバニア決議にはアメリカも日本も反対した。(※写真はキッシンジャー氏の訃報を伝えるCNNニュースWeb版)

   リアリストであるキッシンジャー氏は、中国の発展を受け入れつつ、中国とうまく付き合いながら、アメリカへのショックを和らげるというカタチで米中の関係を取り持ってきた。ことし7月にも、米中の対立が続く中、北京を訪問して習近平国家主席と会談、11月15日に行われた米中首脳会談に向けた根回しをしたとされる。

   そのキッシンジャー氏が今月29日、死去した。100歳だった。米中関係の改善だけでなく、73年には泥沼化していたベトナム戦争の和平交渉をまとめ、ノーベル平和賞を受賞している。バランス・オブ・パワーに尽くした人だった。

⇒30日(木)夜・金沢の天気   くもり

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★テレビ業界の落日なのか 寄付金の着服など相次ぐ不祥事

2023年11月29日 | ⇒メディア時評

   驚いたことに、きのう28日にテレビメディアの不祥事が相次いで公表された。鳥取県のローカル局「日本海テレビ」と大阪の準キー局「読売テレビ」、2局は日本テレビの系列局だ。

   日本海テレビは山陰地方を放送エリアとしている。同社のプレスリリース「弊社元幹部社員の不正について」(28日付)によると、経営戦略局長は2014年から全国ネットのチャリティー番組『24時間テレビ』への寄付金を10年にわたって264万円、さらに同社の売上金など853万円の合計1100万円余りを着服していた。今月27日付で懲戒解雇とし、28日に鳥取警察署に被害届を出した。局長は今月初めに税務調査があり、着服の発覚を恐れて自ら申告。社内調査で寄付金の着服が発覚した。

   24時間テレビの寄付金は、金融機関に運ぶまで社内で一時的に保管されていて、その一部を持ち出して自らの銀行口座に入れていた。24時間テレビは1978年に放送を開始し、慈善事業を展開してきた。その由緒ある番組に泥を塗っただけでなく、寄付した人々の善意を踏みにじった行為だ。

   また、読売テレビのプレスリリース「当社社員の不正行為について 」(28日付)によると、制作局で管理職を務める40代の管理職社員は2020年4月から23年6月にかけて、関西ローカルの音楽番組『カミオト夜』の制作をめぐり、外部の番組制作会社に架空経費、総額1383万円を読売テレビに請求させていた。このうち877万円を管理職社員が着服、残り506万円は別番組の経費に充てる不正をしていた。

   管理職社員は自ら飲食した際の領収書を月ごとにまとめて制作会社に渡し、その分の現金を受け取っていた。制作会社は「追加演出費」や「追加撮影費」の名目で読売テレビに請求していた。まさに、自作自演の不正請求だ。読売テレビは管理職社員を28日付で懲戒解雇処分。また、番組『カミオト夜』を年内で休止する。

   テレビ業界で制作現場の管理職という地位は、番組に関して絶対的な権限を有している。タレントの配置や制作会社の選定などさまざまだ。そうした権限を悪用すれば、勝手し放題となる。今回の不正行為はその象徴的な出来事だろう。デジタル社会の進展で、視聴者のテレビ離れはさらに進む。テレビ業界の落日のような光景だ。

⇒29日(水)夜・金沢の天気   あめ時々くもり

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☆枯れ葉舞うイチョウ並木と「ぬれ落ち葉」の話

2023年11月28日 | ⇒ドキュメント回廊

         紅葉も深まった。金沢市内では北風も吹いていて、イチョウ並木では枯れ葉が舞っていた=写真・上=。くもり空と黄ばんた並木の風景は絵画の世界のようで心が和む。イチョウの大木は「オオイチョウ」と呼ばれ、長寿の樹木が多い。花言葉も「荘厳」「長寿」「鎮魂」などがある。撮影した場所は、金沢工業大学キャンパスの近く。道路を新設する際に周辺の風景に配慮してイチョウ並木を植栽したのだろう。地域全体が黄色く染まったいるような光景だった。

   話は変わる。市内の道路や広場、駐車場などいたるところで落ち葉が舞い落ちている。緑の街である金沢らしい晩秋の光景でもある。そして、この季節一番の仕事は落ち葉かき。一度すっきりと掃いても、数日たつとまた降り積もり落ち葉かきに追われる。

   落ち葉かきで一番やっかいなのが、ぬれ落ち葉。水気のある舗装面などに張りついていると、ほうきで掃いてもなかなか剥がれない=写真・下=。結局、手で一枚一枚取る。

   つい先日もぬれ落ち葉を剥いでいて、ふと「岸田政権もぬれ落ち葉か」などとイメージを膨らませた。読売新聞の11月の世論調査(17-19日)で内閣支持率は24%と前回10月調査より10ポイントも下げた。読売調査の内閣支持率の20%台は政権の「危険水域」、20%以下は「デッドゾーン」とよく言われる。さらに、9月の内閣改造以降で、政務三役である文科政務官や法務副大臣、財務副大臣が相次いで不祥事で辞任した、いわゆる「辞任ドミノ」。それでも、政権にべったり張りついたままだ。

   「ぬれ落ち葉」内閣が内政や外交に今後どのような影響を及ぼすのか、そして鬱陶(うっとう)しさを募らせた有権者の投票行動は。などと、とりとめのないことを頭に浮かべながら落ち葉かきをしていた。

⇒28日(火)午後・金沢の天気    くもり時々あめ

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★花火ミュージックスターマイン デジタル技術で魅せる

2023年11月27日 | ⇒トレンド探査

   最近、花火は夏だけでなく、春、秋、冬と季節を問わずイベントとして打ち上げられるようになった。先日、能登半島のつけ根にある宝達志水町で花火会社「能登煙火」を経営する嵯峨井大民(さがい・ひろたみ)氏の講演があり、聴きに行った。演題は「能登花火のルーツと最新の花火演出」。興味が沸いたのは、「花火が進化している」との話を聞いたからだ。

   嵯峨井氏は神社の宮司でもある。会社は同じく宮司だった祖父が1933年に創業した。当時、花火は神社に奉納するものだったが、最近では地域の祭りやイベントなど幅広く花火が打ち上げられるようになった。(※写真・上は、花火の打ち上げで必ずヘルメットを着用すると説明する嵯峨井氏)

   花火といえば、かつては「打上げ花火」が主流だった。1発1発をじっくり楽しむ。菊や牡丹の花、柳の枝葉などいろいろ種類がカタチが楽しめる。さらに、「スターマイン」の花火は、さまざまな種類の花火を連続で打上げたり、多数の花火を同時に打上げたりして、​豪華さと迫力がある。

   その花火がさらに進化を遂げている。「音楽スターマイン」だ。ミュージックと花火をシンクロさせて打ち上げる。同町でことし10月7日で催された花火大会で披露された「音楽スターマイン」の曲は、ロッシーニ作曲・歌劇『ウィリアム・テル』序曲だった。講演ではそのときの動画が上映された。あのリズミカルな曲に合わせて、花火玉の種類や大きさ、色合いの組み合わせでストーリーが描かれる=写真・下=。ビデオながら感動がダイレクトに伝わってきた。

   さらに驚いたことに、この演出にはデジタル技術がある。音楽に合わせて打ち上げのタイミングを決定し、コンピューターのプログラミングによって花火と音楽をシンクロさせて打ち上げる。夜空に描かれる光のアートはデジタル技術で可能になったと聞き、花火はアナログとのこれまでのイメ-ジがひっくり返った。

   同町では来年もミュージックスターマインを開催する。ぜひこの目と耳で夜空の光と音楽のアートを楽しみ、打ち上げ現場もぜひ見学し、花火の進化を確認したいと思った次第。もちろんヘルメット持参で。

⇒27日(月)夜・金沢の天気   くもり

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☆北朝鮮の偵察衛星めぐる日本と米韓の認識の違い 

2023年11月25日 | ⇒ニュース走査

   防衛省公式サイトによると、木原防衛大臣きのう24日の記者会見で、北朝鮮が今月21日に弾道ミサイル技術を使った衛星の打ち上げについて、「米国および韓国とも連携しながら分析を進めた結果、北朝鮮が発射した何らかの物体が地球を周回していることを確認した」と述べている。打ち上げが成功したかの評価は明言を避けている。防衛省は、22日に「これまで地球の周回軌道への衛星の投入は確認されていない」と発表。第三者はだれもが衛星発射は3回目の今回も失敗したと解釈していた。

   当事者の北朝鮮は、労働新聞Web版(22日付)などが軍事偵察衛星「万里鏡1号」を搭載した新型運搬ロケット「千里馬1型」を打ち上げ、「偵察衛星の発射に成功」と報じていた=写真・上=。また、韓国軍も「衛星は軌道に進入したものと見られる」との見方を22日に示していた(同日付・NHKニュースWeb版)。

   それが、24日になって木原大臣が「何らかの物体が地球を周回している」と述べ、記者からは「ここまで時間がかかった理由」について問われた。大臣は「北朝鮮が発射した何らかの物体が地球を周回している一方、当該物体が、北朝鮮が意図したとおりの機能を果たしているかといった詳細については、引き続き慎重な分析が必要」(防衛省公式サイト)と述べている。記者の質問に対してはダイレクトに答えておらず、じつに煮え切らない。

   ロイター通信Web版日本語(25日付)によると、 北朝鮮の金正恩総書記は24日、偵察衛星が撮影した「主要な標的地域」の写真を視察した。国営の朝鮮中央通信が報じた。主要な標的地域には韓国の首都ソウルやアメリカ軍基地がある都市が含まれている。写真は公表していない。また、NHKニュースWeb版(同)によると、アメリカ宇宙軍が運営する人工衛星の追跡サイト「スペーストラック」=写真・下=は、北朝鮮の軍事偵察衛星について衛星番号を割り当てた。衛星番号はアメリカ軍が人工衛星などの物体を管理するために割りふっている。

   アメリカは衛星番号を割り振って監視しているのに、なぜ日本の防衛大臣はあやふやな表現でその場をしのいでいるのか。北朝鮮は今後さらに偵察衛星を数発打ち上げて、標的地域の監視を強化するとしている。その先にあるのは現在休戦状態にある朝鮮戦争の再開ではないのか。そのために弾道ミサイルの精度を高め、偵察衛星網を拡充しようとしている。そのとき、日本はどう対応するのか。北朝鮮をめぐる日本と米韓の認識の違いがあらためて浮かび上がった。

⇒25日(土)夜・金沢の天気    くもり

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★政治の師匠・森喜朗氏の二の舞い 馳知事の「五輪舌禍」

2023年11月24日 | ⇒ニュース走査

   官房機密費を使ったIOC委員へのアルバムをめぐって、馳浩知事についての報道が連日なされている。話はさかのぼるが、馳氏への石川県民の評価は高かった。馳氏は金沢市の私立高校で国語の教員をしていたときにロサンゼルス・オリンピック(1984年)のレスリング競技グレコローマンスタイルのライトヘビー級に出場。予選敗退だったものの、高校教諭でありオリンピック出場選手として県民は誇りに感じたものだ。

   それが一転、翌年85年にジャパンプロレスに入り、87年には新日本プロレスに入団してリングで戦う。北陸の精神風土は保守的だ。「教員辞めて、プロレスラーになり下がった」という思いで受け止めた人も多かった。馳氏のタレント性を政治家として引き出したのが当時、自民党幹事長だった森喜朗氏だった。

   1995年7月の参院選で石川選挙区に森氏からスカウトされて立候補し、民主改革連合の現職を破り当選した。その後、タレント議員の巣窟のように称されていた参院から鞍替えして、2000年6月に衆院選石川1区(金沢)で初当選。03年11月の衆院選で敗れるものの、比例復活で再選。05年9月の衆院選で3選。14年12月の衆院選で6選を果たし、15年10月には文科大臣に就任した。

   ここまで実績を積み上げると、石川県における政治的な地位は不動となり、17年4月には自民党県連会長に就任。同年10月の衆院選で7選。そして、21年7月に来る知事選への意欲を見せ、次期衆院選に出馬しないことを表明。22年3月の知事選で 前金沢市長を僅差で破り当選した。森氏の支援を後ろ盾にしていることは言うまでもない。

   今回のアルバム発言を、政治の師匠・森氏の二の舞いだと評する人もいる。2021年2月、東京五輪・パラリンピック組織委員会の会長だった森氏はJOC臨時評議員会で、「女性っていうのは競争意識が強い。誰か一人が手を挙げて発言すると、自分も言わないといけないと思うんでしょうね。みんな発言される」と述べた。女性への差別的な発言であり、オリンピックへの女性参画の流れに逆行すると批判され、森氏は発言の責任を取って会長職を辞任している。

   森氏に続く馳氏のアルバム発言は「五輪舌禍」なのか。馳氏は聴衆を楽しませようとこの話をあえて持ち出したのかもしれないが、価値観の多様化や人権の視点から本人が込めた想いとは裏腹に誤解を生みやすい。そんな時代環境になっている。

⇒24日(金)夜・金沢の天気     あめ

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☆「発言撤回」「ブログ認める」 馳氏のメディア裏投げ技か

2023年11月23日 | ⇒ニュース走査

   馳浩知事はプロレスラー時代、ジャイアントスイングが得意技だった。相手の両足を抱え込んで振り回し、放り投げるあの技だ。衆議員だった馳氏が2013年に官房機密費を使ってIOC委員105人のアルバムをつくり東京五輪の招致活動に使ったと講演(今月17日)で発言。その後、発言が問題視されると、「五輪招致に関する発言は全面撤回する。今後一切発言しない」と繰り返している。事実関係をきちんと釈明してほしいと望む石川県の有権者の一人とすると、まるでジャイアントスイングで放り投げられたような感覚だ。

   では、ブログをどうするのか。馳氏のオフィシャルブログ「はせ日記」は2013年4月1日付で、アルバムについて記載している。以下。

   「IOC委員への直接的な働きかけは、IOC憲章により、できない。できないけれど、間接的な働きかけと、東京開催の意義を伝播させるためのロビー活動を進める海外出張」などと述べ、「10時半」にアルバム業者の社長と打ち合わを行い、「15時20分、官邸へ。菅官房長官に、五輪招致本部の活動方針を報告し、ご理解いただく。・駐日大使館ごあいさつ訪問 ・国際会議出席 ・国際的なロビー活動 ・ともだち作戦 ・想い出アルバム作戦・・・・などなど」。そして、菅氏から「安倍総理も強く望んでいることだから、政府と党が連携して、しっかりと招致を勝ち取れるように、お願いします!」と発破をかけられた、と記載している。

   ブログを読むと、時系列で話が流れているので、じつに分かりやすい。メディア各社の報道によると、馳氏は22日に石川県庁で開いた補正予算案の記者会見で、「ブログに記載がある『想い出アルバム作戦』があったことは事実か」との記者の問いに、「その通り。ブログに書いてあることは事実だ」と答え、さらに「『想い出アルバム作戦』とはどういったものか」との問いには、「この五輪招致に関する問題については、先日の私の発言は全面撤回した。したがって五輪招致に関して、これ以上申し上げるつもりは全くない」と述べた。

   会見は1時間余り続き、「五輪招致に関しては今後一切発言しない」と38回も繰り返した(23日付・北國新聞)。しかし、ブログの記述に関しては「事実」と認めている。今回の馳発言が問題として指摘されるのは、官房機密費の使途について公の場で語ったことだろう。オリンピック招致のために1冊20万円のアルバムを105冊つくったことに違法性や不正があるわけではない。一度語ってしまったことは認めて、事実関係を釈明すればよいのではないか。なのに、発言は撤回し、ブログは認めるという矛盾するような馳氏の思惑はどこにあるのだろうか。

   ひょっとして「裏投げ」か。発言は撤回するも片腕で相手の首の付け根を、ブログを認めつつもう片方の腕で相手の腰を抱えて、後ろに反り投げる。あえてメディアをかく乱させるテクニックなのかもしれない。

⇒23日(木)午前・金沢の天気    はれ時々くもり

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★北朝鮮が3度目の衛星発射 「成功」と賞する意義

2023年11月22日 | ⇒ニュース走査

   それにしても考えてしまう。日付を予告していたにもかかわらず、なぜ予告を無視するのか。防衛省公式サイト(22日付)によると、北朝鮮は21日午後10時43分、北朝鮮北西部沿岸地域の東倉里(トンチャンリ)地区から、衛星打ち上げを目的とする弾道ミサイル技術を使用した発射を強行した。発射された1発は複数に分離し、1つ目は午後10時50分、朝鮮半島の西約350㌔の東シナ海上の予告落下区域外に落下、2つ目は沖縄本島と宮古島との間の上空を通過し、同57分に沖ノ鳥島の南西約1200㌔の太平洋上、予告落下区域内に落下したものと推定される。地球周回軌道への衛星の投入は確認されていない。(※写真・上は、22日付の北朝鮮の労働新聞Web版より)

   北朝鮮の弾道ミサイルの発射でとくに混乱したのは沖縄県の人たちだった。自身はテレビのニュース速報を視聴していたが、ミサイルが上空を通過し、Jアラート(全国瞬時警報システム)が発令され、サイレンとともに防災無線で避難を呼びかける放送が繰り返されていた。深夜に登庁した自治体の職員が被害など備えて対応に追われる様子が映し出されていた=写真・中、テレビ朝日「報道ステーション」より=。

   北朝鮮はことし8月24日にもトンチャンリ地区から、弾道ミサイル技術を使用した偵察衛星の発射を強行したが、防衛省は地球周回軌道への衛星の投入を確認していない。ことし5月31日にも衛星を打ち上げたが、エンジン異常で墜落。3回目となる今回も衛星打ち上げは失敗したとみられる。ところが、冒頭の労働新聞は、軍事偵察衛星「万里鏡1号」を搭載した新型運搬ロケット「千里馬1型」を打ち上げ、「偵察衛星の発射に成功」と報じている。

   そもそも、弾道ミサイル技術を用いたロケットの打ち上げは国連安保理事会決議に違反していることから、日米韓は共同で中止を要求していた。冒頭の話に戻るが、北朝鮮は22日以降に人工衛星を打ち上げると海上保安庁に通告していたので、期間前に強行したことになる。今回の発射は日米韓の意表を突く作戦なのだろうか。そして、ことし3回目の発射がまた失敗となると、国民の不満が沸騰するのであえて「成功」と言いくるめているのだろうか。

   深読みする。北朝鮮の金総書記はことし9月13日(日本時間)にロシアの「ボストーチヌイ宇宙基地」を訪れ、ロケットの組み立てや発射施設などを視察した。この場での首脳会談でプーチン大統領は、衛星の開発を支援する意思を明確に示した=写真・下、同日付・BBCニュースWeb版=。支援を受けた今回の発射でなんらかの進展があったのかもしれない。それをあえて金総書記は「成功」と賞し、次なる発射へとモチベーションを高めているのかもしれない。

⇒22日(水)午前・金沢の天気   はれ

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☆「機密」もらす馳知事 東京五輪の誘致疑惑との関わり

2023年11月21日 | ⇒メディア時評

   言葉は本人が込めた想いとは裏腹に誤解を生みやすい時代環境になっている。それだけ、価値観の多様化や、とくに人権には厳しい視線が注がれる。語る場にもよるが、政治家が聴衆に面白く話せば話すほど誤解を生むことにもなりかねない。石川県の馳浩知事が今月17日に都内でスポーツ振興の会合で講演し、自身が自民党の東京オリンピック・パラリンピックの招致推進本部長だった当時のことを語った裏話が物議をかもしている。

   メディア各社の報道によると、馳氏はこう語った。「当時、総理だった安倍晋三さんからですね。『国会を代表してオリンピック招致は必ず勝ち取れ』と。ここから、今からしゃべること、メモを取らないようにしてくださいね。『馳、カネはいくらでも出す。官房機密費もあるから』」 「それでね、IOCの委員のアルバムを作ったんです。IOC委員が選手の時に、各競技団体の役員の時に、各大会での活躍の場面を撮った写真があり、105人のIOC委員全員のアルバムを作って、お土産はそれだけ。だけども、そのお土産の額を今から言いますよ。外で言っちゃダメですよ。官房機密費使っているから。1冊20万円するんですよ」

   馳氏はこの発言が明るみに出でてすぐに撤回したものの、「官房機密費」(内閣官房報償費)を話題にした時点でアウトだろう。政府が「国の事務、事業を円滑、効果的に遂行するため、機動的に使える経費」と位置づける官房機密費は支払先や使途の詳細はチェックされない仕組みになっている。2023年度予算は14億6000万円。その機密費の使い方が具体的に明かされたことで、官房機密費の有り様そものが今後、国会などで問われるだろう。

   それにしも官房機密費を使って、開催都市決定の投票権を持つIOC委員全員にそれぞれのアルバムを作っていたとは、じつに違和感がある。と同時に新たな疑念もわく。東京オリ・パラを誘致する際に、電通の高橋治之元専務(※2022年8月に五輪に関連する受託収賄容疑で逮捕、その後保釈)はロビイストだった。ロイター通信Web版(2020年3月31日付)によると、五輪招致をめぐり招致委員会から820万㌦の資金を受け、高橋元専務らロビイストがIOC委員にロビー活動を行っていたと報じている。ロビー活動については、国際的にも問題が指摘されていた。この疑惑では、フランス司法当局の捜査対象となったJOCの当時の竹田恒和会長が2019年6月に退任している。

   では、馳氏のアルバムと高橋元専務の820万㌦のロビー活動はどのような関わりだったのか。素朴に考えれば、高橋元専務が馳氏が作ったアルバムを土産に携え、IOC委員105人を回り、現金を配っていたということだろうか。そもそも、アルバム作りを馳氏に指示したのは安倍元総理だが、誰が提案したのだろうか。高橋元専務が絡んでいるのか。五輪誘致活動の疑惑は深まる。あくまでも憶測だ。(※写真は、馳浩公式サイトより)

⇒21日(火)夜・金沢の天気  くもり

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★岸田総理への警鐘 読売トップ「支持率24%は危険水域」

2023年11月20日 | ⇒メディア時評

   きょう20日付の読売新聞の一面トップは「内閣支持率急落24% 経済対策『評価せず』66% 本社世論調査」だ。調査は今月17-19日で行われ、前回調査(10月13-15日)の支持率34%から10ポイントも下落した。読売が自社の世論調査を一面トップに持ってきたのはそれ相当の理由があるからだろう。

   調査内容を読むと、不支持は前回49%から13ポイントも上昇し62%となっている。支持率の下降、不支持率の上昇の背景にある数値の分析も詳しく行われている。支持低下の要因は見出しにあるように、経済対策を「評価しない」が66%で、「評価する」は23%にとどまっている。経済対策が企業の賃上げにつながると「思う」が18%で、「思わない」が74%に上っている。所得税など4万円の定額減税も「評価しない」が61%に。その理由が、「選挙対策に見えるから」が44%、「家計の支えには不十分だから」が25%となっている。この数値から「有権者をみくびるな」との声が聞こえてくる。

   支持率の下降、不支持率の上昇の背景はこれだけではない。いわゆる「辞任ドミノ」。9月の内閣改造以降で、政務三役である文科政務官や法務副大臣、財務副大臣が相次いで不祥事で辞任している。岸田内閣の政権運営に「影響がある」かとの問いに、「大いに」23%、「ある程度」45%と計68%が「影響がある」と答えている。世論調査はさらに突っ込んで質問をしている。どのくらい総理を続けてほしいかとの問いでは、「自民党総裁の任期が切れる来年9月まで」が52%、「すぐに交代してほしい」33%だった。

   話は冒頭に戻る。なぜ読売は世論調査の結果を一面トップに持ってきたのか。メディア関係者の間では、読売の調査で内閣支持率の20%台は政権の「危険水域」、20%以下は「デッドゾーン」とよく言われる。第一次安倍改造内閣の退陣(2007年9月)の直前の読売の内閣支持率は29%(2007年9月調査)だった。その後の福田内閣は28%(2008年9月退陣)、麻生内閣は18%(2009年9月退陣)。民主党政権が安倍内閣にバトンタッチした2012年12月の野田内閣の支持率は19%だった。岸田内閣は「危険水域」だ。支持率は落ち始めると急カーブを描く。それが世論調査の怖さだ。読売の一面トップは岸田内閣に対する警鐘、と読んだ。

⇒20日(月)午後・金沢の天気   くもり時々あめ

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