自在コラム

⇒ 日常で観察したことや環境問題、金沢大学での見聞、マスメディアとインターネットについての考察を紹介する宇野文夫のコラム

☆「ゴッツオ」再考

2013年10月23日 | ⇒トピック往来
 この12月にユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産に「和食文化」が登録されそうだ。報道によると、文化庁はユネスコの無形文化遺産に推薦していた和食について、事前審査をするユネスコの補助機関が新規登録を求める記載の勧告をしたと発表した。補助機関が記載を勧告して覆った例はなく、12月上旬にゼルバイジャンで開催かれる政府間委員会で正式に登録が決まる見通しという。

 ユネスコの無形文化遺産は、芸能や祭り、伝統工芸技術などを対象としていて、遺跡や自然が対象の世界遺産、文書や絵画などが対象の世界記憶遺産とともに「ユネスコの3大遺産事業」と称される。国内からは昨年までに21件が登録され、能登半島の農耕儀礼「あえのこと」(2009年登録)もその一つ。世界の食文化では「フランスの美食術」「地中海料理」「メキシコの伝統料理」「トルコのケシケキ(麦かゆ食)の伝統」の4件が登録されている。

 政府が和食を無形文化遺産に推薦したポイントとして、日本人の「自然を尊重する」という精神が和食を形づくったとのコンセプトを挙げている。大きく4つ。1つに多様で豊かな食材を新鮮なまま持ち味を活かす調理技術や道具があること、2つ目に主食のご飯を中心に汁ものを添えて魚や肉、豆腐、野菜を組みあわせた栄養バランスに優れたメニュー構成、3つ目に食器に紅葉の葉などのつまものを添えて季節感や自然の美しさを表現している、4つ目が年中行事とのかかわりで、正月のおせち料理や秋の収穫の祭り料理など家族や地域の人の絆(きずな)を強める食文化だ。手短に、ここで言うことのころ「和食」とは高級料亭のメニューではなく、家庭の、あるいは地域の郷土料理、能登で言うゴッツオ(ごちそう)なのである。

 もう7年前、地域資源の発掘の一環として、能登半島で「里山里海自然学校」のプログラムを運営していた折、地元の女性スタッフに協力してもらい、100種類の郷土料理を選び、それぞれレシピを作成した。その手順は①地元で普段食べている古くから伝わる家庭料理を実際に作り写真を撮る②食材や料理にまつわるエピソードや作り方の手順をテキスト化する③写真と文をホームページに入力する④第3者にチェックしてもらい公開する‐という作業を重ねた。簡単そうに思えるが、普段食べているものを文章化するというのは、相当高いモチベーションがなければ続かない。女性スタッフも「将来、地域の子供たちの食育の役に立てば」とレシピづくりに励んだ。それが1年半ほどで当初目標とした100種類を達成し、それなりのデータベースとしてかたちになった。

 郷土料理の100のレシピを今度は実践活動へと展開した。「里山里海自然学校」のプログラムを実施した能登学舎は廃校となった小学校の施設だったので、給食をつくるための調理設備が残っていた。今度はそれを珠洲市に改修してもらい、コミュニティ・レストランをつくろうと地域のNPOのメンバーたちが動き営業にこぎつけた。この土地の方言で「へんざいもん」という言葉がある。漢字で当てると「辺採物」。自宅の周囲でつくった畑でつくった野菜などを指す。「これ、へんざいもんですけど食べてくだいね」と私自身、自然学校の近所の人たちから差し入れにあずかることがある。このへんざいもんこそ、生産者の顔が見える安心安全な食材である。地元では「そーめんかぼちゃ」と呼ぶ金糸瓜(きんしうり)、大納言小豆など、それこそ地域ブランド野菜と呼ぶにふさわしい。そんな食材の数々を持ち寄って、毎週土曜日のお昼にコミュニティ・レストラン「へんざいもん」は営業する。コミュニティ・レストランを直訳すれば地域交流食堂だが、それこそ郷土料理の専門店なのである。以下は、夏のある日のメニューだ=写真=。

ご飯:「すえひろ舞」(減農薬の米)
ごじる:大豆,ネギ
天ぷら:ナス,ピーマン
イカ飯:アカイカ,もち米
ユウガオのあんかけ:ユウガオ,エビ,花麩
ソウメンカボチャの酢の物:金糸瓜、キュウリ
カジメの煮物:カジメ,油揚げ
フキの煮物:フキ
インゲンのゴマ和え:インゲン

 上記のメニューがワンセットで700円。すべて地域の食材でつくられたもの。郷土料理なので少々解説が必要だ。「ごじる」は汁物のこと。能登では、田の畦(あぜ)に枝豆を植えている農家が多い。大豆を収穫すると、粒のそろった良い大豆はそのまま保存されたり、味噌に加工されたりして、形の悪いもの、小さいものをすり潰して「ごじる」にして食する。カジメとは海藻のツルアラメのこと。海がシケの翌日は海岸に打ち上げられる。これを細く刻んで乾燥させる。能登では油揚げと炊き合わせて精進料理になる。「能登里山里海マイスター」育成プログラムの研究員や、講義を受けにやって来る受講生や地域の人たちで40席ほどの食堂はすぐ満員になる。最近では小学校の児童やお年寄りのグループも訪れるようになった。週1回のコミュニティ・レストランだが、まさに地域交流の場となっている。金沢大学の直営ではなく、地域のNPOに場所貸しをしているだけなのだが、おそらく郷土料理を専門にした「学食」は全国でもここだけと自負している。

⇒23日(水)朝・金沢の天気   はれ


 
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★痛車のお遍路さん

2013年10月13日 | ⇒トレンド探査
  「痛車(いたしゃ)」が勢ぞろい。車体に漫画やアニメ、ゲームのキャラクターなどのステッカーを貼り付けたり、塗装した乗用車のことだ。あるいはそのような改造を車のことを指すそうだ。「萌車(もえしゃ)」とも呼ばれるようだ(「ウイキペディア」より)。面白いのは、同様の原付やバイクを「痛単車(いたんしゃ)」、自転車の場合は「痛チャリ(いたチャリ)」、アニメの装飾を施したラッピング電車を「痛電車(いたでんしゃ)」とこの世界では呼ぶようだ。金沢市郊外の湯涌温泉はその痛車のメッカになっているかのようだ。

  湯涌温泉をモデルとし、2011年4月から9月に放送されたテレビアニメ「花咲くいろは」(全26話)が放送された。東京育ちの女子高生「松前緒花」が石川県の「湯乃鷺(ゆのさぎ)温泉」の旅館「喜翆荘」を経営する祖母のもとに身を寄せ、旅館の住み込みアルバイトとして働きながら学校に通う。個性的な従業員との確執や、人間模様の中で成長しいく。湯乃鷺温泉の舞台となったのが湯涌温泉だった。これ以来、「聖地」なのだ。

  そこで、同温泉の観光協会ではアニメの祭りを再現した「湯涌ぼんぼり祭り」を2011年から毎年行っている。ことしは12日に祭りが行われた。その人出は主催者発表で初年度5千人、2年目7千人、ことしは1万人と年々熱くなっている。ちなみに、13日付の新聞報道によれば同温泉の9つの旅館はどこも満室だったようだ。おそるべし「花いろ」経済効果ではある。

  祭りは単純だ。夕方、会場には500個のぼんぼりが取り付けられ、神社の沿道を照らす。午後8時すぎに「神迎の儀」が始まり、ファンたちが願いを書かれた木製「のぞみ札」を入れたかごを、白装束の地元住民2人が背負って運ぶ、「ぼんぼり巡行」が行われた。午後9時すぎ、のぞみ札は湖のほとりで焚き上げられた。祭りはこの「神事」がメインだが、盛り上げる仕掛けがいくつもある。  

  サークルKサンクスの北陸3県357店では、10月8日~10月21日の期間限定で、アニメ「花咲くいろは」とのタイアップしたオリジナル商品(2種類)を販売している。商品はテレビシリーズのストーリーにちなんだ食材を使用した「喜翆荘のぼんぼり御膳」(500円)と、「湯涌で採れたはちみつのホットケーキ(はちみつ&マーガリン)」(137円)など。コンビニの各店舗では、「ぼんぼり祭り」のポスター=写真=があちこちに貼られ、宣伝効果は抜群なのだ。

  これだけではない。日本郵便北陸支社は、ぼんぼり祭りの「フレーム切手セット」を発売している。ぼんぼり祭りを楽しむ主要キャラクターのイラスト切手(50円)10枚に、キャラク ターが描かれた型抜きはがき3枚が付く。1セット1500円。3千セットを販売するのだという。

  金沢に長く住んでいると、涌温泉でイメージするのは、あの独特の美人画で知られる竹久夢二だ。愛人・彦乃と逗留した温泉場。大正モダン風に描かれる、彦乃のイメージ画が印象に強い。「昔夢二、今花いろ」。湯涌温泉には独特の癒しの雰囲気があるのだろう。痛車のナンバーブレートはほとんどが他県ナンバー。おそらく連休を利用して、あすは次なる「聖地」へ赴くのだろう。現代の「聖地巡礼」である。そして、痛車の若者たちはお遍路なのか。

⇒13日(日)午後・金沢の天気    はれ
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☆マヤと能登

2013年10月12日 | ⇒キャンパス見聞
 世界遺産「コパンのマヤ遺跡」(ホンジュラス)などマヤ文明遺跡の遺跡管理担当者8人が今月から金沢大学に集まり、文化遺産の保存や活用の方策を考える研修を行っている。研修に参加しているのは、中米のグアテマラ、ホンジュラス、エルサルバドルからのマヤ文明遺跡を有する国の行政官(世界遺産担当、観光担当)、技術スタッフ、運営管理責任者、調査保存修復担当者ら。研修参加者が遺跡を適切に管理し、それを活用した地域住民の生活向上につながる観光や地域開発計画の立案ができるようにと日本の事例などを参考に研修を積んでいる。12日はスタディツアーとして、能登町の縄文期の国指定史跡である真脇遺跡や中能登町の雨の宮古墳群に一行を案内した。

 マヤ文明遺跡は、メキシコのユカタン半島から中米の地域で栄えた都市文明。4-9世紀に全盛期を迎えたが、その後衰退した。世界遺産を含めた貴重な文化財が数多く残っているものの、保存管理への財政支援や、観光振興に結びつく活用などは十分ではないとされる。このため、遺跡を文化資源として生かし、地域開発につなげる道を探るため、金沢大学とJICA北陸が研修を企画した。研修を指導しているのは金沢大学国際文化資源学研究センターの中村誠一教授(マヤ考古学)。

 午前、真脇遺跡では町立真脇遺跡縄文館で土器や動物の骨などを見学した。新出直典・能登町教育員会学芸員から展示概要の説明を受けた。研修参加者の興味を引いたのは地層断面の展示品。樹脂で固めて自然の状態を保っており、「展示技術を学びたい」と盛んに写真を撮っていた。発掘現場に復元された遺構「環状木柱列」では、「太陽が昇る位地とどのような関係があるのか」「この木柱列は祭祀ではどのように使われていたのか」などの太陽暦とかかわる質問と祭祀について参加者から飛んだ。また、展示だけではなく、この遺構で住民たちがコンサートを開いているとの説明には、地域が参加した遺跡現場の活用事例としてメモを取っていた。

 研修参加者の一人、世界遺産ティカル国立公園(グアテマラ)の研究者のゴメス・オズワルド氏は「マヤ文明遺跡は規模が大きく、多様性に富んでいるが、修復や保存が追いついていない。実際、真脇遺跡のように海に近くにある遺跡で、巻貝のようなカタチをした博物館を建設中だが、資金不足で建設は中断したままだ」「真脇遺跡はとてもコンパクトに設計されていて、車イスの身障者でも発掘現場に行かなくてもおおよその内容がつかむことができる。この展示手法は見習うものが多い」と感想を話した。

 午後、参加者は輪島市町野町金蔵の仏教寺院「正願寺」を訪れ、松原洋住職(インド哲学者)から、地域の人々の仏教に対する帰依について話を聞いた。カトリック教徒の参加者からは礼拝について質問などがあった。その後、金箔に装飾された御堂や、木目を活かした廊下や板戸、欄間、調度品などを見学しながら、日本人の美意識や自然観についても説明を受けた。

 夕方訪れた中能登町の国指定史跡「雨の宮古墳群」。眉丈山(標高188m)の山頂を中心に、4世紀の中頃から5世紀の初めにかけて造られた36基の古墳群について、能登王墓の館管理人の山森仁左衛門氏から説明を受けた。北陸地方で最大級の前方後方墳(1号墳)では、副葬品の神獣鏡(しんじゅうきょう)などが出土した現場を見学。この地域は地溝帯であり、水上交通・輸送の一大ルートでもあったことから、5世紀には中央の王権(大和)と結びついた能登半島の中心地であったことが考察されると説明を受けた。

⇒12日(土)夜・金沢の天気  くもり
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★能登ワインの輝き

2013年10月11日 | ⇒トピック往来

 過日金沢のワインソムリエから誘いを受け、知人を誘ってワインツアーに能登半島に出かけた。「Japan Wine Competition 2013(国産ワインコンクール)」で金賞を受賞したワインが飲めるというので心が動いた。このコンクールは、国産のブドウを100%使用して造られたワインを対象とした日本で唯一のコンクールで11回目の開催。700点近くのワインが出品され、国産ワインの品質は年々向上していると、ソムリエ氏。ツアーは自らが企画主催した。

 訪問先のワイナリーは能登ワイン株式会社(石川県穴水町)。今回の国産ワインコンクール2013では、赤ワイン「2011 クオネスヤマソーヴィニヨン」が金賞を、ロゼワイン「2012 マスカットベリーAロゼ」が銀賞を、赤ワイン「2012 心の雫」が銅賞を受賞した。同ワイナリーが金賞を受賞したのは初めてで、「能登で栽培されるブドウと醸造技術が全国でもトップレベルの高い評価をいただきました」とブドウ畑を案内してくれた社長は終始にこやかだった。

 ブドウ畑ではすでに収穫は終わっていたが、写真で見るヨーロッパのブドウ畑の景観だ。ヨーロッパスタイルの垣根式で約20品種を栽培し、剪(せん)定や収穫は手作業だ。能登は年間2000㍉も雨が降る降雨地でブドウ栽培は適さないと言われているが、適する品種もある。それがヤマソーヴィニヨン。日本に自生する山ブドウと、赤ワイン主要品種カベルネ・ソーヴィニヨンの交配種で、日本の気候に合うブドウ品種として、山梨大学の研究者が開発した。それだけに、ヤマソーヴィニヨンは成長がよく、1本の木で15㌔から20㌔のブドウの実が収穫される。ワイン1本(720ml)つくるには1㌔の実が必要とされるので、実に15本から20本分になる。

 「よき畑によきブドウが実る」と社長が説明した。能登ワイン独特の畑づくりがある。穴水湾で取れたカキの殻を1年間天日干しにしたものを砕いて畑にまく。もともとの能登の地は赤土の酸性土壌なので、カキ殻のアルカリ分が中和し、ミネラルを土壌に補強する。1年間雨ざらしなのでもちろん塩分はほとんど抜けている。参加者が感動するはこうした循環型、あるいは里山と里海の連環型の栽培方法なのだ。ブドウ畑は自社農園をはじめ一帯の契約農家で進められ、栽培面積も年々増え、現在26㌶に及ぶ。

 醸造所を見学した。ここのワインの特徴は、能登に実ったブドウだけを使って、単一品種のワインを造る。簡単に言えば、ブレンドはしない。もう一つ。熱処理をしない「生ワイン」だ。さらに詳しく尋ねると、赤ワインならタンクでの発酵後、目の粗い布で濾過し、樽で熟成する。さらに、瓶詰め前に今度は微細フィルターを通して残った澱(おり)を除く。熱処理するとワインは劣化しないが熟成もしない。熱処理をしない分、まろやかに、あるいは複雑な味わいへと育っていく。もう一つ。能登の土壌で育つブドウはタンニン分が少ない。それをフレンチ・オークやアメリカン・オークの樽で熟成させることでタンニンで補う。するとワインの味わいの一つである渋みが加わる。そのような話を聞くだけでも、「風味」が伝わってくる。

 ツアーのクライマックは能登牛のバーベキューだ。ロース肉と、金賞を受賞した赤ワイン「2011 クオネスヤマソーヴィニヨン」のマリアージュ(ワインと料理の相性)がなんとも言えない至福感だ。雨が多く栽培に不適とされた能登の地で、カキ殻を畑に入れることで土壌の質を高め、国産品種のヤマソーヴィニヨンと出会い、見事に実らせた。栽培を始めて10年の曲折とたゆまぬ努力、この物語こそが感激のテイストなのだ。

⇒11日(金)朝・金沢の天気     はれ

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☆新幹線「かがやき」考

2013年10月10日 | ⇒トピック往来

 「かがやき」と聞いてどのようなイメージを持つだろうか。「未来にかがやく」、「かがやく明日」など夢と創造性をかきたてる言葉の響きと感じる。ただ、人名だと「名前負け」しそうだ。2015年春に開業予定の北陸新幹線について、その列車名が10日、JR西日本と東日本から発表された。

 北陸新幹線の金沢と東京間を最速で走る速達タイプの列車名が「かがやき」、停車駅を多くする停車タイプは「はくたか」、金沢駅と富山駅を結ぶシャトルタイプは「つるぎ」、東京駅と長野駅を往復する長野新幹線タイプは「あさま」と列車名がついた。名称については、事前に公募(5月31日‐6月30日)があり、約14万5千件の応募があった。この結果で一番多かったのは「はくたか」(9083件)で、2位「はくさん」(7323件)、3位「らいちょう」(5408件)だった。

  1位「はくたか」は、立山の開山伝説に登場する白いタカの「白鷹」のこと。「はくさん」は石川、岐阜、福井にまたぐ白山、「らいちょう」は国指定の特別天然記念物のライチョウで、長野、岐阜、富山の県鳥でもある。今回、ベスト3の中で採用されたのは「はくたか」のみ。現在ほくほく線(北越急行)の特急の列車名だが、新幹線の列車名として残ることになった。「はくさん」と「らいちょう」は外れた。公募上位の「はくさん」が漏れたのは、今回採用された「はくたか」と紛らわしい名前を避けたためとする見方もあるが、理由はおそらくこうだ。かつて金沢駅と上野駅を結んだ特急「白山」はあった。が、2015年の新幹線開業時では、白山は沿線から見えないからだろう。そして、「らいちょう」だが、かつての特急「雷鳥」は現在「サンダーバード」として名称変更して北陸本線で運行している。新幹線開業後は金沢駅から東の北陸本線は並行在来線となるので、JR西日本から経営分離される。このため、「サンダーバード」は金沢駅止まりとして運行が継続される。

  それにしても大出世は「かがやき」である。上越新幹線と連絡するため、新潟県の長岡駅と金沢駅を結ぶ特急「かがやき」が1988年に登場。その9年後、1997年にほくほく線が開業し、越後湯沢と北陸方面を結ぶ「はくたか」がデビューしたので引退していた。そこにまさかの北陸新幹線での復活。しかも速達タイプ、まさに優等列車の愛称に「かがやき」が採用されたのである。「かがやき」は公募順位では5位(4123件)だった。4位の「つるぎ」(4906件)を差し置いて躍り出たという感じだ。個人的には東海道新幹線の「ひかり」と並び、「かがやき」はそん色ない。ローカルな山の名称や動植物を感じさせない分、スピード感や透明感、未来性を感じさせる、ある意味でよい名だと思う。

  金沢駅と富山駅を結ぶシャトルタイプの列車名として「つるぎ」も復活した。剣岳をイメージさせる「つるぎ」は1961年に大阪駅と富山駅を結び、その後に新潟駅まで運行区間が延長されたが、1996年廃止となっていた。東京駅と長野駅を往復するシャトルタイプの列車名が「あさま」なので、同じく山の名称をつけたのだろう。

※画像は石川県の新幹線開業に向けたアクションプラン「STEP21」ホームページから

⇒10日(木)夜・金沢の天気  くもり

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★加速する北陸新幹線

2013年10月09日 | ⇒トピック往来
 当地では北陸新幹線金沢開業(2015年春)にかける期待が大きい。金沢と東京がダイレクトで2時間30分という時間短縮もさることながら、その経済効果である。日本政策投資銀行は「北陸新幹線の開業にともなう石川県、富山県のへの経済波及効果をそれぞれ124億円(石川)、88億円(富山)を試算し、特に観光・ビジネス客が年にして石川32万人、富山21万人増えると予測している。

 そうした希望ある試算が奏功してか、新聞やテレビなどでは連日のように、「おもてなし」のキャンペーンをどう繰り広げるかといったたぐいのニュースが掲載されている。面白いのは、石川県が先月27日、金沢開業のPRのために新たに作ったマスコットキャラクター。その名も「ひゃくまんさん」。加賀百万石にちなんだ名前だそうだ。郷土玩具の「加賀八幡起き上がり」をモチーフに、だるまに手足が生えたようなデザインだ。都内で開くイベントに向け、着ぐるみを現在制作中だとか。伝統工芸の加賀友禅を思わせる図柄に金箔や輪島塗もあしらうそうだが、マスコットキャラクターにしては面白味がない。そもそも、加賀百万石はキャラクターになりにくいイメージだ。そもそも「百万石」の意味すら理解できない人が多いだろう。たとえば、徳川幕府は何万石だと問われて、回答できる人や、1石を説明できる人すら少ないだろう。現代では死語なのだ。そんなものをテーマにマスコットキャラクターにしてどうキャンペーンを展開するのだろうか。むしろ、「けんろくくん」が分かりやすい。

 北陸新幹線の名称に関しては、ずっと論争があった。ながらく「長野新幹線」としていたので、「長野」の名前を残すか検討されていた。JR東日本は「北陸新幹線」とした上で、一部の駅で括弧書きで「長野経由」との表記をつけると発表した。特に東京駅などは「北陸新幹線(長野経由)」と表記する。現在の長野新幹線の名称が定着しており、「長野」の表記をなくすと利用者が混乱する可能性があるため、残すことを決めたらしい。

 運行様式は、東京-金沢間の運行体系は停車駅を少なくして早く目的地に到着する「速達タイプ」、停車駅を多くする「停車タイプ」、東京駅と長野駅を結ぶ「長野新幹線タイプ」、それに金沢駅と富山駅を結ぶ「シャトルタイプ」の4タイプをで運行する。このシャトルタイプは、JR西日本が新幹線開業後に金沢と富山を結ぶ特急を廃止するため、名古屋や大阪から富山に行く場合の利便性を確保したものだ。

 車両名は「つるぎ」「たてやま」が有力だ。北陸新幹線の沿線で実際に見える山の名前だ。最近の記事によると、JR西日本が特許庁に商標として出願している。ただ、審査が続いており、まだ登録されていない。立山(3015㍍)と剣岳(2999㍍)はともに富山県にあり、日本百名山でもある。石川県では白山が有名だが車窓から見えないので、今回は難しい。ただ、北陸新幹線の福井延伸が今後進めば、「はくさん」も浮上してくるのかもしれない。

⇒9日(水)夜・金沢の天気   くもり
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☆コメとTPPの考察

2013年10月08日 | ⇒ランダム書評
 「作るプロは売るプロでもなければならない」。単純だが、含蓄のある言葉だ。近正宏光著『コメの嘘と真実~新規就農者が見た、とんでもない世界!~』(角川SSC新書)はある意味で痛快だ。しがらみが一切ないのである。

 東京の不動産会社の社員(著者)が社長命令で、生まれ故郷の新潟でコメ生産を中心とした食糧事業部門を立ち上げる予定だったが、困難が待ち受ける。農地法に阻まれ個人負担で農業生産法人「越後ファーム」をつくり新規就農を始める。さらにそこから見えた農の世界。消費者のことなど一考もしない、「保護漬け」になり向上心を失った、コメの生産の場だった。農地法、農業委員会、村社会(兼業農家)など、コメを「ダメにした」存在と出会い面食らう。そこから著者が立ち上がる。機械化・大型化が条件の「集約型の米作農業」が不可能な中山間地=里山であえて耕作し、機械化・大型化とは真逆の「手作業農業」を選択するのである。

 現行のJAS法には規定がない高品質な有機技術を確立するとともに、様々な手間をかけたコメである強みを高付加価値化に転化する戦略を実践し、「コメの嗜好品化」を実現していく。それが東京の日本橋三越本店地階に出店するに至る。さらに、高付加価値米を生産する篤農家と組んだ「田んぼネットワーク」のコメを一堂に集めたショップも始める。

 著者のTPPに関する考えが読む者をはっとさせる。結論はこうだ。TPPに参加しようが、参加しまいが、日本の米作農業は既に破綻している、と。農地法や減反、戸別所得保障制度など様々なコメ農家への保護が行われているが、農家の平均年齢はサラリーマンが完全リタイヤする年齢である「65歳」を超えている。担い手はなく、大半の農家が兼業化した小規模農家である。耕作放棄地は増すばかりで、コメ一本で収入を安定させる農家は「絶滅危惧」の状態。つまり、既存のコメにまつわる保護農政を続けても「専業農家」は絶滅して行くことは誰の目にも明らか。とすれば、コメを広く市場開放し、農家も保護農業から脱却し、より切磋琢磨の努力をし、生産力と営業力を付け、付加価値を持つ農業人として自由競争すべき時期に来ていると主張するのである。

 結論を言えば、日本の米作農業を守るには、米作農家自らが強くなる以外に策はない、とうことだろう。国益を理由に世論を二分する「TPP問題」だが、もちろん、医療制度や貿易収支など広範囲であり、通商の専門家でない農業人(著者)が、TPP全体の是非論を語ることはできないにしろ、農家と保護行政の不都合な真実を突いている。これがコメづくりの正体だ、と。

 先日(10月6日)に台湾・東華大学社会貢献センターの教員たちが、金沢大学の能登での人材養成の取り組みについて視察に訪れた。その折、ブランド米について、新潟・佐渡のトキを育む水田のコメが2㌔1300円(精米)もしていると話した。すると、台湾の人たちは「それは台湾のデパートでは安い方だ。日本のコメを帰国にするときに買って帰る人が多い」という。日本のコメはすでに秋葉原で買う家電製品並みなのだ。著者の意図を、台湾の人たちの言葉が補ったような気がした。

⇒8日(朝)金沢の天気   くもり
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★吉か凶かTPPの行方

2013年10月07日 | ⇒トピック往来

  TPP「聖域」撤廃。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉で、政府・自民党が農業の重要5分野の関税を維持する従来方針から転換したと新聞・テレビディアが一斉に伝えている。これが、今後の日本の政治や政治にどのような影響を及ぼすのか。

  
  自民党の西川公也TPP対策委員長は、TPP交渉が開かれているバリ島で記者団に対し、「聖域」として関税維持を求めてきたコメなど農産物の重要5品目について、関税撤廃できるかどうかを党内で検討することを明らかにしたのだ。自民は前回の衆院選で、「聖域なき関税撤廃を前提にする限り交渉参加に反対」との公約を掲げていた。こうした公約を放棄したともいえる。

  前回の「自在コラム」では、以下記した。「著者は着想はTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)とEUを比較して、日本に警鐘を鳴らしている。それは、TPPでは共通の通貨は持たないが、人と金、モノ、サービスの自由な流通を共通理念としている。これはEUと原則的に同じで、アメリカが主導するTPPはそういうことだったのかと気づかされる。」、「TPPでは不都合なところがあれば、今後の交渉で解決すればよいというが日本はドイツ並みに外交交渉が上手かとなるといささか疑問だ。2020年のオリンピック招致ではなんとかうまくやり遂げたが、国際舞台の交渉の場ではどうだろう。メルケル首相のような手腕を安倍首相に期待できるのだろうか。」、「EUの中のドイツと、TPPの中の日本は同じ役回りだとの下りは身につまされる。『ドイツから搾り取れるだけ取ってやれ』と思っている国はEUで多い。表現は露骨だが、「日本からいけだけるものはドンドンといただく」くらに思っている加盟国もいるのではないか、いや国とというもの大抵そうだと思った方がよいのかもしれない。」と。

  TPP交渉は、いわば共通通貨のない「太平洋版EU」を目指すものだ。もともと、そんな交渉だ。したがって、農業分野での関税障壁などもともと念頭にないだろう。おそらく安倍首相もそこを理解していて、オバマ大統領が不在時に一気にTPPの主導権をとったのだ、と解釈した方がよい。うがった見方をすれば、すでにオバマとは連絡をとっていて、アメリカの「不在」を助けたことになる。ここから後には引けない。TPPのリーダーシップをいかに取るか、だろう。安倍政権の正念場だろう。

⇒7日(月)昼・金沢の天気   はれ

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☆ドイツと日本

2013年10月06日 | ⇒ランダム書評
  この本は一度読んでみたかった。川口マーン恵美著『住んでみたドイツ 8勝2敗で日本の勝ち』(講談社文庫)。よく大戦後の日本とドイツは比較される。なぜか、ドイツが「ナチス」のことをよく反省し、EUではよく主導権をとり・・・などと。「それに比べ日本は」などと隣国から揶揄される。では、ドイツと周辺諸国との現実はどうなのか知りたいと思っていた。

  本著での「我々は原爆を持っているが、ドイツはマルクを持っている」と、ドイツを見つめるフランス人の考え方が圧巻だ。これは1989年、「ドイツ統一とユーロ導入の裏事情」という下りで出てくる。ドイツの経済は強く、ミッテラン大統領はドイツが統一を望むならとユーロ導入を強力に勧めた。他国が望まなかったドイツ統一の代償として、ドイツはマルクを手放したという裏情報である。これは腑に落ちる。壮絶な政治的駆け引きがあったのだろう。でもドイツはその後、ユーロ導入で域内の関税はなくなり、為替変動のリスクもなく、輸出大国ドイツの地位を確立する。が、ギリシア財政危機が表面化し、ユーロ圏が一蓮托生となるとのドイツにも焦りが生じる。ドイツもユーロ圏を抜けたがっているのだろうと想像に難くない。それでも、ドイツは近隣から憎まれる。ドイツがギリシアに対して財政規律と緊縮財政を求めれば、求めるほど、ドイツのメルケル首相に「ナチの制服を着せたカリカルチュアがギリシアの雑誌に出回る」ことになる。ドイツも辛い。

  ヨーロッパを一つにしよという高い理想があっただけに、今や仲たがいの原因となっているとは皮肉だ。まして、EUの経済状態が確実に悪化しているのでなおさらだ。ところで、著者は着想はTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)とEUを比較して、日本に警鐘を鳴らしている。それは、TPPでは共通の通貨は持たないが、人と金、モノ、サービスの自由な流通を共通理念としている。これはEUと原則的に同じで、アメリカが主導するTPPはそういうことだったのかと気づかされる。

  TPPでは不都合なところがあれば、今後の交渉で解決すればよいというが日本はドイツ並みに外交交渉が上手かとなるといささか疑問だ。2020年のオリンピック招致ではなんとかうまくやり遂げたが、国際舞台の交渉の場ではどうだろう。メルケル首相のような手腕を安倍首相に期待できるのだろうか。筆者はいう、「日本語は非関税障壁なので、英語を公用語に入れろなどと言われかねない。日本人はそれでもいいのだろうか」と。

  EUの中のドイツと、TPPの中の日本は同じ役回りだとの下りは身につまされる。「ドイツから搾り取れるだけ取ってやれ」と思っている国はEUで多い。表現は露骨だが、「日本からいけだけるものはドンドンといただく」くらに思っている加盟国もいるのではないか、いや国とというもの大抵そうだと思った方がよいのかもしれない。その意味で、ドイツと日本は同じ運命、「5勝5敗」のイーブンなのだろうか。

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