徐々に暖かくはなるものの、寒の戻りがある。それを繰り返しながら本格的な春になる。北陸に住んでいると、「三寒四温」と「名残り雪」は春を迎える儀式のようでもある。きょう26日朝、名残り雪が降った=写真=。
自家用車のスノータイヤをノーマルタイヤに履き替えたので、滑らないかとヤキモキした。が、強い降りではなく、30分ほどしたら青空が見えてきたので一気に雪は消えた。ふと庭を見ると、梅の花が咲いていたので、名残り雪とピンクの梅の花の組み合わせは妙に風情があるものだと感じ入った。
金沢大学で同僚の研究員は別の春の感じ方をしている。春特有の香りが漂っているという。この香りをかぐと、そわそわした落ち着かない気分になるそうだ。それはヒサカキの小さな花の香り。里山を知る人にとって、春の訪れを感じさせる香りという。日当たりのよい場所の株には、その枝に下向きの白い小さな花がびっしりと咲いている様子を見ることが出来きる。ヒサカキは花のつけ方がおもしろく、雄花だけをつけるオス株、雌花をつけるメス株、雄花と両性の花をつける両性株の3つがあることが報告されている。ネットで調べると、伐採や山火事などのストレスで性転換することが知られているとのこと。
ヒサカキは地域によって「ビシャ」とか「ビシャギ」「ビシャコ」「ヘンダラ」など別名で呼ばれる。「樹木大図説」(上原敬二著)には、60近くの異名が記載されている。神聖な木として取り扱われ、神様や仏様に供えられることもあるヒサカキだが、この異名の多さは身近な里山の木として、いかに人に親しまれてきたかを物語っているのではないか、という。
名残り雪からヒサカキまでなかなか話は尽きない。すると、別の研究員が入ってきて、話を交ぜ返した。日本の花屋で売られているサカキの8割は中国産だそうだ。神聖な木を外国に委ねるなんて、と憤る。外国を責めているわけではない。里山にふんだんに自生しているのに、それを採取し、市場に出荷しないのは日本人の怠慢ではないのかというのだ。つまり、人々は里山に入らなくなった。経済価値としての里山に魅力を感じる人が少なくなった、ということか。それならば、逆転の発想でビジネスチャンスがあるのはと思ったりもする。
⇒26日(木)朝・金沢の天気 ゆき