自在コラム

⇒ 日常で観察したことや環境問題、金沢大学での見聞、マスメディアとインターネットについての考察を紹介する宇野文夫のコラム

☆メディアのツボ-40-

2007年01月30日 | ⇒メディア時評

 大学でマスメディア論の授業を持っていることから、新聞の切り抜きは絶やさないが、きょう30日の朝刊ほどマスメディア関連の記事スクラップが多い日はなかった。

     「期待権」とメディアの奇観   

 列記すると、各社一面を飾ったのが、NHKの番組が放送直前に改変されたとして、取材を受けた市民団体がNHKなどに総額4000万円の賠償を求めた控訴審判決で、東京高裁が取材された側の「期待権」を認めてNHKに200万円の賠償命令を命じたニュース。さらに同じ一面で、裁判員制度フォーラムを共催した産経新聞社などが謝礼を払ってサクラ(参加者)を集めていたこと。

  そして、社会面や特集面などでは、「あるある大辞典」の納豆データ捏造事件の続報の見出しが躍っている。「関テレ、看板失墜で広告減も」「ひっかかりやすい中高年女性に照準」など…。  NHK、民放、新聞社がこれだけそろって、マスメディアネタになることは稀有なこと。しかも、一面と社会面のトップを独占しているのである。まるで、マスメディアが自家中毒でも起こして悶え苦しんでいるような、まさに奇観である。また、その当事者のコメントを読むと、版で押したように、「信頼回復に努める」と。

  欧米のメディアは今、新聞の紙面改革や身売り、放送メディアは合併の嵐が吹き荒れている。インタ-ネットの普及拡大で、メディアそのものの利用価値が揺らいでいるからだ。いわば存在価値が問われ、構造改革に迫られている。ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は新年から従来の紙面の横幅を38㌢から30㌢に縮小し、つまりスリム化してコスト削減と紙面の改革(解説・分析記事を50%から80%に拡大)を図っている。改革の痛みに身悶えしているのである。早晩、日本にもこの改革の嵐が来る。あるいはその序章としてスキャンダルが噴出しているのかもしれない。

  それにしても、NHKの今回の裁判はこれも奇観である。取材される側が番組内容に対して抱く「期待権」を高裁が認めたのである。こうした「期待権」が取材のたびに常に成立するとなると、おかしなことになる。たとえば、あるテーマで政治家にインタビューしたとする。ところが取材を重ねていく過程で編集方針は変化するものである。そして別の政治家にインタビューすることになり、先の政治家のインタビューを反故(ほご)にするとういケースが生じる。放送後に「期待権」を盾にとってその政治家が「なぜ私のインタビューを使わない。だいたい番組は私がイメージしていたものと異なる」などとねじ込んでくる可能性があるのだ。

  こうなると「編集の自由」はどうなるのか。判決では今回の「期待権」は例外的としているが、それでも一度認められると拡大解釈される。そのつど裁判をやり、このケースは例外であるのか否か認定をしなければならなくなる。この意味で、今回の判決は単にNHKではなく、メディア全体にかかわるやっかいな判決であると言っても過言ではない。

 ⇒30日(火)夜・金沢の天気  あめ

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★メディアのツボ-39-

2007年01月29日 | ⇒メディア時評

 1月7日放送の番組「発掘!あるある大事典Ⅱ」で、週刊朝日が11項目のデータについて関西テレビに質問状を送ったのが18日。その返事を催促したのが20日。しかし、関テレが応じたのは社長の緊急記者会見だった。その会見も、関テレ社長は当初は「納豆のダイエット効果の有無は学説で裏付けられている」として、「番組全体は捏造ではない」と主張していた。しかし、捏造データの余りにも多さ(関テレ発表だけで5ヵ所)を記者陣から追及されてしぶしぶ捏造を認めたのだった。

   フードファディズム煽ったツケ

  関テレが20日にホームページで公表した内容によると、捏造は3パターンである。一つは「データの捏造」。今回、被験者のコレステロール値、中性脂肪値、血糖値の測定せず、また、比較実験での血中イソフラボンの測定せず、さらに血液は採集をするも実際は検査せず、数字はすべて架空だった。二つ目が「コメントの捏造」である。米国テンプル大学アーサー・ショーツ教授の日本語訳コメントは内容は本人の話したものとはまったく違っていた。三つ目が「写真の捏造」である。やせたことを示す3枚は被験者とは無関係の写真だった。

  「納豆でやせる」の結論ありき番組なので、裏付け事実(データ)の構成をする番組ディレクターは結局、作為に走った。調べてみると、この番組の制作は9チーム150人で回している。つまり、1チームが2ヵ月(9週)に1本のローテーションで制作することになる。科学データを取り、結果を出し、分析する事実構成を60日余りですべてそろえるには時間的に無理がある。

 たとえば、テンプル大教授のインタビュー取材は2泊4日の取材旅程だったという。正味2日の取材で、キーマンから研究の核心をインタビューするわけである。研究者の立場からすれば、日本からわざわざ来た取材クルーとは言え、苦労して積み上げた研究成果をホイホイと出すはずがない。普通なら、取材の狙いや番組の構成、自分のコメントの使われ方まできちんと聞いた上でようやく自分の研究の触りを語る程度だ。取材クルーの方も、アメリカで納得いくまでインタビューをする、あるいは片っ端からデータを収集するというつもりはなく、アリバイ的に取材をしたかたちにしたかっただけだろう。

  1992年9月30日と10月1日の2夜で放送されたNHK番組「禁断の王国・ムスタン」の「やらせ」とは違う。ムスタンの場合は、番組の完成度を求めて、イマジネーションを膨らませて(一面で楽しく)捏造した。しかし、「あるある大事典」の場合は時間に追いかけられながら、あたかもネズミのサキュレーションのごとく回転しても、事実を構成することは時間的にできなかった。だから、その時間を埋め合わせるために捏造したのである。その現場の苦境を放置しておいたツケが関テレに回ってきた、と言える。

  その後、「みそ汁で減量」(06年2月放送)、「レタスで快眠」(98年10月放送)などで疑惑が出ている。おそらく520回の番組すべてについての検証を関テレはしなければならない。監督官庁である総務省近畿総合通信局からそのようなお達しが来ているはずである。大きな負債を関テレは抱えたことになる。特定の食品の効能を信じ偏食するフードファディズム(food faddism)を視聴者に煽り、利益をむさぼったたツケでもある。同情の余地はない。

 ⇒29日(月)夜・金沢の天気  くもり

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☆メディアのツボ-38-

2007年01月22日 | ⇒メディア時評

 宮崎県の官製談合事件での前知事の辞職に伴う出直し知事選がきのう21日行われ、新人の元タレント・そのまんま東氏(49)=無所属=が初当選を果たした。知名度を生かし、草の根選挙を展開。入札制度改革や農産物を「そのまんまブランド」として売り出すことなどを訴え、激戦を制した。

   「そのまんま東」トップにせず

  当初、「泡沫候補」とも言われていた元タレント候補が激戦を制したとあって、各新聞やテレビはトップニュースの扱いで報じた。ところが、このニュースを朝日新聞大阪本社はトップ扱いにしなかった。同じ朝日新聞でも、東京本社はトップだったのにである。大阪本社の一面トップは生活福祉資金の貸付金の272億円が未回収であることを報じたものだ。ホットなニュースである「そのまんま東氏当選」は準トップだった。なぜか、である。

  きょう、私が担当する「プロと語る実践的マスメディア論」の授業の中で、その答えを直接聞くことができた。授業で講義をお願いした朝日新聞大阪本社の嶋田数之編集局長補佐が授業の中でこう説明した。「確かに、(そのまんま東氏の)当選はニュースだ。しかし、未知数のものをトップで扱って、最初から持ち上げることはできない」と編集判断で抑制を効かせたことを語った。

  その背景の一つは、「横山ノックの記憶」がまだ新しいからだろう。大阪府知事だった横山ノック氏は1999年、APECの成功など実績も評価されて2期目の選挙で235万票という大阪新記録の得票によって再選された。しかしその選挙活動の際に自陣営の運動員をしていた女子大生にセクハラをしていたことが選挙終了後に発覚し、当初は否定して2期目に就任したものの、同年12月に強制わいせつ罪で在宅起訴され、2000年1月に辞職に追い込まれた。

  嶋田氏が「未知数」というのも、今回の選挙は官製談合事件が背景にあり、田中康夫氏(前長野県知事)の「脱ダム宣言」のように新しい政治の風をつくったというわけではない。さらに、1998年に当時16歳の少女からいかがわしいサービスを受けて、児童福祉法違反で事情聴取を受けるなど、「横山ノックの記憶」と微妙にダブってくる。トップ扱いにするには、確かに「未知数」な部分が多い。

  当選後の会見で、そのまんま東氏は本名の東国原英夫(ひがしこくばる・ひでお)で今後、政治活動をしていくと言う。確かに、選挙中もかつての同僚のタレントの応援を断って草の根運動を「マラソン」で展開した。それだったら、「脱タレント宣言」をして、立候補の段階から本名を名乗るべきだったろう。

  当選のニュースを聞いて、何人かと話題にした。すると、「宮崎県政はさらに混乱するのではないか」との話になり、巷間では決して好意的には受け止められていない。当選は驚きであったが、期待感がついてこない。この意味でも、ニュース価値としてトップにしなかった朝日新聞大阪本社の扱いはプロの冷静な判断であったと言える。

 ⇒22日(月)夜・金沢の天気  くもり

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★メディアのツボ-37-

2007年01月17日 | ⇒メディア時評

 これからのテレビメディアを考える上で、ポイントとなるのがデジタル化後のビジネスモデルだ。広告収入の伸びが期待できない現状で、ITを使って、さらに地デジという新たなメディアツールを駆使してテレビ局はどのように広告放送以外の収入(以下、放送外収入)を得ればよいのか…。このテーマで、「地デジとコマース~新たな事業の可能性を探る~」研究会(月刊ニューメディア編集部主催)が昨年10月、金沢大学などで開かれた。全体コーディネーターを担当した立場から今回の論議のポイントをまとめてみた。

  テレビ局がモノと向き合う時

 「単なる物販サイトではない。地域おこしの心意気でやっている」。北陸朝日放送(HAB)業務部、能田剛志部長は力を込めた。講演タイトルは「ECサイト『金沢屋』の6年で得たローカル独自のコマース展開とは」。放送エリアである石川県の地場産品にこだわり、この6年で生産者とともに100余りの商品を開発した。商品の採用が決まると、プロの写真家とライターが現地に入り、取材する。生産者の人となりや商品ができるまでの物語がテキストベースで紹介される。単に商品の画像を並べただけのショッピングモールとは異なり、手間ひま(コスト)をかけている。そのせいもあり、売上は緩やかな右肩上がりであるものの、単年度の黒字決算には至っていない。「(単年度黒字は)08年を目標にしている」と。今年5月、姉妹サイトとして「山形屋」(山形テレビ)が誕生した。システムと運営ノウハウを系列局にのれん分けするほどになったのである。

  「注文を受けた豆腐が崩れて配達されたらどうするか」。金沢屋での意見交換のときに出た実際にあったケースだ。HABは配達先(北海道)からの苦情で即、同じ商品を別便で送り注文主の許しを得た。と同時に、最初に配送した運送会社には集配上のトレーサビリティ(追跡可能性)に弱点があると判断して別の運送会社に変更した。こうして受注、生産、配送、決済という一連の流れの中で発生した大小の問題点を一つひとつ改善した結果、受け取り拒否や返品は極めて少ない。能田氏は、放送外収入としてコマースはすぐに儲かる事業ではないとした上で、「これまでテレビ局は視聴者の顔を見ないで視聴率ばかり気にしていた。その延長線で、売上高だけを気にして顧客対応をおろそかにしたらビジネスは成り立たないだろう」と従来のテレビ局の発想でコマース事業を展開することを戒めた。

  「地元テレビ局は商店街とIT連携をどう展開すればよいか」のタイトルで講演した金沢大学経済学部、飯島泰裕助教授はITを駆使して地域をどのように活性化するかをテーマに数多くの事例を手がけてきた。輪島市の山村集落である金蔵(かなくら)地区では、お年寄りたちが稲はざで天日干した米を「金蔵米(きんぞうまい)」のネーミングで売り出している。ところが地元の店頭ではなかなか売れない。そこで飯島ゼミの学生たちがブログで金蔵の丁寧な米作りづくりを紹介して、食にこだわりを寄せている人たちのブログに片っ端からトラックバックを貼った。すると徐々に手応えが出てきて、生産量は少ないもののブランド米としての道を歩むきっかけをつくった。「Web2.0」のコミュニティ形成力を活用して、学生が支援に乗り出した事例である。そこで、飯島氏は、「表現者のプロとしてのテレビ局ならばもっと多彩なことが展開できるはず。ITを組み合わせれば、地域の特色ある生産者や商店街の人たちとテレビコマースを連動させた多様なコンテンツができる」と指摘した。

  続いて、「生産者にとって使い勝手のよいECサイトと放送局への期待」の演題で話した「夢一輪館」(石川県能登町)、高市範幸代表は生産者として熱く語った。「頑張っている生産者というのは得てして口下手、売り込むのも下手。ホンモノを掘り起こし伝えてくれるメディアこそ生産者にとって使い勝手がいいのです」と。高市氏は前述の金沢屋に出品する生産者の一人。「畑のチーズ」(豆腐の燻製)や「牡蠣いしり」(魚醤)のヒット商品はコマースがなければ世に出なかったかもしれない。むしろ、コマースサイトの運営側と生産者のよい関係から生まれたシナジー(相乗効果)とも言えるだろう。

  ホンモノの時代とテレビではよく叫ばれるが、テレビ局自身はリアルな「モノ」を扱ってこなかった。2000年ごろからテレビ局の何社かはショッピングサイトを立ち上げた。しかし、その多くはテレビのメディアパワーを背景にした「テナント」であって、自らモノを扱ったわけではない。結局、楽天など「銀座の目抜き通り」となったサイトに店子は流れていってしまった。そして、地デジ時代という新たなメディア環境に入って、コマース事業の再構築に迫られている。そこで何を売ればよいのか、どう商品の独自開発を行うのか、テレビ局が本気でモノと向き合わなければならない時代になったと、今回の研究会で改めて実感した。

 ⇒17日(水)午後・金沢の天気  くもり

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☆古民家とハイテク車のコラボ

2007年01月16日 | ⇒キャンパス見聞

 先日、このブログ「自在コラム」で紹介した金沢大学創立五十周年記念館「角間の里」に設置した「炭ストーブ」。 かなり反響が大きく、ついにきょう(1月16日)、NHK金沢放送局が「角間の里」から生中継を行うことになった。リポーターはNHKの酒井菜穂子さん、角間の里山自然学校からは研究員と、キャンパスでの炭焼きを目指す学生サークル 「CLUB炭焼き」の代表が出演する。NHK金沢放送局の夕方のワイド番組「デジタル百万石」 で午後6時30分ごろ放送だ。

  それにしても、このNHKの中継車と記念館「角間の里」のアングルはなかなかのコラボレーションだ。「角間の里」は築300年の豪雪地帯・旧白峰村から譲り受けた再生古民家。そして、中継車は衛星回線で世界中に映像と音を伝送できる「SNG(Satellite News Gathering)車」と呼ばれるハイテク車である。ハイビジョンカメラの映像を、赤道上空3万6千㌔の通信衛星を介して、放送局に送る。写真では見えないが、車の中は映像と音をミキシングするオペレーションルームになっている。まさに、先端の放送と通信技術の塊(かたまり)だ。

  古民家は、玄関の入り口でパラボラアンテナを広げるハイテク車に決してものおじしていない。むしろ「ハイテクよ、よく来た」と出迎えているかのように堂々としている。アナログとハイテクの絶妙なバランスが見えて面白いのである。

 ⇒16日(火)午後・金沢の天気   くもり

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★木炭ストーブで温まる夢

2007年01月12日 | ⇒キャンパス見聞

 先日、私のオフィスである金沢大学創立五十周年記念館「角間の里」に設置されたストーブの話題を取り上げた。そのストーブにこの10日、いよいよ火が入った。

  かつて小学校にあった石炭ストーブではなく、炭を燃料としている。仕組みは ストーブに取り付けたタンク内で温まった水が、設置された配管内を循環し、部屋を暖めるというもの。当初、2005年8月ごろに、 金沢大学のOBで、バイオマス燃料の研究に取り組む北野滋さん(55)=明和工業社長(石川県能美市)=が炭ストーブの開発を大学へ提案。築300年の「角間の里」の木造の雰囲気と、そこを拠点に活動する「角間の里山自然学校」 のコンセプトとマッチしていたので、「角間の里」に設置が決まった。05年初頭の設置予定だったが、防災設備やスチームの配管、煙突の構造、 建物の外観とのすりあわせなどの問題をクリアーするのに遅れ、ようやく完成にこぎつけた。

   この炭ストーブにはちょっとした「夢」が託されている。現在は市販の炭を利用してスタートしたが、将来的には大学のキャンパスで活動する市民ボランティア「角間の里山メイト」や学生グループがつくる竹炭や木炭を利用することにしている。メイトがキャンパスの里山の保全活動(竹林整備、雑木林の管理など)に取り組んでくれているが、活動で出た間伐材(竹、木)の処理に一番頭を悩ませている。これらの材で炭(燃料)を生産し、ストーブで消費できれば、里山の保全活動と燃料の確保につながる。使用後の燃え残りの灰は肥料や土壌改良剤として山や畑にかえす計画。竹炭は市民ボランティア「竹ん子くらぶ」が生産中。木炭は、学生サークル「CLUB炭焼き」が現在炭窯を製作中で少し時間がかかる。

  大学キャンパスの限られた地域の中での木質バイオマスエネルギーとはいえ、持続可能なエネルギー循環のミニモデルなのだ。こうした仕組みは、これからの里山保全のモデルケースになるのではないかと思い描いている。

 ⇒12日(金)朝・金沢の天気  くもり

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☆メディアのツボ-36-

2007年01月10日 | ⇒メディア時評

 テレビ局には「モルモット」といわれる番組がある。深夜帯にこれまで使わなかったタレントを起用して試しに番組をつくる。それが、視聴率を稼げると判断するとゴールデンタイムなどに持ってくる。実験動物にたとえた「モルモット番組」はタレントだけでなく、若手のディレクターの登竜門になったりする。 しかし、得てしてこのような野心的な番組には落とし穴が多い。

     「モルモット番組」

 その代表格の番組がテレビ朝日系・火曜日夜9時の「ロンドンハーツ」かもしれない。何しろ、系列内部では「平均14%を超える高い視聴率をマークした」と評判がすこぶるいい。中でも05年10月に放送された「青木さやかパリコレへ!」は19.2%を獲得して、裏番組のガリバー「踊る!さんま御殿!!」を9.8%と1ケタに落とすというテレ朝にとっては「快挙」も成し遂げた。

  正確に言うと、「ロンドンハーツ」は冒頭に記したモルモット番組ではない。同じテレビ朝日系の深夜0時45時の番組「ぷらちなロンドンブーツ」の主力スタッフが制作していたため、「ぷらちな」のゴールデン昇格番組と思われているが、実際は99年のスタート同時期では「ぷらちな」も放送されていたので兄弟番組である。

  落とし穴というのは、その後、「ロンドンハーツ」は日本PTA全国協議会が小学5年生と中学2年生の保護者らを対象にした「子どもとメディアに関する意識調査」で、子どもに見せたくないテレビ番組の1位になる。しかも、3年連続である。PTAの調査内容をもう少し細かく紹介すると、「ロンドンハーツ」は親の12.6%が見せたくない番組に挙げ、2位の日本テレビ系「キスだけじゃイヤッ!」(8.3%)を大きく引き離している。若者には14%を超える人気番組かもしれないが、子を持つ親には「2ケタもの反感」を買っているのだ。

  これまで見た番組の印象では、女性タレントが言い争うコーナー「格付けしあう女たち」が人気のコーナーだが、冷静に考えば、ギスギスした人間関係を助長し、「だからそれが何だ」と思いたくもなるシーンもある。そしてコーナータイトルも「ドすけべホイホイ」など、子どもからその意味を聞かれて親が返答に窮する内容なのだ。

  テレビ局側は「頭の固いPTAが感情論で…」などと軽んじないほうがよい。子どもを持つ親たちは感情論ではなく、医学や発達心理学の論拠を得て理詰めで、テレビが子どもたちに与える影響を考え始めている。そして、NHKを含めテレビ業界を見つめる社会の目は年々厳しくなっている。

 野心的で若手ディレクターの登竜門となる番組を制作をすることはテレビ局の生命線である。ただ、その評価の尺度が視聴率だけであってよいのか、いまがその価値基準に一定の線引きをする潮目の時だろう。

 ⇒10日(水)朝・金沢の天気  くもり

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★メディアのツボ-35-

2007年01月08日 | ⇒メディア時評

 一部の事務職を法定労働時間規制から外し、残業代をゼロとする「日本版ホワイトカラーエグゼンプション」制を導入するための労働基準法改正案は、今月25日召集予定の通常国会への提出が微妙になってきる。これには、与党内に「賃金の抑制や長時間労働を正当化する危険性をはらんでいる」(丹羽自民総務会)といった慎重意見があるためだろう。

    残業「青天井」のワナ

 法案を出す出さないは内閣が今夏の参院選挙をにらんだり、各種の経済指標と照らし合わせてを決定することで論評する気はない。ただ、私自身、この残業問題というのは、この言葉を聞いただけでも正直うんざりするくらい憂鬱な気分になる。この問題で2年間苦しんだことがある。

  民放テレビ局の部長だったころ。もう6年前のことだ。その頃、民放業界では高収入にもかかわずら20代や30代の社員が自己破産するという現象が相次いでいた。その構図は実に単純だった。報道記者や制作ディレクターは残業が上限なしの「青天井」だった。すると月80時間ぐらい残業をすると数十万円になる。これを「第二本給」と称していた。第一と第二の本給を合算すると非組合員である部長クラスの給料を軽く超えるくらいになる。恒常的に続くとこれが当たり前になり、高級車や一等地のマンションをローンを買う。ところが、社内異動となり総務や編成といった事務部門に回されると途端に残業が少なくなり、組んだローンが返せなくなり、デフォルト(債務超過)に陥るというパターンなのだ。当時「独身貴族」と称された層に多かった。

  これは当時、東京のキー局の事例で聞いた話だ。報道部門から営業部門に異動となり、ある20代の男性社員が「残業のワナ」にはまってしまったことに気がついた。その社員は残業代を何としても稼ぎたいので、しなくてもよい残業をするようになった。そうなると机にかじりつくようにして離れない。用件もないのに残業をしているので上司が「そんな残業は認められない」というと、「訴えてやる」と社員はくってかかるようになった。残業代を稼ぐために「理由なき残業」をする。完全な労働のモラルハザートに陥ってしまった。

  自分自身の話に戻る。そのころ報道記者職にも裁量労働制が法的に認められていた。一定の時間分を固定的に残業代として支給し、さらに記者に不利益が出ないようにフレックス制(出退社時間を自分で調整)とセットで導入した。その導入までの2年間は職場討論を繰り返し、その導入までのプログラムとスケジュールの作成、要は何を基準にして固定時間数(見なし残業)を算出するか苦痛の連続だった。そのころテレビ業界でも数社が裁量労働制の導入を組合に提案し、ことごとく潰されていた。かろうじて1社が導入したが、組合との軋轢を生む要因になっていた。

  一人ひとりの出勤簿に記載された残業時間とその理由の分析は深夜に及ぶ孤独な作業だった。それを1年間続けた。「これで誰も損はしないはず」と導入に踏み切った後も、あからさまに不満を口にする者もいた。他人の給料に手をつけることの怖さである。

  いまでは報道職場の残業が青天井というテレビ局は少ないだろう。CM収入が落ち込む中、特にローカル局はデジタル化投資の返済で自社番組の制作予算そのものを抑制している。ニュース番組の枠も縮小傾向にある。独身記者のデフォルト問題はもう過去の話かもしれない。

 ⇒8日(祝)午後・金沢の天気  くもり

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☆煙突が立った日

2007年01月06日 | ⇒キャンパス見聞

 私の自慢のオフィスは創立五十周年記念館「角間の里」。 白山ろくの豪雪地帯で築300年の養蚕農家を移築、いわゆる古民家を再生したものだ。去年4月に完成。黒光りする柱や梁(はり) のどっしりとしたたたずまいに、訪れた人は「和みますね。田舎の実家に来たようです」と好印象を述べてくれる。その記念館に先日、ストーブの煙突が立った。

  この建物はかつて村の文化財だったものを譲り受けたもので、なるべく本来の姿を生かすという建築思想のもと、冷暖房の設備は最初から取り付けてなかった。このため、夏はスタッフ一同でクールビズを徹底した。また、土間を通る風は天然のクーラーのような涼しさがあり、扇風機を緩やかに回すだけで十分にしのぐことができた。問題は冬である。今度はウオームビズで着込んではいるが、さすがに冷えるので事務室だけはエアコンを入れ、板の間の部屋には持ち運び式の石油ストーブを置いた。残るはこの建物の最大の空間である土間の暖房対策となった。

  環境ベンチャー企業の方から「この建物にふさわしいのはバイオマス・ストーブではないでしょうか」と提案があり、半ばボンランティアでストーブを設置していただいた。バイオマス・ストーブは廃材や木炭など木質系を燃料とするもの。実は、大学ではモウソウ竹が繁茂しコナラを枯らすので頭を悩ませていて、市民ボランティアに竹林の整備をお願いしている。竹用の炭焼き窯もあり、結構この炭焼きが学生にも人気がある。整備と燃料の確保、消費のサイクルがキャンパスの中で循環すれば研究にも広がりが出来る。

  また、タインミングよく、学生サークルに炭を焼く「クラブ炭焼き」が誕生した。現在、メンバー8人が「角間の里」の背戸の山で炭窯を製作中だ。自分で焼いた炭で暖をとる学生たちの姿も目に浮かぶ。この館が持つ、どこか懐かしい里山のイメージがなければ企業の方からのストーブの提案がなかったわけで、その意味では「角間の里」に感謝しなければならないと思っている。今月10日、正式に火入れして完成を祝う。これはいわば、金沢大学における「木質バイオマス記念日」なのだ。

 ⇒6日(土)夜・金沢の天気   雷雨

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★メディアのツボ-34-

2007年01月04日 | ⇒メディア時評

 「ちょっと待て」と言いたい。今回のNHK紅白歌合戦で不評を買った、DJ OZMAのヌードスーツについてのNHKの釈明が問題だ。

    公共放送の「トップレス」事件    

  NHKホームページの紅白歌合戦のページでお詫びが出た。3日午後11時ごろにチェックした。文面は以下だった。「DJ OZMAのバックダンサーが裸と見間違いかねないボディスーツを着用して出演した件について、NHKではこのような姿になるということは放送まで知りませんでした。衣装の最終チェックであるリハーサルでは放送のような衣装ではありませんでした。今回の紅白のテーマにふさわしくないパフォーマンスだったと考えます。視聴者の皆様に深いな思いをおかけして誠に申し訳なく考えております」

  ところが、インターネットのポータル(ヤフーなど)のニュースで「NHKがDJ OZMAを突き放す」などと掲載されると、今度はその紅白ページのくだんのお詫び文を消去したのである(4日午前1時30分現在)。「ちょっと待て」と冒頭に書いたのは、そうした「お詫び掲載」と「消去」の真意と一貫性がどこにあるのかと問いたいからである。

  もともとお詫びには、「責任の所在はNHKにはない。DJ OZMAがゲリラ的にやったことで、NHKも被害者だ」というニュアンスが感じられた。これはこれで問題なのだが、他メディアに取り上げられたから消去する(隠滅という表現が正確かもしれない)というのは合点がいかない。

  こう推測した。このお詫び文は、ヌードスーツの反響の大きさに反応した現場の責任者(プロデューサークラス)判断でホームページ制作担当者に指示してお詫び文をアップロードした。その後、そのお詫び文がさらに他メディアに取り上げられ、上部層の知るところとなった。そして、上部層がホームページのアップを指示した責任者に「橋本会長の会見前に火に油を注ぐことはするな」と一喝したのだろう。そこでお詫び文を消去した。そんな構図が見えるようである。

  ともあれ、きょう4日のNHKの橋本会長の記者会見の釈明を聞きたい。何しろ、この公共放送のヌードスーツ事件、すでに「国際ニュース」になっているのである。※写真はヤフー・アメリカで掲載されたロイター電

                                       ◇

 NHKの橋本会長は4日、職員に向けた年頭のあいさつで、「視聴者に不快な思いをさせるパフォーマンスがあり、『これがNHKの品格か』と厳しい意見をいただいた。視聴者に方々に申し訳なく思う」と謝罪した(サンケイ新聞インターネット版)。

⇒4日(木)朝・金沢の天気   くもり

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