自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆「押せ 押せ」群衆雪崩は人為的な事故なのか

2022年10月31日 | ⇒メディア時評

   韓国・ソウル市内の繁華街・梨泰院で29日、ハロウィンイベントに参加した若者が押し倒されて154人が死亡、149人が負傷した事故(31日午前6時現在)。韓国の朝鮮日報Web版日本語(31日付)は、この群衆事故をめぐり、現場にいた目撃者や生存者たちの間で、誰かが故意に押したという証言が多数出ていて、警察は現場一帯の監視カメラ映像などを確保し、事故原因の究明に乗り出したと報じている。 

   記事によると、路地の上の方から「押せ! 押せ!」「もっと強く押せ」といった言葉が発せられた後、あっという間に列が下り坂で崩れたという。最初に押し始めた人たちに対する具体的な描写も出ていて、「5、6人の集団が押し始めた」「韓国人男性の集団に外国人も混じっていた」「ウサギのヘアバンドをした男性を捕まえなければならない」などの証言もある伝えている。

   また、事故の1分ほど前の映像では、人々でごった返しているものの、比較的円滑に通行していた。しかし、突然下り坂の上の方から人々が一度に押され始めた。このように押される現象は、映像の中で2、3度繰り返されている。証言が事実なら、故意に押し始めた人たちは刑事処罰を受ける可能性がある(朝鮮日報Web版日本語)。

   東亜日報Web版(31日付)も「“토끼머리띠 남성 무리가 ‘밀어! 밀어!’”…모아지는 증언들」の見出しで、ウサギのヘアバンドを着けた男たちが「押せ」と叫んでいたと多数の証言を記事にしている=写真=。

   殺人の意図はなかったにせよ、ウサギのヘアバンドを着けた男たちのグループが「押せ 押せ」と群衆をかく乱するように仕向けたとすれば、明らかに人為的な重大事故だろう。メディアの事故報道が先行しているものの、今後の韓国警察の捜査の展開が注目される。

⇒31日(月)午後・金沢の天気    はれ

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★ハロウィンで起きた出来事

2022年10月30日 | ⇒トピック往来

   きょう午前中、自宅近くの大通りを金沢マラソン(42.2㌔)のランナーが走っていた。地元メディアによると、1万2千人余りが参加している。沿道で走者の様子を見ていると、中には仮装した人などもいて、まるで「ハロウィン・マラソン」のようだった=写真・上=。

   ハロウィンと言えば、韓国・ソウルで大変な事故が起きている。韓国の中央日報Web版日本語(30日付)によると、29日午後10時46分ごろ、ソウル梨泰院駅に近いホテルそばの路地でハロウィンイベントなどに参加していた若者たちが何らかのきっかけで押し倒されドミノのように倒れていった。圧死と推定される事故となり、これまで153人(うち外国人は20人)が死亡、133人が負傷した。死傷者の大部分が10代から20代とみられるという。

   このニュースを知って、「群衆雪崩」という言葉を思い起こした。大都会などで震災が発生すると、人々が密集して一人が倒れることで、周りが雪崩を打つように転倒してしまうことを言う。実際に、2001年7月21日に兵庫県明石市で夏祭りの花火大会を見学にやってきた人々が集まり歩道橋が異常な混雑となり、群衆雪崩が発生。11人が全身圧迫で死亡し、183人が負傷する事故が起きている(Wikipedia「明石花火大会歩道橋事故」)。

   日本のハロウィンのメッカと言えば東京・渋谷だ。メディア各社によると、3年ぶりに自粛要請のないハロウィン前となった29日夜から朝にかけて渋谷では一時6300人が集まった。韓国の事故もあり警視庁は人出が予想される30日夜も警備を徹底すると伝えている。

          ハロウィンは毎年10月31日に行われる、古代アイルランドが起源とされる祭りで、死者の魂が悪魔などの姿をして家々を訪れるという。現代ではアメリカなどで秋の収穫を祝い悪霊を追い払う祭りとして定着している。カボチャなどをくりぬいた「ジャック・オー・ランタン」を作って飾る=写真・下=。子どもたちが魔女やお化けに扮して、「トリック・オア・トリート(Trick or treat)」(お菓子をくれないといたずらするよ)と叫びながら近くの家々を訪れる。
秋田のナマハゲ(能登ではアマメハギ)と何となく似ている民俗行事ではある。

⇒30日(日)夜・金沢の天気    はれ

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☆「コーテル イーガー」餃子の王将のこと

2022年10月29日 | ⇒ニュース走査

   ちょうど50年前、半世紀前の話になるが、大学受験で京都の予備校に通っていた。予備校の寮の近くに「餃子の王将」という中華の店があり、予備校の仲間とよく通った。このとき、餃子の味を初めて知った。そして、新鮮に思えたのは、餃子を注文するとスタッフが厨房に向って、「コーテル イーガー」「コーテル リャンガー」と大声を出していた。「餃子一人前」「餃子二人前」という中国語なのだが、そのうち、仲間内でコーテルが「餃子の王将」の代名詞になったことを覚えている。

   もう一つ思い出すのが、店の周囲には予備校生や大学生が多く住んでいて、学生が店で皿洗いの手伝いを30分ほどすると餃子とラーメンが無料で食べられるという話だった。自身はこれにチャレンジしたことはなかったが、親からの仕送りが少なかった仲間の一人は「助かる」と店に感謝していた。

   その餃子の王将は店舗を全国に拡大していて、金沢市内でも4店舗ある。学生街に近い立地だ。時折、餃子が食べたくなると、金沢大学角間キャンパスに近い「杜の里店」に行く=写真=。

   9年前にはちょっとした事件が金沢で起きてニュースとなった。金沢市の繁華街にあった「片町店」で、ボーイズバーの10人ほどの男性従業員たちが全裸でカウンターに座るなどした写真が2013年9月にフェイスブックにアップされた。撮影は2012年11月だった。ボーイズバーの店側は、カレンダーの写真として使うための撮影で王将の店の責任者から許諾を得ていた、と主張した。王将側は撮影を許可したが、裸になると想定しておらず、撮影を制止しようとしたが止められなかったと反論し、その後、男性客らを威力業務妨害と公然わいせつの容疑で刑事告発した。ある意味、王将側はとんだ災難に巻き込まれた。

   さらに、金沢でニュースとなって3ヵ月後の2013年12月19日に、餃子の王将を展開する「王将フードサービス」の社長が京都で射殺されるという事件が起きた。そして、きのう28日、京都府警は殺人と銃刀法違反の疑いで暴力団「工藤会」(北九州市)の組幹部を逮捕した。

   「コーテル イーガー」。災難にめげずに、店の味を守り続けてほしい、餃子ファンの一人として願う。

⇒29日(土)夜・金沢の天気 

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★いま政治に求められる捨て身のスピード感 

2022年10月27日 | ⇒ニュース走査

   いま有権者が政治に求めているのは、周囲との調整を念入りにする政治判断より、捨て身のスピード感で動く政治決断ではないだろうか。今月24日に世界平和統一家庭連合(旧「統一教会」)と深い関係性が指摘されていた山際経済再生担当大臣が辞任した。旧統一教会との関係が国会で何度も追及され、さらに教団本部の総裁と一緒に映っている証拠写真を突きつけられても、山際氏は「資料がない」「記憶が定かではない」などと繰り返していた。

   今国会での目玉の施策が29兆円にも及ぶ「総合経済対策」。取りまとめ役は経済再生担当大臣、つまり山際氏だった。なぜ岸田総理は山際大臣の更迭の決断を早々に下さないのかと、批判の矛先は総理に向っていた。そして、山際氏は総合経済対策の閣議決定(28日)前になって辞することになり、決断の遅さとタイミングの悪さが如実に表れた。

   きょうの旧統一教会関連のニュースは、旧統一教会側がTBSラジオと日本テレビ、また、番組に出演した弁護士とジャーナリストに対して合わせて3300万円の賠償と謝罪放送を求め訴えを東京地裁に起こした(27日付・NHKニュースWeb版)。教団側は先月29日にも読売テレビとTBSの2社、そしてコメンテーターの弁護士3人に計6600万円の損害賠償を求める訴訟を同地裁に起こしている。

   いわゆる「スラップ訴訟」ではないか。端的に言えば、メディアや出演者の言論を萎縮させることを目的とした民事訴訟と言える。アメリカでの概念で、「Strategic Lawsuit Against Public Participation」の頭文字をとり「SLAPP(スラップ)」。直訳すれば、「市民参加を妨害するための戦略的民事訴訟」となる。

   別の見方をすれば、宗教法人法に基づく「質問権」の行使が動き始め、教団の解散命令の請求にまで至るのか注目が集まる中で、教団内部では相当な混乱が起きていることは想像に難くない。その動揺を収めるため、あえて裁判を起こして、内部の統制をはかると同時に、質問権へのけん制をもくろんでいるのではないだろうか。

   いずれにせよ旧統一教会の本質が出たようで、問題視されている霊感商法や高額寄付についての反省の色がまったくない。ニュースを見た視聴者の多くはそう感じたのではないだろうか。

(※写真は、参院代表質問に答える岸田総理=今月7日のNHK総合)

⇒27日(木)午後・金沢の天気    はれ

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☆妥協を許さない「一人支配」中国の行く末

2022年10月26日 | ⇒ニュース走査

   中国共産党の党大会閉幕式(今月22日)で前国家主席の胡錦濤氏が腕をつかまれた状態で途中退席する衝撃のニュースが流れた。その後、国営通信「新華社」(電子版)は23日までに「体調が優れなかった」ためだと説明した(23日付・共同通信Web版)。BBCニュースWeb版(25日付)をチェックすると、「Hu Jintao: Fresh China congress footage deepens mystery over exit」(意訳:新たな映像で深まる胡錦濤氏退席の謎)の見出しで、退席する以前の動画が掲載されている。

   この動画を見ると、体調不良による退席ではなく、連れ出しであることが分かる。習近平国家主席の横に座っていた胡錦濤氏が机の前に置かれていた赤いファイル書類に手を伸ばそうとすると、胡氏の左隣に座っていた人物が見せないようにファイル書類を押さえている様子が確認できる。胡氏が再度そのファイルに再度手を伸ばすと、今度は取り上げた。その後、習氏が別の人物に指示し、胡氏が抱えられるようにして退席した。

   この「退席事件」の直前には、党幹部の人事が行われ、胡氏に近いとされていた李克強首相ら幹部2人が引退させられている。BBCは識者の談話として、「There would be a chilling effect on the officials watching what was happening on the stage」(意訳:閉幕のステージ上で何が起こっているのか見ていた党幹部には相当な萎縮効果があったはず)と伝えている。

   党内外のすべての「敵」を排除した習氏の勝利はいわば、これまでの「一党独裁」から「一人独裁」に入ったようなものだ。習氏の政治手法は、バランスを取らない「オール・オア・ナッシング」のようにも思える。たとえば、「ゼロコロナ」はその典型的な事例かもしれない。ごくわずかな感染対策のために、多くの正常な社会活動を犠牲にする。胡錦濤氏に近い人物を排除し、トップ24人の政治局委員を身内で固めたことで、結果として女性の政治局委員は1人もいなくなった。

   今後、台湾問題を含めた政治と外交や、政治と経済、とくに貧困対策と経済成長などバランス感覚が問われる課題に向かうだろう。そのときも、妥協を許さないオール・オア・ナッシングだとしたら。

⇒26日(水)夜・金沢の天気   はれ

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★訴求力のある企業メッセージ

2022年10月25日 | ⇒メディア時評

   高校時代からの友人が「この上なく訴求力のある、すごい意見広告」とメールで送ってくれたのが、きのう24日付の読売新聞で掲載された、出版会社「宝島社」の見開きの全面広告の画像だった=写真・上=。確かに、インパクトのあるメッセージだ。「世界を敵にまわして、生き残ったヤツはいない。」

   図柄は麦畑の上は青空なので、ウクライナの国旗をイメージしている。ということは、ウクライナ侵攻で世界から非難を浴びているロシアのプーチン大統領に向けたメッセージと読める。人類は、いつまで同じ過ちを繰り返すのか、早期の戦争終結を訴えている。国連軍縮週間(10月24-30日)に合わせたメッセージ広告でもある。

   宝島社の見開き広告はこのほかにも印象深いものがある。2021年5月21日付は、「ワクチンもない。クスリもない。タケヤリで戦えというのか。このままじゃ、政治に殺される。」=写真・中=。戦時下の子どもたちの竹槍訓練の写真の真ん中に赤いウイルスがある。見ようによっては、国旗の日の丸の部分がウイルスになっている。

   キャッチコピーの下にある趣旨説明には、「この一年は、いったい何だったのか。いつまで自粛をすればいいのか。我慢大会は、もう終わりにして欲しい。ごちゃごちゃ言い訳するな。無理を強いるだけで、なにひとつ変わらないではないか」と、当時の菅政権への強烈な批判だった。

   2019年1月7日付は「敵は、嘘。」(読売新聞)と「嘘つきは、戦争の始まり。」(朝日新聞)の2パターンあった=写真・下=。
   「敵は、嘘。」はデザインがイタリア・ローマにある石彫刻『真実の口』だ。嘘つきが手を口に入れると手が抜けなくなるという伝説がある。「いい年した大人が嘘をつき、謝罪して、居直って恥ずかしくないのか。この負の連鎖はきっと私たちをとんでもない場所へ連れてゆく。嘘に慣れるな、嘘を止めろ、今年、嘘をやっつけろ。」と解説があった。当時国会で追及されていた森友・加計問題のことを指していた。

   そして、「嘘つきは、戦争の始まり。」のデザインは湾岸戦争(1991年)のとき世界に広がった、重油にまみれた水鳥の画像だった。当時は、イラクのサダム・フセインがわざと油田の油を海に放出し、環境破壊で海の生物が犠牲になっていると報じられていた。この広告の掲載のときは、アメリカ大統領のトランプ氏が2017年の就任時からメディアに対して「フェイクニュース」を連発していた。為政者こそ軽々しく嘘をつくな、というメッセージだった。

   企業広告とは言え、読者の目線で気持ちを代弁するメッセージの数々に喝采を送りたい。

⇒25日(火)夜・金沢の天気    くもり

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☆「竜巻とからくり師」と「覆面介入と投機筋」

2022年10月24日 | ⇒ニュース走査

   気になったニュースをいくつか。地元メディアによると、きのう23日午後1時すぎ、金沢港の近くで竜巻とみられる突風が発生し、建物の屋根の一部がはがれるなど20軒の建物に損壊、飛んできた物で車のガラスが割れるなどの被害が出た。寒冷前線に湿った空気が流れ込んだ影響で大気の状態が非常に不安定になり、金沢地方気象台はきのう午後1時3分に竜巻注意情報を発表していた。

   現場に行ってみた。同市大野町4丁目にある「大野からくり記念館」では、施設の建物を結ぶ通路の屋根のガラスが割れていた。同記念館は幕末の「からくり師」(発明家、エレキテルや写真機など)だった大野弁吉の業績を紹介する館だ。さらに、周辺では民家の屋根瓦が一部はがれていた。大野弁吉が生きていれば、びっくりの突風だったに違いない。

   「投機筋」という言葉はそれとなく理解しているつもりだったが、改めてネットなどで調べてみる。株式や為替などの価格の変動に着目し、短期的な売買を繰り返して利益を得ようとする投資家全般を称する。その「投機筋」に対して、政府・日銀は戦いを挑んでいる。

   週明けの24日の外国為替市場で円相場は一時、1㌦=149円台で取り引きされていたが、午前8時30分ごろ、急激に円高に動き1㌦=145円台まで上昇するなど変動している。介入の事実を公表しない、いわゆる「覆面介入」だ。ということは、投機筋に対して円相場の動きを読みにくくさせる、奇襲作戦に出ている。

   NHKニュースWeb版(24日付)は、鈴木財務大臣が財務省内で記者団の取材に応じ、市場介入について「私どもは市場を通じて投機筋と厳しく対峙している。そういう状況を考えてコメントしない」と述べた、と伝えている。「投機筋と厳しく対峙」というコメントそのものが、投機筋との戦いを宣言している。円安をめぐる攻防はいつまで続くのか。

⇒24日(月)午前・金沢の天気    はれ

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★霜降のころ 一滴の茶

2022年10月23日 | ⇒ドキュメント回廊

   きょうは二十四節季の「霜降」にあたる。朝夕が冷え込み、霜が降りるころだ。霜降の次は「立冬」(11月7日)。季節は冬に移ろいでいる。とは言え、きょう午後1時ごろの金沢の気温は23度だった。その後、強い雨が一時的に降って、夕方は17度ほどに。

   きのう金沢21世紀美術館の茶室「松涛庵」で催された「小川流煎茶会」に席入りした。今月8日にも「金沢城・兼六園大茶会」が松涛庵であり、表千家流の抹茶を楽しんだ。それぞれ趣きのある場の雰囲気にひたりながら茶の湯を楽しませてもらった。

   煎茶を味わって感じることは「一滴の哲学」ということだろうか。小さな茶碗にほんの僅か、ほぼ一滴の煎茶が出される。それを2回味わい、その後に菓子をいただき、最後に白湯を飲み、茶席が終わる。抹茶とはまったく異なる流儀だ。

   そもそも茶碗に一滴、その意味は。亭主(主催者)の説明は示唆に富んでいた。小川流煎茶の開祖は幕末に京都で御殿医を勤めていた。茶とは何かを問い、「茶の真味」を突き詰めていく。そして、明治維新の最中にまったく無駄のない、「滴々の茶」という発想にたどり着く。「茶は渇きを止むるに非ず、飲むに非ず、喫するなり。ただ湯水の如く呑飲で、いかでか茶味を知ることを得んや」(小川可進著『喫茶弁』)。茶碗に注がれる滴の茶の味にこそ、茶本来の自然の味があり、それを引き出すのが茶道である、と。

   確かに一滴の茶ながら、凝縮された味わいがある。抹茶碗で一服をいただたときより味わい深いかもしれない。これは、一滴の味わいを求めて、全神経と味覚が集中するからかもしれない。そして、「茶とは何か」と思索にはまる。

   茶室「松涛庵」。露地は枯山水の造り。モダンアートを展示する「21美」とは真逆の伝統的な和風空間でもある。ここで茶とは何か、人が茶を味わうとは何か、味わうことの喜びや楽しみ、そして幸福感とは何かを考えた時間だった。

   茶室庭の後ろ側の道路は紅葉の道だった=写真=。落ち葉が小路を覆い、晩秋を感じさせる。そして、自身の人生も秋のころかと、ふと思った。

⇒23日(日)夜・金沢の天気   くもり時々あめ

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☆利上げせず、さらなる円安、その先の危機シナリオ

2022年10月22日 | ⇒ニュース走査

   日米の金利差が拡大し、円よりもドル建てで運用する方が有利になり、ドルが買われて円安になる。当たり前のことだ。世界が見つめる日本はさらに厳しい。日本は賃金上げができないほど経済が弱体化している。なので利上げができず、円安が続く。世界で日本だけが成長から取り残されている、という世界の論調だ。「2000年時点では日本の平均賃金は米国より高かったのに、今では日本の平均賃金は米国の半分だ。国益とは何を指していたのだろうか」(4月22日付・ロイター通信Web版日本語)。

   メディア各社によると、政府・日銀は急激な円安を止めるためきょう22日未明にかけて、円買い・ドル売りの為替介入を実施した。これにより、円相場は1㌦=152円から146円まで円高に振れた。円安による為替介入は9月22日以来で2度目。ただ、今回は介入の事実を公表しない、「覆面介入」だった。

   ということは、投機筋に対して円相場の動きを読みにくくさせる、忍法「目くらまし」術のようなものだ。政府・日銀がこのような奇襲作戦を今後も続ける、円安で損をするのは投機筋だと宣言したようなものだ。

   では、なぜ日銀は利上げをしないのか。黒田総裁は参院予算員会(今月19日)で「金融緩和を継続することで経済をしっかりと支え、賃金上昇を伴うカタチで物価安定目標の持続的・安定的な実現を目指すことが適当」と答弁している。利上げによる経済への悪影響で巷(ちまた)でよく言われているのが、住宅ローン破綻の急増だ。変動金利で住宅ローンを組んだ購入者にとってローン金利が上がると打撃だ。ましてや、賃金上げがない中では現実的な話だ。

   もう一つ、日銀が利上げをしない理由。メディアでもよく報じられているのが、「利上げをすると国債暴落が起き、日銀のバランスシートが債務超過になるので、日銀は利上げができない」という論調だ。確かに、利上げをすると債券価格は下落するとは定説になっている。日銀は長期国債537兆円、国庫短期証券9兆円の合計546兆円の「国債」を資産として保有している(10月10付・日銀「営業毎旬報告」)。この数字をみれば、利上げで国債価格が下落すると日銀のバランスシートが崩れ、債務超過に陥るのではないかと考えてしまう。

   では、国債価格の下落に含み損が生じたとして、そのことによって日銀の業務に支障が出たり、金融市場が混乱するだろうか。民間の金融機関だったら、いわゆる預金者による「取り付け騒ぎ」が起きて混乱するだろう。中央銀行ではそれはない。雑ぱくな言い方だが、含み損が生じたとしても、いわゆる現金というのは日銀券のことであり、日銀にとっては痛くもかゆくもないだろう。   

   ただ、日銀が真に恐れているのは、いわゆる「キャピタルフライト(資本逃避)」かもしれない。覆面介入が奏功せずに投機筋による円安が続き、1㌦=200円ということになれば、国民はむしろ危機感を募らせる。2000兆円ともいわれる個人金融資産が安全資産への買い替えとしてドル買いに動き始めると、どうなるのか。おそらく政府は外貨購入に制限を設けるだろう。この時点で、政治も経済も信頼を失って、キャピタルフライトがさらに加速する。通貨危機のパターンでもある。

⇒22日(土)夜・金沢の天気     くもり

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★旧統一教会問題 タレ流し中継と「異議あり」

2022年10月21日 | ⇒ニュース走査

   映像をそのまま流すことをテレビ業界では「タレ流し」と言ったりする。「タレ流しの記者会見」という場合は、会見を生中継でそのまま放送するという意味だ。きのう日本テレビ系のチャンネルで午後2時からの『情報ライブ ミヤネ屋』を見ていた。冒頭から世界平和統一家庭連合(旧「統一教会」)による、記者会見の生中継だった。

   政府は宗教法人法に基づく調査の方針を固め、同法が規定する「質問権」を旧統一教会に行使すると表明したことを受けて、教団改革推進本部長の勅使河原秀行氏が会見を行った。テロップでは「速報 旧統一教会 6度目会見」とあった。冒頭で勅使河原氏は「政府の方や国会議員が対応に当たらなければいけない事実について、申し訳なく思っている」と頭を下げ、「質問権が来たら誠実に対応する」と述べていた。が、その後に教区長という役職に就く「2世信者」を20人ほど会見場に並ばせたり、女性信者の元夫がテレビに出演し教団の問題を訴えたことに対し自らの正当性を主張したりと、一方的な会見内容だった。

   このようなタレ流しの会見は違和感を感じるものなのだが、むしろ面白く感じたのは、リアルタイムで「異議あり」を掲げるチェックがあったからだ。全国霊感商法対策弁護士連絡会の紀藤正樹弁護士と、ジャーナリストの鈴木エイト氏が会見を視聴しながら、その都度、「異議あり」とフリップを出す。すると出した回数がカウントされる=写真、20日放送『情報ライブ ミヤネ屋』より=。おそらく、この2元中継は番組が独自に考案した視聴者のストレス緩和の手法なのだろう。

   番組が会見の中継を中断したのは、上記の教団の違法行為を訴えた元夫に反論するため、教団側が元妻のVTRを流そうしたときだった。「個人情報に関わる問題なのでいったん止めます」とアナウンスして中継を中止した。これは番組としてまともな判断だった。2世信者たちを会見場に並ばせたりしていたので、おそらくVTRの内容も教団側がシナリオを書いた元夫に対する否定的なコメントであろうと番組側が判断したに違いない。

   番組を見ていて、ふと考えたことがある。土地不動産や預貯金、生命保険といった資産をすべて献金した高齢信者が家族と離れ離れになっている場合、どのように暮らしているのか。

   以下まったくの憶測だ。身寄りのない高齢の単身、あるいは夫婦の信者に生活保護費を受給させて、教団あるいは教団関係者のアパートに集団で住まわせる。その代わり、支給された生活保護費を教団側に献金させる。いわゆる「囲い屋」の手法だ。地域によって生活保護費は異なるが、単身者は住居費を含め12万円ほど、夫婦は16万円ほどだ。以上はまったくの憶測ではある。メディアはすでに取材に入っているかもしれない。

⇒21日(金)午前・金沢の天気    はれ

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