自在コラム

⇒ 日常で観察したことや環境問題、金沢大学での見聞、マスメディアとインターネットについての考察を紹介する宇野文夫のコラム

★タマムシと輪島塗の輝き

2005年08月30日 | ⇒トピック往来

  先日、金沢大学「角間の里山自然学校」で昆虫採集の集いがあった。いま人気のゲーム「ムシキング」の影響もあってか、あるいは夏休みの宿題の便乗か、このところ子どもたちの参加が多い。ある子どもが「これキラキラムシだね」と捕ってきたムシを見せてくれた。それは、和名・ヤマトタマムシだった。

   タマムシと聞いて、6年前の番組のことを思い出した。当時、輪島塗の産地・石川県輪島市でタマムシを使った壮大な作品づくりが行われた。東南アジアのジャングルからタマムシの羽を拾い集め加工し屏風や茶釜など30点にも上る輪島塗に仕上げるとうもの。タマムシを使った工芸品と言えば、法隆寺の国宝「玉虫の厨子」が有名だ。実に1300年の時を経ているが、それ以降、タマムシを使った作品が鎌倉や江戸時代にも見当らない。乱暴な言い方かもしれないが、「玉虫の厨子」から1300年ぶりの作品ではないか、と思ったりもした。

   タマムシの羽は硬い。鳥に食べられたタマムシは羽だけが残り、地上に落ちる。東南アジアのジャングルで現地の人を雇い、拾い集める。それを輪島に持ち込んで、レーザー光線のカッターで2㍉四方に切る。それを黄系、緑系、茶系などに分けて、一枚一枚漆器に貼っていく。江戸期の巨匠、尾形光琳がカキツバタを描いた「八橋の図」をモチーフにした六双屏風の大作もつくられた。これには延べ2万人にも上る職人の手が入った。

   この作品を発注した岐阜県高山市の美術館「茶の湯の森」のオーナー、中田金太氏から依頼を受けて私は番組をプロデュースした。タマムシで輪島塗を作る、タマムシの羽を拾い集めるという着想は中田氏のオリジナルである。すべての工程をお金で換算すれば数億にも上る「玉虫工芸復活プロジェクト」であった。完成したこれらの作品はすべて茶の湯の森に納められた。輪島塗業界に新たな新風を吹き込んだ中田氏のアイデアの面白さを番組に盛り込んだ。

   見る角度によって異なる輝きを放つ。「玉虫色の決着」などと政治の世界ではいまでもよく耳にする。俗な言い方は別として、輪島塗の高度な技と生物の輝き、それを考え出す人の着想の面白さは一見の価値がある。タマムシの四文字から連想ゲームのようにして千文字ほどの文章を書いてしまった。

⇒30日(火)朝・金沢の天気  晴れ   

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☆あすからニッポンの選挙

2005年08月29日 | ⇒メディア時評

    あすは総選挙の公示日だ。この日を境にしてマスメディアの取材対応は新聞もテレビもがらりと変わる。やけに公平、ことに客観的、妙に紳士的になる。たとえば、公示日の各候補者の動きを報じるテレビの「お昼のニュース」を見てほしい。トリキリと言って各候補者の第一声をそのまま流す。各候補者のトリキリ(15秒程度)の秒数は同じだ。つまり平等だ。仮にこれがA候補が10秒で、B候補が12秒だとすると、A候補の選挙事務所から「なぜウチの候補者の声が短い」と抗議の電話がかかってくる。対応がまずかったりすると「公平性を欠く」「選挙妨害」と総務省にねじ込まれたりもする。特にテレビ局の場合は放送法で選挙に関する公平さが法律で規定されている。

     おそらくそれを見越しての自民党の動きである。新聞各紙によれば、自民党は28日、郵政民営化法案に反対した前衆院議員への対立候補について「刺客」という言葉を使わないよう報道各社に文書で申し入れた。郵政民営化反対派への強硬策あるいは見せしめなどを意図する言葉としてマスメディアは使っている。これが選挙区に送り込んだ相手が女性だと「くノ一」などと、いずれもイメージの悪い死語を用いている。申し入れの理由については「刺客は暗殺者を意味し、候補の呼び名としてふさわしくない」「自民党とその候補のイメージダウンを図る効果が生じている」としている。自民党とすれば申し入れは当然だろう。真面目に争点を論じようにも、「くノ一の刺客」などとマスメディアに喧伝(けんでん)されてはかなわない。

     この措置は、自民党選対本部が総務省と連絡を取り合って、公職選挙法(選挙妨害)や放送法(報道の公平性)などの法律に抵触するかどうか相談した上でのことだろう。つまり、「予め警告しておく。公示以降は法的な措置も検討する」という意味合いだ。しかし、これを受けた29日の紙面は対応がバラバラだ。相変わらず「刺客」と使っている紙面もあれば、「郵政民営化法案に反対した前職に党本部が公認候補らをぶつける郵政分裂型の選挙区」(朝日新聞)などとすかさず対応している新聞社もある。

     しかし、あす30日からは、みなが紳士的になり、「くノ一の刺客」やホリエモンという言葉は使わないだろう。「郵政民営化に賛成の自民党の女性候補」「堀江貴文候補」となる。そして、9月11日午後8時の投票終了以降はまた「くノ一の刺客」やホリエモンに戻る。こうしたマスメディアの対応を外国人ジャーナリストが記事にすれば「選挙に見るニッポンの奇観」との見出しが立つのではないか。

    それではインターネットのブログは自由に書けるのか。公職選挙法では、公示日から投票日までは立候補者や政党はホームページの更新や開設が原則禁止となる。候補者はもちろん、関係のない個人であってもメールやブログ、掲示板で特定候補への投票呼びかけは禁止である。違反した場合は2年以下の禁固、もしくは50万円以下の罰金だ。日本の選挙はかくのごとく厳粛なのである…。

 ⇒29日(月)午後・金沢の天気  晴れ

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★「ミモレットの約束」と同調

2005年08月27日 | ⇒ニュース走査

   この「ミモレット」をめぐる選挙のコラムは3部作シリーズのようになってしまった。意図したわけではない。選挙をめぐる動きが急なのである。

   さて、25日夜の小泉総理、総裁派閥会長の森氏、武部党幹事長による会食では、ミモレットを話題にしながらも次なる選挙の秘策が交わされたと私は推測している。会食は、民主の小沢氏が「年金問題」をクローズアップさせるため「一対一の党首討論」を持ち出してきたことがきっかけだった。会食の席で、森氏は「総理も年金を一本化すると派手にぶち上げたらいい」と提案した。しかし、小泉総理は「総裁任期は来年9月までと公言しており、法案整備に数年かかる年金問題をいま声高に持ち出せば、野党が矛盾だと突いてくる」と渋った。そこで、森氏が「任期延長(小泉続投)もありうる」と地ならしをした上で、選挙最終盤になって小泉総理が「郵政民営化法案の可決後に直ちに年金一本化に着手する」とぶち上げ一気に追い込みに入る、というシナリオが出来上がった。話がまとまり、会食に集った自民首脳はほくそ笑みながら「選挙に勝ってミモレットをツマミに祝杯を上げよう」と約束した。私はこの推論上の秘策のシナリオを「ミモレットの約束」と名付けることにした。

    話はローカルになる。25日午前10時ごろ、金沢大学角間キャンパスにある郵便局の前を横切ると、「奥田と言います。よろしく」とパンフを渡された。ふいだったので思わず手に取った。顔を見ると、郵便局から出てきたのは石川1区の民主・奥田建氏本人だった。かつて取材したことがあり、「奥田さん大変ですね」と今度はこちらから声をかけた。すると本人は「本当に大変なんです。よろしくお願いします」と。会話はそこまで。本人は足早に次の郵便局へあいさつ回りに向かった。

    なぜ2日前の話を持ち出したかというと、小泉総理がきのう26日夕、自民党本部で記者団の質問に答えた内容が気になったからだ。 衆院選で与党が勝利した場合、郵政民営化法案への対応から民主が分裂して一部が自民に合流する可能性について、「民主党の中でも、本音では民営化賛成の人がかなりいるだろう」と総理が自信ありげに語ったという記事だ。奥田氏のように多くの民主の候補者は公示以前からこまめに郵便局回りをしているはずだ。ということは、逆にいま郵便局回りをしていない民主の候補者はひょっとして当選後に造反する可能性があると見てよい。これは私の推測だ。

       経団連が自民支持を鮮明に打ち出すとの記事も先日流れた。かつての「総資本VS総労働」(自民VS民主)の構図が浮き上がってきた。郵政民営化に賛成か反対か、労働側の支援を受けるのか受けないのか。いくつかの対立軸のはざ間で相当動揺している「自民に近い民主」の人たちも確かにいるだろう。関が原の戦いで、同調に躊躇(ちゅうちょ)していた小早川秀秋が、徳川家康に大砲を撃ち込まれた。「決断せい」とのシグナルと受け取った小早川軍勢が西軍に反旗を翻し、これが西軍全体の動揺となり総崩れとなる。

    先の小泉総理の言葉は、同調者を揺さぶり出すと言っているようにも聞こえる。選挙後にどのような「決断の大砲」を撃ち込むのか。選挙という戦(いくさ)はリアリズムに満ちあふれている。この膨大なリアリズムの糸の中から本筋をたどり、切れている箇所を冷静に推論しながら繋いでいく。すると一本に繋がったリアリズムの糸の先に近未来のシナリオが見えてくることがある。その「発見」はささやかな喜びにもなる。

⇒27日(土)夕・金沢の天気    晴れ

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☆「ミモレットの和解」と計略

2005年08月26日 | ⇒ニュース走査
   きのう25日付の「自在コラム」で「ミモレットの誤解」をテーマに、「干からびたチーズ」の映像からこの選挙のドラマが始まった印象があるとの内容のコラムを書いた。偶然にも、昨夜は「ミモレットの和解」が演出されたようだ。けさの新聞記事によれば、小泉総理が25日夜、自民党本部で森前総理と夕食をともにした。今月6日夜に首相公邸で衆院解散の是非をめぐり激論、決裂して以来とのこと。今回は「豪華な弁当」が出たこともあってか、森氏も機嫌を直したとある。例の、森氏が不平を漏らした干からびたチーズについては、小泉総理が「高級チーズだとは知らなかった」などと一応先輩を立てるかたちで釈明し、「選挙が終わったらそのチーズを出す高級レストランに行こう」と約束し和解したらしい。

    しかし、この会食で交わされた会話は「ミモレットの和解」だけだったのだろうか。小泉総理が自民党本部で武部勤幹事長と協議していた森氏を誘うかたちで会食が実現したとある。つまり、党本部で総理、総裁派閥の長、党幹事長の3人が話し合ったということだ。「豪華な弁当」というから、おそらく料亭から取り寄せた箱型の仕出し弁当だろう。おかずは10品ほど、フルーツもつくから30分は夕食をたべながら話す時間があったはず。「和解」の会話は数分そこそこ、では残りの20数分で何を話し合ったのか。ヒントは森氏がこの日、テレビ朝日の番組収録で語った内容とリンクしている。来年9月までの小泉総理の党総裁任期について、森氏は「党の改革をここまでやったのだから、改革を続けなければいけない。(総選挙に)勝ったら少し余裕を持ってやったらいい」と総裁続投を示唆した(朝日新聞インターネット版)。選挙後の党の体制について言及したのだが、公示前のタイミングでは早過ぎる。以下は私の想像だ。森氏は小泉総理にある決断を迫った。その決断の前提条件として総裁任期の延長を持ち出している、と読む。

    森氏が総理に迫った決断とは何か。民主の小沢一郎氏の動きを睨んだ対応である。会食と同じ25日、民主の藤井裕久代表代行らが自民党本部を訪れ、岡田代表と小泉総理との一対一の公開討論会に応じるよう求める文書を提出した。しかし、自民の武部幹事長は「自民と民主だけでの党首討論は、他の政党に公平ではない。機会均等という観点から慎むべきだ」(記者会見)と拒否する考えを示した。民主の提案した一対一の公開討論会は、有権者の関心事を年金問題にひきつけようとの作戦だろう。「郵政では勝てない」と焦った小沢氏の計略。だから腹心の藤井氏が動いた。

  各党のマニフェストを見比べると、年金問題に関しては、民主は「議員年金を直ちに廃止」とした上で「すべての年金を一元化する」と言い切っている。それに比べ、自民は「公務員を含めたサラリーマンの年金制度の一元化を推進する」としており、民主よりトーンは低い。解散から公示まで22日間と長い。前哨戦では郵政民営化でリードした自民だが、途中で「年金」の旗を掲げる民主の巻き返しも予想される。自民にとっては公示以降の後半戦のテーマをどう設定するかが急務なのだ。

   以下はフィクションである。この日の会食で、森氏は「年金の一本化を民主より声高に打ち出したらどうか」と進言した。これに対し、小泉総理は「(総裁は)来年9月までと公言している。年金改革は数年かかる。これは矛盾だと野党から突っ込まれる」と渋った。森氏は「それだったら、改革のために総裁続投も躊躇(ちゅうちょ)せずと公言すればいい。選挙に勝たなきゃ意味がないじゃないか」と決断を促した。小泉総理もようやく「郵政改革を成し遂げ直ちに年金改革に着手する」とぶち上げると肝(はら)を固めた。協議の結果、その日を投票の3日前と決めた。選挙戦の最終盤で一気に「まくり」に入る。年金問題でなんとか命脈(マニフェスト)を保っている民主の息の根を断つ、というシナリオだ。テレビ朝日の番組収録で「小泉続投」を滲ませたのは森氏の得意とする地ならしだ。

    表向き「ミモレットの和解」の傍ら上記のような選挙の秘策が交わされていたとしても不自然ではない。冒頭の新聞記事では、会食で「選挙が終わったらそのチーズを出す高級レストランに行こう」と約束したとある。私の推測ではそれに続く言葉があったはずだ。(小泉総理)「森さん、歯が立つように薄く切ったミモレットをツマミに祝杯を上げましょう」

⇒26日(金)午前・金沢の天気   雨
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★「ミモレットの誤解」と選挙

2005年08月25日 | ⇒ニュース走査

   森喜朗元総理のあの「干からびたチーズ」の映像は何度見ても面白い。実に滑稽なのだ。この人が映画俳優だったらいぶし銀のいい味を出す名脇役になっていたに違いない。

    今月6日夜、小泉総理に衆院解散を思いとどまらせようと森氏が官邸を訪ねたが、「殺されてもいい」と拒否された。その会談で出たのが缶ビールとツマミの「干からびた」チーズだった。会談後、森氏はわざわざ握りつぶした缶ビールと干からびたチーズを取り囲んだ記者団に見せ、「寿司でも取ってくれるのかと思ったらこのチーズだ」「硬くて歯が痛くなったよ」と不平を漏らした。あの映像を見た視聴者は「小泉は命をかけているんだ、本気だな」との印象を強くしたのではないか。選挙のドラマのエピローグはここから始まったように思えてならない。

    この話には後日談があって、あの干からびたチーズはフランス産高級チーズ「ミモレット」だった。ミモレットはカラスミに似た深い味わいで日本酒にもあう。18カ月もので100㌘750円ほど。干からびた風合いが一番おいしいそうだ。もし、森氏が「小泉さんが高級チーズで歓待してくれたよ」と自慢していれば、国民の反感を買って、今ごろ小泉総理に逆風が吹いていただろう。そう考えると、ひょっとしてこれは日本の政治史に「ミモレットの誤解」として語り継がれるかもしれない。

    マスメディアはそれぞれ1週間ぐらいの間隔で世論調査を行い選挙動向を分析しているが、各種の調査は内閣支持率が50%を超えたと伝えている。インターネットでもいろいろなアンケート調査があり、たとえば「goo」のブログサイトが行っている公開アンケートでは、小泉総理による「郵政解散を支持するか、しないか」の設問がある。24日現在で「支持する」が68%、「支持しない」が27%でダブルスコア以上に差が開いている。インターネットを利用するのは比較的若い世代なので、この調査からは若い世代の考えのおおまかな傾向をつかむことができる。

    さらにちょっと踏み込んで考えてみると、今回の選挙は「デジタルっぽい」感じがする。「郵政民営化」にイエスかノーか、すべての小選挙区に賛成の候補(自民)と反対の候補(自民造反組、民主ほか)がいる。「0」 と「1」 とで表現されるデジタル信号のようにも考えられ、今回の選挙はインターネットとの親和性が随分あるようにも思える。そして、「白黒をつける」という分かりやすさが内閣支持率を押し上げているのではないかと考えたりもする。もちろん、小選挙区は「ドブ板」と「しがらみ」のアナログ的な要素があり、デジタルっぽさが内閣支持率を押し上げたとしても投票行動とは必ずしもリンクしない。こうした諸条件を勘案すると、「内閣支持率50%超え」という世論調査はそこそこに的を得た数字ではないかと思う。

    選挙が行われる9月11日まであと17日。TVメディアはそろそろ当日の選挙特番の打ち合わせに入るころ。番組タイトルは「YESかノーか小泉郵政民営化、国民の審判下る!~選挙劇場ライブ2005~」といった感じだ。そして番組構成として、冒頭にこれまでの選挙の「振り返り」VTRを流す。5分ぐらい。そのVTRのスタートのシーンは例の森氏の「干からびたチーズ」のはずだ。VTRが終わると西日本の四国や山陰あたりの小選挙区の当確の速報が早々と流れ始め、大勢の判明は午後11時ごろ。選挙結果を受けての番組第2部の討論コーナーのスタートは11時半ごろか。

 ⇒25日(木)朝・金沢の天気   晴れ

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☆小泉総理と徳川幕府

2005年08月23日 | ⇒トピック往来
  先日、名古屋市を訪れた際、徳川美術館に立ち寄った。昭和10年(1935)の開館以来70周年に当たり、尾張徳川家に伝えられる名品や家康の甲冑など見ごたえのある品々だ。しかし、国宝「源氏物語絵巻」は11月12日から特別展として公開され、今回は複製のダミーが展示されていた。これで入館料1200円は高い、と思いつつも名古屋人の商売上手に脱帽した。

   ところで、徳川と言えば私は小泉総理を思い出す。以下は「風が吹けば桶屋が儲かる」と言ったような話の展開になる。朝日新聞「AERA」スタッフライターで軍事問題に詳しい田岡俊次さんは「今の日本は江戸幕府時代の加賀藩と同じだ」が持論の人だ。東西の冷戦に終止符が打たれ、西側の代表アメリカが名実ともに世界のナンバー1となった。これは、天下分け目の戦いといわれた関が原(1600年)で東軍が勝ち、徳川家康が幕府という統治機構を築いたことと重なる。加賀の前田利家は関が原の戦いの前年に没するが、病床にあった時、見舞いに来る家康を「暗殺せよ」と家臣に言い残しこの世を去る。遺言は実行されなかったが、「謀反の意あり」と見抜かれ、利家の妻・まつは江戸で人質となり、その後も加賀藩は百万石の大藩でありながら外様大名の悲哀を味わうことになる。日本も太平洋戦争でアメリカに宣戦布告して、4年後に占領統治される。いまだに国連憲章の「旧敵国条項」は生きている。

   地元・金沢ではこんな話が伝わっている。前田家は、徳川家の警戒心を解くことに腐心した。このため、自らの金沢城に戦時の司令塔となる天守閣は造らなかった。また、三代藩主の利常は、江戸城の殿中ではわざと鼻毛を伸ばし、立ち居振舞いをコミカルに演じたそうだ。ここまでやって加賀藩は264年続いた幕藩体制を生き抜いた。駐留米軍に「思いやり予算」と称して、15億ドルをポンと「上納」する日本。田岡さんの「日本は加賀藩と同じ」という論拠は、地元では実に理解しやすい話なのだ。

   そろそろまとめに入る。小泉さんの鼻は長くて高くてかっこいいが、ローアングルのカメラから顔に寄った時の映像で、鼻毛が覗くのが気になる。特にNHKのハイビジョンカメラだと鮮明に見えるときがある。「何もそこまで(加賀藩を)真似することはないだろう」と笑うのは私だけか…。

   先日宴席があり、この話をマンスフィールド財団の政府間交流事業で金沢を訪れていたアメリカ人弁護士(35歳)にしたら、「このユーモアはアメリカ人にも通じる」と喜んだ。彼は20代に金沢に4年間滞在した経験があり、日本語と日本史に対する造詣は深い。宴席後のカラオケで、彼はこの話のお礼にと十八番の沖縄の「島唄」を歌ってくれた。これだけの話である。他意はない。

⇒23日(火)朝・金沢の天気 雨
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★選挙に「ロマンを感じる」世代

2005年08月22日 | ⇒トピック往来
   新聞紙面から「国民新党」や「新党大地」はもう消え去りつつある。最近の新党「日本」ですらもう時間の問題かもしれない。ことほどさように、時間の流れは速い。そして、マスメディアの関心事は広島6区(亀井静香氏VS堀江貴文氏)がさらっている。けさ、フジテレビ系の朝の情報番組でコメンテイターが「なんで自民党と」としつこく堀江氏に質問した。堪忍袋の緒が切れた様子の堀江氏が「くだらない質問には答えたくない」と憮(ぶ)然とした。こうした緊張した場面には生中継ならではの醍醐味がある。おそらく収録だったらカットされていたに違いない。見ている側からすれば、堀江氏が憮然した理由は「理解の範囲」である。揚げ足を取るための繰り返しの質問は見ている側も不愉快に感じる。

   これからの話はおそらく50歳代の後半からの世代の人のごく一部が理解できる話かも知れない。先日、私のかつての業界の先輩と2時間ばかり話をする機会があった。先輩いわく。「今回の選挙にはロマンを感じる」という。「何のロマンですか」と問うと、「革命のロマンだよ。われわれは70年安保の世代。権力との対峙に明け暮れて、自民党=体制をぶっ潰すことを考えていた。細川(政権)はブルジョワ革命だと思っていたので魅力はなかった。でも、今回の小泉は戦略的な手法の革命だね。感じるんだよロマンを」と。

   上記の話には少し説明がいる。先輩は東京の私大卒。70年安保では国会付近でのデモに参加し、警察に「パクられた(逮捕された)」経験がある。過激派ではないが、つい最近までパクられた当時のヘルメットを家族に見つからないように隠し持っていた。近く早期退職するので、「一応人生にケリをつけたい」と思い出の品は全部捨てた。ヘルメットも捨てた。彼には、警察官僚だった亀井氏や自民党最大派閥の綿貫民輔氏は「自民党そのもの」に思えてならない。「その連中と小泉は闘っている」と。「右翼に共感する左翼もいる。左翼に共感する右翼もいるんだ」と先輩は言う。「靖国を信奉する小泉は右翼だが、共感できる」のだそうだ。

   そして「戦略的な手法の革命」のことである。レーニンが「すべての権力を会議(ソビエト)へ」と発し、全ロシア労働者・兵士ソビエト大会で革命に反対するメンシェビキを追い出しソビエト権力の樹立(1917年)した過程と似ている、と言う。「権力闘争の何たるかを小泉は知っている」と先輩は妙に関心して見せるのである。若かりしころの「革命のロマン」をイメージさせているのだ。

   先輩と別れた後で、最後に一つ質問をすべきだったと悔やんだ。「ところで先輩、投票に行くんですか」と。いまさら電話で質問をするのも気が引けるので、以下想像する。先輩は投票には行かないだろう。ロマンと投票行動は違う。「小泉には共感する」が選挙区は違う。その選挙区の自民党候補者は70歳を過ぎた老人である。先輩がその候補者に一票を投じるとは到底思えない。

⇒22日(月)夕・金沢の天気  雨
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☆選挙で終結する政治ドラマ

2005年08月21日 | ⇒トレンド探査

   プロ野球を観戦したいと思い、昨夜、ナゴヤドーム(名古屋市)に出かけた。リーグ首位を狙う中日、対するのは勝率を5割に戻したい横浜だ。名古屋というアウエイ(遠征地)は強烈だ。主催者の発表で3万5400人のほとんどが中日応援である。このドームがどよめいたのが6回表。リードされていた横浜、小池が満塁ホームランを放つなど打者一巡の猛攻で8点を奪う逆転劇だった。「オレ流」落合監督も「長いシーズンは、勝ちゲームをひっくり返されることもある。いちいちとやかく言うことではない」と敗戦のコメントがけさの地元紙で載っていた。肝(はら)の据わった監督の言葉である。

    試合を見ながらふと思った。人々はなぜ野球に熱中しドームを埋めるほど集まるのか、と。私のような、どちらを応援するでもない観戦するだけの「観光客」は回数を重ねない。しかし、ファンにはいでたちからしてチーム名入りのTシャツで、「また応援に来たぞ」と意気込みがある。ファンと観光客の違いは、暴論と言われるかもしれないが、「野球のストーリー」というものが脳裏に刻まれているか否かの違いだろう。中日ファンならば、ベテラン立浪が今季初めてスタメン落ちしたのはなぜか、落合監督は打線にカンフル剤を打ったのか、などとストーリーの筋を読みながら観戦したに違いない。だから面白く、面白いからファンになる。

     今回の総選挙にも関心が高まっているのは、野球と同様、政治のストーリーも面白いからだ。小泉総理という人物に郵政民営化というシナリオがあり、参院での否決、衆院の解散という国民を巻き込んだリアリティーがある。そのシナリオが展開する中で、改革と抵抗勢力の攻防、解散という総理の大立ち回り、その後に刺客や怨念といった人間臭さが脚色され、政治がいつの間にかドラマになった。 しかも、一部の人しから知らないドラマではなく、国民的なドラマなのだ。小泉内閣の発足から4年半、そろそろこのドラマの結末が近づいてきたことを有権者が感じ、クライマックスを自分たちで見極めようとしているのではないか。ちなみにドラマの主演とプロデューサーは小泉総理である。

    だから総選挙というドームに人が「賛成」と「反対」のメガホンを持って大勢の人が集まってきている。そうでも説明しなければ説明できないほど、今回の総選挙は異常に盛り上がっている。どちらの応援団が多いかは、見たところ、ナゴヤドームの雰囲気に近い。あとは想像にお任せする。

⇒21日(日)午前・名古屋の天気  曇り

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★世論調査と注目の選挙区

2005年08月20日 | ⇒メディア時評
   最新の世論調査を読み解く。読売新聞社がきょう掲載した衆院選に関する世論調査(電話方式・17日‐19日)によると、内閣支持率は53.2%で衆院解散直後の調査(8、9日)より5.5ポイント上昇し、不支持は34.1%で前回調査より8.2ポイントも減った。今回の衆院選の比例代表で投票したい政党は自民37%で前回調査より10ポイント増加、民主党16%で5ポイント減だった。公明4%、共産3%、社民党2%、国民新党1%と続いた。小選挙区でどの政党の候補に投票したいかでは自民党39%で前回より9ポイント増、民主党14%で4ポイント減。公明3%、共産党2%、社民1%、国民新党1%となった。

   おそらく世論調査の担当は驚いているだろう。通常の国政選挙の世論調査でこれほど数字は動かない。調査ごとに、一つの政党にグングンと数字が集約されていくということは、有権者の関心が相当高まり、争点がはっきりしてきたという証左でもある。1989年参院選のマドンナ旋風と1990年総選挙の反消費税で議席を増やした社民の「おたかさんブーム」以来ではないか。世論調査の担当者は「ヤマは動く」と今回の総選挙の結果をすでに読み切っているに違いない。

   世論調査の分析を踏まえ、各マスメディアの選挙担当は今後の番組や紙面構成を練っている。つまり、「注目の選挙区」「話題の選挙区」の選定である。重点的に記者を投入し、公示後に選挙区ルポなどを行う。これも大方決まったようなものではないか。何と言っても、郵政民営化反対のドンである亀井静香氏とITの風雲児ホリエモンこと堀江貴文氏の広島6区だろう。続いて「刺客」という言葉が踊った東京10区(小林興起氏VS小池百合子氏)、静岡7区(城内実氏VS片山さつき氏)、民営化反対のもう一人のドンであり「国民新党」代表の綿貫民輔氏の富山3区も注目を集めそうだ。

   こうして見ると自民VS民主という構図で注目される選挙区は少ない。目立つのは衆院補選から4カ月後にまた同じ顔ぶれで戦うことになる自民・山崎拓氏VS民主・平田正源氏の福岡2区ぐらいではないか。

   ここにきて総選挙を報道するマスメディアも争点あるいは対立軸を「郵政民営化に賛成か反対か」の一本に絞らざるを得ない状態になってる。年金で争っている選挙区はどこにあるのか、という具体的な話で詰めていくとそのような選挙区ははないからである。従って「注目の選挙区」の取材が進み報道されれば郵政民営化問題がさらにクローズアップされることになる。マスメディア側に意識はないものの、マスメディアに日ごろ触れている有権者が自然と誘導される「見えざる世論操作」ともえいる現象なのだ。

⇒20日(土)朝・金沢の天気   晴れ
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☆ブログと選挙とホリエモン

2005年08月19日 | ⇒ニュース走査

    来月26日と27日に「放送ゼミ」の集中講義があり、学生に夏休みの宿題を出した。テーマはズバリ、「2005年総選挙でインターネットのブログはどのような役割を果たしたか検証せよ」だ。

     本来の選挙スケジュールにはなかった総選挙が降って湧いたようにやってきた。これは、マスコミを志望する学生にとってチャンスだ。在学中に選挙というものを考え、ディスカッションするということは就職活動の筆記や面接に役立つだけでなく、選挙と切ろうにも切れない人生を送るわけだからとてもプラスになる。「選挙は民主主義の普遍的なテーマなのだ」と学生に発破をかけた。

    その論点として、日本において選挙に積極的に参加する意思の現れとして「勝手連」や「草の根選挙」といった市民の自発的行動があった。ところが、文明の利器としてのインターネットが1980年代から勃興し、いまではブログという個人がコストをかけなくても自由に意見発表ができるツールにまで発展した。日本でも335万人(総務省調べ・3月末)のブロガーがいて、その数は日ごとに増えるという盛り上がりを見せている。このブログ層が選挙に及ぼす影響についてきちんと分析することは今後の選挙のあり方を考える上で重要なポイントとなる。ブログが全盛期を迎えて初めての国政選挙だけに、おそらく各大学の計量政治学のゼミも取り組み始めている横一線の研究だと推測する。

     ところで、ライブドアの堀江貴文社長が「どうせなら亀井静香氏の対抗馬になりたい」と意欲を燃やしているという。「どうせ買収するならフジテレビ」と言ったあのツボ狙いの感覚が今回も。名を得ずとも、実をしっかりと獲得するホリエモンはすでにこの時点で勝っている。というのも堀江氏の「出馬」でライブドアのホームページのページビュー(閲覧数)はこの8月で月間5億に達する、と業界筋は読んでいる。

     ここで選挙日程と、選挙でどこまでインターネットが使えるか確認する。総選挙の公示は8月30日、投票は9月11日だ。公職選挙法では、公示日から投票日までは立候補者や政党はホームページの更新や開設が原則禁止となる。候補者はもちろん、関係のない個人であってもメールやブログ、掲示板で特定候補への投票呼びかけは禁止である(違反した場合、2年以下の禁固、もしくは50万円以下の罰金)。つまり、堀江氏がインターネットをフルに活用できるのは8月29日までとなる。全般的に言って、今回の総選挙は8月29日までに白黒がつく可能性がある。選挙の争点がはっきりしていて、案外有権者に迷いは少ない。小選挙区で候補者が出そろった段階で勝負が決まるのではないか。「1」か「0」か。これを「デジタル選挙」と言っては早計に失するかもしれないが・・・。

 ⇒19日(金)朝・金沢の天気    晴れ

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