学生・若者のテレビ離れを加速させる判決ではないのか
前もって述べておくが、私自身の自宅にはテレビがあり、選挙速報や異常気象、災害、地震の情報など民放では速報できないニュースを、NHKがカバーしていると納得している。その公共性の高さを考えれば、放送法64条にあるテレビが自宅に設置されていれば、受信料契約ならびに支払いは社会的にも認められると考えている。
判決の内容をよく読むと、NHKが契約を求める裁判を起こし、勝訴すれば、契約が成立し、テレビを設置した時点からの受信料を支払わなければならない。つまり、最高裁が出した答えは「義務」と同じだ。納得いかないのは、その義務を親から仕送りをもらって学んでいる学生たちにも課しているという点なのだ。
学生たちからこんな話をよく聞く。NHKの契約社員という中年男性がアパ-トに来て、「部屋にテレビがありますか」と聞いてきたのでドアを開けた。「テレビはありません」と返答すると、さらに「それでは、パソコンやスマホのワンセグでテレビが見ることができますか」と聞いてきたので、「それは見ることができます」と返答すると、「それだったらNHKと受信契約を結んでくださいと迫ってきた」と。学生は「スマホでNHKは見ていませんよ」と言うと、契約社員は「ワンセグを見ることができればスマホもテレビと同じで、NHKを見ても見なくても受信契約が必要です」と迫ってきた。学生が「親と相談しますから、帰ってください」と言うと、契約社員は「契約しないと法律違反になりますよ」とニコッと笑ってドアを閉めた。親と相談すると法律違反を犯すくらいなら払いなさいと言われ、仕送りにその分を乗せてもうらことになった。
学生たちは学ぶために親元を離れているのであって、仕送りをしてもらっている。実質的に「同居」だ。会社で働き自活するために親元を離れる「別居」とまったく状況が異なる。NHKが学生たちをさらに追い込む判決が今月27日にあった。ワンセグ機能付きの携帯電話を持つだけでNHKが受信契約を義務づけるのは不当だとして、東京の区議がNHKに契約の無効確認などを求めた訴訟の判決で、東京地裁はワンセグの携帯電話を持っていれば、契約を結ばなければならないと述べ、区議の請求を棄却した。
使っても使わなくてもスマホにはワンセグのアプリがついている機種が多い。テレビを視聴しようとスマホを求めた訳でもない。ワンセグをめぐる判決は別れている。2016年8月26日のさいたま地裁判決は「受信契約の義務はない」との判断を、ことし5月25日の水戸地裁では「所有者に支払いの義務がある」と判断している。今回でNHKは2勝1敗とり、「NHK受信料払いは義務です。最高裁が判決を出しました。スマホにワンセグがあれば、それも義務です」と学生たちを追い詰めていくNHK契約社員たちの姿が目に浮かぶ。
この先どのような現象が起きるのか。学生や若者たちのテレビ離れが加速するということだ。自宅にテレビを置かない、スマホの契約時にアプリからワンセグを外す。壮大なテレビ離れ現象がこの先にある。それを憂いている。
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