21日未明のアメリカ大統領の就任式の模様を視聴した。反対する人たち、就任を歓迎しない人たちの声がこれほど大きく、デモも随所にあり、波乱の幕開けを予感した。その就任の演説で連呼した「アメリカ・ファースト」。すべての政策でアメリカを優先し、メリットを勝ち取ると宣言していた。そこで感じたことだが、公職に就任するとその言葉の重みを意識して声のトーンも穏やかで慎重になるが、トランプ氏の言葉は選挙の時と同じようにエキサイトして聞こえた。さらに演説の内容もさほど変わらない。既視感(きしかん)が脳裏に漂った。
政策も大統領選での公言と変わらない。「移民を認めない」。果たしてこれでよいのかと疑問に思う。アメリカが牽引するIT産業では、例えばフェイスブックやアップル、グーグル、マイクロソフトといった企業には有能なクリエーター、エンジニアがいるが、アメリカ人ばかりではない。インドからの移民だって多い。それを排斥するというのならば、むしろ産業力や国力の衰退につながるのではないか。
また、トランプ氏がお得意の「アメリカ国内に工場を戻せ」の言葉で自動車産業界を揺さぶっているが、単純に重厚長大型の産業の復活をイメージしているのだろうか。むしろ、オートドライブ(自動運転)など車社会におけるイノベーションが求められ、産業構造に変化が起きようとしているのに、かつての栄光を生産現場の雇用拡大のみでアピ-ルするのは時代錯誤ではないだろうか。
オバマ氏のイニシアティブ進めていたTPP(環太平洋連携協定)の脱退をさっそく表明した。それだけでなく、NAFTA(北米自由貿易協定)を再交渉し、応じない場合は離脱するという徹底ぶりだ。
こうしたアメリカの政策転換を眺めて見ると、単純に「社会分断」「国際的な孤立」「技術革新の疎外」などいろいろなマイナスイメージの言葉が浮かんでくる。天下動乱の幕開けなのか、見る分には面白い時代に突入したものだ。アメリカ・ファーストの行方をウオッチ(見守り)したい。
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