自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆「セルフ」で考えたこと

2005年10月31日 | ⇒ニュース走査

  数量で表記するのと、手から伝わる実感の違いは大きい。先日、金沢市内でセルフのガソリンスタンドを使った。これまで給油はスタンド任せだったが、これだけガソリンが高騰すると、疎い私でも経済観念が働く。スタンド店員に教えてもらい、ほぼキャッシュディスペンサー(現金自動支払機)の感覚でピッピッと手続き。あとは、静電気除去装置に触れて、給油ガンを差し込みレバーを握るだけ。

   51㍑のガソリンが入ったが、その1分か2分の給油時間がとても長く感じられ、複雑な気持ちになった。ドクドクとガソリンが注ぎ込まれる音と振動がする。地球の資源である化石燃料を消費しているとの実感が手から伝わってくるのである。これまではスタンド任せだったので、金額しか眼中になかった。

   別の精算機で領収書のバーコードをかざすとつり銭が出てくる。計算をしよう。51㍑で税込み6218円、つまり1㍑当たり122円である。セルフを利用する前は、1㍑何円は高いか安いかという発想になったに違いない。しかし、今回はこれだけの化石燃料を使って乗用車を動かす価値はあるのだろうか、などと考えてしまった。ある意味でセルフスタンドはリアル感を伴った環境教育の場になるかもしれない。

  きょうで10月も終わり。あすから兼六園で冬支度の雪つりが始まる。季節は移ろう。

 ⇒31日(月)朝・金沢の天気   はれ   

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★「近い存在」「遠い存在」

2005年10月27日 | ⇒メディア時評

   「トヨタは年間の宣伝費のうち800億円をテレビで使っている。私だったらこの金で自前のテレビ局をつくる…」。そう言ったのは、10月14日に金沢市で講演したIT業界の論客、孫泰蔵氏(「アジアングルーヴ」代表取締役)だ。民放キー局系のBS放送の資本金が300億円ほどなので、年間800億円もあれば、相当なパワーをもったテレビメディアの構築は確かに可能である。

   TBSに対して共同持ち株会社による経営統合を提案した楽天の三木谷浩史会長兼社長はきのう(26日)、TBS株を持ち株比率で19.09%まで買い増したと発表した。楽天がこれまでTBS株の取得につぎ込んだ合計はざっと1110億円にのぼる。孫氏流に言えば、「この1110億円の金で、自前のテレビメディアをつくればいいじゃないか」となる。

   インターネット企業から見れば、テレビ局は「近い存在」と思うかもしれないが、テレビ局から見れば、インターネット企業は「遠い存在」である。楽天はインターネットという通信を利用して「仕組み」をつくり、その便利さを競って利用者を集めて使用料を取る。しかし、テレビ局は番組という商品をつくってスポンサーに売る。評判(視聴率)が悪ければ、次は買ってもらえない。テレビ局はメーカーなのである。これに対し、ネット企業はどちらかと言えばサービス産業に近い。ここに感覚のズレがある。「株を買占めたから会社を統合しよう」と迫る楽天の発想は株式の上で通用しても、実際の経営で果たして通用するのか。

   事例を上げれば分かる。アメリカ・オンライン(AOL)と、CNNなどを傘下に持つ「タイムワーナー」が2000年に合併した。当時勢いのあったAOLは株価も高く、実質的にタイムワーナーを38兆円で買収したと話題になった。あれから5年、どうなったか。統合すると、タイムワーナー側の経営はAOLに比べ強固で安定していた。それに比べ、AOL側はネット不況による業績不振や粉飾決算疑惑などコンプライアンスの問題で、AOL側の経営陣が次々と駆逐され、結局、経営の主導権を握ったのはタイムワーナー側だった。企業名も「AOLタイムワーナー」から「タイムワーナー」に戻り、AOLはタイムワーナーの単なるネット部門に成り下がった。いまAOLを切り離そうと、株式の売却交渉が進んでいる。

   では、楽天には三木谷氏以外どれだけの経営陣がそろっているのか。仮に統合したとする。TBSはすでにデジタル化投資を終えた超優良企業だ。弱みはない。しかも、「モノづくり」や大手スポンサーとの交渉で鍛え上げてきたTBS側の実務スタッフと、楽天側が同じテーブルで論議すれば一目瞭然だろう。楽天側は論破され、太刀打ちできなくなる。楽天がAOLの轍(てつ)を踏むとまで言わないが、プロセスが似ている。

   再度、孫氏の言葉を引用する。「それだけお金があれば、自前でテレビメディアをつくればいいじゃないか」。孫氏が講演で語った真意は、確立されたメディア媒体を買収するより、ニューメディアをつくった方が企業価値は高くなる、と説いたのである。孫氏の言葉は正論に聞こえる。

⇒27日(木)朝・金沢の天気  はれ

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☆人生7掛け、地球8分の1

2005年10月26日 | ⇒トピック往来

   「人生7掛け、地球8分の1ですよ」。先日、金沢市内のある上場企業の会長と懇談のチャンスに恵まれた。会長との会話で印象に残ったのが、この言葉だった。医療や情報社会の進化で今の50歳は昔で言えば35歳、そして航空網の発達で地球は8分の1ほどのスケールになった。いわば人生と移動空間のダウンサイジングとでも…。会長の言葉はそれ以降ちゃっかりと使わさせてもらっている。

   この8分の1になった地球の限りある資源の争奪戦のあおりで、石油は高騰し、鉄骨など資材などもジワリと相場が上がっている。先日、オヤっと思わせる新聞記事があった。中国・上海で電線やマンホールのふたなど金属の盗難が頻発していて、公共のインフラに大きな障害を与えているという内容だ。もっと詳しく読むと、盗難被害は変圧器や街路灯、送電用の鉄塔、公衆電話ボックス、ガードレール、道路標識、電話ケーブルなど。電話ケーブルが100㍍盗まれて1000戸の電話が不通になり、あるマンションでは103箇所の消火栓の金属部分がはがされた。上海市ではこうした被害がことし666件も発生している、と。おそらく金属盗難は上海市に限ったことではなく、中国各地で発生している社会現象に違いない。

    それだけ中国では建設ラッシュで金属需給がひっ迫していて、逆に言えば高く売れるのである。意地悪な言い方をすれば、「タコが自分の足を食べている」ような光景を思い出す。日本でも数年前の「どん底」経済のとき、農家の野菜や果物が大量盗難に遭うといったニュースが載ったから、笑えない。

    最近、地球検索ブラウザ「グーグル・アース」が面白い。アメリカのグーグル社が無料で提供している衛星写真を合成した地理検索システム。画面表示された地球をゆっくり回すこともできる。これをプロジェクターで大写しにすると、まるで宇宙から地球を眺めているような気分になり、癒される。そして、地球上で繰り広げられる人間の理不尽な行いを思うと、情けなくなり涙が出てくることもある。

⇒26日(水)朝・金沢の天気   くもり   

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★デジタルの進歩と判決

2005年10月24日 | ⇒メディア時評
  きょう(24日)、大阪地方裁判所で著作権をめぐる、ある意味で重大な判決があった。マスコミ各社はもっと大きく取り上げてもよいと思ったのだが、以外に扱いは小さい。マンションに住民共用のサーバーを設置し、住民が予約したテレビ番組を一括録画して好きな時間に視聴できるシステムは著作権を侵害するとして、大阪の民放5社が東京のシステム開発会社に販売差し止めなどを求め、訴訟を起こしていた。判決は、民放側の訴えを認め、この会社に5社の放送エリア(近畿2府4県)で販売しないよう命じた。

  このシステムは裁判沙汰になるほど画期的だ。開発した会社は「クロムサイズ」。このシステムの名称は「選撮見録(よりどりみどり)」、名前からして振るっている。システムはこうだ。マンション内の共用サーバーと各世帯がLAN回線でつながり、マンションの住人が事前に録画予約をした番組を好きな時間に配信を受けて視聴する。1台の共用サーバーで最大1000時間の録画が可能。住人は予約した番組しか視聴できないが、「全局予約」でセットすればすべての番組を見ることができる。まさに選撮見録なのだ。この装置は大阪市内のマンションに設置される予定だった。

  大阪の民放5社が「待った」をかけた理由は、著作権法で例外的に録画(複製)が認められている「私的使用目的」を逸脱しているとの言い分だ。言い方を変えれば、「録画代行サービスと変わらない」というわけだ。これに対し、クロムサイズ側は「あくまでも予約した番組を見るので私的複製と変わらない」と反論した。

  で、判決は冒頭の通り。ク社側の違法性を認めた理由は明快だった。「システムの設置者と使用者が異なり、私的使用に当たらない」と。つまり、装置を設置する管理組合が録画の主体であって、個人ではない、という判断だ。この判決は視聴者にはなかなか分かり難いかもしれない。なぜなら、管理組合は住人で構成する閉じた組織で、管理組合と住人を全く別の主体とみなすことに違和感を感じる人も多いだろう。「装置は共同管理というだけのこと、実態は私的使用目的ではないのか」と。

   かつて著作権法に私的使用目的が盛り込まれて、ビデオの録画装置が一気に家電の成長株となった。しかし、デジタル技術は日々進歩している。大容量の1台のサーバーで1000時間録画の時代だ。VHSでちまちまと録画をする時代はもう終わる。法と現実が乖離(かいり)しないためにも、著作権の新しい解釈や理念が必要なのかもしれない。

⇒24日(月)夜・金沢の天気   くもり
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☆アケビの開いた口

2005年10月21日 | ⇒トピック往来

   金沢大学の角間丘陵の谷あいに角間川が流れていて、川に沿って幅2㍍ほどの遊歩道がある。散歩がてらブラブラ歩いていると、アケビが口を開けているのを見つけた。真ん中の白いタネの部分を取り出し、しばらく口に含んで飲み込む。トロリとして甘い。幼いころ、病気で臥(ふ)せっていると、母親が片栗粉にお湯と砂糖を入れて溶いたものを飲ませてくれた。その時の食感を思い出した。

                     ◇

   友人たちとの忌憚(きたん)のない議論の中で最近「参院はもういらん」というテーマが出てくるようになった。9月11日の総選挙で連立与党が3分2以上を占め、たとえ参院で与党案が否決されても、その数で衆院単独でも法案を通すことができるからだ。参院無用論はこれだけではない。良識の府であるべき参院が、「特定の業界・団体のダミーと化しているのでは…」と皆が疑問を持ち始めているからだ。

    けさの新聞各紙でそのことを考えさせる記事が載った。特定郵便局長のOBらでつくる政治団体「大樹」が20日、都道府県支部長会議を開き、2007年の参院選では旧郵政省出身者などの独自候補を擁立することを確認した、という。郵政民営化法案が衆参で可決したにもかかわらず、法案に反対した現職議員をあくまで支持し、来る参院選では独自候補を擁立すると気勢を上げた。

    実際、大樹会の集票力は群を抜く。今回の衆院選で、民営化反対の旗頭・綿貫民輔氏(富山3区)は自民党候補に2万票の差をつけ再選を果たした。その原動力となったのは「大樹会」富山県本部だ。会員2600人。特定郵便局は、明治政府が郵便制度を創設した際、地域の名士や資産家に業務委託したのが始まりで、県内の郵便局297局のうち特定局は192局と6割を占める。選挙になると、いまでも地域の名士である会員が地縁血縁の幅広い裾野をフルに活用し票を集める。

   しかし、富山の友人はこう嘆く。「綿貫さんが勝ったのはこれまでの功績があったからこそ。ところが、富山が郵政民営反対の牙城で、時代の流れに逆行しているとのイメージで他から見られているかと思うと正直つらい」と。

    業界団体が全面的に出て、気勢を上げるのは自由だ。確かにアメリカでも、ロビーストと呼ばれる団体や業界の利益代表が上院や下院のロビーに陣取って、政治家に盛んに圧力をかけている。業界のダミーのような議員も大勢いる。日本ではどうだろう。先の選挙では、地縁血縁もないいわゆる「落下傘候補」が健闘し、地場の候補者に勝った選挙区(静岡7区、東京10区など)もあった。政党の政策やポリシーが重視され、利益誘導型の政治家に有権者は期待しなくってきている。来る参院選では、インターネットの活用が「解禁」され、その傾向はさらに強まるだろう。そしてこの議論の行き着く先が参院無用論なのである。「機能しなくなった政治制度をリストラせよ。衆院だけでよい」と。

                                   ◇

        金沢大角間キャンパスの遊歩道でアケビを手にして、ある俳句を思い出した。高名な俳人だったか、学校の恩師だったか、作者は思い出せない。脳裏に浮かんだままを記す。

口を開け 手招き揺れる アケビかな
                       ~詠み人知らず~

⇒21日(金)午後・金沢の天気     くもり

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★「ミモレット」を検証する

2005年10月20日 | ⇒トピック往来

  チーズのミモレットを初めて食した。チーズ独特のにおいがツンとくるものの、歯応えは決して硬くはない、むしろ「しなやか」と表現したい。実にきめ細やかな食感である。「硬くて食えない、かびたチーズ」と森喜朗氏が評して一躍有名になったチーズだ。ヨーロッパの高級品というのは得てしてそんなものだという先入観を私も持っていたが、それが「濡れ衣」であることが分かった。

   フランス産のミモレット(mimolette)を食する至ったいきさつをちょっと説明したい。郵政民営化法案否決で日本に激震が走った8月8日の2日前、小泉総理に衆院解散を思いとどまらせようと森氏が官邸を訪ねた。しかし「殺されてもいい」と小泉総理に拒否された。その会談で出たのが缶ビールと「かびた」チーズだった。会談後、森氏はわざわざ握りつぶした缶ビールとチーズを取り囲んだ記者団に見せ、「寿司でも取ってくれるのかと思ったらこのチーズだ」「硬くて歯が痛くなったよ」と憮(ぶ)然とした。映像を見た有権者は逆に「小泉は郵政改革に命をかけている、本気だ」との印象を持った。歴史的となった9月11日の選挙ドラマのプロローグはまさに森氏が記者団にチーズを見せるシーンから始まったのだ。チーズは後にフランス産高級チーズの「ミモレット」と判った。

   選挙後、ミモレットの味を検証したと思い、金沢市内の食品店を探したがない。金沢大学近くのフランス料理店でも注文したが、「東京の食材店に注文すれば1ヵ月ほどかかるが…」とニベもない。たまたま、自宅近くの大手リカーショップに問い合わせると「近く入荷する」との返事があり、注文しておいた。先日店から電話があり、いそいそと取りに行った。オレンジ色は見ようによっては確かに「かびた」ように見えるが、歯応えや食感は冒頭に記した通りである。

   森氏の味覚がおかしいと言っているわけでない。政治の駆け引きの場面では、どんな料理も賞味はできる雰囲気ではないだろう。8月6日夜、森氏がもし小泉総理の先輩としての余裕を見せて「小泉さんは『殺されてもいいから解散をやる』と言ったよ。しかたないな。でも、あのミモレットは実にうまかったよ」などと記者団に説明していたら、選挙の結果は自民大勝にはならなかったはずだ。むしろ国民から「高級チーズなんか食いやがって」と総スカンをくらっていたに違いない。森氏の苦りきった表情、握りつぶした缶ビール、そして「かびた」チーズから見えてきた政治の緊迫感がテレビを通して有権者に伝わったからこそ歴史は動いた。

   年末の「ことしの重大ニュース」のテレビ番組はこのシーンから入るのではないかと、つらつらと想い描いている。

⇒20日(木)午前・金沢の天気   くもり時々はれ

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☆里山ハクビシン物語

2005年10月19日 | ⇒キャンパス見聞

   きのう(10月18日)、金沢大学の五十周年記念館「角間の里」では、ちょっとした騒動があった。その騒動の主はハクビシンだ。

   館の前を流れる角間川の橋の下で、学生が仕掛けたカゴに体長50㌢ほどのハクビシンがかかった。尾の長さも40㌢ほどある。仕掛けのエサはバナナだった。ハクビシンはこの雑食性がたたって、里に出てきてはナシやカキを食い荒らす。「鳥獣保護及び狩猟に関する法律」では狩猟獣にも指定されている。一昨年前、新型肺炎である重症急性呼吸器症候群(SARS=サーズ)の感染源ではないかと疑われ、ジャコウネコ科のこのハクビンを食す習慣がある中国では一説に2万匹が捕殺されたとのニュースも流れたと記憶している。

  「白鼻芯」の当て字がある通り、額から鼻にかけて白い線がある。よく動き回るので写真ではうまく撮影できなかったが、なかなか愛嬌のある顔をしている。調べてみると、これだけ大きく目立つ動物でありながら、国内に生息しているという最初の確実な報告は1945年の静岡県におけるものが最初で、それ以前の古文書での記載や化石の記録もない。でも北海道の奥尻島に生息しているとの報告もあり、日本の固有種なのか外来種なのかはっきりしてない。

  ところで今回の捕獲は大学院生の研究でもある。ところが実際に捕獲したものの、どのように処置すればよいか四苦八苦だ。目的は発信機をつけることなのだが、動き回るハクビシンは難物だ。ようやく首に発信機をつけて放すことに成功した。今後、生息圏の調査をする。でも考え方によっては、発信機がついていれば他の場所で捕獲されても、学術調査の研究対象ということでまた放される可能性がある。つまり狩猟獣でありながら、「生存特権」を得たようなものだ。「大学の里山で幸運を得たハクビシンのセクセスストーリー」は言い過ぎか…。

⇒19日(水)朝・金沢の天気    はれ

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★里山の奇観

2005年10月18日 | ⇒キャンパス見聞

  「自在コラム」で紹介している金沢大学五十周年記念館「角間の里」を向かいの山から眺めると、ちょっと絵になる。バックの林、館の前の畑など実に納まりのよいアングルだ。

  この角間という地区は1600年代の前半、この上の戸室山から切り出された石を金沢に運ぶルートのひとつだった。石は築城に使われた。3代藩主の前田利常がここまで何度かわざわやって来て、石を運ぶ人たちにだんごを振舞って励ましたことから「だんご坂」ともそのルートは呼ばれた(森田柿園著「加賀志徴」から)。

  「角間の里」とは別の方角に目を転じると、モウソウ竹が勢いを増して里山を随分と侵食しているのが見える。竹林の茂みのあちこちでコナラが立ち枯れている。竹林の茂みができると森は暗くなり、養分がなくなってコナラなどは枯れるのだ。もともとモウソウ竹は人がタケノコ栽培のために植えたものだ。管理されていた時分は、「角間のタケノコ」と呼ばれたくらいにおいしいタケノコとして有名だった。それがいつしか里山に人の手が入らなくなって、モウソウ竹がのさばりだした。そしてタケノコの味も落ちた。

  これは竹のせいか、人のせいか…。植えたのは人だ。竹林が里山の問題点を象徴している。ついでに話をクマの出没問題に移す。クマは手つかずの奥山で生息している。 ところが里山に手入れがなくなりうっそうとした茂みとなると、 奥山と里山の境がなくなってしまう。 いわばクマが里山に迷い込んでくることになる。そして人に発見され、射殺される。 この意味でクマ問題も里山の象徴的な問題なのだ。これが国土の7割を占める山間地の「いま」の風景だ。能登半島の里山に育った私には奇観に映る。

 ⇒18日(火)午前・金沢の天気   くもり

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☆ダイコンの菜は青々と

2005年10月14日 | ⇒キャンパス見聞

   およそ1カ月前、あの総選挙はまるで死屍累々の関が原の戦いを見た思いだった。東軍の将(小泉総理)が圧勝し、天下を治めた。その戦の熱気が日本全体を覆っていたころ、金沢大学の五十周年記念館「角間(かくま)の里」の前の畑にダイコンの種がまかれた。その種が芽吹いて生長し、いまは青々とした菜っ葉が茂る。季節は確実に冬へと移ろっている。

   季節感を醸しているのは植物だけではない。昆虫もまたしかりである。カメムシがこの記念館の周囲を散策し始めた。越冬の準備のため、しかるべき「すきま」が家屋にないかウロウロとしている。このカメムシとはこの春、随分と気が合った。踏まぬよう、踏まれぬようと互いに気づかった仲である。カメムシとは対話もした。「カメムシ君よ、ちょっと臭いよ」、「アンタかて私を踏んだやろ」、「そらすまんかったな。これから気つけるわ…」

   きのう(13日)午後、スズメバチが1匹迷い込んできた。このハチのホバリング(停止飛行)は攻撃態勢を意味する。「やばい」と叫んだスタッフがハチ駆除用のエアゾールをブシュっと2度噴射した。スズメバチは撃退できた。問題はコストだ。噴射はまるで消火器のように1度で結構な量が出る。2度、3度でほとんどなくなってしまう。「これ1本いくら」、「2000円ほどです」、「そんなに高いんか、噴射するにも結構緊張するな」、「でも刺されたら、もっと高くつきますよ…」

⇒14日(金)朝・金沢の天気   はれ

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★続・NHKにCMは流れるか…

2005年10月13日 | ⇒メディア時評

  12日付の「自在コラム」で「NHKにCMは流れるか…」のテーマでNHK民営化の可能性について触れた。その文末に安倍晋三氏あるいは中川昭一氏あたりがその口火を切るかもしれないと書いた。このブログを見たテレビ業界の知人がさっそくメールを送ってきた。「NHKへの関与が取り沙汰されている両氏が今度、民営化論を持ち出せば、それこそNHKいじめと見られないか」という内容だ。

   せっかくメールをもらったので、なぜ両氏の名を挙げたのかという点を深めて説明したい。理由は2点ある。NHKが政治家に「弱い」のは、NHKの予算審議などは政治マターだからである。放送法では、NHKの経営委員会メンバーは衆参両院の同意を得て、内閣総理大臣が任命することになっている(16条)。しかも、事業予算(平成17年度6687億円)も国会承認制である。従って、何かにつけてNHKの幹部は国会議員に「ご説明」をする。国会議員とすれば、説明を受ければ、「ところで…」と意見も言う。その意見が見方によっては「関与」にもなる。つまり、取り沙汰されている国会議員の関与問題は構造的なのだ。

   もしこのままNHKの受信料が不払いが拡大し、今後、経営のあり方をめぐって抜本的な論議がなされるなら、民営化案も俎(そ)上に載ることは間違いない。いみじくも、ことし3月15日の衆院総務委員会のNHK予算審議で民主党の委員が受信料の不払いが増えていることに関連して、「もうNHKは国営化か民営化だろう、そういう意見が(民主党内で)強い」と述べている。NHKの民営化というのは国会議員の間ではすでに視野に入っているのである。

   経営のあり方の論議がなされれば、関与の問題も当然出てくる。国営化ではさらに関与が深まることになり、ましてや「小さな政府」の流れで国家公務員を増やすことはないだろう。まず有権者が許さない。若者はNHKを見ていないのである。選択肢は民営化に大きく傾きつつある。この流れを読んで、「番組でもめた」安倍氏、中川氏らが関与問題を逆手に取って民営化の口火を切るのではないかと推測する。

   もう一つの理由は、NHKが持つ莫大な映像コンテンツである。経団連が「仕切り役」となってこの3月、テレビ業界や芸術・文化団体と権利調整し、番組コンテンツ(ドラマ)をブロードバンドで配信する際のライセンス料(情報量収入の8.95%)が設定された。この取り決めが一つの基準となり、東京キー局は競うようにネット配信に乗り出している。ところが、おそらく民放の何倍もの映像資産を持っているNHKは動けないのである。なぜか。民放がNHKの「業務拡大」を警戒しているのだ。NHKサイドでも受信料でつくった番組を有料でネット配信することに躊躇している。

   なかなか動かないNHKの背中を押したいと思っているのが、番組コンテンツの流通を市場として育てたいと苦心している経済産業省だ。この番組コンテンツ市場は本丸のNHKが参入しないことには弾みがつかない。この意味でNHKの民営化というのはタイムリー、まさに渡りに船なのである。その経済産業省の大臣が中川昭一氏である。以上が、私がNHKの民営化に向けて口火を切るは安倍氏であり中川氏かもしれないと推測した理由である。

⇒13日(木)朝・金沢の天気   はれ

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