自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆新盆で見える金沢の風景

2023年07月14日 | ⇒ドキュメント回廊

   金沢の風習の一つとして「新盆」がある。7月13日から15日ごろにかけて墓参りをする。その際、「札キリコ」を持参する。墓の前に札キリコをつり下げる棒か紐がかけてあり、墓参した人はそこに札キリコを吊るす=写真・上=。この板キリコの表面には、浄土真宗の家ならば「南無阿弥陀仏」、曹洞宗ならば「南無釈迦牟尼仏」と書いて、裏面の「進上」には墓参した人の名前を記す。この札キリコによって、その墓の持ち主は誰が墓参に来てくれたのかということが分かる仕組みになっている。いわゆる墓参者の名刺代わりのようなものだ。

   自身もきのう菩提寺を訪れ、墓参りを済ませた。最近思うことだが、墓地をざっと眺めて板キリコの数が減っているように思えてならない。つまり墓参する人の数が減っている。きのう午後に訪れたときも、墓参者はまばらだった。

   4月と6月に親戚と知り合いに物故者が出て、葬儀に出かけた。会場はいわゆる「家族葬」で、祭壇はコンパクトに白菊などの花が飾ってあった。近親者だけで行う小規模な葬儀なので、それぞれ40人ほどの参列だった。通夜も葬儀も時間にすれば1時間ほどだった。最近、朝刊の「おくやみ」欄で「通夜、葬儀ともに終了」の表記が目立つ。家族葬で通夜・葬儀をすでに済ませた、というケースが多いのだろう。ちなみに、14日付の「おくやみ」欄では石川県内で20名の方が掲載されていたが、うち8名は「通夜、葬儀ともに終了」となっている。葬儀の身内化、コンパクト化だろうか。

   先日、知り合いがマイホームを新築したというので、見学させてもらった。金沢の丘の上のある住宅で、見晴らしがとてもよい。知り合いは旧市街地から現在のところに、ある意味で移住した。キッチンとリビングが一体化していて、広々とした「住まい感」を感じた。そして、畳の部屋がない。「前の家にあったあの大きなお仏壇はどうしたの」と尋ねると、仏壇屋に引き取ってもらって、代わりに小さな仏壇にしたとのこと。リビングのドアを開けてくれた。すると、縦70㌢・横50㌢・奥行き30㌢ほどのコンパクトな仏壇が仕舞ってあった。「もちろん、月命日には家族で手合わせして供養している」とのこと。住宅の洋風化とともに仏壇がコンパクト化している、そんな印象を受けた。

   と同時に、金沢の金箔産業は大丈夫なのかとの思いも脳裏をよぎった。仏壇の内部には金箔がふんだんに施されている。なので、仏壇が小さくなるということは、金箔の需要が減るということだ。「金沢は金箔で持つ」と言われるくらいに、金沢は伝統的に金箔生産量を誇り、全国シェアは98%だ=写真・下=。金を極限まで薄く伸ばしたのが金箔であり、この「縁付(えんつけ)金箔」と呼ばれる製法は「伝統建築工匠の技」の一つとして、2020年にユネスコ無形文化遺産にも登録されている。(※写真は金沢金箔伝統技術保存会ホームページより)

   新盆に見えた金沢の風景を取りとめもなく書いてみた。

⇒14日(金)夜・金沢の天気     くもり時々あめ 


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1 コメント

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Unknown (ひで)
2023-07-19 11:32:45
拝見をしております。
コロナで、これは、タブーだと思っていたことが、出来なくなり、それでも過ぎていくことが理解できてしまったことですね。
冠婚葬祭は、それでもいいですが、人とのつながりがなくなくなるのは、どうかと思っていますが・・。
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