自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆巨大デビルフィッシュ インバウンド観光の目玉に

2022年08月31日 | ⇒トピック往来

           前回ブログの続き。 能登半島の能登町小木で制作されたスルメイカの巨大なモニュメント「イカキング」は国内のテレビ番組で繰り返し紹介された効果もあり、観光交流センター「イカの駅つくモール」には去年4月設置からことし7月までに16万4千人が来場、うち45%の来場者がイカキングがお目当てだったことがアンケート調査で分かった(今月30日付・能登町役場公式サイト「 能登町イカキング効果算出プロジェクト報告資料」)。

          サイトによると、国内メディアだけでなく、海外メディアでも数多く紹介されている。 テレビでは9局(アメリカNBC、FOX、イギリスSkyNewsなど)、新聞では11社(フランスAFP通信、アメリカNewYork times、イギリスReutersなど)と。 自身が直接目にしたのはイギリスBBCニュースWeb版(2021年5月4日付)だった。

        「Covid: Japan town builds giant squid statue with relief money」の見出しでイカの巨大モニュメントの写真を掲載していた=写真=。 日本の海辺の町は、コロナ禍の緊急援助金を使って巨大なイカの像を建て、物議をかもしている、と。 記事では「町の広報担当者は、このモニュメントは観光名所となり、能登のイカを宣伝する長期戦略の一部となるだろうと話している」と日本のメディアに語ったコメントを記載している。 おそらく、担当したBBC記者は現地を訪れて取材したのではなく、提携している日本のメディアの記事を引用し、ユー・チューブ動画を使ってニュースを構成したのだろう。

          能登半島の尖端の小さな町での出来事を、グローバルメディアのBBCがなぜあえてニュースとして取り上げたのか。 憶測だが、記者はイカキングの写真をネットなどで見て興味が沸いたのだろう。 前回ブログでも述べたように、欧米では、タコやイカをデビルフィッシュ(Devilfish)、「悪魔の魚」と称して忌み嫌う文化がある。 巨大化したタコやイカと闘うアメリカ映画にもなっている。 その意味で、映像のインパクトを意識したニュースではないだろうか。

            このBBCニュースが世界に流れ、その後、AFP通信ニュース(5月6日付)、New York times(同)など海外メディアが続々とイカキングの話題を取り上げている。 デビルフィッシュのグローバルな宣伝効果だ。金沢のサムライ文化と能登の巨大デビルフィッシュ、北陸のインバウンド観光の戦略に値するのではないだろうか。

⇒31日(水)午前・金沢の天気    はれ

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★「絵になる」イカキング その宣伝効果と経済効果

2022年08月30日 | ⇒トピック往来

   この巨大なイカの像はすっかり観光名所になった。愛称は「イカキング」。イカ類の水揚げ量では全国で有数の漁港がある石川県能登町小木の観光交流センター「イカの駅つくモール」の広場に去年4月、突如として現れて話題になった。スルメイカの巨大モニュメントは全長13㍍、全幅9㍍、高さ4㍍、重さは5㌧のサイズだ。素材は航空機などに使う繊維強化プラスチックのFRP製。子どもたちが中に入って遊んだり、大人たちが写真を撮ったりと、けっこう人気がある。

   一方で物議も醸した。制作費2700万円のうち、2500万円が新型コロナウイルスの感染症対応として国が自治体に配分した地方創生臨時交付金だった。町役場には「コロナ対策に使うべき交付金ではないか。なぜモニュメントをつくるのか」と疑問の声が寄せられた。町役場では、臨時交付金には「地域の魅力磨き上げ事業」という項目があり、それに該当すると説明を重ねてきた。

   果たして「地域の魅力磨き上げ」効果はあったのか。町役場はきょう30日、ホームページに「能登町イカキング効果算出プロジェクト報告資料」と題するページにアップした。それによると、経済効果を5億9400万円、国内のテレビ報道における宣伝効果(パブリシティ効果)を約18億円と算出している。町役場では公募に応じた経営コンサルティング会社(東京)の男性社員の協力を得て作業を進めてきた。

   ことし6月から8月にかけて来場者にアンケートを実施。来場理由を尋ねると、総数1125人のうち45%に当たる506人が「イカキングを見たかったから」と答えた。この数字をベースに、レジ利用者数から入場者数(去年4月からことし7月まで)を16万4556人と推計。うち45%の支出額などを算定すると、上記の5億9400万円という数字になる。

   宣伝効果は国内のBSやケーブルテレビを含むテレビ番組でイカキングが取り上げられたのは36回、時間にして158分となる。これをテレビコマーシャルとして換算し、約18億円と見積もった。

   また、アンケートで来場のきっかけを尋ねたところ、「テレビ」が31%と最も多く、「家族・友人・知人からの口コミ」22%、「ネット検索」16%、「新聞・チラシ」8%、「SNS」7%の順だった。町役場では「SNSをきっかけとした来場が少なかった。SNSに投稿したくなるさらなる仕掛けが必要」と分析している。

   確かに、イカキングは「コロナ後」を見据えて、さらにPRする必要がある。その期待に応えてくれるのはインバウンド観光客かもしれない。欧米ではタコやイカはデビルフィッシュ(Devilfish)、「悪魔の魚」にたとえられ、巨大化したタコやイカと闘うアメリカ映画もある。その意味で、これから日本を訪れるであろうインバウンド観光客や留学生にとって、SNSに投稿したくなる、「絵になる」のがイカキングではないか。

⇒30日(火)夜・金沢の天気     くもり

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☆支持率は急降下、問われる「断行内閣」の真価

2022年08月29日 | ⇒ニュース走査

   日を追うごとに内閣支持率が下落している。きょうの朝日新聞によると、世論調査(27、28日)で岸田内閣の支持率は47%と、前回調査(7月16、17日)の57%より10ポイント下落した=写真=。不支持率は39%で、前回調査25%から14ポイント跳ね上がった。政党支持率は自民が34%で、前回調査より2ポイント落ちている。政党支持率はそれほど落ちてはいないものの、内閣支持率が急降下しているのは、岸田内閣への不満がうっ積しているからだと読める。

   安倍元総理の射殺事件でクローズアップされている世界平和統一家庭連合(旧「統一教会」)による政治家と関係や霊感商法、献金強制の問題などが連日報道されている。政治家と統一教会をめぐる問題について、岸田総理の対応を評価するかとの問いでは、「評価しない」が65%、「評価する」が21%となっている。関連して、安倍元総理の「国葬」については、「反対」50%が「賛成」41%を上回っている。

   岸田総理への不満は「統一教会がらみ」だけでなく、上昇する物価対策についても募っている。「評価しない」67%が「評価する」21%を大幅に上回っている。新型コロナウイルスについての対応も、「評価する」は45%で前回調査の57%よりダウン、「評価しない」は49%で前回調査34%を大幅にアップしている。

   1週間前の毎日新聞の世論調査(今月20、21日)でも、内閣支持率は36%で、前回調査(7月16、17日)の52%から16ポイント下落、不支持率は54%で前回調査37%より17ポイント増加している。また、読売新聞の緊急世論調査(今月10-11日)でも、内閣支持率は51%で前回調査(今月5-7日)より6ポイント下落、不支持率は34%と前回調査より2ポイント増えている。今月10日に「政策断行内閣」を掲げて第2次岸田改造内閣は発足したが、2週間余りで有権者の評価は大幅に落ちている。統一教会問題だけでなく、物価高対策や新型コロナウイルスの感染拡大についても、納得いかない世論が明らかになった。

   世論が期待しているのはインパクトのある実行力だろう。岸田内閣が反社会的な宗教団体との関係性を絶つには、税務調査や警察による情報収集など実態解明にまず着手することだ。すでに、河野消費者担当大臣は霊感商法の被害対応を検証する消費者庁の検討会を開き、協議した内容については法務省や警察庁に適宜報告すると明言している(今月26日、閣議後の会見)。問題が露呈すれば、非課税などの優遇措置の解除、場合によっては解散命令(宗教法人法第81条)を検討すると明言する。そのくらいの「断行内閣」であってほしい。

⇒29日(月)午後・金沢の天気    はれ

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★釈然としないニュースあれこれ

2022年08月27日 | ⇒ニュース走査

   何だか釈然としない。報道によると、安倍元総理の「国葬」について、国費2億4940万円を支出することが閣議で決定された。内訳は、会場設営費(献花用の白菊7500本、外交団1000人分の同時通訳設備など)に2億1000万円、会場(日本武道館)とバス(105台)の借り上げ費用で3000万円などとなっている(27日付・朝日新聞)。

   銃殺事件後の国葬なので、警備は万全の体制で臨むだろう。ところが、記者発表した松野官房長官は警備費については警察庁の既存の予算で対応する、としか述べていない。

   政府は6000人規模の参列者を想定しているが、2020年10月に都内のホテルで営まれた故・中曽根元総理の内閣・自民党合同葬は1400人だったので4倍を上回る規模だ。さらに、参列する外交団は1000人を想定しているので、海外からの要人警備にも相当な費用がかかるだろう。

   国葬ならば警備費を盛り込んだ全体の予算を明示すべきではないだろうか。単純に比較はできないが、海外から来賓を招いた2019年の天皇「即位の礼」では警察庁の警備費用として38億円が計上されていた(2018年12月・皇位継承式典事務局資料)。

   そもそも、岸田総理は内閣府設置法の第4条「国の儀式」に基づいて閣議決定により、国葬を行うと表明したのだが、国葬そのものの定義や基準がない。法的根拠があいまい、予算もあいまい。釈然としない。

   もう一つ釈然としないニュース。読売新聞Web版(27日付)によると、日本主導でアフリカ開発の支援を議論する第8回アフリカ開発会議がチュニジアで開幕し、オンラインで基調講演を行った岸田総理=写真、総理官邸公式サイトより=は2023年から3年間で官民合わせて総額300億㌦規模の資金をアフリカ支援に投じると表明した。

   投資内容は、産業や保健・医療、教育分野で30万人の人材育成や、道路や電力整備などのインフラ開発がその主な柱なのだが、日本円にして実に4兆1100億円だ。この金額を国内の有権者はどう思うだろうか。ただでさえ、新型コロナウイルスの感染拡大が続く中で30万人もの人材育成を誰がどこでどう行うのかという実行性を問う声や、4兆円を国内のインフラや人材育成に振り向けよといぶかる声も多いのではないだろうか。

⇒27日(土)夜・金沢の天気    くもり時々あめ

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☆「国葬」めぐるバカ発言、パンドラの箱が開く

2022年08月26日 | ⇒ニュース走査

   まるでパンドラの箱が開いたように連日、世界平和統一家庭連合(旧「統一教会」)の政治家と関係や霊感商法、献金強制の問題などが報道されている。

   日テレ系番組「情報ライブミヤネ屋」(26日付)で、安倍元総理の国葬(9月27日)について津田塾大の萱野稔人教授が意見を述べていた。「やるのであれば、統一教会と与党との関係をしっかり清算してほしい」と。「国葬をやることによって、むしろ統一教会に利用されてしまう懸念がある。国葬を行うような大政治家とわれわれは関係を持っていた」と教団のPRに使われる可能性を指摘していた。

   自民党は党所属の国会議員に統一教会とのかかわりをアンケート調査する文書を配布した。8項目の報告を求めていて、統一教会主催や関連団体の会合に出席したことがあるか、会費の支出があるかどうか、選挙の際にボランティアによる支援や組織的な支援を受けたことがあるかどうかなどを尋ねている。集約でき次第、結果を公表する。関係が深い議員については名前の公表も検討する(26日付・NHKニュースWeb版)。   

   消費者庁に新たに発足する「霊感商法等の悪質商法への対策検討会」の初会合が今月29日に開催される。河野消費者担当大臣が明らかにした。委員には、統一教会の問題に取り組んできた紀藤正樹弁護士、カルト問題に詳しい立正大学の西田公昭教授など8人が選ばれた。河野大臣は「霊感商法は消費者契約法で規制されているが、それにあたらないような動きがあったからこそ、さまざまな被害があったと思う」と述べた(同)。

   自民党の二階俊博元幹事長は都内で講演し、統一教会や関連団体と自民党議員との関係について「問題があればどんどん出して、修正をしていくべきだ。自民党はびくともしないから」と述べた。また、安倍元総理の国葬に報道各社の世論調査で反対意見が強いことについて「それがあったからといって国葬をやめるわけではない。国葬は当たり前だ。やらなかったらばかだ」と指摘した(24日付・毎日新聞Web版)。

   国葬に関しては、FNN・産経合同世論調査(8月20、21日)で「反対」51%、「賛成」40%、また、毎日新聞と社会調査研究センターの世論調査(同)でも「反対」53%、「賛成」30%となっていて、反対が上回っている。二階氏のバカ発言で今後さらに反対が加速するのではないだろうか。

⇒26日(金)夜・金沢の天気    くもり

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★能登の縁 あの歌手、テニスプレーヤー、漫画家 

2022年08月25日 | ⇒トピック往来

   まったくの余談になる。今月23、24日に学生たちの「能登を学ぶスタディ・ツアー2022」に同行し、能登半島を一周した。その中で、能登にある地名や看板がバスの中で話題になった。国の史跡「雨の宮古墳群」は眉丈山(標高188㍍)の山頂にあるが、その山のふもとには中能登町一青(ひとと)という地名がある。そう、あの歌手で作詞家の一青窈の先祖の地でもある。台湾人の父とこの町出身の母親の間で生まれた。

   一青窈のヒット曲に『ハナミズキ』という曲がある。そして同町には花見月(はなみづき)という地名の田園地帯が広がる。「づ」と「ズ」の違いはあるものの、発音は同じなので、『ハナミズキ』は母親の故郷にちなんだ曲なのかとも連想した。この件を町役場のスタッフに問い合わせたことがある。すると、「その話はこの地を訪れた人からよく尋ねられるのですが、以前ご本人に確認したところ、偶然ですという回答で、花見月を想定した曲ではないとのことでした」との返事だった。町内を走るJR七尾線の金丸駅や能登部駅、良川駅、能登二宮駅などでは、列車の接近を告げるメロディとして、この曲が流れる。

   能登町には神和住(かみわずみ)という地名がある。その近くには天坂(てんざか)という地名もある。これらの地名から、「天の坂を登りて、神が和して住む」とまるで天国をイメージさせるようなスピリチュアルな響きがある。日本人として初めて全米オープン(1973年)で3回戦へ進み、日本プロテニス界 のパイオニアと呼ばれた神和住純氏の故郷だ。

   能登町は軟式テニスが盛んな地で、両親はテニス通じて知り合い、神和住氏が生まれた。その後、両親とともに東京に転出する。神和住の地名の縁、さらに父親が同町出身ということもあり、神和住氏は「能登町ふるさと大使」となって、テニスの町をPRしている。1999年から同町内では本人も参加して「神和住エンジョイテニス大会」が開催されている。新型コロナウイルスで感染拡大で2年連続で中止だったが、ことし10月に3年ぶりに開催されるようだ。

   地名ではないが、輪島市内をバスで移動中に「永井豪記念館」の看板が学生たちの目に止まった。一人が「あの『マジンガーZ』や『キューティーハニー』の永井さんですよね」と。漫画家・永井豪氏の記念館は出身地である輪島市河井町の朝市通りある。2009年に自治体が信用金庫の空き店舗を買い取り整備したものだ。

   以下、正直な話。今から40年前、自身は新聞記者として輪島支局に赴いた。当時の永井豪氏の作品のイメージは、『ハレンチ学園』などギャグ漫画や、『デビルマン』などテレビアニメ作品だった。地元の人たちは永井氏が輪島出身ということを知ってはいたが、当時それを土地の自慢話として語る人はほとんどいなかった。むしろ、ローマオリンピックなどで銀メダルを獲得した競泳の山中毅選手の話はよく聞いた。

   評価が一転したのは日本のアニメが海外で大ブームとなり、永井氏の『UFOロボ グレンダイザー』などがヨーロッパで人気を博した。こうなると地元輪島でも世界の漫画家として評価が高まった。これが、永井豪記念館の設置へと動いた。その後、永井氏は2019年、フランス政府から芸術文化勲章「シュバリエ(騎士)」が贈られた。永井氏の作品は美術館で展示されるようになった。

   追記。演歌歌手の新川二朗氏が今月22日に亡くなった。能登半島の入り口に位置する宝達志水町の出身。自身が小学生の頃、テレビで流れていたあの名曲『東京の灯よいつまでも』は見よう見まねでよく歌ったものだ。初めて歌ったの演歌がこの曲だったかもしれない。享年82歳。

⇒25日(木)午後・金沢の天気    あめ

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☆伝統の「くず湯」、ツアーの締めくくり

2022年08月24日 | ⇒トピック往来

   前回の続き。「能登を学ぶスタディ・ツアー2022」の二日目は里山里海の生業(なりわい)と生物多様性がテーマだった。最初の訪れたのは、穴水町にある「能登ワイン」が運営するブドウ畑とワイナリー。能登の赤土(酸性土壌)はブドウ畑に適さないと言われてきたが、同社では畑に穴水湾で養殖されるカキの殻を天日干しにしてブドウ畑に入れることで土壌が中和され、ミネラルが豊富な畑となり、良質なブドウの栽培に成功している。栽培面積は委託も含めて24㌶におよぶ=写真・上=。

   白ワイン(シャルドネ)、赤ワイン(ヤマソービニオン)は国内のワインコンクールで何度も受賞している。また、最近では、8千年以上の長い歴史を持つワイン発祥の国、ジョージアの代表的な土着品種、サペラヴィの栽培に成功し、赤ワインを製品化している。ただ、温暖化のせいでシャルドネの栽培量が減少しているという。穴水湾のカキとシャルドネのワインがとても合うと人気だけに、現場も苦慮している。

   次に訪れたのが七尾市能登島の「のとじま水族館」。この水族館では500種4万点を展示しているが、その9割が能登の海で定置網などで捕獲された生きもの。その中でスーパースターがジンベエザメ=写真・中=。小魚やプランクトンがエサで動きがゆったりしているので、人気がある。それにしても、この水族館ではプランクトンから海草、イルカ、そしてジンベエザメにいたるまで見学できる。まさに、海の生物多様性の博物館だ。

   最後に能登で一番高い山でもある宝達山(ほうだつざん、637㍍)のふもとの里山集落を訪れた。宝達山には旅するチョウ「アサギマダラ」が飛来することでも知られる。そして、この山はかつて加賀藩の金山だった。記録では天正12年(1584)に開山し、崩落事故が起きた寛永5年(1628)まで続いた。全国から鉱山開発や土木技師などのプロがこの地に集められ、「宝達集落」が形成された。

   金鉱で働く者たちの健康を支える漢方薬として当時から重宝されたのが「宝達葛(くず)」だった。山に自生するくずの根を掘り出し、デンプンを取り出して精製したもので、くず粉はまさに純白に輝く=写真・下=。いまでも、その独自の製法は地域の人たちに受け継がれている。地元の人たちから宝達葛の「くず湯」の振る舞いがあった。初めて口にした。とろりとしたほのかな甘さに伝統の味を感じながら、ツアーを締めくくった。

⇒24日(水)夜・金沢の天気   くもり

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★夏の夜のキリコ祭り、ここに能登ある

2022年08月23日 | ⇒トピック往来

  きょうから金沢市内の学生たちと能登をめぐるツアーに出かけた。題して「能登を学ぶスタディ・ツアー2022」。一日目は歴史と伝統的な祭り、アート作品など多様な能登の側面が学びのテーマだった。

  最初に訪れたのは国史跡「雨の宮古墳群 」(中能登町)=写真・上=。文化財の学芸員から解説を聞いた 。北陸地方最大級の前方後方墳と前方後円墳が隣接する。4 世紀から5世紀(弥生後期)の古墳で、眉丈山の山頂にある。邑知(おうち)地溝帯と呼ばれる穀倉地帯を見渡す位置に古墳はある。能登の王は自ら開拓した穀倉地を死後も見守りたいという思いで山頂にピラミッドを築いたはなかったか。

   この地域は能登における稲作文化の発祥の地でもある。1987年、雨の宮古墳近くにある「杉谷チャノバ タケ遺跡」の竪穴式住居跡から、黒く炭化したおにぎりが発掘された。化石は約2000年前の弥生時代のものと推定され、日本最古のおにぎりと話題になった。稲作とともに仏教などの文化ももたらされ、奈良時代の718年に「能登国」が置かれることになる。雨の宮古墳群はそうした能登の歴史を刻むルーツの一つでもある。

   学生たちが目を輝かせたのは、珠洲市で去年開催された「奥能登国際芸術祭2020+」の展示作品だった。予約によって鑑賞が可能な作品の中から主に3つを選んだ。一つは、「スズ・シアター・ミュージアム『光の方舟』」。家の蔵や納屋に保管されたまま忘れ去られていた民具1500点を活用し、8組のアーティストと専門家が関わって博物館と劇場が一体化した劇場型民俗博物館をオープンした。音、光、民具がアートとなって見る側に感動をもたらす。

   芸術作家・山本基氏の作品『記憶への回廊』は旧・保育所の建物にある。真っ青に塗装された壁、廊下、天井にドローイング(線画)が描かれる。奥の遊戯場には塩という素材を用いた立体アートが据えられている=写真・中=。かつて、園児たちの声が響き、にぎわったこの場所は地域の人々の幼い時の記憶を呼び起こす。金沢美術工芸大学の教員・学生60人余りで市内の広々とした旧家の屋敷を借りて、作品を展示している。客間に能登産材の「アテ」(能登ヒバ)を持ち込み、波と手のひらをモチーフに全面に彫刻を施したもの。学生らがチェーンソーやノミでひたすら木を彫り込んだ力作に圧倒される。

   夜は「輪島大祭」を見学に行った。市内の重蔵神社の境内ではキリコが4本立てられ=写真・下=、太鼓や鐘の音が町なかに響き渡っていた。新型コロナウイルスの感染拡大で今年は3年ぶりの開催。ただ、コロナ禍は続いているので、本来ならば20本のキリコが巡行するが、4本に簡略化された。それでも、子どもたちの威勢の良い太鼓打ちに学生たちは圧倒されていた。夏の夜のキリコ祭り。ここに能登ある。

⇒23日(火)夜・金沢の天気    くもり

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☆処暑に感じる秋の気配、そして政局の気配

2022年08月22日 | ⇒ニュース走査

   あすは二十四節気の「処暑」。夏の暑さが少し和らぎ、夜の虫の声や朝の風に秋に気配を感じるころだ。わが家の庭にタカサゴユリ(高砂ユリ)が咲き始めた。「立てば芍薬(シャクヤク)、座れば牡丹(ボタン)、歩く姿は百合(ユリ)の花」の花の美しさは見事だ。ヤマユリのような高貴な香りはないが、人目をひく花だ。

   ただ、植えた覚えはないので、おそらく種子が風に乗って、庭に落ちて育ったのだろう。旧盆が過ぎたこの時節は花の少ない季節で、茶花として重宝している。ただ、立場が異なればタカサゴユリは外敵、目の敵だ。国立研究開発法人「国立環境研究所」のホームページには「侵入生物データベース」の中で記載されている。侵入生物、まるでエイリアンのようなイメージだ。外来種だからと言って、すべて駆除すべきなのか、どうか。

   きょうの毎日新聞に世論調査(20、21日)の結果が掲載されていた。岸田内閣の支持率は36%で、前回調査(7月16、17日)の52%から16ポイントも下落した。不支持率は54%で前回より17ポイントも増えた。この下落の背景にあるのが、安倍元総理の射殺事件がきっかけで明るみになってきた、自民党と「世界平和統一家庭連合」(旧「統一教会」の関係だ。これに対しては「極めて問題があったと思う」「ある程度問題があったと思う」が合計で87%もある。政党支持率も自民は29%で前回の34%から5ポイント下落している。

   メディア業界でよく指摘されるのは、内閣支持率の20%台は政権の「危険水域」、20%以下は「デッドゾーン」と。これから他のメディアも世論調査を次々と報道するだろう。「聞くチカラ」を岸田総理は強調してきたが、統一教会問題だけでなく、物価高対策や新型コロナウイルスの感染拡大についても、無策の状態が明らかになってきた。

   岸田政権が反社会的な宗教団体との関係性を絶つには、税務調査や警察による情報収集など実態解明に着手することだ。その上で、問題が露呈すれば非課税などの優遇措置の解除、場合によっては解散命令(宗教法人法第81条)を検討すると有権者に宣言することだ。ケジメをつけないと、政権のデッドゾーン入りもそう遠くはないだろう。

⇒22日(月)夜・金沢の天気    くもり

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★ジンベエザメと能登の海、そして水族館の共生

2022年08月20日 | ⇒トピック往来

   きのう(19日)オンラインでの講演会があり参加した。テーマは「能登の海の魅力とジンベエザメ」。のとじま臨海公園水族館の展示・海洋動物科長、加藤雅文氏が講演した。のとじま水族館は能登近海に回遊してくる魚類などを中心に500種4万点を展示している。その9割は能登の海で獲れたもの。水族館のスターは何と言っても、ジンベエザメだ。

   加藤氏の講演は、日本海を俯瞰する話から始まった。世界の海の広さから見れば、日本海は面積では0.3%に過ぎない。陸に囲まれているという立地から陸から流れてきた栄養分などが海底に積もっている。栄養素から植物プランクトンが発生し、動物プランクトン、そして多様な海洋生物が育まれる食物連鎖がある。地球規模から見れば、小さな海にブリやサバ、フグ、イカ、カニなど魚介類が豊富に獲れるのはそのためだ。

   能登半島をめぐる海の特徴として3つある。能登半島は海に突き出ているため、対馬海流の影響を受ける。塩分濃度が高く、時速4㌔の水流、そして暖海性の海洋生物が海流に乗って北上してくる。富山湾は岸から近い距離で一気に深くなり、1200㍍の水深となる。この「海底の谷」が海洋生物のかっこうの住処(すみか)となる。海そうが生い茂る場所を「藻場」と呼ぶが、能登半島は日本最大級の藻場の分布域でもある。この藻場によって、水質の浄化や生物多様性の維持、海岸線が保全される。

   こうした能登の海で、のとじま水族館は定置網漁などの漁業者と協力して、展示する海の生きものを得ている。2016年から5年間で漁業者から入手した生きものは598種類5万3117匹に上る。このうち、タケウツボやアオイガイ、ユウレイイカ、マンボウ、カスザメ、イトマキエイなど1匹しから見られない希少種も121種類あった。

   ジンベエザメの場合は、定置網で捕獲されると漁業者から連絡があり、スタッフが現場に向かう。定置網でのジンベエザメの大きさなど目測する。水族館の水槽は円形で高さ6.5㍍、直径20㍍ある。エサを与えると、ジンベエザメは立ち泳ぎして食べるので、体長が6㍍を超えるジンベエザメは水槽の底に尾ひれが触れてしまう。そこで、体長4.5㍍から5.5㍍のものでないと、水族館では引き取ることができない。

   スタッフが「じんべい丸」と呼ぶ、ジンベエザメ専用の細長い水槽を沖合に持って行き、定置網からこの水槽に入れる。じんべえ丸を陸揚げして水族館に運び、ジンベエザメ展示館の屋根に付けてある扉を開け、クレーン車で吊り上げて、そのまま降ろすと展示用の水槽に入る。

   水槽に入ったジンベエザメに対し、スタッフは「健康管理」と「馴致(じゅんち)」という作業を行う。健康管理は外傷の有無や遊泳行動の観察、そして血液性状の検査を御行う。馴致は水槽という環境になれさせるという意味で、水槽という環境に順応させるように最初はスタッフも水槽に潜り、いっしょに行動する。摂餌はエサやりの方法や場所をなれさせる。健康管理のため、定期的に採血も行う。

   ジンベエザメは体の大きさの割には威圧感がない。小魚やプランクトンがエサで動きがゆったりしているので、人気がある。ジンベエザメがいるので入館者数も増える。体長が6㍍になると、GPS発信機をつけて再び海に放す。回遊経路などがこれによって調査される。

   能登の海と水族館、そしてジンベエザメが共生する関係性が実によく見えた講演だった。

⇒20日(土)午前・金沢の天気   あめ

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