自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆ロシアの「ジャンヌ・ダルク」が投じた一石

2022年03月16日 | ⇒ニュース走査

    まさに現代のジャンヌ・ダルクではないだろうか。勇気ある女性だ。ロイター通信Web版日本語(15日付)=写真=によると、ロシア国営テレビ局「Channel One」の14日夜のニュース番組で、アナウンサーの後ろに、「NO WAR」と手書きのプラカードをかざした女性が突然映り込んできた。「戦争を止めて」と声をあげた。7秒で画面が切り替わった。国営テレビは、ロシアはウクライナの非軍事化と「非ナチ化」、ロシア系住民の保護のために戦っているとするロシア政府の見解を一貫して報じている。この報道姿勢に身内から反乱を起こした。

   女性はテレビ局のディレクターでマリーナ・オフシャニコワ氏。ネット上にビデオ声明も発表していて、「ウクライナで起きていることは犯罪だ。ロシアは侵略国であり、侵略の責任はウラジーミル・プーチンにある」「テレビ画面でうそを話すのを許してきたのが恥ずかしい」と述べ、ロシア国民に反戦活動を呼びかけている。父がウクライナ人、母がロシア人であることを明かしている。彼女は警察によって当日拘束された。モスクワの裁判所は翌15日、無許可で抗議活動を行ったとして3万㍔(280㌦)の罰金を科して釈放した(同)。

   むしろプーチン氏からにらまれているのはテレビ局幹部ではないだろうか。国営テレビ「Channel One」は日本で言えば、NHKのような存在である。夜9時からの番組なので、まさにNHK報道番組『ニュースウオッチ9』ではないか。動画を見る限り、オフシャンコワ氏が手書きのプラカードを掲げ、反戦を訴えたが、ニュースを読み上げる女性キャスターはオフシャンコワ氏の行動を無視している。テレビカメラもそのまま撮っていた。7秒後に画面が切り替わった。通常で考えれば、スタジオにプラカードを持って入ることをなぜ他のフロアスタッフが阻止しなかったのか、なぜカメラマンは7秒もそのままカメラを向け続けたのか。

   以下はあくまでも憶測だが、「予定調和」の流れを感じる。オフシャンコワ氏やカメラマン、ほかのスタッフが訴えた「7秒間の反戦ドラマ」ではなかったか。ロシアの民衆はネットでウクライナ侵攻の真相が分かっていても、大統領には逆らえず、見て見ぬふりをして沈黙してきた。それがもう限界に来ている。オフシャニコワ氏の果敢な行為は突発的に見えるが、計画的でもある。民衆に怒りのマグマが相当たまっていて、これが導火線になるのではないか。

   フランスのマクロン大統領もジャンヌ・ダルクのイメージを想起したのだろうか、朝日新聞Web版(16日付)によると、マクロン氏はオフシャニコワ氏の保護のために外交努力をする考えを示し、「次のプーチン氏との協議で具体的な提案をする」と語ったという。

   一方のロシア政府はそう甘くはない。ロシアでは今月、ロシア軍の活動に関して、ロシア当局がフェイクニュースと見なした場合に、最大15年の禁錮刑を科せる法律が施行された。オフシャニコワ氏の活動そのものが偽情報の拡散と当局が判断する可能性がはらむ(同)。ロシアの世論が今後どう展開していくのか。新たなロシア革命へとつながっていくのか。

⇒16日(水)午後・金沢の天気   はれ

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