自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆「オミクロン株」がやって来る

2021年11月29日 | ⇒ニュース走査

   民族の生き残りをかけて戦ってきた歴史のある国はパンデミック下の対応も的確だと感心させられる。イスラエルのことだ。報道によると、南アフリカで確認された新たな変異ウイルス「オミクロン株」はイギリスやドイツなどヨーロッパでも感染の確認が相次いでいる。こうした中でイスラエルは水際対策を強化するため、今後14日間は特別な許可がない限りすべての外国人の入国を禁止、また、帰国者はワクチン接種を終えていても3日間の自宅隔離を義務付けることを決めた(11月28日付・NHKニュース)。

   イスラエルは世界に先駆けてワクチン接種(ファイザー社製)を開始したことでも知られる。そして、3回目のワクチン、いわゆる「ブースター接種」にいち早く着手したのもスラエルだった。ワクチン接種の効果でことし5月から6月にかけては、感染者数がゼロに近づいた=写真・上、11月28日付・ジョンズ・ホプキンス大学「コロナダッシュボード」より=。ところが、7月以降は変異ウイルス「デルタ株」による感染再拡大に見舞われる。そこでワクチン接種後の時間経過とともに効果が減少することを問題視し、7月末からは60歳以上を対象にブースター接種を開始する。それでも、9月をピークに第4波が訪れた。現在は収まってはいるが、そこにオミクロン株が登場した。なかなか収束しない中で今回、外国人の入国制限を決断したのだろう。

   日本の現状はどうか。現在はイスラエルの5月から6月かけての状況と似ている=写真・中、同=。が、時間が経過すればワクチン効果が薄れる。その間隙をぬって第6波がやってくるだろう。日本の水際対策は大丈夫なのか。政府は今月8日から、ビジネス目的の入国規制緩和や、新規留学生および技能実習生の受け入れ再開が実施している。これまで、ワクチン接種を終えたビジネス来訪者には入国後10日間の待機を求めていたが、3日間に短縮。留学生や技能実習生を対しても、受け入れの大学や企業や団体による入国者の行動管理を条件に認めた。インバウンド観光客の入国は現在も認めていない。

   新たなオミクロン株の感染拡大によって、政府は新たな措置として今月27日から南アフリカのほか8ヵ国(エスワティニ、ジンバブエ、ナミビア、ボツワナ、レソト、モザンビーク、マラウイ、ザンビア)からの邦人帰国者や在留資格を持つ外国人入国者に対して、指定宿泊施設での10日間の待機を義務付けた。はたしてこれで十分なのか。

    日本と同じ島国のイギリスでは感染拡大の勢いが現在も増している=写真・下、同=。さらに、国内でオミクロン株の感染が確認された。BBCニュースWeb版日本語(11月28日付)によると、ジョンソン首相は緊急記者会見で、国民には店舗や公共交通機関でのマスクの着用の義務化、さらに入国する人すべてを対象に2日以内にPCRの検査を受けて陰性だと確認されるまでは隔離を義務づけるなどの新たな対策を打ち出した。

   イギリスは昨年12月に感染拡大が急増し、クリスマスの直前になって規制緩和を中止するという事態に陥った。ことしはクリスマスの前までにはオミクロン株によるさらなる感染拡大を何とか収めたいと必死なのではないか。

⇒29日(月)午後・金沢の天気     はれ

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★「能登GIAHS」10周年の国際会議から~下~

2021年11月28日 | ⇒トピック往来

   能登の世界農業遺産「能登の里山里海」が認定されて10年周年を記念する国際会議(11月25-27日)と連携して「GIAHSユースサミット2021 ㏌ NOTO」が26日に開催された。国連大学サスティナビリティ高等研究所OUIKが主催し、GIAHS認定サイトの能登地区から飯田高校、鹿西高校、日本航空高校石川、新潟県から佐渡総合高校、そして宮崎県から五ヶ瀬中等教育学校の5校が参加、生徒40人が集った。テーマは「世界農業遺産を未来と世界へ~佐渡と能登からつながろう~」。

        ユース宣言の力強さ、そして「知事の花道」

   ちなみに、OUIKのフルネームは「いしかわ・かなざわオペレーティングユニット」。国連大学サスティナビリティ高等研究所が世界に6ヵ所設けているフィールド研究拠点の一つで、2008年4月に金沢市で開設された。里山里海と生物多様性などを研究テーマとしている。

   生徒たちは8つのグループに分かれて世界農業遺産をテーマに生物多様性や農業の発展、産業の発展、伝統文化、食文化、教育、発信などについて、それぞれの地域(サイト)の特徴や課題を話し合った。その内容を「GIAHSユース宣言」(13項目)としてまとめた。以下抜粋。

   将来の農業に向けては「3. 小さなアクションが積み重なれば世界はかわっていくはずです! 地域経済をより身近なものとして、問題について考え続けます」「4. GIAHS地域に密着した商品やブログラムのアイデアを考えます」、認定地の大人たちへは「11. 私たちは、GIAHS地域の自然環境を守るために、開発の抑制や、その代替えとなる案を、共につくり出すことを希望します」、世界の認定地のユースへは「13. 私たちと一緒にGIAHSのことをもっと知り、地域とつながり、積極的に行動して、GIAHSの輪を広げて行きましょう」。生徒自らが作成した台本で宣言した=写真・上=。

   能登の世界農業遺産は10年を経て、さまざま課題も浮き彫りとなっている。それは、少子高齢化と人口減少によって能登が持続可能な地域社会であり続けられるのかどうかだ。里山里海の保全や農林水産業の事業継承、祭り文化の担い手を養成していくことが課題となっている。しかし、高校生が授業で自分たちの地域の世界農業遺産について学ぶチャンスはほとんどないのが現状だ。OUIKが「ユースサミット」を企画した狙いは、GIAHS地域の「サスティナビリティ」を高めることだ。自身も同じ想いでユースサミットを傍聴していたので、生徒たちのユース宣言を聴いて、その力強さに心が励まされた。

   話は変わる。この国際会議開催の提唱者は谷本正憲県知事と県庁関係者から聞いている。前々回のブログで述べたように、2013年5月の「GIAHS国際フォーラム」の能登誘致も、知事がローマのFAO本部に事務局長を訪ね、直談判で開催にこぎつけた。今回の国際会議の基調講演で、「能登GIAHSは国内で初めて認定された。トップランナーとしてさらに深化させていく」と強調していた。政策としてSDGsやカーボンニュートラルを先取りして、能登GIAHSをバックアップしていくと具体的な政策を述べた。国際評価を得ても、情報発信を続けなければ価値はないとの趣旨だった。

   谷本氏は現在7期目。76歳。今月17日には来年3月の任期満了に伴う知事選には立候補せず、今期限りでの退任を表明した。今回の国際会議はある意味で、「知事の花道」のようにも思えた。うがった見方だが。(※写真・下は「GIAHSユースサミット」で生徒たちに国際会議の開催について述べる谷本知事)

⇒28日(日)夜・金沢の天気     はれ

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☆「能登GIAHS」10周年の国際会議から~中~

2021年11月27日 | ⇒トピック往来

   能登の世界農業遺産「能登の里山里海」が認定されて10年周年を記念する国際会議(11月25-27日)が七尾市和倉温泉の旅館「あえの風」で開催されている。FAOの駐日事務所ほか、政府関係者や農業従事者ら200人余り、そして、ペルーとセネガル、ブルキナファソの3ゕ国の駐日大使も訪れ、会場はにぎやかな雰囲気だ。ただ、新型コロナウイルスの感染拡大に配慮して、FAOのローマ本部のスタッフや海外のGIAHSサイトの担当者はオンライン(通訳付き)での参加となった。

      セネガル大使は「私もノト出身です」と

   冒頭で3人の大使があいさつした=写真=。セネガルの大使の話には驚いた。「私もノト出身です。日本のノトに興味がここに来ました」と。会場が一瞬、「えっ」という雰囲気に包まれた。スマホで調べると、確かにセネガルの西の方にティエス州ノト市がある。スペルも「Noto」と書く。さらに検索すると、JICA公式ホームページに「地域は海沿いのため一年を通して気候が良く、また地下水が豊富にあるため、玉ねぎやジャガイモ、キャベツの野菜栽培に非常に適した地域であり、セネガルの80%の野菜生産量を担っている」と説明があった。イタリアのコレシカ島にも「Noto」というワイン用のブドウ栽培の産地がある。日本、イタリア、セネガルの「Noto」で姉妹都市が結べないだろうか、そんなことがひらめいた。

   本題に入る。この国際会議では、経済、社会の2つのテーマに分かれて分科会が開かれ、世界各国のサイトの代表や研究者ら12人が取り組みの成果や課題を発表した。発言の中で注目されたのは、やはり開催地である能登のGIAHS認定10年は成果はどのように評価されているのか、ということだった。

   注目された発表の一つが、能登半島の尖端にある珠洲市の取り組みだった。同市の企画財政課長が述べた。同市で少子高齢化や転出が進み人口減少が進んでいるものの、ことし2021年上半期(4-9月)は転入が131人、転出が120人で転入が転出を初めて上回った。この社会動態の変化の要因として、GIAHSとSDGsを両立させた取り組みを目指し、海洋ゴミや廃校をアートに昇華させた国際芸術祭、企業や大学と連携して自然環境を活かしたビジネス人材の養成など、過疎地をイノベーションの場として活用することに共感する人々が増えている、と述べた。「人口減少が進む能登は日本の地域課題のトップランナーだ。能登で課題解決を探りたい、実践したいという若者や企業が珠洲に集まってきた」と。

    そして、GIAHSツーリズムという変化をビジネスチャンスに受け止めていると話したのは能登町の一般社団法人「春蘭の里」の代表理事だった。2011年に能登がGIAHS認定され、「Noto」が世界に浸透するとヨーロッパなどからインバウンド観光客が増えてきた。新型コロナウイルスによるパンデミックの前の2019年ごろまでは年間1万人の宿泊客のうち、2000人余りがインバウンド客という年もあった。地域の46の民宿に分散して泊まり、春は山菜、秋にはキノコをインバウンドの人たちといっしょに採取して、夕ご飯に料理として出して喜ばれた。言語の問題は、自動通訳機「ポケトーク」を地域の人たちで共有することで乗り越えている。コロナ後のGIAHSツーリズムを前向きに述べていた。

    石川県の谷本正憲知事は基調講演の中で、「能登にはさまざまハンディがあるものの、それをメリットに切り替える工夫をしてきた。世界農業遺産の認定が地域の魅力を掘り起こすきっかけになった」と能登におけるGIAHS効果をまとめて話していた。

⇒27日(土)夜・金沢の天気   くもり時々あめ  

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★「能登GIAHS」10周年の国際会議から~上~

2021年11月26日 | ⇒トピック往来

   「Globally lmportant Agricultural Heritage Systems」(GIAHS、世界農業遺産)についてこのブログで初めて取り上げたのは2010年12月19日付だった。この制度は国連食糧農業機関(FAO)が「持続可能な開発に関する世界首脳会
議」(ヨハネスブルグ・サミット)で提唱し設けた。ブログで取り上げた時は、能登半島の8つの市町の首長が連名で申請書をFAOに提出し終えたころだった。申請には当時国連大学副学長だった武内和彦氏(東大教授)らの支援があった。2009年9月に奥能登の農耕儀礼「あえのこと」がユネスコ無形文化遺産に登録されていた。この農文化の国際評価は、FAOのGIAHS認定を得るベースにもなりうるのではないかとの期待もあった。

       能登にグローバルな目線が注がれた2011年

   そのブログの締めくくりをこう記した。「正式な登録は来年夏ごろであり、登録が決まった訳ではない。が、動き出した。類(たぐい)希なる農業資産を祖先から受け継ぐ能登半島は過疎・高齢化のトップランナーでもある。このまま座して死を待つのか、あるいは世界とリンクしながら、生物多様性を育む農業を現代に生かす努力を重ね新たなステージを切り拓いていくのか、その岐路に立っている。」

   申請の翌年2011年6月10日、中国・北京で開催されたFAO主催のGIAHS国際フォーラムで、能登と当時に申請していた佐渡市の申請などが審査された。自身も北京に同行しその成り行きを見守った。審査会では、能登を代表して七尾市長の武元文平氏と佐渡市長の高野宏一郎氏がそれぞれ農業を中心とした歴史や文化、将来展望を英語で紹介した。質疑もあったが、足を引っ張るような意見ではなく、GIAHSサイトの連携についてどう考えるかといった内容だった。申請案件は科学評価委員20人の拍手で採択された。日本の2件のほか、インド・カシミールの「サフラン農業」など合わせて4件が採択された。日本では初、そして先進国では初めてのGIAHS認定だった。

   能登の認定タイトルは「Noto's Satoyama and Satoumi」。GIAHS認定を受けてから、徐々に能登に変化が起き始める。一年おきに開催されるFAOのGIAHS国際フォーラムの開催が2013年5月は能登で決まった。この決定に関係各国は驚いたはずだ。北京でのフォーラム閉会式で、GIAHS事務局長は「次回はカリフォルニアで開催を予定している」と述べていた。カリフォルニアワインの代名詞となっているナパ・バレーはワインの産地だ。それがひっくり返って能登に。

    ネタ明かしをすると、2012年5月、ヨーロッパ視察に訪れた石川県の谷本正憲知事がローマのFAO本部にジョゼ・グラジアノ・ダ・シルバ事務局長を訪ね、能登での開催を提案していたのだ。FAOは次のフォーラム開催が1年後に迫っていたにもかかわらず変更を決断。「認定サイトの地で初めてのフォーラム開催」をFAOはうたった。それ以前は2007年がローマ、09年がブエノスアイレス、11年が北京だった。

   能登半島の七尾市和倉温泉で開催されたGIAHS国際フォーラム(2013年5月29-31日)には11ヵ国19サイトの関係者が集まった。能登では初の国際会議だった。そして、審査会では新たに日本の3サイト(熊本県「阿蘇の草原と持続可能な農業」、静岡県「静岡の茶草場農法」、大分県「国東半島宇佐の農林漁業循環システム」)など5サイトが新たに認定された。その後もGIAHS国際フォーラムは開催され、現在では22ヵ国の62サイトに。そして、イタリア、スペインなどヨーロッパにも認定が広がっている。

   2011年のGIAHS認定をきっかけに、能登にグローバルな目線が注がれることになり、「Noto」が世界に浸透していくことになる。(※写真は、2011年6月、北京で開催されたGIAHS国際フォーラムの認定状を手にする武元七尾市長=左=と高野佐渡市長)

⇒26日(金)夜・金沢の天気        あめ  

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☆「天下の愚策」マイナンバーカード普及に1兆8千億円

2021年11月25日 | ⇒ニュース走査

   これも大いなる愚策ではないだろうか。マイナンバーカードの普及を図るために総務省はカードの取得などの段階に応じて最大2万円分のポイントを付与する制度を創設する費用として1兆8000億円を今年度の補正予算案に計上する方針を示した(11月25日付・NHKニュースWeb版)。

   記事によると、ポイントはカードの取得時に5000円分、健康保険証としての利用を開始した際と国からの給付金を受け取るための「公金受取口座」の登録をした際にそれぞれ7500円分が付与される仕組み。いわゆる「マイナポイント事業」だ。「デジタル時代のパスポート」と政府は盛んにPRしているものの、その普及率は全人口の39.5%、5003万枚だ(11月16日現在、総務省発表)。政府は2022年度末までにほぼ全ての国民に行き渡らせるという目標を掲げているが、普及は加速していない。

   自身は3年ほど前に取得したが、その利用価値というものを実感したことがない。いったい何のためにマイナンバーカードが必要なのか国民は理解していないのではないだろうか。メリットを分かりやすく説明する必要があるのではないか。それをせずに、1兆8000億円もの大金をつぎ込んでまで普及させたいという政府の腹づもりは何なのか、と逆に疑ってしまう。

   マイナンバーカードの持つことのメリットとして、運転免許証に代わる身分証明書になるということがよく言われる。これをメリットに掲げる必要はあるだろうか。16歳以上で運転免許証を持っている人は全体の74.8%(2019年末月現在・内閣公式ホームページ「運転免許保有者数」)。外出では常に持ち歩くので、金融機関や役所などで手続きをする際に本人確認や住所確認を求められた場合、運転免許証を出す。また、住民票や印鑑証明書などがコンビニで発行可能になるとも言われるが、「それは便利だ」と思う人はいるだろうか。使用頻度はそれほどないからだ。

   巨額な資金を投じるより、具体的で前向きなメリットを打ち出すべきではないか。たとえば、新型コロナウイルスの感染が拡大しているときでも行動の制限を緩和できる「ワクチン・検査パッケージ」制度の証明書としてマイナンバーカードを使う。選挙の投票でマイナンバーカードをかざしてデジタル投票ができるようにする。日銀がこれから実証事業を開始する「デジタル法定通貨」のキャッシュカードとしてマイナンバーカードを使う。国民に「デジタル時代のパスポート」を予感させる使い方をしてほしいものだ。(※写真は、政府広報オンライン「マイナンバーカード」より)

⇒25日(木)夜・金沢の天気     あめ

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★「お先棒担ぎ男爵」IOC会長への厳しい目線

2021年11月23日 | ⇒メディア時評

   前回のブログの続き。 中国の元副首相に性的関係を強要されたとSNSで告発し、その後行方が分からなくなっていた女子テニスの彭帥選手がIOCのバッハ会長とビデオ通話を行ったことについて批判が噴出している。

   ロイター通信(日本語版、22日付)によると、女子テニスのツアーを統括するWTAの広報担当者は「動画で彭選手を確認できたのはよかったが、彼女の健康に問題がないかや、検閲や強制を受けずにコミュニケーションできるかという点についてWTAの懸念を軽減したり、解消したりするものではない」と述べた。IOCとのビデオ通話については「この動画で、彼女の性的暴行疑惑について検閲なしに完全かつ公正で透明な調査を行うという、われわれの要求が変わることはない。それがそもそもの懸念だ」とIOCを批判した。

   BBCニュースWeb版(22日付)も「WTA says concerns remain for Chinese tennis star after IOC call」(22日付・BBC)の記事で、アスリートの声として「IOCが中国当局の悪意のあるプロパガンダと基本的人権と正義に対するケアの欠如に加担している」と紹介している。

   また、NHKニュースWeb版(23日付)は、人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)」は声明を発表し、バッハ会長が彭選手とテレビ電話で対話したと発表したことについて「中国政府のプロパガンダを助長してはならない」と、IOCの対応を批判したと報道している。さらに、テレビ電話の場がどのように経緯で設定されたのかIOCは説明していないと指摘したうえで「IOCは、言論の自由を侵害し、この問題を無視しようとする中国当局と積極的な協力関係に発展した。人権侵害者との関係を重視しているようだ」とのHRWの批判を紹介している。

   そこで、HRWの公式ホームページでこの声明=写真=をチェックすると、中国ではこれまで人権派弁護士やジャーナリスト、ノーベル平和賞受賞者、香港の出版社経営者、実業家らを当局の法に反したとして強制的に失踪していると人権侵害の広がりを指摘している。その上で、IOCに対して以下の要請を行うとしている。「ビデオ電話に関する声明を撤回する」「中国政府の関与の詳細を含め、テレビ電話に致る経緯など公に説明する」「中国政府に対し、彭選手の主張に対する独立した透明な調査を開始する」「中国政府に対し、彭選手が望むなら中国を離れることを許し、中国に残っている家族に報復しないよう強く求める」など。

   HRWのIOCへの要請はまっとうだ。理解しやすい。「一蓮托生」という言葉ある。バッハIOC会長が「お先棒担ぎ男爵」、あるいは「プロパガンダ男爵」として中国とこのまま運命をともにするのか。あるいは、悔い改めて、「ビデオ電話に関する声明を撤回する」のか。この議論はなかなか止まないだろう。北京オリンピックまであと70日余り。

⇒23日(火)夜・金沢の天気      あめ 

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☆「ぼったくり男爵」のあせり

2021年11月22日 | ⇒メディア時評

   「ぼったく男爵」の異名があるIOCのバッハ会長の名前を久しぶりに目にした。そもそもこの異名は、アメリカのワシントン・ポストWeb版(5月5日付)が「Baron Von Ripper-off」と名指したことに始まる。新型コロナウイルスの感染拡大によるパンデミックで、東京オリンピックを開催すべきかどうかで国際世論も揺れているとき、公的な国際組織でもないIOCがひたすら放映権料と最上位スポンサーからの協賛金をせしめていると批判した。この「ぼったく男爵」は世界中に広まった。

   けさのNHKニュースによると、中国の前の副首相から性的関係を迫られたことをSNSで告白したのち、行方が分からなくなっていると伝えられているプロ女子テニスの彭帥(ペン・シュアイ)選手について、IOCのバッハ会長は21日、彭選手とテレビ電話で対話をしたと発表した。IOC公式ホームページで内容を伝えている=写真=。それによると、バッハ会長と彭選手との対話は30分間に及んだ。彭選手は北京市内の自宅で暮らして無事でいることを説明し、現在はプライバシーへの配慮と家族や友人と一緒にいられることを望んでいると伝えた。また、バッハ会長は北京オリンピック開催前の来年1月に北京に行くので夕食に彭選手を誘い、本人も受け入れたと記載している。

   このニュースを視聴して、多くの視聴者は納得しただろうか。あるいは、世界の人々はこのIOCホームページを見て、率直に受け入れることができただろうか。アメリカは、新疆ウイグル自治区での強制労働を「ジェノサイド」と表現し国際的な人権問題ととらえている。さらに、今回のプロ女子テニスの彭選手の失踪についても問題視し、バイデン大統領は今月19日、来年2月4日に開幕する北京オリンピックについて、政府関係者を派遣しない「外交的ボイコット」を検討していると明らかにしている(11月19日付・NHKニュースWeb版)。アメリカだけでなくEUなどもボイコット、あるいは外交的ボイコットへの動きを見せている。

   以下は憶測だ。「ぼったく男爵」としては「オリンピックの開催をめぐる悪夢」が再び訪れているとあせっているに違いない。このまま各国からのボイコットが本格化すれば、北京オリンピックの開催そのものが問われ、放映権料と最上位スポンサーからの協賛金も危うくなると読んでいるのではないか。彭選手は北京の自宅で軟禁状態におかれていることは想像に難くない。それを分かっていながら、中国側の意向を受けてバッハ会長は彭選手との食事の約束をするなど、「演出」に応じたのだろう。

   今回のバッハ会長の振る舞いは強烈なバッシングを広げるのではないか。すでに、国際人権団体グループは放送権を持つアメリカのNBCやイギリスのBBCなど世界各国の26の放送局に、五輪放送は中国政府による人権弾圧の「共犯者」となることを意味するとし、「放送契約の即刻解除」を求める書簡を送っている(9月11日付・朝日新聞Web版)。また、ニューヨーク・タイムズWeb版(11月19日付)は、「Where Is Peng Shuai?」(彭帥はどこへ?)と題した社説で、中国は批判に直面すると「否定し、嘘をつき、しらばくれてやり過ごす。すべてがうまくいかないと猛烈に反撃する」のが常だとして、今回も同様の動きをしていると論評している。それに、「ぼったく男爵」もあせって乗っかっている。

⇒22日(月)午前・金沢の天気     あめ

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★「自分ファースト」な都議に引導を渡す人

2021年11月21日 | ⇒ニュース走査

   このブログでも何度か取り上げている、「自分ファースト」な東京都議、木下富美子氏のこと。無免許運転とひき逃げした疑いで書類送検されていたが、今月19日、東京地検は木下氏を道路交通法違反の罪で罰金を求める略式起訴ではなく、在宅起訴とした、と報道されている。被告となった木下氏はことし5月から7月の間、7回にわたって無免許運転を繰り返したことが常習性が高く悪質と判断された。ただ、当て逃げの過失運転致傷や事故不申告の送検容疑については不起訴処分となった。起訴状によると、その理由について「事故対応など諸般の事情を総合的に考慮した」と説明されている(11月19日付・時事通信Web版)。

   木下氏をめぐって都議会では7月23日と9月28日の2度にわたって辞職勧告決議を可決している。しかし、木下氏は辞職勧告に応じず、「体調不良」を理由に議会を長期欠席。ようやく、今月9日に都議選以来4ヵ月ぶりに登庁した。記者団に対して、「(議員を)ぜひ続けて欲しいと言う声がある」などとして、議員辞職はしない考えを示した(11月9日付・朝日新聞Web版)。

   辞めない、頑固一徹な「自分ファースト」な都議だ。冒頭の在宅起訴で今後はどうなるのか。公職選挙法では禁錮以上の実刑になれば失職(11条)となるが、書類送検・起訴段階では失職せず、仮に有罪判決となっても執行猶予がつくと失職しない。おそらく、今回の在宅起訴で失職に至るまでの罪にはならない。では、いったい誰が木下氏に辞めるようにと引導を渡すのか。

   東京都の小池知事がきょう21日、およそ1ヵ月ぶりに都庁での公務に復帰したとニュースになっている。 10月27日から過度の疲労で入院し、今月2日の退院後も自宅で静養しながらテレワークで公務をこなしていた。都庁に復帰した小池都知事は記者団の取材に応じた。報道によると、在宅起訴された木下氏について、「人生長いわけですから、今の状況を理解できない人ではないと私は考えている」「彼女自身が決することを私は確信している」とも語った(11月21日付・時事通信Web版)。

   おそらく、引導を渡せるのはこの人しかいない。木下氏のツイッター(7月3日付)=写真=は、小池知事が都議選の応援に駆けつけた様子を写真つきで紹介している。「まだ、体調万全でない中、本当に本当にありがとうございます」と。多くの有権者が知事が駆けつけてくれた木下氏に声援を贈ったことだろう。そのおかげもあり当選した。この際、知事は本人に直接、「人生は長い」と諭すべきだろう。木下氏にとっても、都知事からの助言で踏ん切りがついたと辞すれば、そのいさぎよさが認められ、再チャレンジのチャンスも生まれてくるかもしれない。

⇒21日(日)夜・金沢の天気       くもり

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☆横行するフィッシング詐欺メール

2021年11月20日 | ⇒ドキュメント回廊

   このところパソコンに金融機関などを装ったEメールが頻繁に届く。金融機関とは全く関係のないページに誘導し、暗証番号などを入力させることにより個人情報を不正に取得するという、いわゆる「フィッシング詐欺」のメール。「VISAカード」や「三井住友カード」など多くの人が持っていそうなカード名を使っていて、キャッシュレス社会に対応した詐欺だ。

   きょうのEメールで「VISAカード 重要なお知らせ」が届いた=写真=。「VISAカード利用いただき、ありがとうございます。このたび、ご本人様のご利用かどうかを確認させていただきたいお取引がありましたので、誠に勝手ながら、カードのご利用を一部制限させていただき、ご連絡させていただきました」と。さらに、「ご回答をいただけない場合、カードのご利用制限が継続されることもございますので、予めご了承下さい」。お願いと脅しの文言を織りまぜて、暗証番号などを入力させる魂胆だ。手が込んでいる。

   ショートメールでは一時期、宅配業者を装った詐欺メールがよく届いた。スマホのSMSに「お荷物のお届けにあがりましたが不在のため持ち帰りました。ご確認ください」と、宅配業者の不在通知のようなショートメールが届いた。これも実に巧妙だった。荷物を送る際は送り先の電話番号を記すので、不在の場合はスマホにショートメールが入っていても違和感がない。この盲点をついた詐欺メールだ。「スミッシング詐欺」とも呼ばれている。

   県内に住む知人はスミッシング詐欺に引っかかった。ある携帯キャリアから、「ご利用中のキャリア決済が不正利用されています。至急こちらのURLから確認してください」とのメールがスマホに届いた。メールにあったURLからサイトを開き、IDとパスワードを入力した。たまたまその様子を見ていた家族から指摘を受けて、携帯キャリアのショップに行きパスワードを変更して難を免れた。

   あの手この手でEメールやSMSに詐欺メールが相次ぐ背景にはキャッシュレス決済が多様化、複雑化していることがあるのではないか。とくに、新型コロナウイルスの感染拡大が始まった昨年4月7日に東京、神奈川、埼玉など7都府県に緊急事態宣言が初めて出され、緊張感が高まった。他人も触れる現金(紙幣・硬貨)を手にすることに警戒感が増し、シニア世代もキャッシュレス決済へと動いた。そのことからさらにキャッシュレス決済にからむ犯罪やトラブルが増加した。シニア世代は焦りや危機感で、つい次の行動に出てしまうものだ。自戒の念を込めたい。

⇒20日(土)夜・金沢の天気       くもり

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★夜空の部分月食 大晦日の「マツケンサンバⅡ」

2021年11月19日 | ⇒トピック往来

   さきほどまで金沢の夜空に浮かぶ部分月食(ほぼ皆既月食)を眺めていた。写真は午後6時9分ごろに自宅2階から撮影したもの。きょうの月の出は午後4時40分ごろで、日没と同じころだった。空が暗くなるに連れて月の欠け具合も進み、すっかり暗くなった午後6時3分ごろが食の最大となった。その後少しづつ月は元の姿と戻りはじめた。午後7時47分ごろに満月の姿に戻った。立冬が過ぎて夜空を見上げることはほとんどなかったが、きょうは珍しく終日晴天に恵まれ、夜までもった。おかげで天体ショーを観察することができた。

   きょうはもう一つ、夜空を見上げるような気持ちになったことがある。NHKの今年の大晦日の番組「紅白歌合戦」で、あの「暴れん坊将軍」の松平健が歌う「マツケンサンバⅡ」が決まったとテレビのニュース番組で紹介されていた。曲がリリースされたのは2004年だが、聴いたのはことし7月が初めてだった。オリンピック開会式のセレモニー楽曲を担当する作曲家グループの1人だった小山田圭吾氏が過去のいじめ告白問題で7月19日に辞任して大騒ぎになったが、そのとき、ヤフー・コメントなどで「マツケンサンバを開会式で」との書き込みを何度か目にした。検索して、「マツケンサンバⅡ」を動画で見て初めて見た。今回の決定もツイッターなどSNSでの「マツケンサンバ待望論」が巻き起こっていたことが背景にあるようだ。  

   サンバのリズムに乗ってテンポよく歌い踊る松平健の後ろでは、腰元と町人風のダンサーたちが乱舞する。サンバは肌を露わにしたダンサーが踊る姿をイメージするが、赤い衣装を着た腰元ダンサーの方がむしろ艶っぽくなまめかしい。さすがに、オリンピックの開会式では時間もなく無理だろうと思ったが、それ以来、家飲みのときにネットで楽しませてもらっている。

   紅白の特別企画での出演なので、おそらくネット動画以上に派手にステージで演出されるに違いない。新型コロナウイスルの感染拡大や東京オリンピックの開催問題、眞子さんと小室圭氏の結婚に絡む問題などいろいろあった2021年だが、「マツケンサンバⅡ」でパッと締めくくりたい。この曲を採用したNHKの番組プロデュサーの気持ちが読めるようだ。

⇒19日(金)夜・金沢の天気     はれ

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