自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆脱レジ袋の「新しい生活様式」

2020年06月30日 | ⇒トレンド探査

   あすから1日からレジ袋の有料化が義務づけられる。大手コンビニでは1枚3円の有料レジ袋とするようだ=写真・上=。マイクロプラスチックによる海洋汚染の問題に対処するためだが、率直に思うことは、レジ袋の有料化より、買い物を行う際にマイバッグ(布製、紙製など)の使用を国民に義務づけしてはどうか。有料化しないとレジ袋の削減が出来ないということは、逆に言えば、多くの人々がこの環境問題の深刻な状態を把握していない、ということになる。その現場を見てほしい。

   能登半島の尖端、珠洲市には塩田村がある。「揚げ浜式塩田」と呼ばれ、400年の伝統を受け継いでいる。浜で海水を汲んで塩田まで人力で運ぶ。今では動力ポンプで海水を揚げている製塩業者もいるが、かたくなに伝統の製法を守る浜士(はまじ=塩づくりに携わる人)もいる。ひとにぎりの塩をつくるために、浜士は雨が降らないかと空を眺め、海水を汲み、知恵を絞り汗して、釜で火を燃やし続ける。機械化のモノづくりに慣れた現代人が忘れた、愚直な労働の姿でもある=写真・中=。ここに、マイクロプラスチック問題が押し寄せている。

   製塩業者は海水にマイクロプラスチックが含まれていないか定期的に検査し、さらに、汲み上げた海水を5ミクロンと1ミクロンのフィルターのろ過装置に通し、マイクロプラスチックをはじめとするあらゆる固形物を除去した海水で伝統的な製塩作業を行っている。もし、これを行わなず、プラスチックの微細なかけらが商品から見つかったら大問題になる。マイクロプラスチック問題の川下で行われている涙ぐましいほどの努力だ。

   話は戻る。レジ袋だけがマイクロプラスチック問題を発生させているのではない。自分自身を含めた雪国の住民の問題でもある。道路などの除雪の際に使うスコップはさじ部がプラスチックなど樹脂製が多い。少し前までは鉄製やアルミ製だったが、今はスコップの軽量化とともにプラスチックが主流なのだ。除雪する路面はコンクリートやアスファルトなので、そこをスコップですかすとプラスチック樹脂が摩耗する=写真・下=。微細な破片は側溝を通じて川に流れ、海に出て漂うことになる。一部には製品化されたものもあるが、スコップのさじ部分の尖端を金属にすることで解決される。これを法令で措置すべきではないだろうか。

   粉々に砕けたプラスチックが海を漂い、海中の有害物質を濃縮させる。とくに、油に溶けやすいPCB(ポリ塩化ビフェニール)などの有害物質を表面に吸着させる働きを持っているとされる。そのマイクロプラスチックを小魚が体内に取り込み、さらに小魚を食べる魚に有害物質が蓄積される。食物連鎖で最後に人が魚を獲って食べる。

   レジ袋にしても、プラスチックのスコップにしても日常での環境問題である。人類の知恵、合意として、マイバッグなどは義務化すべきではないだろうか。新型コロナウイルスで培った「新しい生活様式」の発想を環境問題へと展開するチャンスかもしれない。

⇒30日(火)午前・金沢の天気    あめ

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★「ブラックスワン」の悪夢は尽きぬ

2020年06月29日 | ⇒ニュース走査

   「ブラックスワン(black swan)」という言葉が金融業界の用語にある。確率論や従来の知識や経験からは予測できない極端な事象が発生し、それが人々に多大な影響を与えることを指す(SMBC日興証券公式ホ-ムページ)。この言葉を最近知って、日常生活や日本にとってブラックスワンとは何かと考えるようになった。

   日本海側に住んでいるとどうしても考えてしまうのが、北朝鮮をめぐる情勢だ。南北首脳会談の「板門店宣言」で建設された北南連絡事務所が今月16日に爆破され、世界に衝撃が走った。アメリカと北朝鮮の首脳会談もこれまで3回開かれたが、成果は得られなかった。こうなると、トランプ大統領が2017年の9月の国連総会の演説で金正恩党委員長を「ロケットマン」と呼んだあのころに戻るのではないか、との危惧する。

   そうなると北朝鮮への斬首作戦が現実味を帯びる。斬首作戦は金委員長へのピンポイント攻撃のこと。アメリカによる斬首作戦で知られるのがオバマ政権下で実行された、オサマ・ビン・ラディンに対して行った2011年5月2日のバキスタンでの攻撃だ。もし斬首作戦が現実になれば、大量の北朝鮮の難民が船に乗ってやってくるだろう。ガソリンが切れたり、エンジンが止まった船の一部はリマン海流に乗って能登半島などに漂着する。無事漂着したとして大量の難民をどう受け入れるのか、武装難民だっているだろう。まさにブラックスワンだ。

   ブラックスワンを招くのは異常気象かもしれない。6月に入ってから、日本各地で集中豪雨による洪水が発生している。中国でも長江上流で大規模な水害が発生し、中流域の湖北省宜昌市にある世界最大の水力発電ダム「三峡ダム」が決壊する恐れが出ている、と指摘する専門家もいる(6月29日付・ニューズウイーク日本語版)。想像を絶する被害だろう。

   現実となったブラックスワンは新型コロナウイルスの災禍だろう。アメリカのジョンズ・ホプキンス大学のコロナ・ダッシュボード(一覧表)の29日の最新版によると、感染者は1017万人、死者は50万人を超えた。ことし1月に全世界でいちはやく感染者情報を公開した同大学だが、これほどのパンデミックになると予想していただろうか。日本でも先月25日に緊急事態宣言が全面解除されたにもかかわらず、きょう東京都では58人の感染が確認され、これで4日連続で50人超えだ。コロナ二波が始まっているのではないか。

   新型コロナウイルスによる感染も怖いが、最近、日本列島の各地で頻発している地震も、大地震の予兆ではないかと不安心理に陥る。今月25日にも千葉県北東部で震度5弱であったほか、九州や中部、関東、東北、北海道で震度3から4の揺れが続いている(気象庁公式ホームページ「地震速報」)。身の回りでも3月13日に能登半島の輪島で震度5強、金沢で震度3の揺れがあった。神経が少々過敏になっているのかもしれない。

⇒29日(月)夜・金沢の天気     くもり

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☆ドラッグストア「わが世の春」の争い

2020年06月28日 | ⇒メディア時評

   その発言が何かとニュースになる石川県の谷本知事が5月28日にドラッグストアチェーンの社長と面会した際、「ドラッグストアはわが世の春でしょう」と発言したことが、新型コロナウイルスの感染拡大がまだ治まらないこの時期に不適切と全国ニュースにもなった。知事はその後の記者会見で「適当でなかった。反省している」と述べた。ただ、知事の発言は事実無根ではない。

   多くの企業の業績が総崩れといわれる中で、ドラッグストア業界の業績は順調だ。石川県に本社がある東証一部のドラックストアチェーンのA社の株価は新型コロナウイルスに対する政府の緊急事態宣言(4月7日)から2000円余りも上昇している。最近よく目にするようになったのが新規開店のラッシュだ、県内に73店舗を構えるA社のほかに37店舗のG社(本社・福井県)、19店舗のU社(同・東京都)と乱立気味だ。

   さらに愛知県に本社を置くS社が今年に入って金沢に3店舗を開設した。2024年2月までに北陸で一気に100店舗を計画している(S社公式ホームページ)。S社は店舗数だけでなく、店舗の多様化を強調している。「クリニック併設型店舗の出店や、地域の在宅医療における訪問調剤サービスなど、北陸エリアの地域医療振興にも貢献してまいります」(同)と。

   ドラッグストアチェーンのこうした強気の経営戦略は超高齢化社会を迎えるマーケットの主導権を握る発想かもしれない。S社の戦略通り、高齢化社会のニーズをビジネスに結びつける対応力と多様性がこの業界にはある。ドラッグストアとスーパ-、ドラッグストアと介護・診療施設の併設、あるいはドラッグストアと家族葬を中心とした葬儀場もあるかもしれない。

   実際に石川県庁近くの金沢1号店を見学に行ってきた=写真=。立地では石川県立中央病院と近い。店舗の中に、調剤部門と介護の相談を受け付ける介護ステーションを併設している。建物内で内科クリニックも計画しているようだ(同)。何より挑戦的だと感じたのは、A社の店舗と150㍍くらいの距離にあることだった。地域を絞って集中的に出店する戦略で、域内の市場占有率を一気に高めるドミナント展開をS社は狙っているのだろう。

   A社とS社の店舗は県庁のすぐ近くにある。このシェア争奪の現場を間近に見て、おそらく知事も実感していたのかもしれない。「ドラッグストア業界はわが世の春、だから争いもし烈になる」と。        

⇒28日(日)午後・金沢の天気   くもり時々はれ

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★テレビ視聴の「オーダーメイド化」時代

2020年06月27日 | ⇒メディア時評

   気になったニュース。NHKの放送だけ映らないように加工したテレビを購入した東京都内の女性が、NHKと受信契約を結ぶ義務がないことの確認を求めた訴訟の判決で、東京地裁は26日、請求を認めた(27日付・共同通信Web版)。NHKの受信契約をめぐる訴訟は各地で起きているが、ほとんどがNHK側に軍配が上がっている。久しぶりに視聴者側の勝ちではないだろうか。

   最近の判決で印象的なのは、「ワンセグ訴訟」だ。自宅にテレビを置かず、ワンセグ機能付きスマホやカーナビの場合でも、NHKと受信契約を結ぶ義務があるかどうかの訴訟が相次いでいた。2019年3月、最高裁は契約義務があるとして原告側の上告を退ける決定をした。NHK側の勝訴とした東京高裁の判決が確定した。

   そもそもこれまでなぜ訴訟が相次いだのか。放送法そのものが不備が原因だ。放送法では「(日本放送)協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない」(放送法64条1項)とある。スマホは持つものであって、設置ではない。常識で考えれば、誰しもがそう思う。今でもスマホでもPCでもタブレットでも視聴できる時代だ。ところが、放送法は制定された1950年のテレビの法律なのだ。東京高裁の判決では「受信設備の設置には携行することも含まれる」と判断したが、これは言葉の勝手解釈だろう。法律の文言を変えればよいだけの話である。

   今回26日の判決はある意味で画期的だ。NHKだけを受信不能とするフィルターをテレビとアンテナの間に取り付ける。つまり、NHKの周波数帯をカットする仕組みだ。裁判で、NHK側は電波を増幅するブースターを取り付けたり、工具を使って復元すれば、放送を受信できると主張した。これに対し、裁判長は女性の設置したテレビを「NHKを受信できる設備とは言えない」「ブースターがなければ映らないのであれば契約義務はない」と退けた。

   「ウィキペディア」によると、NHKの周波数帯を減衰するフィルターを開発したのは筑波大学の映像メディア工学の研究者だ。訴訟を起こした女性はこの研究者からフィルターを組み込みんだテレビを直接購入した。NHKや民放にかかわらず、視聴したくない放送を見ないようにするという発想から、見たくないテレビを見れないようにテレビそものにフィルターをかけるという視聴者ニーズが起きるのではないだろうか。まさにテレビのオーダーメイド化だ。今回の判決をきっかけに新しい商品として開発が進む、と予感する。

⇒27日(土)夜・金沢の天気   くもり   

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☆北の弾道ミサイル、能登沖200㌔落下から3年

2020年06月26日 | ⇒ニュース走査

   今月15日に河野防衛大臣が地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備計画を撤回すると表明してから10日余りが経った。その理由は最初よく理解できなかったが、ミサイルの「ブースター」と呼ばれる推進補助装置を基地内で落下させる想定だったが、基地の外に落下する可能性もあり、設備に大幅な改修と追加コストが必須となることから撤回に踏み切ったと報道各社が報じている。

   イージス・アショアの配備を撤回すると、日本は当面これまで通り、海上のイージス艦と地対空誘導弾パトリオット(PAC3)による迎撃態勢となる。一方の北朝鮮は、「金正恩委員長が、敵の艦船などの個別目標を精密打撃することが可能な弾道ミサイル開発を指示したと発表していることも踏まえれば、弾道ミサイルによる攻撃の正確性の向上を企図しているとみられる」(令和元年版防衛白書)。つまり海上のイージス艦船などを集中攻撃してくる可能性が高い。破壊された場合、イージス・アショアがなかったらどう防衛するのか。国家安全保障会議(NSC)はこの夏に集中的に討論されるが、見守りたい。

   北が弾道ミサイルを撃ち込む標的の一つが能登半島とされる。2017年3月6日、北朝鮮が「スカッドER」と推定された中距離弾道ミサイル弾道ミサイル4発を発射し、そのうちの1発は能登半島から北に200㌔㍍の海上に、3発は秋田県男鹿半島の西方の300-350㌔㍍の海上に、いずれも1000㌔㍍飛行して落下した=写真=。

   能登半島の先端・輪島市の高洲山(567㍍)には航空自衛隊輪島分屯基地のレーダーサイトがある。このレーダーサイトには、航空警戒管制レーダーが配備され、日本海上空に侵入してくる航空機や弾道ミサイルを速く遠方でも発見するため24時間常時監視している。日本海は自衛隊の訓練空域でもっとも広く、「G空域」と呼ばれる。そのエリアに、しかも監視レーダーサイトの目と鼻の先の200㌔に北朝鮮はスカッドERを撃ち込んだのだ。

   男鹿半島にも加茂分屯基地の警戒管制レーダーが配備されている。北とすれば、この日本の2ポイントのレーダーサイトヘの攻撃は完全に射程距離に入れたとのメッセージを込めたのだろう。北が中距離弾道ミサイルを日本に撃ち込むとすれば、おそらく防衛ラインの「目と耳」であるレーダーサイトだ。ここを叩けば、丸腰同然となる。イージス・アショアの導入が決定したのはこの年の12月だった。

   あれから3年、北の弾道ミサイルはさらに高性能化したに違いない。低空飛行や軌道の変更が可能な「戦術誘導兵器」化した新型ミサイルがそれだ。イージス・アショアを白紙に戻したのも、ブースター落下問題というより、防衛戦略の総合的な見直しが急がれるとの判断なのかもしれない。

⇒26日(金)朝・金沢の天気   あめ

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★コロナ禍の陰で横行する「ショートメール詐欺」

2020年06月25日 | ⇒ドキュメント回廊

   先日、自分自身のスマホのSMSに「お荷物のお届けにあがりましたが不在のため持ち帰りました。ご確認ください」と、宅配業者の不在通知のようなショートメールが届いた=写真=。その文字の下にURLがあった。どんな荷物が届いたのかと、そこにアクセスすると何も映らなかった。一瞬気がついた。「やられた」。即キャンセルをかけた。

   宅配業者を装った詐欺メールだ。その後、スマホには覚えのない電話番号からの着信が2度あった。もちろんこちらから電話をかけることはしなかった。この詐欺メールは実に巧妙だ。というのも、荷物が着払いの場合は宅配業者から事前に荷物を届ける旨の電話がある。普通、荷物には届け出先の電話番号が記されているので電話がかかってきても当然だと思う。その一般常識の盲点を突いた詐欺メールだ。

   通常のメール(Eメール)だったら、宅配を名乗っても「なぜアドレスを知っている。フィッシング詐欺か」と削除するものだ。これがスマホのショートメールだったら、荷物の届け出先の電話番号に携帯番号が記載されることもままあり、疑念はさほどわかないだろう。そこでネットなどで調べてみると、SMSを使った詐欺メールはEメールを使った場合と区別して「スミッシング詐欺」とも呼ばれ、一昨年前から出始め今ではかなり被害が広がっているようだ。新型コロナウイルスの影響で在宅時間も多くなり、宅配も増えている。その陰でこのような詐欺メールが横行している。

   きょうたまたま銀行から「偽のお荷物不在通知メールやSMSにご注意」とEメールが届いた。アクセス先にこの銀行の番号とパスワードを入力させ、不正送金させる被害が多発しているようだ。メールでは「被害に遭わないための注意」として3項を呼びかけている。「1.詐欺やSMSメールに埋め込まれたリンクは絶対クリックしない! 2.万一、偽サイトに誘導されても、お客さま番号・パスワード等は絶対入力しない! 3.万一、電話の自動音声で確認コードを伝えられても、誘導先サイトに絶対入力しない!」

   佐川急便の公式ホームページをチェックすると、先月5月14日付で注意喚起している。「佐川急便を装った迷惑メールが届くというお問い合わせが急増しております。このような迷惑メールに記載されているアドレスにアクセスしたり、添付ファイルを開いたりされますとコンピューターウィルス等のマルウェアに感染する恐れがございますのでご注意ください。なお、当社では荷物の集配についてショートメール(SMS)によるご案内は行っておりません」。

   どのように悪質な詐欺なのか、さらにネットで調べる。私が持っているスマホはいわゆるAndroid端末だ。これでSMSに記載されたURLにアクセスすると、偽サイトの画面が表示される。偽サイトには、「設定マニュアル」と書かれたインストール手順が記載されている。自身ははたと気がついて、画面をキャンセルした。もしうっかりと手順通りにアプリをインストールしていたら、自身の端末から不在通知を装うSMSが大量に送信されたり、キャリア決済で勝手にiTuneカードが購入されるという被害にあったかもしれない。

   ここで思う。ショートメール詐欺に対策の手を打つべきはキャリア、つまり携帯電話会社ではないか。事例としてはそぐわないかもしれないが、SNSではすでにフェイクや不適切な発言内容について規制をかけ始めている。キャリアとして対策を打ってほしい。個人の責任論ではもう済まない段階にきているのではないだろうか。

⇒25日(木)夜・金沢の天気    あめ

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☆ウィズコロナの光景 クマと廻り焼香

2020年06月24日 | ⇒トレンド探査

   きょう朝、大学からの一斉メールで「クマ出没注意」があった。午前5時19分、角間キャンパスの入り口の交差点付近での目撃情報が寄せられた。今月1日にも今回目撃されたところの近くで出没している。このため大学では学生たちに「鈴など音が出るものを携行しましょう」「集団での登下校などに努めましょう」「クマを引き寄せる残飯等のゴミは所定の場所に捨てる、または持ち帰りましょう」と日頃の注意行動を呼びかけている。

   キャンパスはかつて里山といわれた中山間地だが、山奥から人里まで切れ目なく森林が続く。この時節はキャンパスを流れる川の沢沿いを伝って新芽や新葉、果実類など求めて出没する。クマは人気(ひとけ)のないところを徘徊する。懸念するのは、この新型コロナウイルスの影響で、クマの出没が増えるのではないか、と。今月19日から対面授業は再開されたものの、51人を超える講義などは在宅での遠隔授業(オンデマンド)となる。登学してくる学生は4分の1ほどではないだろうか。クマにとって静かな、心地よいキャンパスなのである。

   話は変わるが、このブログでは前日どのページが何回検索されたかが表示される。最近目立って検索が増えているのが「廻り焼香」(2015年2月27日付)だ。通夜や葬儀・告別式の弔問客が焼香のみ行い、そのまま帰るという風習について述べた。もともと福井にある葬儀の風習で、多くの弔問客が滞りなく焼香を済ませるための知恵だったが、葬儀が小規模化した今でも廻(まわ)り焼香の風習は生きている。

   この廻り焼香はウィズコロナの時世にマッチする。あえて言葉を交わさず、祭壇に向かって合掌し焼香のみで帰る。すでに一部で「ドライブスルー焼香」や「オンライン葬儀」といった新たなカタチの葬式に取り組んでいる葬儀会社があると報道(6月22日付・NHKニュースWeb版)もあった。これまでの慣習が覆され、新しい生活様式が模索される中で、葬式の有り様も変わるかもしれない。ウィズコロナの光景ではないだろうか。

⇒24日(水)午前・金沢の天気    はれ時々くもり

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★「弁当忘れてもマスク忘れるな」

2020年06月23日 | ⇒ドキュメント回廊

   「弁当忘れても傘忘れるな」。地域ならではの教えというものがある。金沢は年間を通して雨の日が多く、年間の降水日数は170日余りと全国でもトップクラス(総務省「統計でみる都道府県のすがた」) 。天気も変わりやすく、朝晴れていても、午後には雨やくもり、ときには雷雨もある。そのような気象の特徴から冒頭のような言葉が金沢で生まれたのだろう。ただ、最近思うのは「弁当忘れてもマスク忘れるな」だ。

   きのう出勤する途中でマスクを忘れたのに気が付き、コンビニに立ち寄ったが売り切れだった。大学に到着して、生協売店で買いを求めた。バラ売りで1枚74円。それから職場に行く。エレベーターに乗るとすでに3人いた。おそらくマスクを着けていなかったら気が引けて乗らなかっただろう。マスクは通行手形のようなもので、「場」に入るには今や必須となっている。弁当を忘れても、誰も何も言わないが、マスクを着けていないとジロリとした視線を感じる。さらに咳やくしゃみをしようものなら、多様な角度から目線が集中するのだ。

   マスクの常識は新型コロナウイルスによって大きく変わった。これまでマスクは使い捨てが常識だった。それが、洗濯して再利用が当たり前になった。また、マスクは白色が当たり前と思っていたが、最近では黒色もあればピンクもあり、白地に花柄模様と実に多様である。先日も夜の街ですれ違った男性が「首なし」で一瞬ドキリとした。黒色マスクに黒の帽子を深く被っていたのでそう見えたのだ。

   先日もこのブログで取り上げたWHOの公式ホームページには「When and how to use masks」と題してマスクの使い方を紹介している。これを見ていて感じることは日本人のマスク観と海外のマスク観が違っていることだ。この中で「やってはいけないこと」として、マスクを他人とシェアする、破れたマスクを使う、マスクで鼻を出す、汚れたマスクを着用する、などイラスト入れりで説明している=写真=。衛生観念の違いと言えばそうなのかもしれないが、日本人がこのイラストを見れば、マスクが普及していない国や地域ではマスクの使い方をめぐって混乱しているのではないかと想像する。

   というのも、WHOが掲載しているマスク着用に関するイラストや文書は、世界の国民に向けて発しているのではなく、「on Advice to decision makers」(意思決定者へのアドバイス)として発信しているのだ。「マスク途上国」は世界で多くあり、そのマスクの使い方を初歩から指導者に教えている、そんなふうにも読める。ここはWHOに期待したいところだ。

⇒23日(火)朝・金沢の天気    はれ

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☆大学キャンパス ウィズコロナの風景

2020年06月22日 | ⇒キャンパス見聞

     新型コロナウイルスの感染拡大で金沢大学では4月からすべての対面型の授業は中止となっていた。このため、講義はインターネットによる遠隔授業(オンデマンド型)のみで、学生は在宅授業だった。サークルや部活なども禁止。また、研究室の学生や大学院生の研究活動も登学は禁止となっていた。何しろ学生だけで1万人余りいる。キャンパスという限られた空間で、「大規模集会」を毎日開催するようなもので、感染が広がればひとたまりもない。

   緊急事態宣言が解除され、対面講義が再開されたのは今月19日だった。自身もこの間、リモートワークだったので久しぶりにキャンパスを歩いた。いつものにぎやかしい雰囲気がそこそこ戻っているに違いない思っていたが、実際は普段の4分の1ほどと感じた。というのも、感染の可能性がゼロになったわけではなく、ウィズコロナの状態だ。「3密」回避が条件であることに変わりない。たとえば、51人以上の規模の大きな講義は引き続き遠隔授業に。また、50人以下であっても、1学生当たり4平方㍍ほどのスペースを確保することが対面講義の条件となっている。こうなると学生たちは少人数の限られた授業しか受講できないのだ。

   学生がよく集まる図書館のカフェや生協食堂をのぞいてみた。カフェは1テーブルにつき1人掛け=写真=。食堂のテーブルは対面ではなく一方向で横のイスの間隔も一つ空けてある。普段は12人掛けのテーブルだが、3人掛けだ。にぎわいからほど遠い。営業時間も午前11時から午後1時30分で、金曜と土日・祝日は休業だ。

   大変なのは学生たちである。オンライン授業の場合、動画を視聴するネット環境を整えなければならない。さらに、レジュメなどの講義資料はデータなので、自分でプリントしなければならない。自宅にプリンターがあればよいが、多くの学生はデータをUSBに落として、コンビニでプリントを行っている。

   学生たちで深刻なのはアルバイトの収入が減ったことだろう。物販や飲食の店舗でアルバイトで生活費を得ていた学生の4割が「バイト収入ゼロ」(学内学生アンケート)だったと答えている。大学では、経済的に困窮している学生の生活支援のため、クラウドファンディングを活用した寄付の募集を始めている。

⇒22日(月)午前・金沢の天気    くもり

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★コロナ禍 輸入サーモン論争

2020年06月21日 | ⇒ニュース走査

   新型コロナウイルスの猛威が治まらない。アメリカのジョンズ・ホプキンス大学のコロナ・ダッシュボード(一覧表)をチェックすると、感染者は876万人、死者は46万人を超えている。そんな中で、奇妙な論争が中国発で起きている。

   北京でクラスターが発生し、その感染源となったは市内最大の市場「新発地」の生鮮市場で取り扱われた輸入サーモンではないかと疑われ、販売業者が使用していたマナ板からウイルスが検出された。中国疾病対策センターの疫学責任者が、ウイルスは冷凍された食品の表面で最長3ヵ月生存することが可能だと述べたことから、中国のスーパーマーケットの食品棚からサーモンは消え、食材宅配でも提供が中止になった。中国の輸入サーモンの消費は年間7億㌦で、不買運動で打撃を被るのはデンマークやノルウェー、そしてオーストラリアといった輸出国だ(6月17日付・ブルーグバーグWeb版日本語から引用)。

   これに対し、ノルウェーが反発。ノルウェーの海洋研究所の感染症専門家は「感染はサーモンからではなく、製品または人々が使用する道具の汚染からではないかと考える」と述べ、一方で魚によるウイルス感染拡大の可能性については研究が進んでいないことを認めている(17日付・AFP通信Web版日本語) 。

   この北京の「市場クラスター」について、ある意味で不自然さを感じるのがWHOだ。同公式ホ-ムページの6月13日付で「A cluster of COVID-19 in Beijing, People’s Republic of China」と題したニュースリリースを掲載している=写真=。6月13日、WHOの中国事務所が北京のクラスターについて中国の国家衛生委員会などと中国側の予備調査について話し合ったことを述べている。

  The first identified case had symptom onset on 9 June, and was confirmed on 11 June.  Several of the initial cases were identified through six fever clinics in Beijing.  Preliminary investigations revealed that some of the initial symptomatic cases had a link to the Xinfadi Market in Beijing.  (最初に確認された症例は6月9日に発症し11日に確認された。最初の症例のいくつかは、北京の6つの発熱クリニックを通して同定された。予備調査では、初期症状のある症例の一部が北京の新発地市場と関連があることが明らかになった)

   リリース文では新発地市場との関連の可能性について記しているが、輸入サーモンについては一切触れてはいない。確かにWHO側の論調はあくまでも報告を受けたとの書き方だ。しかし、WHOが中国側の予備調査の報告をわざわざ公式ホームページに掲載するものだろうか。この事実を持って、中国側はサーモン発生源のデータを逐一WHOに示していると主張するだろう。あえてわざわざリリースしたことでWHOはさらなる不審を招くのではないだろうか。

⇒21日(日)午前・金沢の天気   はれ

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