自在コラム

⇒ 日常で観察したことや環境問題、金沢大学での見聞、マスメディアとインターネットについての考察を紹介する宇野文夫のコラム

☆秋の夜長、祭りに浸る

2017年09月30日 | ⇒ドキュメント回廊
   日本列島を過疎化という現象が覆っている。地方の「シャッター通り」や限界集落は珍しくないが、都会であってもシャッター通りはあちらこちらにあり、古びたマンションなどは窓ガラスなどが割れてまさに、崩れかけた空き家が点在する限界集落の様相だ。能登半島は過疎化の先進地域だが、祭りの日だけは賑わいが戻る。

    「盆や正月に帰らんでいい、祭りの日には帰って来いよ」。能登の集落を回っていてよく聞く言葉だ。能登の祭りは集落や、町内会での単位が多い。それだけ祭りに関わる密度が濃い。子どもたちが太鼓をたたき、鉦(かね)を鳴らす。大人やお年寄りが神輿やキリコ=写真=と呼ばれる大きな奉灯を担ぐ。まさに集落挙げて、町内会を挙げての祭りだ。

   2011年8月、輪島市のある集落から、金沢大学地域連携推進センターに所属する私にSOSが入った。「このままだと祭りの存続が危うくなる。学生さんたちのチカラを貸してほしい」と。当時地域連携コ-ディネーターをしていた私は事情を聴きに現地に足を運んだ。黒島地区という集落。ここで営まれる天領祭は江戸時代からの歴史がある。かつて、北前船で栄えた町で、幕府の天領地でもあったことから曳山は輪島塗に金箔銀箔を貼りつけた豪華さ、奴振り道中など、他の能登の祭りとは異なる都(みやこ)風な趣の祭りだ。

   SOSの電話をいただいた祭礼実行委員会の方と会って、話を聞くと行列の先導の旗を持つ「旗持ち」に女子学生10人、曳山の運行で方向転換など担う「舵棒取り」に男子学生10人のサポートが欲しいとの要望だった。他の大学の学生も含め20人余りが、8月17、18日の両日に営まれた天領祭に参加した。今年は40人余りの学生を連れて参加した。もともと、地元の高校生や帰省した若者らがその役回りを担っていたが、少子高齢化で担う人数そのものが減少しているのだ。

   ほぼ毎年参加しているが、頼まれ仕方なくではなく、学生たちには地域の伝統文化を実際に体験する、フィールドの学びとして貴重な教育プログラムにもなっている。こうした地域の祭り体験ができるプログラムは日本人学生だけではなく、海外からの留学生にとっても貴重な「日本体験」になっている。今年の天領祭で、インドネシアから修士課程で来ている女性は、見事な太鼓のバチさばきで地元のベテランから一目置かれる存在になった。

   能登だけではなく、多くの過疎地で祭礼の人手不足現象が起きていることは想像に難くない。それは危機的だ。一方で祭りが大好きな都会人や、日本で文化体験をしたいインバウンドは大勢いるはずだ。人手不足の祭礼と、参加したい人たちとのマッティングをどうビジネス化していくか、まさに課題解決型のビジネスだ。

   そうそう、私は能登半島の先端・珠洲市の方から、「ことしもお願いします」と依頼され学生たち6人を連れて、10月13日にキリコ祭りに行く。秋の夜長、どっぷりと祭りに浸る。

⇒30日(土)夜・金沢の天気    はれ
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★衆院解散、アナログな一日

2017年09月28日 | ⇒トピック往来
    きょう正午、テレビ中継を視聴していて、臨時国会の冒頭で解散が行われ、バンザイの声が上がった。こんな古典的なアナログなことをいつまでやっているのかと一瞬思い、笑ってしまった。「よしっ、次も当選を目指すぞ」と心意気なのだろうが、それだったら、拍手の一本締めでよいのではないか。    

    午後2時すぎ、金沢大学で担当している共通教育科目「マスメディアと現代を読み解く」を履修した学生たちに次のようなメールを出した。「きょう臨時国会で冒頭解散があり、10月22日の衆院選挙が決まりました。メディア(新聞・テレビ)は選挙情勢や候補者の当落など分析に動いています。ここでお誘いですが、22日の投票が終わり次第、開票作業が始まります。この開票作業を双眼鏡でウオッチして当落を見極める「開披台(かいひだい)調査」というメディア独自の調査手法があります。メディアと連携して開披台調査を実施します。学生30人を募集します。この調査に参加するとメディアの選挙報道の在り様を学ぶことができます。交通費・手当も出ます。10月12日に説明会を開催しますので、参加希望の学生は集まってください。講義を履修していない学生の参加も可能です。」

   この開披台調査は双眼鏡で開票作業員の手元をみて、実際にどの候補に票が入っているのかを読んでそれをメディアの選挙本部に電話で知らせる。30人15組で多様な角度からウオッチするので候補者の得票比率を確かめるには精度は高い。とてもアナログな手法なのだが、確かな読みができる。もちろん、開披台調査は新聞社やテレビ局が各自治体の選挙管理委員会に事前に届けて行う合法的な調査である。

    午後3時ごろ、金沢大学創立五十周年記念館「角間の里」で、「石川県のクマ事情とネバダ州のクマ対策」と題した講演があり聴きに行った。すると、集まった社会人メンバーの中に、民進党の支持を公言してきたA氏の姿があった。挨拶すると、A氏は「民主党時代から支持してきたが、今回の希望の党への合流はさっぱり理由がわからん。地元の支持者も気落ちが混乱してる」と嘆いた。

    地元の民進党石川県連は1区(金沢)、2区(加賀)、3区(能登)にそれぞれ元職や新人を立てる予定だった。急きょ3氏は希望の党へ公認申請することになった。10日に公示され選挙戦が始まるが、3氏は希望の党から出馬する理由を支持者に説明することから始めなければならないだろう。中には、安全保障関連法の白紙撤回を主張してきた立候補予定者もいる。希望の党への公認申請を望んでも、小池党首からポリシィが違うと排除される可能性もある。選挙に当選するためならば、政権交代のためならば主義主張を曲げてもよいのか、すっきり割り切れないアナログな心の葛藤が渦巻く様子が見て取れる。

⇒28日(木)夜・金沢の天気     くもり   

  
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☆総理会見を勘ぐる

2017年09月25日 | ⇒メディア時評
  25日の日経平均は北朝鮮情勢の悪化と読まれ、きょう続落した。一方で石川県白山市に本社がある石川製作所は2895円ときょうも最高値を更新した。どこまで続くのか。同社は機雷など生産する、いわゆる防衛関連株である。今後経済制裁の圧力がさらに高まった場合、北朝鮮の海上封鎖へと展開する違いない。そのとき、機雷の需要が出てくる、と投資家は読んでいるのかもしれない。

    25日午後6時からの安倍総理の記者会見をNHK総合でライブで視聴した。質問時間を入れて40分だった。この記者会見で、安倍総理は今月28日召集の臨時国会の冒頭で解散する方針を固め、その解散の理由を事前表明し国民に理解を求めた。衆院解散ならば10月10日に公示、同22日に投開票となる。

  会見では解散理由のキーワードがいくつかあった。核実験やICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射を繰り返す北朝鮮と、少子高齢化への対応を挙げて「国難突破解散」と銘打った。「生産性革命、人づくり革命はアベノミクス最大の勝負」「選挙はまさに民主主義における最大の論戦の場。総選挙は、私自身の信任も含めて与党の議員全ての信を問う」「より多くの人たちが才能を生かせる社会にしなければ少子高齢化社会を乗り切っていくことができない」

  気になるシーンがあった。イギリスのフィナンシャルタイムズ東京支社の記者の質問に対する安倍総理の返答だ。記者「先週、トランプ大統領が北朝鮮のリーダーをロケットマンと呼び、アメリカは北朝鮮を完全に破壊するしか選択はないかもしれないと述べた。このコメントは日本をより安全にするのか。それとも日本人の安全性は低くなるのか」と。総理は「トランプ大統領の個々の発言についてのコメントは控えたいと思いますが、日本は全ての選択肢がテーブルの上にあるとの米国の立場を一貫して支持しています」と述べ、「ロケットマン」発言についての言及はあえて避けたのだ。

  国連でのトランプ大統領の「ロケットマン」発言に北朝鮮は「ロケットがアメリカ本土に到達することを不可避にした」と猛烈に反発した。記者はこの日本の安全保障に関わる重大発言について、総理の所感を質したのだ。ところが、総理は「トランプ大統領の個々の発言」とあえて質問の意味を遠ざけた。これは一体どういうことなのか。しかも、伏し目がちに逃げるようなそぶりだった。ここから勘ぐりが始まる。なぜあえてトランプ発言に言及しなかったのか、と。

  総理は先月29、30日、そして国連で今月21日にトランプ大統領と会談している。1ヵ月で3回も、である。単に圧力をかけましょうではなく、相当話し込んだ内容ではなかったか。つまり密約である。以下勘ぐりである。総理と大統領の間でアメリカによる北への斬首作戦について日程調整が進められた。総理は作戦実行前に政権基盤を固めておきたいと総選挙の腹を固めた。作戦実行後では極東アジアが大混乱に陥る、難民や武装難民、局地戦など、そんなときに日本で総選挙など難しいだろう。総理が何度も繰り返した「国難」とは斬首作戦実行後のこの大混乱のことだ。

  そう考えると、総理が腹をくくった理由がなんとなく理解できる。フィナンシャルタイムズ記者の質問にあえて言及しなくても、作戦のスケジュールはもう決まっている。余計なことを言及する必要はない、との総理のスタンスか。と、勘ぐった。(写真は総理官邸ホームページより)

⇒25日(月)夜・金沢の天気      はれ
  
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★自然は「きびしい」

2017年09月19日 | ⇒トレンド探査
    北朝鮮は15日朝、平壌近郊から弾道ミサイルを発射した。北朝鮮が8月29日に発射したものと同じ中距離弾道ミサイルで、北海道上空を通る飛行コースもほぼ同じだった。16日に北海道で買い求めた新聞各紙は「渡島半島と襟裳岬の上空を通過するルートは北朝鮮の『実験街道』になっているのではないか」と今後もミサイルの通過があると危惧する記事を載せていた。

また、17日付の北海道新聞朝刊によると、北朝鮮が10月10日の朝鮮労働党創建記念日を控え、アメリカ本土も射程内とされるICBM(大陸間弾道ミサイル)を太平洋に発射する恐れがあると伝えている。これに対応して、道庁は来月10月から毎月1回、Jアラート(全国瞬時警報システム)の緊急情報を自動的に伝える手段を持つ市町村を対象に、住民への情報伝達訓練を行うことを決めたと報じている。これは防災行政無線の音声放送などが正常に作動しないケースがあったためで、定期的な訓練で、機材の不具合などを未然に防ぐ狙い。併せて、ミサイル発射を想定した住民避難訓練も実施していく。この記事を素直に読めば、地域の危機意識にリアルさを感じる。

    先のブログで述べた 定期的に噴火を繰り返す有珠山と共生する、という周辺地域の人々の価値感があれば、被災地域を超えて「大地の公園」、ジオパークという発想に立てる。ところが、ミサイル発射は人為的なリスクだ。それでも、北海道の人々は自然災害と同じように「防災」「減災」「リスクヘッジ」をひたむきに追求している。もちろん、この危機対応や被災に対する心構えといった感性は北海道の人々だけではないのは言うまでもない。

   北海道旅行の2日目(17日)午後、洞爺湖から登別にレンタカーを走らせた。日和山の噴火活動でできた爆裂火口跡。谷にはあちこちに湧出口や噴気孔があり、泡を立てて煮えたぎる湯の様子を「地獄谷」=写真=と称して観光名所としている。言い得て妙だ。観光パンフレットによると、温泉の湯量は1日1万㌧あり温泉街のホテルや旅館に給湯されている。大地の恵みだ。

   登別の温泉街を歩くと、「登別日台親善協会」の看板が目に入った。登別温泉ではインバウンド観光が盛んで、中でも台湾からの観光客が多いこともあって、2013年8月に設立された。登別の公式ホームページをのぞくと、日台親善協会は北海道では札幌、旭川、釧路など9つの協会があり、登別は10番目だそうだ。組織的なつながりだけでなく、北海道と台湾の直行便は、新千歳空港をはじめ函館、帯広、旭川、釧路などの道内の各空港で台湾とつながっている。そのため北海道を訪れる台湾人観光客は47万人(平成26年度・北海道経済局調べ)とインバウンド観光では圧倒的に多い。延べ宿泊人数だと151万人だ。地球の南と北、大地の景色も歴史も街並みも異なる「異郷の地」に台湾の人々は魅力を感じているのかもしれない。

   北海道の最終日(18日)は台風18号の直撃を受けた。朝から登別は暴風雨だった。新千歳から小松への空港便は果たして飛ぶのか。観光どころではなくなった。叩きつける雨の中、レンタカーを空港に向けて走らせた。欠航が相次ぎ空港カウンターは混乱していた。が、フライトの午後2時35分ごろには台風一過、晴れ間ものぞいて無事飛んだ。しかし、台風余波の影響かエアポケットにどんと機体が落ちる感じがして、キャッーと女性や子供たちの悲鳴が機内に響いた。自然は油断ならない、そして、きびしい。

⇒19日(火)夜・金沢の天気  くもり
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☆有珠山は「やさしい」

2017年09月17日 | ⇒トレンド探査

   今月16-18日の休日を利用して北海道の洞爺湖、登別を旅した。今回ぜひ見てみたいと思ったのは、「洞爺湖有珠山ジオパーク」だ。2009年、ユネスコ世界ジオパーク認定地として糸魚川、島原半島とともに日本で初めて登録された。ジオパークは大地の景観や奇観を単に観光として活用するというより、地域独特の地学的な変動を理解して、その大地で展開する自然のシステムや生物の営み、人々の生業(なりわい)、歴史、技術などを総合的に評価するものだ。

    初日は洞爺湖有珠山ジオパークの価値を理解するため、ロープウエイに乗って、有珠山の噴火口に行き、あるいは洞爺湖を望んだりした。理解を深めるとっかかりは意外なひと言だった。「有珠山はやさしい山です」。2日目に入った「火山科学館」で「3面マルチビジョン 有珠山」のビデオ上映があった。そのアナウンスコメントが「やさしい山」だった。有珠山は1663年の噴火以来、これまでに9度の噴火を繰り返してきた日本で最も活動的な火山の一つだ。それがなぜ「やさしい」のか。映像は2000年の噴火を中心に生々しい被害を映し出した。

    映像から有珠山の「やさしさ」の理由が解きほぐされる。2000年の噴火では、事前の予知と住民の適切な行動で、犠牲者がゼロだった。犠牲者ゼロが成し遂げられたのは、有珠山は噴火の前には必ず前兆現象を起こす。その「山の声」を聞く耳を持った住民や気象庁や大学の専門家が観測をすることで適切な行動を起こすことができたからだ。この犠牲者ゼロから「火山防災」あるいは「火山減災」という考えが地域に広まり、学校教育や社会教育を通じて共有の認識となる。さらに気象庁は火山の監視と診断(緊急火山情報、臨時火山情報、火山観測情報)の精度を高め、大学などの研究機関は予測手法の確立(マグマの生成、噴火に伴う諸現象など)をすることで「火山学」を極める。

   定期的に噴火を繰り返す有珠山と共生する、という周辺地域の人々の価値感が広がっている。この価値感では、噴火の事前現象を必ず知らせてくれる「やさしい山」なのだ。それだけではない、1910年噴火では温泉が沸きだし、カルデラ湖や火砕流台の自然景観は観光資源となり、年間301万人(平成27年度・洞爺湖町調べ)の観光客が訪れ、このうち宿泊客は64万人。観光は地域経済を支える基幹産業である。火山を恵みとしてとらえ、犠牲者を出さずに火山と共生する人々の営みがある。(※写真・上は有珠山の火口、写真・下は有珠山ロープウエイから見える洞爺湖)

⇒17日(日)夜・北海道・登別の天気    風雨

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★優しきジンベイザメ

2017年09月16日 | ⇒キャンパス見聞
   学生・留学生と巡る「能登の世界農業遺産を学ぶスタディ・ツアー」の3日目。最終日のテーマは「里海の生業と生物多様性だ。能登町のリアス式海岸、九十九(つくも)湾に日本有数のイカ釣り船団の拠点・小木漁港を訪ねた。一般社団法人・能登里海教育研究所の浦田慎研究員から、イカ釣りの生業(なりわい)について講義を聴いた。「一尾冷凍」のニーズに取り組んだ進取の気質、イカ釣りという里海資源に配慮した漁法など印象に残る内容だった。この後、サプライズがあった。浦田研究員から「それではイカの冷凍庫がどのようものか見学しましょう」と提案があった。小木漁協の好意で冷凍庫を開けてくれるというのだ。「どうぞ」を漁協の職員が入るように促してくれたマイナス28度の空間、半袖で入ったせいか数秒で身震いが始まり、外に出た。するとメガネがいきなり真っ白になった。ハンカチで拭いても、また真っ白に。こればかりは数字では理解できない、体験して初めての実感だった。

    学生からさっそくこんな質問が飛んだ。「冷凍庫に冷凍イカを出し入れする際にどのような服装で入るのですか」と。すると漁協職員は「普段着ですよ」と。冷凍イカは箱詰めされていて、フォークリフトで出し入れする。そのフォークリフトの運転席は個室タイプになっていてドアを閉めて暖房を入れることができる。すると普段着でもマイナス28度の冷凍庫に入ることができる、というわけ。ニーズに応じたフォークリフトがあるのだ。

    この後、さらにイカの加工工場へ。魚醤の生産工場だ。イカの内臓やイワシを発酵させたもの。能登では伝統的に「いしる」と呼ばれる。ヤマサ商事の山崎晃一氏の案内で貯蔵庫を見学させてもらった。貯蔵庫入口のドアを開けたとたんに発酵のにおいに包まれた。発酵のにおいは不思議だ。「ヤバイ」と言いながら鼻をふさぐ者もいれば、「どこか懐かしいにおいですね」と平気で入る学生もいる。フランス人の女子留学生は逃げるようにして遠ざかった。発酵食の原点でもある魚醤のタンクがずらりと並ぶ。日本料理やイタリア料理の隠し味としてニーズがあるようだ。「イタリアから問い合わせもあります」と山崎氏。「能登のいしるがヨーロッパ進出」というニュースを期待したい。

    七尾市能登島の「のとじま水族館」を見学した。池口新一郎副館長の解説を聴く。近海の魚介類を中心に500種4万点を展示。水族館のスターは地元の定置網で捕獲されるジンベイザメだ。体の大きさの割には威圧感がない。ジンベエザメは和名だが、模様が着物の甚兵衛に似ているからとの説も。小魚やプランクトンがエサで動きがゆったりしているので、人気があるのだろう。体長が6㍍になると、GPS発信機をつけて、再び海に放される。ジンベイザメの回遊経路などがこれによって調査される。

    ツアーの最後は能登半島で一番高い山、宝達山(637㍍)に登った。「旅するチョウ」と言われるアサギマダラが宝達山の山頂をめざして飛来しているからだ。このチョウは春は日本列島の北の方へ、秋には南の方へ。その距離は2000㌔にも及ぶと言われる。宝達志水町職員でもある田上諭史氏たちはアサギマダラを捕獲、マーキングして放す。また、蜜がエサになるホッコクアザミを伐採しないなど保護運動につとめている。田上氏は白いタオルを回転させて、アサギマダラをおびき寄せようとしたが、風が吹いていたせいか、残念ながら捕獲はできなかった。

それにしてもイカ、ジンベエザメ、そしてアサギマダラと、いろいろな人々が関わり合って、生業としたり、展示をしたり、保護活動をしたりと実に多彩だ。能登の生物多様性と人々の営みを理解する一助となった。宝達山頂から日本海の風景を堪能してツアーを締めくくった。

⇒16日(土)夜・金沢の天気   はれ


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☆NOTOのアート

2017年09月15日 | ⇒キャンパス見聞
   学生・留学生と巡る「能登の世界農業遺産を学ぶスタディ・ツアー」の2日目。テーマは「里山の生業と祭り文化」。午前中、輪島市三井町に移住したデザイナーの萩野由紀さんが主宰し、金沢大学の生物学者の伊藤浩二氏らが加わる調査グループ「まるやま組」が取り組む、農業と生物多様性について学んだ。講義で、これまで地域の300種の植物と123種の生物のデータベースを有する。そうした学びの中から、当地の農耕儀礼「あえのこと」(ユネスコ無形文化遺産)を自然の恵みへの感謝、「田の神さま」を生物多様性と解釈している、と。自然と農業の共生という意味を生物多様性という視点でとらえた新しい可能性だ。

    講義の後、稲刈りが終わって、はざ干しされた田んぼに出かけた。稲の言い匂いが漂ってきた。学生や留学生は始めてという。ただ一人、ベトナムからの女子留学生は「私も好きです。農村の匂いです」と。

   穴水町の「能登ワイン」を訪問した。収穫前のブドウ畑が広がっている。ワイナリーの見学の後、テイスティングを。すると、スペイン人の国連大学研究員は「私の田舎とよく似た風景ですね。おじいさんがブドウ畑を経営していました。3歳のころから赤ワインを飲んでいました。ワインと卵の黄身を混ぜて飲むと、とても栄養があっていいんです」と。本来、赤土(酸性土壌)はブドウ畑に適さないと言われてきたが、能登ワインでは畑に穴水湾で養殖されるカキの殻を天日干しにしてブドウ畑に入れることで土壌が中和され、ミネラルが豊富な畑となり、良質なブドウの栽培に成功している。白ワイン(シャルドネ)、赤ワイン(ヤマソービニオン)は国内のワインコンクールで何度も受賞している。個人的な感想で、「穴水湾の焼きカキは能登ワインのシャルドネにとても合う。気に入っている」と学生たちに話すと、フランス人の留学生は「それをマリアージュといいます。ワインに合う料理のことです」と、さらに、日本の女子学生は「海は畑の恋人ですね」と想像を膨らませた。そんな話をしながらテイスティングが盛り上がった。

    午後、珠洲市で開催されている「奥能登国際芸術祭」の会場を巡った。印象深い作品を2つ。塩田千春:作品「時を運ぶ船」(旧・清水保育所)=写真・上=。珠洲市の塩田村の近くに、塩田氏が奇縁を感じて作品に取り組んだと地元のガイドが説明してくれた。赤い毛糸を部屋の全方位に巡らし、下に佇む、ひなびた舟。この赤い空間と舟は、人々の血のにじむ屈折と労働、そして地域の歴史を支えてきた子どもたちを育んだ胎内を表現しているのだろうか。直接話が聞きたくて「作者の塩田さんはここにおられますか」とガイド氏に尋ねると、「体調を壊されましてドイツに戻っておられます」と。作品づくりについて直接話を聞いてみたい一人だ。

    能登半島は地理的にロシアや韓国、中国と近い。そして、日本海に突き出た半島の先端には隣国から大量のゴミが海流に乗って流れ着く。かつて海の彼方から漂着するものを神様や不思議な力をもつものとして信仰の対象にもなり、それが「寄(よ)り神の信仰」とも呼ばれた。現代の寄り神はゴミの漂着物だ。そのゴミを白くペイントして造ったオブジェが鳥居だ。深澤孝史:「神話の続き」(笹波海岸)=写真・下=はパロディーだ。最初は笑い、後に考え込んでしまう。

    能登の生業(なりわい)や地理的な条件、そして現代をモチーフにしたNOTOのアート。夜は珠洲市正院の秋祭りを見学。キリコの太鼓をたたく地域の人たちの豊かな表情に圧倒された、学生は「祭りそのものが最大のアートですね」と。

⇒15日(金)夜・金沢の天気    はれ
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★自然の演出、窓岩の夕日

2017年09月13日 | ⇒キャンパス見聞
    今月13-15日の2泊3日で学生や留学生を27人を引率して、「能登の世界農業遺産を学ぶスタディ・ツアー」を実施した。「ツアー」と称しているが、金沢大学の集中講義で単位科目(1単位)でもある。初日のテーマは「ランドスケープと特色ある歴史」。午前中は「雨の宮古墳群」(中能登町)を訪れた。

    国指定史跡である雨の宮古墳群は、眉丈山(びじょうざん)の尾根筋につくられた古墳群で北陸最大級。地元では古くから「雨乞いの聖地」として知られた。尾根を切り開いて造られた古墳は前方後方墳(1号墳)と前方後円墳(2号墳)を中心に全部で36基が点在している。全長64㍍の1号墳は、4世紀から5世紀の築造とされ、古墳を覆う葺石(ふきいし)も当時ままの姿。早稲田大学から参加したイギリス人の女子留学生は「まるでエジプトのピラミッドのよう。この地域の富と人々の知恵がなければ造れないですね」と考察した。山頂にあるこの古墳からは周囲の田んぼが見渡すことができる。この地域はコメの産地であり、海上交通・輸送の一大ルートだった。粘土で被われた石棺から、全国でも珍しい四角い鉄板で綴った短い甲、鉄剣、神獣鏡、腕飾形碧玉など多数出土している。古墳時代の能登がこの地でイメージできる。

    あの『東海道五十三次』で知られる歌川広重(1797-1858)は能登も描いている。晩年の作といわれる『六十余州名所図会』の一つ「能登 瀧之浦」。志賀町のリアス式海岸にある巌門(がんもん)と称される天然の洞門を見学した。幅6㍍、高さ15㍍、奥行き60㍍にも及ぶ。長年の波食によって描かれた自然の芸術でもある。江戸時代の当時からも観光スポットだったのだろう。広重は断崖絶壁の巌門をまるでいまでも襲いかかる、大きな口を開けた海獣のように描いているから面白い。

    曹洞宗の「修行本山」でもある総持寺祖院を訪ねた。総持寺は1321年に創建され、1898年の明治の大火で本山は横浜市鶴見に移された。その後祖院として残るが、2007年3月に能登半島地震があり、まだ復旧中だ。ドイツ人僧侶、ゲッペルト・昭元氏から話を聞いた。ドイツのライプツィヒ大で日本語を学んでいて禅宗に興味を持ち、2011年に修行に入った。「信仰ではない無我の境地、好き嫌いは言わない、与えられたものを素直にいただく、能登での人生の学びも7年になります」と。曹洞宗のきびしい修行を耐え抜いた言葉が重く、そして心に透き通る。開山大師の命日に当たる御征忌大法要の読経が境内に響き渡っていた。

    この日の締めくくりは輪島市曽々木海岸の窓岩の夕日だった。この時期、太陽は西に沈み、曽々木海岸の窓岩から夕陽が差し込む様はまさにパワースポット。学生たちとぜひ見てみたと思い、地元の作家・藤平朝雄氏に案内をお願いした。「昨日(12日)は見事に見ることができましたよ。時間は午後5時47分でした」と時間を予め聴いていたので、輪島市内を午後4時40分ごろ、バスを曽々木海岸に向かってもらった。ところが、午後5時過ぎごろ水平線に雲がかかり、5時20分ごろには雨も降ってきた。30分ごろから曽々木海岸で藤平氏の講義「能登の旅情と文学」を受けていた。雨は止んだが、水平線の雲は晴れない。45分ごろ、藤平氏が「おや、雲が晴れてきましたね」と。確かにそれまで覆っていた雲が随分と薄くなってきた。そして48分、なんと夕日が窓岩のバックを照らし出し、49分には窓岩に差し込んできたのだ。学生や留学生が「ミラクル、ミラクル」「オーマイ・ガッド」「奇跡よ、奇跡の夕日よ」と叫び始めた。

     50分になると夕日が強烈に差し込んで来た。学生たちは窓岩を背景に自撮りを始めている。先ほどまで雨が降っていたのに急変して、5分間の夕日と奇岩のスペクタルショーを楽しませてもらった。「私が今回のスタディ・ツアーで一番感動したは窓岩です。空が丁度晴れ上がり、窓岩に夕日がすっぽり収まったときは思わずため息が漏れるほど美しかったです」(学生)。何とも心憎い自然の演出、目に焼き付くダイナミックな能登のランドスケープだった。(※写真は輪島市曽々木海岸の窓岩で。2017年9月13日午後5時51分)

⇒13日(水)夜・能登町の天気    くもり
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☆電磁パルス、新たな脅威

2017年09月07日 | ⇒ニュース走査
  「核実験」、「水爆実験」、そしてついに「電磁パルス」が北朝鮮から出てきた。3日付の北朝鮮の朝鮮中央通信WEB版は、ICBM(大陸間弾道ミサイル)に搭載する水素爆弾を金正恩朝鮮労働党委員長が兵器研究所を訪れ、視察したと伝えている=写真=。その中で、
「우리의 수소탄은 거대한 살상파괴력을 발휘할뿐아니라 전략적목적에 따라 고공에서 폭발시켜 광대한 지역에 대한 초강력EMP공격까지 가할수 있는 다기능화된 열핵전투부이다.」(我々の水素爆弾は巨大な殺傷破壊力を発揮するだけではなく戦略的目的によって高空で爆発させて広大な地域に対する超強力EMP攻撃まで加えることができる多機能化された熱核戦闘部だ.)と戦闘能力を誇っている。ここに出てくる「EMP」、これが電磁パルス(electromagnetic pulse)のことだ。北朝鮮は初めて公式にEMP開発の事実を明らかにした。

   その記事を掲載した同日に「水爆実験に完全成功」と伝えた。北朝鮮はここに来て2つの攻撃兵器を開発したことになる。水爆と電磁パルスだ。電磁パルスは高高度で核爆発させることで生じる電磁波のパルス(衝撃)で、地上にある電子回路を瞬時に発火させたり、広いエリアの電気設備や電子装置を延焼させることができる兵器だ。核爆発で電気系統をことごとく破壊する最悪の兵器とも言われる。

   大規模な停電が長期間続けばその被害は計り知れない。韓国の中央日報は5日付の記事で、北朝鮮がEMP攻撃に関心を持つのには理由について、北朝鮮がICBMを開発する場合、最大の難題は大気圏再進入の技術だが、EMPの場合は高度20㌔以上高いところで爆発することで十分な効果を出すことができるからだと解説している。アメリカでたとえれば、高度400㌔上空での核爆弾を爆発させることでアメリカ全域にEMPによる破壊効果を及ぼす。電気がなければアメリカが築きあげてきた現代文明がまさに破壊される。

   これに対し、日本政府の対応は防衛省がEMP攻撃の研究費を計上している段階。また、経産省が発電所の防護策を、国交省は交通機関などの防護策をこれから検討する段階という。各省庁が縦割りで対策を講じるレベルの話ではないだろう。北の脅威は迫っている。


⇒7日(木)夜・金沢の天気   くもり

   

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★核実験めぐる情報戦、そしてスルメイカ

2017年09月03日 | ⇒ニュース走査
  きょうお昼過ぎの朝鮮半島での揺れをめぐって、すさまじい情報戦争が始まっている。北朝鮮の朝鮮中央通信WEB版では速報が流れている(3日午後4時10分現在)=写真=。「조선민주주의인민공화국 핵무기연구소 성명--대륙간탄도로케트장착용 수소탄시험에서 완전성공」(朝鮮民主主義人民共和国の核兵器研究所声明 - 大陸間弾道ロケット搭載用スソタン試験で完全に成功)。スソタンは朝鮮語で「水素爆弾」のこと。

  さらに混乱するのは、「敬愛する最高指導者、金正恩同志が核兵器兵器化事業を指導した」と写真つきで核兵器について述べているが、核実験を行ったとは述べていない。

  一方、総理官邸のホームページでは、午後0時55分の「お知らせ」をホームページにアップしている、「北朝鮮付近を震源とする地震波の観測について」 1.平成29年9月3日12時31分頃(日本時間)、気象庁が、北朝鮮付近を震源とする地震波を観測しました。気象庁によれば、この地震は、自然地震ではない可能性があります。 a.発生時刻 平成29年9月3日 12時29分57秒 b.地震の震源、規模 北緯:41.3度 東経:129.1度 深さ:0km 規模 マグニチュード6.1 (参考)平成28年9月9日地下核実験時の地震 北緯:41.3度 東経 129.2度 深さ:0km 規模 マグニチュード5.3  2.政府としては、過去の事例も踏まえれば、北朝鮮による核実験の可能性もあるので、関係省庁幹部を官邸に緊急参集させるとともに、北朝鮮情勢に関する官邸対策室において、引き続き、情報の収集・分析を行っているところです。長々と引用したが、要点は核実験だというのだ。

   午後1時51分の「総理指示」で核実験と断定して、以下指示している。1.北朝鮮の今後の動向等に関し、情報収集・分析の徹底を期すこと 2.核実験に伴う放射性物質の影響を把握するため、関係各国と連携しモニタリング態勢を強化すること

   さらに午後2時45分の「総理声明」では踏み込んで、「今回の北朝鮮による核実験の実施は、関連する国連安保理決議の重ねての明白な違反であり、核兵器不拡散条約(NPT)を中心とする国際的な軍縮・不拡散体制に対する重大な挑戦である。また、日朝平壌宣言や六者会合共同声明にも違反するものである。我が国は、北朝鮮に対して厳重に抗議し、最も強い言葉で断固として非難する」と。

   水素爆弾だと主張する北朝鮮、核実験だと断定する日本、韓国。日本政府は放射性物質のモニタリングを実施することで核実験の裏付けを急ぐ。モニタリングは日本海上空の大気中のちりを収集することになるだろう。モニタリングで核実験だったと立証できたとしよう。すると今が盛りの日本海のスルメイカ漁、価格に影響が出てくるのではないか。そんなことも考えてしまう。

⇒3日(日)午後・金沢の天気   くもり
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