自在コラム

⇒ 日常で観察したことや環境問題、金沢大学での見聞、マスメディアとインターネットについての考察を紹介する宇野文夫のコラム

☆台風19号と災害報道の持続可能性

2019年10月28日 | ⇒メディア時評

   数ある自然災害でも今年は「台風の年」として記録されるだろう。関東に上陸した観測史上最強クラスの勢力とされた15号を始め、19号、そして21号で風害と水害が連続した。中でも、19号は死亡88人、行方不明7人と甚大な被害をもたらした。

   きょうニュースで、政府は非常災害対策本部の会議を開き、19号による災害を激甚災害とともに大規模災害復興法の非常災害に指定することをあす(29日)閣議で決定し、国が被災自治体に代わって道路などの復旧工事を進めていく方針だと報じている(NHKニュース)。大規模災害復興法は東日本大震災の後、2013年に施行された法律で、非常災害への指定は震度7度だった熊本地震(2016)に次いで2例目となる。

   19号はTVメディアに「視聴率の記録」もつくった。NHKは12日午前9時台から特番態勢だった。19号が静岡・伊豆半島に上陸したのは午後7時ごろ。19号の最新情報を伝えたNHK「ニュース645」(午後6時45分-同7時00分)の視聴率が38.3%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)を記録した。ビデオリサーチ社が公表している「週間高世帯視聴率」(関東地方)によると、10月7日から10月13日の週の報道部門ランキングで、「ニュース645」を筆頭にベスト10がすべて12日のNHK台風関連番組だったという、前代未聞の記録を打ち立てた。ちなみにこの週の最高視聴率は翌日、13日の日本テレビ「ラグビーW杯・日本vsスコットランド戦」(午後7時30分-同9時54分)の39.2%だった。                     

   では、関東直撃の19号を民放はどう報じたのか。TBSは午後3時から報道特番を始め同6時50分まで、4時間近く台風関連のニュースを報じ、同10時からの「新・情報7daysニュースキャスター」でも台風情報を詳しく伝えていた。日テレは午後5時からの「news every」で台風関連ニュースを報じ、その後のアニメや「天才!志村どうぶつ園」を休止し、午後8時まで3時間枠を台風関連に充てた。テレ朝もアニメなどを休止して夕方1時間30分、さらに午後9時の「とんねるずのスポーツ王は俺だ!!」の放送日を変更し、合計4時間を台風関連番組としていた。これらの台風関連番組をリモコンでザッピングしながら視聴をしていたが、情報の量と速さ、ネットワークといった点では、頑丈な報道体制を有するNHKが存在感を発揮していた。民放には正直、心もとなさを感じた。

   自然災害は19号に象徴される台風と豪雨・洪水だけではない。豪雪、干ばつ、地震、津波、火山噴火、土石流・地滑りなど、日本の災害は多様だ。狂暴化し、広域化する自然災害に民放の報道体制は耐えうるのだろうか。災害報道の持続可能性を民放は検証してはどうだろうか。
(※写真は、台風19号による千曲川の決壊で北陸新幹線120両が水に浸かった様子を伝える新聞各紙)

⇒28日(月)午後・金沢の天気   はれ

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★井伊直弼の「一期一会」

2019年10月27日 | ⇒トピック往来

   日本史の教科書で江戸幕府が揺らぐきっかけとなった事件として紹介されているのが「桜田門外の変」(1860)だ。幕府の大老、井伊直弼(いい・なおすけ)が水戸や薩摩の脱藩浪士の襲撃に遭い、暗殺された。その背景として、アメリカ総領事ハリスとの間で日米修好通商条約を勅許を得ずに調印、これに反発した尊王攘夷派の公卿や大名らを弾圧する安政の大獄を断行したことが反感を買ったとされる。強権ぶりが際立つ井伊直弼だが、一方で茶人という素顔もある。今月25日から彦根城博物館(滋賀県彦根市)でテ-マ展『井伊家の茶の湯』が開催されると知ってさっそく赴いた。

   現代でもよく使う「一期一会(いちごいちえ)」という言葉を最初に世に広めたのは井伊直弼だ。茶道では、一生に一度の出会いであると心得て、亭主(ホスト)と客(ゲスト)が互いに誠意を尽くすという意味で使われる。直弼は自らの茶の湯の集大成として記した著書『茶道一会集』の冒頭の3行目で「一期一会」を記している。「そもそも茶湯の交会(こうかい)は一期一会といひて、たとへば幾度おなじ主客交会をするとも、今日の会にふたたびかへらざる事を思へば、実に我、一世一度の会(え)なり。」。現代語で言えば、これからも何度でも会うことはあるだろうが、もしかしたら二度とは会えないかもしれないという覚悟で人には接しなさい、と。

   驚くのは、 茶道好きが高じて、武家茶道の石州流の中に一派を確立するまでになっていた。先の『茶道一会集』には心得、そして炭点前を解説した『炭の書』では炭の種類や組み方などが図と文章で記され、墨書に朱書を加えて分かりやすく解説している。つまり、弟子たちに丁寧な解説本を作成しているのだ。これだけではない。自作で楽焼の蓋置(ふたおき)をつくっている。カニやサザエなどモチーフに実に楽しそうに焼き物に取り組んだ様子がうかがえる=写真=。これを見ただけで、直弼の人柄が浮かんでくる。

   一期一会は刹那主義ではない。人との出会いを人生の好機として喜ぼうという前向きな精神性でもある。幕府の大老となって、鎖国か開国で国論が二分する中、直弼は幕府主導による開国こそが日本に好機をもたらすと前向きに考えたのだろう。アメリカと日本の国家間の一期一会であると信じ、日米修好通商条約(1858)にこぎつけたのではないか。享年46歳。

   会場には、直弼ゆかりのものだけでなく、井伊家伝来の徳川家康から拝領したと伝わる「大名物 宮王肩衝茶入」や、フィリピンのルソン島でつくられたと考えられる「呂宋壺(るそんつぼ)」など名品30点が展示されている。

⇒27日(日)夜・金沢の天気    くもり

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☆新幹線戻る、その心理効果

2019年10月26日 | ⇒ニュース走査

   水に浸かった北陸新幹線のあのショッキングな画像から13日ぶりに安堵を得た気がした。台風19号の影響で長野市内を流れる千曲川の堤防が決壊し、新幹線車両センターが浸水し、電気設備の修繕や復旧のため、長野‐上越妙高間で運転を見合わせていた。それがきのう25日の始発から金沢ー東京間の全線で運転を再開した。首都圏との大動脈がつながるだけで、安心感が漂うので不思議なものだ。

   地元紙をチェックすると、「金沢駅 かがやき戻る」(北國新聞25日付夕刊)、「安堵 北陸新幹線13日ぶり全通」(北陸中日新聞26日付朝刊)などと各紙一面トップで伝えている=写真=。記事も面白い。同日午前8時45分に東京駅始発「かがやき501号」が金沢駅に到着すると、石川県内の温泉どころである和倉、山代、片山津、山中、湯涌の温泉旅館の女将らが法被姿で、改札をくぐってきた利用者に「いらっしゃいませ」と声をかけていたと報じている。行楽シーズンの真っ盛りでの新幹線の不通は、宿泊キャンセルなどで相当に痛みがあったことは想像に難くない。全線再開でひと安心だろう。

   しかし、客足はすぐ戻るだろうか。台風21号の影響で、千葉県など関東では記録的な大雨になり、河川の氾濫や土砂崩れによる家屋の倒壊など死者も出ている。新幹線が再開したからといって、関東からの観光客が果たして戻るだろうか。心理的に微妙なところだ。

   とは言え、街ににぎわいが戻ってほしいのは金沢に住む一人として正直な気持ちだ。きょうは、一足早いハローウイーンの行列が金沢駅から武蔵や香林坊までの目抜き通りを練り歩いた。大人もこどもも思い思いの仮装をして楽しそうに歩いていた。あす27日は「金沢マラソン2019」が開催され、国内外のランナー1万3000人が中心街などを走る。11月になれば兼六園では雪吊りが始まる。冬へと季節は移ろう。

⇒26日(土)夜・金沢の天気    くもり時々あめ

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★祝意と違和感と

2019年10月23日 | ⇒ニュース走査

   191の国と国際機関から代表が参列し、天皇陛下の中心的な儀式である「即位礼正殿の儀」が滞りなく執り行われた。国民を代表して安倍総理が「寿詞(よごと)」という祝辞を読み上げた。テレビで即位礼正殿の儀を視聴したのは人生で二度目だ。今回も古式にのっとり行われ、タイムスリップした感覚で見ていた。

   正直、違和感があったのは安倍総理の「天皇陛下万歳」の三唱だった。ほかに言い方はなかったのだろうかと思った。というのも、私は小さいころ亡き父から聞いていた話は、戦時中、仏領インドシナ(ベトナム)の戦線でフランス軍と戦うとき、兵士たちは「天皇陛下万歳」と叫びながら突進していった、と。父はそれを否定的に言っていたのではなく、今思い起こせば、戦友たちは勇敢に戦ったと表現するために「天皇陛下万歳」という言葉を持ち出して話を聞かせてくれたのだと思う。

   もう少し詳細に父が話してくれたことを述べる。父が所属したのは歩兵第八十三連隊第六中隊。フランス軍との戦闘で、カンボジアとの国境の町、ロクニンに転戦。昭和20年8月15日、敗戦の報をこの地で聞くことになる。終戦処理の占領軍はイギリスが任に当たり、父の部隊はサイゴンで捕虜となる。このころから部隊を逃亡する兵士が続出。その数は600人とも言われている。多くは、ベトナムの解放をスローガンに掲げる現地のゲリラ組織に加わり、再植民地化をもくろむフランス軍との戦いに加わった。中にはベトナム独立同盟(ベトミン)の解放軍の中核として作戦を指揮する元日本兵たちもいた。父はゲリラ組織には加わらなかったが、ベトナム解放戦線に加わりその後再び捕虜となった元同僚の兵士から聞いた話として、はやりフランス軍に突進するときには「天皇陛下万歳」と声を上げていた、と。

   当時日本軍兵士は死を覚悟で敵に対峙するときに、このフレーズを使ったのだろう。戦場の叫びだ。安倍総理はこうした事実を理解しているのだろうか。私は戦争体験者である父から聴いて知っていたので違和感が残った。ご存命の元兵士の方々は今回の万歳三唱を視聴してどのような思いだっただろうか。

⇒23日(水)夜・金沢の天気     くもり

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☆衝突映像、公開のタイミング

2019年10月20日 | ⇒ニュース走査

   ビデオの3分29秒で「ガシャーン」という衝突音が響く。映像は今月7日、能登半島沖の350㌔の日本の排他的経済水域(EEZ)で、水産庁の取締船「おおくに」と北朝鮮の漁船が衝突したときの動画だ。18日夜、水産庁がホームページで公開した。

   動画(12分54秒)は「退去警告に従わないため、撮影を開始する」とコメントが入り、撮影が始まっている。漁船の船体には北朝鮮の国旗が描かれ、漁の網を引き揚げている様子が映る。違法操業と確認できたため、取締船が漁船に向けて放水を開始する。EEZから退去するよう警告アナウンスを何度も伝える。放水するため取締船が漁船に併走している。「石を投げる様子ないか」と取締船は漁船の様子を確認しながら並走を続ける。すると、漁船が左に方向を変えて急接近、漁船の左の側面が取締船の船首に衝突する「ガシャーン」という音が響く。同時に「ガイセンが本船とぶつかった」と撮影者の声が入っている。ガイセンは「該船」のこと、取り締まる対象の船のことを指す。

   ビデオでは、衝突の後、漁船が取締船を追い越すように離れていく様子が映っている。しばらくして、漁船が傾き始め沈没する。海に飛び込み脱出する乗組員の様子が生々しく映っている。取締船は救助ボートを出し、救命いかだを現場に投げて救助に当たる。ビデオの12分00秒には、別の北朝鮮の船が来て、救助された船員たちが次々と乗り移っていく様子が映っている。「救命いかだからNK公船に全員が乗り移った模様」「救命いかだからNK公船が離れていく」のコメントを最後に映像は終了する。

   北朝鮮外務省の報道官は12日の声明で、「日本側が故意に衝突した犯罪的な行為だ」と指摘、日本に対し漁船沈没の損害賠償を強く求めた。漁船が急旋回したため衝突したとの日本の主張に対して、声明では通常の航行状態だったと反論し、「日本は意図的な行為を正当化しようとしている」とも非難した。

   北朝鮮が声明を出したとき、水産庁ははやく映像を公開し事実関係を明らかにすべきではないか、何をもたもたしているのかと不信感すら抱いた。水産庁が公表した映像を見る限り、声明にある「日本側が故意に衝突した犯罪的な行為」との指摘は論外ではあることは言うまでもない。むしろ遅れたタイミングの映像公開によって、北朝鮮の声明の論拠を崩したことにもなる。仮に、この映像が先に公開されていたらどうか。それでも、声明は「映像は捏造」と主張していたかもしれない。
(※写真は、北朝鮮の漁船が水産庁の取締船に衝突する様子=水産庁ホームページの動画より)

⇒20日(日)午後・金沢の天気    はれ

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★「オープンイノベーション」って何だ

2019年10月18日 | ⇒ニュース走査

       「人生百年時代」という言葉に戸惑っている。これまでの人生観は、60歳定年で再就職し、65歳まで頑張り、後は年金をもらって泰然自若として余生を送る、だった。ところが、「人生百年時代」の言葉の裏には年金制度の下心が見えてくる。高齢者はリタイアせずそのまま働き、年金保険料や税金を納めてもらい、年金の受給開始をできるだけ待ってもらうという、時代の要請を感じる。これに背いて、時の政権を恨んで生きようとは思わない。問題は、65歳の人生観から人生百年時代へとライフスタイルを延ばすために、求められる能力・スキルをどう身につけるかである。

   キャリアの単なる延長では意味がない。有している技術やノウハウはもう時代についていけない。キャリアアップやキャリアチェンジが必要なのだ。自虐的な発想だが、65歳から身につける、能力・スキルには限界がある。せめて50歳で会社を辞しキャリアチェンジに進む、あるいは会社に兼業を認めてもらい、キャリアアップを図るといった自己開発が必要なのだ。これは、個人のキャリアもさることながら、会社組織にとっても必要ではないかと考えている。老舗企業として生き残るのはそう楽ではない。

   「オープンイノベーション」という言葉がある。これまでの自前主義(クローズドイノベーション)に代わって、会社の外にある知識や技術を積極的に取り込むという意味で使われる。もちろん、それぞれの企業内には秘密保持契約があり、自ら創った壁に風穴を空けて、既存のベンチャー企業やIT企業から技術導入するというのはそう簡単ではないだろう。「スタートアップ」と称される、新規サービス・ビジネスモデルの確立を目指すメンバーを取り込み、 イノベーションの創出を求める大企業の間で盛んに言われているのが、オープンイノベーションだ。 一方で、成功事例は少なく、失敗に終わる事例が多いことから、「オープンイノベーションごっこ。そう簡単ではない」と自虐的に言う人もいる。

   オープンイノベーションを起こすべきはむしろ政府だろう。厚生労働省の統計によると、ことし1-7月の出生数は前年同期に比べて5.9%減の51万8590人となり、ショックが走った。2016年に100万人を割り、わずか3年で90万人を割る公算が大になってきた。「団塊ジュニア」と称されてきた世代の女性が45歳以上になり、20代と30代の女性が減少している。つまり、人口減は構造的な問題なのだ。

   この問題に対応するには事実婚というオープンイノベーションを導入するしかないだろう。日本には戸籍の問題があり、事実婚を阻害しているが、結婚をしないで子供を出産する許容さ、その支援制度を政府が前向きに示すことではないか。事実婚のオープンイノベーションに踏み切れば、高齢化した社会の変革も促されるのではないだろうか。

⇒18日(金)夜・珠洲市の天気     くもり

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☆仕込みか、やらせか

2019年10月17日 | ⇒メディア時評

   ニュースを見ていて、「おかしなことになっている」とぶつやいた記事を2つ。16日午前10時10分ごろ、能登半島沖320㌔の日本のEEZ(排他的経済水域)の大和堆で「北朝鮮籍と見られる漁船が転覆し、乗組員が転落した」と水産庁から海上保安庁に通報があった。海上保安庁は救助活動のため巡視船や航空機を現場に向かわせた。水産庁の取締船が、北朝鮮籍とみられる漁船から「ほかの漁船が転覆した」との情報を得て、それを海保に通報した(17日付・日経新聞)。

   現場は今月7日、違法操業の取り締り中だった水産庁の取締船と北朝鮮漁船が衝突し、漁船が沈没する事故があったところだ。今回違法操業をしていたであろう北朝鮮の漁船が水産庁取締船に発信した「漁船が転覆した」という情報はどこまで信用できるのか。水産庁の取り締まりをかく乱し、惑わすためにわざと偽の情報を流したと勘ぐることもできる。偽情報によって、水産庁から通報を受けた海保が巡視船や航空機を出して捜索しているとしたら、と考えると虚脱感も漂う。7日の衝突事故では北の乗組員60人を全員救助して、事情聴取もせずにそのまま帰した。北朝鮮は12日、日本側が故意に衝突した犯罪的な行為だとして、沈没船の損害賠償を求めた。「日本人は騙しやすい」と北朝鮮は笑っているかもしれない。何とも、おかしなことになっている。

   テレビ朝日は16日夜に会見を開き、夕方の報道・情報番組「スーパーJチャンネル」で3月15日に放送した「業務用スーパーの意外な利用法」という企画コーナーで、スーパーを利用する一般の客などとして取り上げた男女5人は、実際には番組の契約ディレクターの知人で初対面のように偽っていたと発表した。テレビ朝日は「信用を著しく毀損する重大な問題」「仕込み、やらせと言われても否定できない」として謝罪した(17日付・朝日新聞)。

   49歳男性の契約ディレクターは俳優養成教室の講師も務めていて、男女5人のうち4人はこの教室の生徒だった。「出演」のギャラを払わなくても、「テレビに出演できるよ」というだけで生徒たちは喜んで集まっただろう。想像するに、初対面を装う演技はとても自然な仕草で、視聴する側にも違和感のない、見事な演技だった。契約ディレクターも「最高の演技だったよ」と俳優の卵たちをほめていたに違いない。「テレビ局は騙しやすい」と契約ディレクターは笑っていたかもしれない。何とも、おかしなことになっている。(※写真はローマのバチカン宮殿「ラフェエロの間」にある「アテネの学堂」)

⇒17日(木)夜・金沢の天気    はれ

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★インターネットの巨大隕石論、その後

2019年10月15日 | ⇒ドキュメント回廊

   自宅近くにあった大型書店が閉店し、コンビニエンスストアになった=写真=。これまで利用してきた書店だけに、「長い間のご愛顧に感謝しますとともに、皆様にご不便ご迷惑をおかけしますこと、心よりお詫び申し上げます。」と書かれた貼り紙が心寂しい。76年の老舗デパートの閉店も最近あった。既存の販売システムがインターネット通販などに押されて姿を消す現象が北陸でも顕著になってきた。

   「インターネットの巨大隕石論」は、ソニーの元会長、出井伸之氏が20年も前に述べたたとえだ。6500万年前、メキシコのユカタン半島に落ちた巨大隕石が地球上の恐竜を絶滅させたといわれるように、インターネットを現代の産業社会に落ちた隕石にたとえた。ネットが流通やメディアなど既存産業にも打撃を与え、ネット社会に対応した改革が出来なければ、いずれ絶滅する。出井氏のたとえをそのように解釈している。冒頭で述べた大型書店の閉店はその光景をイメージさせる。    

   新聞・テレビのマスメディアも同じ光景になるのか。アメリカの現状は想像を超える。アメリカではネットへの広告費のシフトが急速に進み、2008年のリーマン・ショック以降、212の新聞が廃刊になっている。新聞記者も激減した。1990年代に5万6千人とされたが2014年には3万8千人に減った(アメリカ連邦通信委員会=FCC)。「取材の空白域」や「メディアの過疎地化」といった現象がアメリカ各地で起きている。2010年7月、カリフォルニア州ベル市の不正給与問題は「空白域」で起きた事例として知られる。新聞だけでなく、ネット動画配信が普及したアメリカでは視聴者によるコードカッティング(Cord Cutting)と呼ばれる「テレビ離れ」が深刻で、テレビ業界の経営が危ぶまれている。

   FCCは2017年7月、地域におけるテレビ局と新聞社の兼業を禁止するメディア法の規制緩和に踏み切った。これによりテレビ局と新聞社のM&A(合併・買収)で、取材網の共通化やネット事業への投資など多様なメディア展開が可能となった。アメリカにおける既存メディアは生き残りへ必死の戦いを繰り広げている。

   日本のメディアの現状はどうか。元毎日新聞役員の河内孝氏が2007年に日本外国特派員協会で講演した「Lonesome Dinosaurs(ロンサム・ダイナソーズ=寂しげな恐竜たち)」をネットで知り、著書『新聞社-破綻したビジネスモデル』(新潮社、2007)を購入した。部数至上主義で走ってきた新聞ビジネスがネットの時代に立ち行かなくなる理由を克明なデータをもとに解析したものだった。12年経って現状はどうか。確かに、新聞各社は広告収入も部数も徐々に落ちてはいるが、宅配によって新聞の販売収入でなんとか経営的には維持している。

   ネットで読むニュースの情報源の多くは新聞とテレビの既存メディアだ。既存のメディアがなくなれば、フェイクニュースがあふれる、まさに暗黒の世界になる。アメリカが先行している、新聞社とテレビ局とのM&Aへの動きを日本でも始めるべきではないだろうか。民放テレビでは、系列のテレビ各局を傘下に入れる放送持株会社があるが、共倒れになる可能性もある。生き残りをかけた取材網の共通化やネット事業への共同参画といった点で、テレビ局と新聞社のM&Aが必要ではないだろうか。

⇒15日(火)夜・金沢の天気     くもり

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☆「焚きつけ」の任命責任はどうなのか

2019年10月14日 | ⇒メディア時評

     台風19号の被害が日を追うごとに拡大している。北陸に住む自身にとっては、千曲川の堤防決壊で長野市にある新幹線車両センターの北陸新幹線の車両が水に浸かった画像はショックだった=写真・上=。豪雪にも強いと頼っていた北陸新幹線だけに、10編成、120車両が並んで水に浸かっている様子は痛々しい。13日始発から金沢―東京間がすべて運休。浸水が床上に及んでいる場合は電子機械や変圧器の取り換えが不可能となり、廃車となる可能性もあると指摘されている。今後金沢への観光客が激減するだろう。さまざな後遺症が出てきそうだ。

  話はがらりと変わる。このニュースに接して、任命責任はどうなのか、と問いたい。韓国の文在寅大統領の側近で、家族を含めてさまざまな疑惑が出ている曺国(チョ・グク)法務部長官がきょう14日付で辞任することを明らかにしたとメディア各社が伝えている。韓国の聯合ニュースWeb版=写真・下=にアクセスすると、「조국, 취임 35일만에 사의 "檢개혁 불쏘시개 역할은 여기까지" 」(法相、35日で辞意表明 “検察改革焚きつけ役割はここまで”=グーグル翻訳)との見出しで詳細に報じている。以下、要約する。 

  曺法務部長官は14日、電撃的に辞意を明らかにした。先月9日に就任して35日目となる同日午後2時に「検察改革のための焚きつけ役割はここまでです」という声明文を出して辞意を明らかにした。長官は「検察改革は学者や知識人としての私のライフワークの使命であり、長い間悩んで追求してきた目標であった」としながらも、家族をめぐるいくつかの疑惑と検察の捜査があり、「これ以上大統領と政府に負担をかけてはならないと判断した」と述べた。さらに、検察改革の完遂が近づいてきたと明らかにし、「私は検察改革のための『焚きつけ』に過ぎない。その役割はここまで」と声明文で述べた。

  曺氏の辞意表明を受けて、文大統領は「結果的に国民の間に多くの葛藤を引き起こしたことについて非常に遺憾に思う」と謝罪し、「検察改革は最も重要な国政目標であり、完全な実現のために最後までやり遂げる」とのコメントを発表している。

  今月3日、ソウルでは文大統領に退陣を要求する大規模なデモがあり、「法務部長官、辞退を」と叫ぶ数十万人が光化門からソウル駅の2.1㌔㍍を埋め尽くした(韓国・中央日報)。9月28日に行われた大統領支持派のデモと同規模で、まさに「国民の間に葛藤」を起こす大問題になっていた。

  そもそも「玉ねぎ」ように次から次と疑惑は曺国氏の長官就任前から出ていた。曺氏の妻が娘の大学院進学に有利になるよう東洋大総長名義の表彰状を偽造したとされる事件。妻はその後、私文書偽造の罪で在宅起訴されている。不正入学疑惑では、すでに娘や息子も聴取するなど異例の捜査展開となっている。

  曺氏の長官就任直後の大統領支持率は韓国ギャラップによると、9月第3週の調査では支持率が40%(前回43%)、不支持率53%(同49%)で、支持率は落ち込んでいた。支持しない主な理由はやはり曺国氏を法務部長官に任命した人事問題だった。世論を甘く見て、長官任命を押し切ったことに、その任命責任は問われないのだろうか。曺氏の辞任で政権の求心力は再び高まるとはとても思えない。

⇒14日(祝)午後・金沢の天気    くもり

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★被害者権利「日本が故意に衝突、損害賠償を」

2019年10月13日 | ⇒ニュース走査

  数十年に一度の重大な災害が予想される特別警報が出された台風19号。各地で爪痕を残し、13日朝、台風の中心部は東北三陸沖の太平洋側に抜けた。ネットニュ-スで被害状況をチェックしているが、長野県の千曲川の堤防が一部決壊し住宅地が浸水。また、長野市のJR新幹線車両センターも水没して、北陸新幹線の車両が水に浸かっている状態で終日運休が決まった。時間が経つにつれ、さまざまな被害状況が確認され、今回の台風のすさまじさが見えてくる。

  もう一つ「北の台風」が吹き始めた。12日付のロイター通信Web板(日本語)は「北朝鮮が日本に賠償要求、故意に沈没漁船に衝突と主張」との見出しで、今月7日に起きた能登半島沖の日本のEEZ(排他的経済水域)内での北朝鮮漁船と水産庁取締船との衝突について、北朝鮮側の発表を報じている。

   ニュースを以下要約する。朝鮮中央通信社(KCNA)が12日に報じた内容として、北朝鮮外務省の報道官は声明で、日本側が故意に衝突した犯罪的な行為だと指摘、将来このような事案が発生しないよう日本は対応すべきだと主張。さらに「日本政府に沈没船の損害補償を強く求める。このような事態が再び起これば日本は望ましくない結果に直面することになる」と指摘。漁船が急旋回したため衝突したとの日本の主張に対して、通常の航行状態だったと反論し、「日本は意図的な行為を正当化しようとしている」と非難した。

   なぜこれほど北は強気に出てくるのか。衝突から損害補償の請求まで仕掛けられたワナではないか。領海の基線から200㌋(370㌔)までのEEZでは、水産資源は沿岸国に管理権があると国連海洋法条約で定められている。ところが、北朝鮮は条約に加盟していないし、日本と漁業協定も結んでいない。北朝鮮は衝突があったEEZは自国の領海であると以前から主張している。日本側が領海を侵犯した上、公船が漁船に体当たりしたと自らの立場を正当化する戦略として仕立てたのだろう。これからことあるごとに「北朝鮮の領海での日本側の意図的な衝突、損害賠償を請求する」と高いボルテージで言い続けるだろう、北朝鮮は被害国だという「権利」の主張だ。

   北朝鮮では近海の漁業権を中国に売却したため、漁民が危険を冒して大和堆などの沖合に出ざるをえない事情があると言われている。ロシアのEEZに入り拿捕が相次ぎ、日本のEEZの方が拿捕されないので「安全」と見くびっている。おそらく北による違法操業は今後も当面止むことはないだろう。日本は水産庁が撮っている今回の衝突映像を国際社会に公開すべきだ。衝突が単なる事故なのか、故意に衝突した「事件」なのか。厄介なボールが日本に撃ち込まれた。(※写真は、日本のEEZで違法操業する北朝鮮の漁船=海上保安庁の動画から)

⇒13日(日)午前・金沢の天気     くもり

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