自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★茶道用の木炭「菊炭」からイメージされた加賀友禅の斬新な模様

2024年11月02日 | ⇒トピック往来

  加賀友禅は金沢で染められる友禅で、京都の京友禅や東京の江戸友禅と合わせて「三友禅」と称される。加賀友禅のコレクション展がきょうから開催されていると知人から案内があり、会館「加賀友禅ミュージアムそめりあ」(金沢市)へ見学に行ってきた。加賀友禅は、「加賀五彩」とよばれる臙脂 (えんじ) ・藍・黄土・草・古代紫の5色を使い、花や鳥など自然をモチーフにしたデザインが描かれる。1975年に国の伝統的工芸品に指定され、いまもその技術は脈々と受け継がれている。

  今回ミュージアムを訪れたのは、「加賀友禅らしからぬ面白い作品がある」と聞いて、ぜひ見てみたいと思ったからだ。その作品は1階・特別展示室の「おもてなし加賀友禅着物発表会」で飾られていた。加賀友禅作家の河守彩香氏が制作した作品『菊炭』=写真・上=。デザインは花や蝶ではなく、木炭がモチーフなのだ。菊炭は茶道で使われる炭だ。茶道用の炭は切り口がキクの花模様に似ていることから「菊炭」と呼ばれ、炉や風炉で釜の湯を沸かすのに使う=写真・下=。クヌギの木を材料としていて、菊炭はススが出ず、長く燃え、燃え姿がいいとされる。

  河守氏は茶道を習っていて、菊炭に美を見出したようだ(知人の話)。この菊炭を生産している石川県で唯一の人が能登にいる。能登半島の尖端、珠洲市の製炭業者、大野長一郎氏だ。大野氏はカーボンニュートラルの実践者としても知られる。樹木の成長過程で光合成による二酸化炭素の吸収量と、炭の製造工程での燃料材の焼却による二酸化炭素の排出量が相殺され、炭焼きは大気中の二酸化炭素の増減に影響を与えない。ただ、実際にはチェーンソーで伐採し、運ぶトラックのガソリン燃焼から出る二酸化炭素が回収されない。そこで、ライフサイクルアセスメント(LCA=環境影響評価)の手法を用いて計算し、生産する木炭の2割以上を不燃焼利用の製品(床下の吸湿材や土壌改良材)とすることで、カーボンニュートラルを達成している。

  菊炭の文様と同時に、炭づくりと環境問題に取り組む生産者の熱い想いが友禅作家の創作のモチベーションをかき立てたのではないだろうかと作品を鑑賞しながら思った。

⇒2日(土)夜・金沢の天気   くもり

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☆能登の震災から10ヵ月、豪雨から40日 泥出しボランティア集めに躍起

2024年11月01日 | ⇒ドキュメント回廊

  きょうから11月、元日に能登半島で起きた震度7の強烈な地震から10ヵ月が経った。復旧・復興の途上の9月21日に奥能登が48時間で498㍉の記録的な豪雨に見舞われた。これまで金沢と能登を自家用車で何度も往復して、二重被害の現地の様子を見てきた。この目で見た能登の現状をまとめてみたい。

  半島を縦断する自動車専用道路「のと里山海道」を走ると、救急車とすれ違うことがある。1月や2月ほど頻繁ではないが、いまもある。金沢市や七尾市の病院への救急搬送だろうと推測する。石川県危機対策課がまとめた10月29日時点での地震による死者は408人で、そのうち、家屋の下敷きになるなどして亡くなった直接死は227人、災害による負傷の悪化や避難生活での身体的負担による疾病で亡くなった関連死は181人だった。県は10月23日と31日に関連死の審査会(医師、弁護士5人で構成)を開き、新たに33人の認定を決め、各市町が近く正式に認定することになる。これにより、犠牲者は441人に増えることになる。また、能登豪雨で亡くなった人は15人になる。

  二重被害が集中した地域の一つが輪島市だった。震災による火災で中心部の朝市通りの店舗や住宅など200棟が焼けて、焦土と化した。大通りでは輪島塗の製造販売会社の7階建てのビルが転倒した。そして豪雨では、中心部に近い久手川町を流れる塚田川に架かる橋に流木が大量に引っかかり、せき止められた泥水があふれて、住宅地に流れ込んだ=写真=。このため、住宅4棟が流され、14歳の少女ら4人が犠牲となった。同市町野町では震災と洪水で中心部の街並み全体が倒壊した状態になっている。輪島市では地震による仮設住宅が2900戸あるが、うち205戸で床上浸水となった(11月1日付・北國新聞)。県では年内をメドに被災者の再入居のため泥の除去など改修工事を進めている。

  二重被害のあった輪島市や珠洲市など奥能登をめぐると、場所にもよるが、全半壊した家屋が並ぶ街の光景がこの10ヵ月まったく変わっていないところが多い。輪島市の町野町などはその典型かもしれない。石川県の「被災建物の公費解体の進捗状況」によると、公費解体の申請があった3万1613棟ののうち、10月28日時点で解体が完了したのは全体の23%、7251棟となっている。作業は4月下旬から本格的に始まっていて、半年余りでこのペースだとあと2年ほどかかるのではないか。冬季には積雪もある。そして、豪雨での全半壊は55棟(10月18日時点)あり、政府は半壊した家屋も全壊と同様に公費解体を認めている。

  さらに難題がある。石川県の試算では輪島と珠洲、能登3市町で泥出しが必要な宅地は2600棟におよんでいて、家の中の泥出しは各自が行う。このうちボランティアの協力が必要なほど泥が堆積しているのは1500棟と想定していて、県など行政は泥出しボランティアを集めるのに躍起になっている。

⇒1日(金)午後・金沢の天気    あめ

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★北朝鮮のICBM発射は核実験の前触れ予告なのか

2024年10月31日 | ⇒ニュース走査

  ニュース速報が飛んできた。北朝鮮はきょう31日午前7時11分、北朝鮮内陸部から、少なくとも1発の弾道ミサイルを北東方向に向けて発射。弾道ミサイルは北海道・奥尻島の西方約200㌔の日本のEEZ(排他的経済水域)外の日本海に同8時37分ごろ落下した。飛翔距離は1000㌔、最高高度は過去最高の7000㌔を超えると推定される(31日・防衛省公式サイト、イメージ図も)。

  北朝鮮は去年12月18日にも奥尻島の方向に向けて弾道ミサイルを発射している。このときはICBM(大陸間弾道ミサイル)級のミサイルで、奥尻島の北西およそ250㌔のEEZ外の日本海に落下した。飛行距離は1000㌔ほど、最高高度は6000㌔超でおよそ73分間飛行した(2023年12月18日付・防衛省公式サイト)。今回の飛行時間は86分間(前回は73分間)の長時間だったので、今回もICBM(大陸間弾道ミサイル)級のミサイルと推測される。(※写真は、2022年3月24日に北朝鮮が打ち上げたICBM「火星17型」=同月25日付・労働新聞Web版)

  では、なぜICBM級のミサイルを北朝鮮は打ち上げたのか。以下は憶測だ。軌道を高い角度で打ち上げて飛距離を抑える飛ばし方は「ロフテッド軌道」と呼ばれる。これを通常の軌道で発射すれば、搭載する弾頭の重さなどによっては飛行距離が1万5000㌔を超えてアメリカ全土が射程に入ることになる。つまり、アメリカを意識した発射だったのではないか。

  国連安保理は30日、ウクライナ侵攻を続けるロシアに北朝鮮が派兵したことを受けて緊急会合を開催した。アメリカのウッド国連次席大使は「ロシアの支援のため(北朝鮮兵士が)ウクライナに入れば、北朝鮮兵は遺体袋で帰国する」と述べ、金正恩・朝鮮労働党総書記に「無謀で危険な行為の再考」を促した。多くの理事国から北朝鮮のロシア派兵は安保理決議違反にあたるとして批判が集中するなか、北朝鮮の金星・国連大使は派兵について直接の言及は避けつつ、「アメリカと西側の危険な試みによって、ロシアの主権および安全保障上の利益が脅かされたとみなした場合、必要な措置を取る」と述べた(31日付・メディア各社の報道)。今回の北朝鮮のICBM級ミサイルの発射は、この「必要な措置を取る」との言葉を裏付けするかのような脅しに思えてならない。

  そして、このニュースで別の憶測もよぎる、北朝鮮が核実験の準備を終え、11月5日のアメリカ大統領選の前後に実験を強行する可能性があるとの韓国国防省の見解が報じられている(31日付・メディア各社の報道)。とすれば、核実験の前触れ予告にICBMを発射したのか、と。きな臭さが一気に漂い始めている。

⇒31日(木)午前・金沢の天気    くもり

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☆与党は過半数割れ「宙づり」状態をどう乗り切るのか

2024年10月30日 | ⇒ニュース走査

  内閣支持率は「危険水域」に近づいている。読売新聞の衆院選の結果を受けた緊急世論調査(28、29日)によると、石破内閣の支持率は34%で、内閣発足後の前回調査(今月1、2日)の51%から急落した。内閣不支持率は51%(前回32%)で、内閣発足から1ヵ月足らずで不支持が支持を上回った(29日付・読売新聞オンラン)。読売の調査で内閣支持率の20%台は政権の「危険水域」、20%以下は「デッドゾーン」とよく言われる。ちなみに、岸田内閣が退陣を表明した8月の読売調査は支持率が24%、不支持率が63%だった。

  急降下した内閣支持率を見て、石破政権はいつまで持つのかと考えてしまう。政策の実効性を確保するために「議会を解散して民意を問う」と石破政権は選挙に打って出たものの、与党の過半数割れとなった。このままでは何も決められない、いわゆる「宙づり議会」、ハング・パーラメント(hung parliament)の状態だ。この言葉は議会制民主主義の歴史が長いイギリスが発祥で、直近では2017年の総選挙で保守党が第1党を維持しながらも過半数割れとなり、宙づり状態に陥った。この時は、北アイルランドの地域政党の閣外協力を得て、何とか政権を維持し、その後2019年の総選挙で保守党が単独過半数を獲得した。日本の自民党もハング・パーラメントを乗り切るために、部分連合や閣外協力に躍起になっているようだ。

  メディア各社の報道によると、自民と国民民主の幹事長と国会対策委員長があす(31日)国会内で会談する。政府が11月中のとりまとめをめざす経済対策で、国民民主が掲げる政策の一部を反映させる検討に入るとみられる。自民とすれば、2024年度補正予算案や25年度予算案について編成段階から国民民主に配慮することを持ち掛け、部分連合あるいは閣外協力を打診するのだろう。

  一方の国民民主の玉木代表は記者団に対し、自公との部分連立について改めて否定し、「政策本位でいい政策であれば協力するし、ダメなものはダメと言っていく」と語っている(28日付・メディア各社の報道)。また、閣僚を出さずに政権に協力する閣外協力の可能性についても、同様に「政策ごとにいいものには協力するし、ダメなものはダメと貫いていく」と述べるにとどめている(29日付・同)。

  与党は過半数割れのハング・パーラメント状態をどう乗り切るのか。衆院選後30日以内(11月26日まで)に特別国会を開き、新総理を選出することが憲法に定められている。

⇒30日(水)夜・金沢の天気    くもり

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★まもなくズワイガニ漁が解禁 輪島の漁船は「板子一枚、下は土砂」

2024年10月29日 | ⇒トピック往来

  もうそろそろこの季節だ。来月11月6日にズワイガニ漁が解禁となる。雄のズワイガニにはご当地の呼び方があって、石川県では「加能(かのう)ガニ」と呼ぶ。加能とは、加賀と能登のこと。加能ガニは重さ1.5㌔以上、甲羅幅14.5㌢以上のものは「輝(かがやき)」のブランド名が付く。山陰地方では「松葉ガニ」、福井県では「越前ガニ」だ。ただ、加能ガニのファンの一人として案じているのは、能登の漁港から出漁できるのか、ということだ。(※写真・上は、金沢市の近江町市場に並んだ茹でズワイガニ=2022年11月撮影) 

  能登で水揚げが一番多い輪島漁港では元日の地震で漁港の海底の一部が隆起して漁船が出れなかったが、海底の土砂をさらう浚渫(しゅんせつ)作業が行われ、徐々に出漁できるようになっていた。ところが、9月の記録的な大雨で漁港の入り口付近などに河川から大量の土砂が流れ込み、海底には多いところで80㌢ほどの土砂が堆積。漁船が座礁するなどの危険性があるため、国交省北陸地方整備局では、きのう(28日)から土砂を取り除く緊急の浚渫工事を始めている。深さ1㍍ほど土砂を除去することで水深6㍍を確保し、安全に漁船が航行できるようにするとのこと(29日付・メディア各社の報道)。(※写真・下は、ズワイガニ漁を行う底曳き網船=輪島漁港、ことし8月24日撮影)

 

  漁港の海底隆起は輪島漁港だけではない。能登半島の北側、外浦と呼ばれる珠洲市、輪島市、志賀町の広範囲で海岸べりが隆起した。隆起があったは3市町で22漁港になる。それぞれ浚渫工事が行われ、出漁が可能になった矢先の9月の大雨だった。「板子一枚、下は地獄」は漁師がよく口にする言葉だが、まさに「板子一枚、下は土砂」となった。浚渫工事はなんとか11月6日のズワイガニ漁解禁に間に合うのだろうか。

⇒29日(火)夜・金沢の天気    あめ時々くもり

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☆与党過半数割れが今後もたらす「政治空白」と「経済空白」のWショック

2024年10月28日 | ⇒ニュース走査

  与党が過半数割れに陥った背景には有権者の信頼低下があることは言うまでもない。自民党派閥のパーティー収入不記載事件を受け、選挙では「政治とカネ」の問題に有権者の関心が高まっていた。それに輪をかけたのが、選挙期間中の「非公認2000万円問題」。自民党が非公認候補側に2000万円の活動費を支給した問題だ。これが致命傷になったのだろう。そもそも、石破総理就任から最短の「8日間」での解散も、有権者には理解されなかったのではないか。

  「なんで選挙なんかするんや、ダラくさい」。このブログで何度か取り上げたが、震度7の地震と記録的な大雨に見舞われた能登の有権者の雰囲気は、このひと言に象徴される。能登で何度も耳にした言葉だ。「ダラくさい」は能登の方言でばかばかしいという意味だ。誰のために、何のために選挙をするのかと問うているのだ。能登の被災地の人たちの率直な気持ちなのだろう。その気持ちが投票行動でも表れている。

  能登の人々の性格は律儀さもあり、「選挙に行かねば」は当たり前で、金沢市など都市部に比べて投票率が高い。ところが、今回、石川3区の投票率は62.5%と、前回2021年より3.5ポイント減少した。中でも、地震と豪雨の二重被害となった奥能登の輪島市では11.9ポイント減の58.9%、珠洲市では9.5ポイント減って62.0%だった。避難者が現地から離れていて、投票に行けなかったというケースもあったろう。それにしても、この減少率の高さは「ダラくさい」の気持ちがにじみ出ているように思えてならない。それでも都市部より投票率は高い。ちなみに、金沢市は49.5%だった。

  そして、能登は「自民王国」とも称されてきたが、今回、立憲民主が逆転した。前回(2021年)の衆院選では、自民の西田昭二氏が8万692票、立民の近藤和也氏は7万6747票で、その差は3945票だった。今回は近藤氏が7万7247票、西田氏は6万1308票と、その差1万5939票で近藤氏が挽回したのだ。近藤氏が小選挙区で勝つのは2009年以来15年ぶり。西田氏は比例で復活当選した。

  話は冒頭に戻る。石破政権は窮地に陥るのではないか。与党が過半数を割り、自民執行部の責任論が浮上するのは必至だ。懸念されるのは、選挙後に待ったなしで行われる予定の補正予算の編成だ。石破総理は去年の13兆円を上回る予算規模を選挙戦などでも明言していたが、政治空白が生じれば補正の成立時期が後ずれする。自民は国民民主などと政策ごとに協力する「部分的な連合」で政権運営を乗り切らざるを得ないだろう。ただ、野党側との協議は難航するのが常である。懸念されるのは国民全体に影響が降りかかる「経済政策の空白」ではないだろうか。

⇒28日(月)夜・金沢の天気     あめ時々くもり

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★地震と豪雨の能登・石川3区で立民の近藤氏が勝利、与党過半数割れで政局突入か

2024年10月27日 | ⇒ドキュメント回廊

  きょうは衆院総選挙の投票日。元日の震災と9月の記録的な大雨に見舞われた輪島市町野町の現場を見に行った。現地で農業を営む従兄(いとこ)の案内で被害に遭った自宅を見せてもらった。裏山が大規模に崩れ、この集落は土砂に埋まるなど壊滅的な状態になっていた=写真・上=。いまは仮設住宅で家族と暮らしている。農地は3分の2ほどが残り、耕運機なども無事だったことから、来春の作付けに意欲的な様子だった。復旧・復興が遅い能登を政治はどう導いていくのか。

  地震と豪雨で大きな被害を受けた能登の輪島市と珠洲市では、投票時間が短縮されて午後6時で投票が締め切られた。NHKの開票速報によると、輪島市と珠洲市を含む石川3区では立憲民主の前職・近藤和也氏が自民・前職の西田昭二氏を破り、4回目の当選を果たした。近藤氏は2009年の衆院選で小選挙区で初当選。その後、2017年、2021年には選挙区で敗れたものの、比例で復活していた。  

  近藤氏の選挙活動はじつにユニークだった。立ち姿はまったく候補者らしくない。防災服姿で、名前入りのたすき掛けもしていないのだ=写真・下=。近藤氏は七尾市での出陣式(今月15日)で「与党も野党も関係なく、助け合わなければならない時期。選挙なんてやっている場合か。それが能登の総意だと思う」と憤りの声を上げた。選挙実施への反発の意味を込め、選挙期間中は防災服姿で、たすき掛けをしないことを宣言していた。ただ、選挙活動は実にアクティブだった。元日の地震後、これまで選挙区内で整備された6000戸余りにもなる仮設住宅を足しげく回り、被災者の声を国会論戦などで反映させてきた。地震と豪雨の二重被災の奥能登(輪島市、珠洲市、穴水町、能登町)へは選挙期間中にそれぞれの自治体を2回ずつ回った。「まだ能登は大変なんだと全国に訴えていきたい」と述べていた。  

  「自民党王国」と称されていた石川3区で2009年以来、15年ぶり2度目の勝利を果たした立憲民主の近藤氏。今回の選挙も2009年と同様、政局に異変をもたらしそうな様相だ。メディア各社の開票速報によると、与党が勝敗ライン「自公で過半数(233議席)」を下回る見通しとなったと報じている。自民党派閥のパーティー収入不記載事件を受け、選挙戦では「政治とカネ」の問題に関心が高まった。有権者は自公政権に対し、厳しい審判を下したようだ。そして永田町は今後、波乱含みの政局に突入しそうだ。ただ、政局がどうであろうと能登のことを忘れてほしくない。

⇒27日(日)夜・金沢の天気   あめ

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☆北アルプス国際芸術祭 インスピレーションと3次元表現が織りなすアートの迫力

2024年10月26日 | ⇒トピック往来

  北アルプス国際芸術祭は、自然、芸術、生命、科学、テクノロジーが展示空間全体を使った3次元的表現(インスタレーション)で描かれていて、アートに迫力を感じる。山本基氏の作品『時に宿る』もその一つ。

  国際芸術祭の開催地である大町市はかつて千国街道の宿場町として栄え、日本海側の糸魚川から松本へ塩を運んだ「塩の街道」の拠点でもあった。江戸時代の庄屋で塩問屋を営んだ旧家の建物が今も残る。作品『時に宿る』は塩問屋の塩蔵の中で表現されている=写真・上=。塩を用いた作品を数々手掛けてきた山本氏にとって最高のステージではないだろうか。山本氏が「塩」にこだわる背景には、若くしてこの世を去った妻と妹との思い出を忘れないために塩を用いてインスタレーションを制作してきた。「塩も、かつては私たちの命を支えてくれていたのかも知れない。そんな思いを抱くようになった頃から、塩には『生命の記憶』が内包されているのではないかと感じるようになりました」(サイト「山本 基 - Motoi Yamamoto -」より)。その思いが緻密で迫力ある作品づくりに込められている。

  廃校になった県立高校の図書室。かつて知識と物語でいっぱいだったであろう本棚は空になっていた。この静寂な図書室に、4000ピースの「木の心臓」=写真・中=を制作したオーストラリア在住のマリア・フェルナンダ・カルドーゾ氏。作品名『Library of Wooden Hearts』。公式ガイドブックによると、スギの若木の芯から削り出した木片に心臓のカタチを見出したのがきっかで、近づいて見ると若木の鼓動を感じさせる。「奥能登国際芸術祭2023」では珠洲市に自生する松ぼっくりやツバキなどの実を素材に作品を制作し、種を包む種皮の強靭さや美しさを表現していた。自然が生み出したカタチや表情にインスピレーションを感じ、それを独自の視点で造形して観る者を包み込んでいる。

  「フェイクドキュメンタリー」はジャーナリズムの世界では忌み嫌われるが、アート作品であるならば楽しめる。映画監督でもある小鷹拓郎氏の作品『ダイダラボッチを追いかけて』=写真・下、作品チラシより=は、ドキュメンタリーとフィクションを往来するアートフィルム。大町市の仁科三湖(青木湖、中綱湖、木崎湖)に伝わる民話「巨人ダイダラボッチ」をテーマにした28分の映像。終盤では、市街地の真ん中に建設予定の松糸道路(松本市から糸魚川まで)をダイダラボッチに見立てた反対運動「ダイダラボッチやめろデモ」をこの映像に取り込んでいる。まさに現実と虚構が織りなす新たな民話に仕上がっている。

⇒26日(土)夜・金沢の天気 くもり

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★北アルプス国際芸術祭 信濃の大地と自然が生み出す神秘なアート

2024年10月24日 | ⇒トピック往来

   長野県大町市で開催されている「北アルプス国際芸術祭2024」に来ている。アートディレクターの北川フラム氏が総合ディレクターを務める。国際芸術祭は去年秋に「奥能登国際芸術祭」を鑑賞して以来。北アルプスの雪の山々をイメージしてきたが、曇り空だったこともあり、あの雪の連なりの風景はまだ見れていない。水や風、植物など信州の自然を題材にした作品を楽しみにツアーバスに乗り込んだ。印象に残った作品をいくつか。

  北アルプスの雪解け水と湧き水に恵まれる大町は湖が多い。その一つ、木崎湖畔にたたずむ仁科神社の鎮守の森に、無数のプラスティックレンズが吊り下がる空間がある。その数は2万個にも及ぶ。カナダを拠点とするアーティスト、ケイトリン・RC・ブラウン&ウェイン・ギャレットによる作品『ささやきは嵐の目のなかに』=写真・上=。まるで、森の中に大粒の雨が注いでいるように感じる。レンズから森を眺めると、まったく別の森の風景が広がる。

  まるで空と大地が一体化する神秘な風景のようだ。北アルプスを仰ぎ見る田園に囲まれた鎮守の森の中に鎮座している須沼神明社の神楽殿。絹に木版で描いた羽衣のような布が風にたなびく様子は天空に流れる「雲海」を感じさせる。宮山香里氏の作品『空の根っこ -Le Radici Del Cielo-』=写真・中=。羽衣のような布は、空に流れる雲のようでもあり、大地に根差した根っこのようでもある。神楽殿は神々の来臨や神託を願う歌や舞いの儀式が営まれる、聖と俗、常世と現世の「神と人との接点」のステージだ。「隔たり」ではなく「つながり」の世界を感じさせる。 

  大町には豊かな里山が広がる。かつて麻の産地として栄えた美麻地区にある1698年築の茅葺き屋根の民家「旧中村家住宅」は国の重要文化財でもある。麻を使ったカーテンをくぐった先にあるう厩(うまや)では、かつて麻畑だった場所で採取した植物を焼成しガラスのなかに閉じ込めた、芸術的なタイムカプセルのような作品が広がる。佐々木類氏の作品『記憶の眠り』=写真・下=。佐々木氏は身近な自然や気候に思いを寄せ、保存や記録が可能なガラスを使った作品を制作している。この地区の暮らしをかつて支えていた麻栽培はいまは行われてはいない。大町の記憶がガラスの中で眠っている。

  公式ガイドブックの中で、北川フラム氏は「土地と自然という私たちのベースになる基本の調査を現場で具現化するというアートの根本に、世界ではじめて取り組んだ作家の恐るべき想像力と先見性を、ぜひ見てください」と述べている。

⇒24日(木)夜・長野県大町市の天気 くもり

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☆罪を裁く人、不正を監視する人が罪を犯す 職業倫理失い「タガが外れた」日本人の姿

2024年10月23日 | ⇒ニュース走査

  自身がまだ小さいころ、父親から「人を見たらドロボーと思え」と諭された。「世の中、悪いことをするヤツがいっぱいいる」と。もう60年以上も前のことだが、このところのメディア各社の報道に目を通していて、父親の言葉を思い出した。

  関東地方で頻発する押しかけ強盗もさることながら、驚いたのは裁判官による犯罪行為だ。金融庁に出向していた30代の男性裁判官が業務を通じて知った公表前のTOB(株式公開買い付け)情報などを基に株取引を繰り返していたことから、金融商品取引法違反(インサイダー取引)の疑いで証券取引等監視委員会の強制調査を受けた(今月19日付・メディア各社の報道)。また、不正な株取引の監視などを担う「日本取引所自主規制法人」(JPXR)の男性職員が未公開の企業情報を親族に漏洩しインサイダー取引に関与したとして、同じく証券取引等監視委員会の強制調査を受けた(きょう23日付・同)。罪を裁く人、不正を監視する人が不正を働いている。これは偶然なのか、あるいはプロが実利に動く時代に入ったのか。監視委では2人を東京地検特捜部への告発を視野に取引状況を調べているという。

  そして、教育の最前線にいる教職員が児童や生徒らに対し、わいせつ行為(セクハラ)をするという事例がここ数年頻繁に報道されている。これは特殊な事例だが、埼玉県教委は今月17日、20年前に勤務していた小学校の男子児童にわいせつな行為をしたとして、県教育局の女性職員(課長級)を懲戒免職とした。児童だった男性から県教委のホームページに情報提供があったことから発覚した(今月18日付・メディア各社の報道)。(写真は、ミケランジェロ作「最後の審判」)

  セクハラについては、就職活動を行う学生に対し、企業の人事担当者らが学生らに行うケースが多い。厚労省の調べによると、学生の4人に1人が就活ハラスメントを経験している。その内容は「性的な冗談やからかい」40%、「食事やデートへの必要な誘い」26%、「性的な事実関係に関する質問」26%などとなっている(令和2年度「職場のハラスメントに関する実態調査報告書」)。このため、厚労省では就活セクハラの防止を企業に義務付けすることを検討し、来年の通常国会で関連法改正案の提出を目指す。

  冒頭の「人を見たらドロボーと思え」の言葉はいま思えば実にリアルに思えてくる。職業倫理を失い「タガが外れた」現代日本人の姿がそこにある。

⇒23日(水)夜・金沢の天気   くもり時々あめ

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★能登の二重被災と総選挙~赤黄の花を横目に選挙カーが走る~

2024年10月22日 | ⇒ドキュメント回廊

  金沢と能登を自家用車で往復すると、この季節の色とりどりの「フラワーロード」を目にする。能登空港の近くを走る奥能登の幹線道路「珠洲道路」を走ると赤いサルビアの花が咲き競っている。観光マップによると、道路両サイドで併せて4㌔、4万本のサルビアが植えられている。例年だと6月から9月が見ごろだが、10月に入っても25度前後の暑さが続いたせいか、いまも赤々と咲き誇っている。そして、自動車専用道路「のと里山海道」の法面で黄色く群生しているのがセイタカアワダチソウだ。帰化植物(外来種)。北アメリカ原産の多年草で、土手や荒れ地、休耕田などで生い茂っている。環境省が対策が必要な外来種としてリストに掲載している。もちろん花に罪はなく、赤や黄色の花がまぶしいほどだ。

  ブログのシリーズ「能登の二重被災と総選挙」では、今回の衆院選挙について能登の有権者は何を思い、どの候補に一票を入れるのか、そして候補者は何を訴えているのか、そんな目線で書いている。

  選挙戦も後半戦に入り、メディア各社が情勢を伝えている。共同通信の調査(20、21日)に地元メディアが独自の取材を加味して報じている。北國新聞(22日付)は、「与党過半数は微妙 自民苦戦、大幅減も」、接戦となっている能登地区を含む石川3区については「近藤氏を西田氏追う」との見出しで情勢を紹介している。それによると、立憲民主・前職の近藤和也氏(50)は立民支持層の8割を固め、「支持政党なし」の無党派層でも6割以上に浸透している。自民・前職の西田昭二氏(55)は自民支持層の6割超、公明支持層の8割を固め、無党派層の取り込みを急いでいる、としている。共産新人の南章治氏(69)を支持する共産支持層は7割で、2割は近藤氏に流れている、としている。

  北陸中日新聞(22日付)は共同通信の調査に加え、石川3区について独自のネット調査を加味して報じている。「与党過半数は微妙 立民が勢い維持」、石川3区については「近藤氏優勢変わらず」との見出しで情勢を紹介している。記事によると、近藤氏は支持政党なし層にも浸透。自民支持層の一部が近藤氏に投票すると答え、裏金問題などで西田氏が支持層を固め切れていない状況がうかがえる、としている。

  前回ブログで輪島市の仮設住宅で設けられた期日前投票所での「出口聞き取り」の内容を紹介した。わずか10人(男女それぞれ5人)に聞いた話だが、近藤氏を支持する声がやや多かった(6人)。その中で意外な声だったのが女性から聴いた、「(地震と豪雨の二重被害では)立民と自民が協力してほしい。自民にハッパをかける意味であえて近藤さんに入れた」との声だった。近藤氏は今回の選挙に一貫して反対し、防災服を着てたすきを掛けず、能登復興を最優先すると、被災地区を中心に選挙活動を続けている。そんな姿が能登の自民や共産支持層の一部でも共感を呼んでいるのかもしれない。

⇒22日(火)午前・金沢の天気   くもり

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☆能登の二重被災と総選挙~仮設住宅で期日前投票、出口で聞き取り~

2024年10月21日 | ⇒ドキュメント回廊

  きょう21日は奥能登の「記録的な大雨」から1ヵ月となる。石川県のまとめによると、住宅の床上浸水などの被害は1487棟に上る。これにより、輪島市と珠洲市、能登町の3市町で合せて434人が避難生活を続けている(今月18日時点)。豪雨の影響で輪島市と珠洲市で断水が起きていて、両市で合せて1000戸余りにおよぶ。今回の能登豪雨ではこれまでに14人が死亡、1人の行方が未だ分かっていない。地元メディアによると、輪島市役所ではきょう午前9時30分、市長や職員が犠牲者に黙とうを捧げた。先月21日の午前9時22分までの1時間に降った雨の量が輪島市で観測史上最大の121㍉に達し、犠牲者が出たことからこの時間での黙とうを設定した。

  話は衆院選に。輪島市町野町の仮設住宅「町野町第2団地」(268戸)できょう期日前投票所が設けられた。現地を見に行った。町野町ではこれまで、市役所の支所で期日前投票が行われていたが、今回の豪雨で床上浸水となり使えなくなり、仮設住宅の集会所に期日前投票所が設けられた。訪れた人たちはこれまでとは少々狭い場所ながら1票を投じ=写真=、出口で知り合いと出会うとあいさつを交わしていた。投票所には仮設住宅だけでなく地域の有権者も訪れている。

  現地に出向いた動機に「出口調査」を試みたいとの思惑があった。仮設住宅に住む人たちはこの選挙をどう思い、誰に投票したのか、そんなことが知りたかった。そこで、投票を終えた人に声かけし、石川3区の候補者のポスター掲示板を撮影し画像をプリントしたものを見せて、投票した候補者を指差ししてもらった。何人にも断れたが、男女それぞれ5人に応じてもらった。立候補しているのは、3選を目指す自民前職の西田昭二氏(55)、4選を目指す立憲民主前職の近藤和也氏(50)、共産新人の南章治氏の3氏(69)。近藤氏は2回連続で西田氏に敗れたたものの、比例代表で復活当選している。

  「出口調査」と述べたが、対象はわずか10人なので調査としてはデータ不足でもあるので、「出口聞き取り」との表現が適切だ。その結果は、近藤6票、西田4票だった。女性5人は全員、近藤氏を指差した。男性は4人が西田氏を、1人が近藤氏を指さした。その理由も尋ねた。女性は「地震と大雨の能登を任せるのはなるべく若い人がいい」「近藤さんは仮設住宅を訪れ、私たちの不満などに耳を傾けてくれている」「(地震と豪雨の二重被害では)立民と自民が協力してほしい。自民にハッパをかける意味であえて近藤さんに入れた」と話してくれた。一方、西田氏に入れた男性は「(能登の二重被災には)自民がしっかりしてもらわないと困る」「復興復旧をはやく進めるために自民の国会議員にはがんばってほしい」「国への要望などパイプ役を西田氏は担っている」と述べた。

  仮設住宅のある地域に住民票を移していない人も多いことから有権者であれば誰でも投票できる期日前投票所を仮設住宅に設けた。ここでの期日前投票はあす22日も午前9時から午後4時まで行われる。23日以降は輪島市町野小学校に場所を移す。

⇒21日(月)夜・金沢の天気   はれ

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★能登の二重被災と総選挙~防災服姿でたすき掛けはせず~

2024年10月20日 | ⇒ドキュメント回廊

  能登地方を含む石川3区で立候補している、立憲民主の前職の近藤和也氏の選挙活動を金沢市と隣接する内灘町で見てきた。その立ち姿はまったく選挙らしくない。防災服姿で、たすき掛けもしていないのだ=写真=。地元メディアで何度も報じられているが、近藤氏は七尾市での出陣式で「与党も野党も関係なく、助け合わなければならない時期。選挙なんてやっている場合か。それが能登の総意だと思う」と憤りの声を上げた。選挙実施への反発を込め、選挙期間中は防災服姿で、たすき掛けをしないことを宣言したのだ。その主張はいまも一貫している。

  元日の地震後、これまで選挙区内で整備された6000戸余りにもなる仮設住宅を足しげく回り、被災者の声を国会論戦などで反映させてきた。地震と豪雨の二重被災の奥能登(輪島市、珠洲市、穴水町、能登町)へは選挙期間中にそれぞれの自治体を2回ずつ回るという。「まだ能登は大変なんだと全国に訴えていきたい」と述べていた。

  選挙戦はあすから後半戦に入る。メディア各社は世論調査による選挙情勢を伝えている。石川3区の情勢はある意味で全国が注目する選挙でもある。自民前職の西田昭二氏、そして近藤氏、共産新人の南章治氏の3氏が立候補しているが、注目されているのが西田氏と近藤氏の競り合いだ。3選を目指す西田氏の前回(2021年10月31日投開票)の得票数は8万692票、4選を目指す近藤氏の前回は7万6747票だった。その差は3945票。近藤氏は2回連続で比例代表で復活当選していて、選挙区での議席獲得を目指す。

  選挙序盤の情勢を日経新聞(18日付)は「近藤先行、西田が猛追」との見出しで「近藤が立民支持層の9割、無党派層の5割をおさえて先行する。西田は自民支持層の7割をまとめ激しく追う」と記している。共同通信の情勢調査では、「近藤氏やや先行、西田氏追う」の見出しで、「西田、近藤両氏の3度目の対決となる3区では、近藤氏が立民支持層の9割以上を固め、共産支持層の3割近くにも浸透している。無党派層は6割が近藤氏を支持している。西田氏は公明の7割超、自民の6割近くを押さえた」とある(17日付・北國新聞)。

  「選挙なんてやっている場合か、これは能登の総意だ」と解散を批判してきた近藤氏に風は吹くのか。復興に向け国とのパイプ役を訴える西田氏が後半戦を突破するのか。

⇒20日(日)夜・金沢の天気    はれ

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☆能登の二重被災と総選挙~ウグイス嬢のマイク叫びは控えめ~

2024年10月19日 | ⇒メディア時評

  衆院総選挙の期間中に見るいつもながらの光景は「ウグイス嬢」「桃太郎」「ドブ板」の3つではないだろうか。ウグイス嬢は選挙カーに乗って、「〇〇をよろしくお願いします」とマイクで叫びながら街を流すが、終盤ともなると「最後最後のお願いです。どうぞどうぞよろしくお願いします」と泣きが入った声になる。「桃太郎」はたすきをかけた候補者が、のぼりを持った運動員たちとともに街のメイン通りや商店街を練り歩き、支持を訴える。このシーンは、桃太郎がキジやサル、イヌたちとのぼりを立てて鬼退治に向かう昔話からそう名付けられている。「ドブ板」は候補者が裏路地まで入って地域の有権者にあいさつする光景だ。

  では、石川3区ではどのような選挙の光景が繰り広げられているのか。きのう(18日)午後、自民前職の西田昭二氏は輪島市町野町の仮設住宅で遊説を行っていた=写真=。町野地区では元日の地震で、さらに9月の記録的な大雨で山から土砂が流れ多くの家屋が全半壊する二重被災に見舞われた。倒壊した家屋がいまも野ざらしになっている場所も少なくない。

  ここでマイクを握った防災服姿の西田氏は自らも被災して家族は仮設住宅で暮らしていると話し、「あまりにも被害が大きく、復旧復興には時間がかかる。どれだけ環境が変化しても、能登に住む方にとってここは大切な場所。安心してふるさとで暮らせるよう、住宅の再建や生業(なりわい)の再生に、『出来ることは全てやる』『やらなければならないことは必ずやる』との強い思いをもって全力で取り組む」と述べていた。

  冒頭で述べた「桃太郎」「ドブ板」の光景は仮設住宅ということもあり遠慮したのだろうか、支援者と握手を交わす以外は見ることはなかった。西田氏はその後、別の仮設住宅へと向かった。選挙カーの「ウグイス嬢」はマイクのボリュームを低めに「よろしくお願いします」と叫んではいたものの、「被災されお亡くなりになられましたご遺族の皆様へ心よりお悔やみを申し上げます」とのフレーズも何度か入れていた。被災地に気配りをした選挙活動だった。

  石川3区の3候補はどのような能登の将来ビジョンを訴えているのだろうか。地元の新聞メディアが3氏に、「能登の復旧・復興、将来のグランドデザインをどう描くか」とのアンケートを行っている。これに対し、西田氏は「移住定住の促進とコミュニティーの再生、交通インフラの改善、関係人口の増加など施策を組み合わせ一歩一歩進めることが必要」、立憲民主の前職の近藤和也氏は「能登の農林水産業の活性化を図る。浮体式の洋上風力発電は成長産業の軸にもなり、能登のその候補地となりうる」、共産の新人の南章治氏は「被災地の医療・介護事業、施設の経営を国と自治体が支え、高齢者の人権と尊厳が守られる年金、介護、医療制度の改革を進める」と述べている(19日付・北陸中日新聞)。

  3氏のビジョンはどれも能登の復興には欠かせない。一つにまとめて復興計画に組み込めないものだろうか。

⇒19日(土)夕・金沢の天気    あめ 

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★能登の二重被災と総選挙~3候補者それぞれの被災体験~

2024年10月18日 | ⇒ドキュメント回廊

  元日の地震と9月の記録的な大雨に見舞われた選挙区である石川3区で立候補している3人はそれぞれが被災者でもある。これまで地元メディアで3氏が語った被災体験をピックアップしてみる。

  自民の前職の西田昭二氏は元日に地元七尾市内などでの街頭演説を終え、買い物をしていたときに揺れが襲った。市内の自宅は屋根瓦が落ちるなどの中規模半壊となった。しばらく家族とともに親族宅に身を寄せ、今は仮設住宅に入った。被災地をめぐり惨状を目にした。生活再建の支援策をめぐって被災者から辛辣な言葉を投げられたこともある。むしろ、そうした声を真摯に受け止め、国に伝えるパイプ役がこそが自らの役割と言い聞かせ、公費解体の加速化や液状化対策などの課題を関係省庁に訴え調整してきた。

  立憲民主の前職の近藤和也氏は、被災地の能登でなぜ今、選挙をしなければならないのか疑問を持って、選挙に臨んでいる。能登半島の先端にある須須神社で元日の初詣をして、七尾市への帰り道で妻子とともに被災した。場所は穴水町のガソリンスタンド。その日の夜になんとか七尾にたどり着き、町内の避難所に行く。仕切り役が不在で自らトイレや寝床の確報に奔走した。東日本大震災などの被災地で経験したことが役立った。これまで能登の仮設住宅をすべて回り、困りごとなど聞いてきた。給付金など実現できたこともあるが、やらねばならない課題が山積している。

  共産の新人の南章治氏は、金沢市と隣接する内灘町の自宅で被災した。内灘は液状化現象が激しく住宅や道路などで多数の被害が出た。震災の翌日には車を走らせ、羽咋市の党事務所で仲間の安否確認から始めた。この間、支援物資の提供や被災者の要望を聞いて回った。発生から1ヵ月もたたないとき、目を疑ったことがある。奥能登のある1次避難所を訪れたとき、冷たい弁当すらない現状だった。東日本大震災の対応より後退していると思った。被災地の人々は一緒に精神的打撃を受けたのに、建物の被害判定で支援の幅が異なることを歎く被災者の姿も見てきた。

  選挙という枠では票数が基準となるが、3氏のそれぞれの被災経験、そして被災地や避難所での活動には政治の枠を超えた「人道」を感じる。こうした体験や感性を今後、政治に活かしてほしいものだ。

⇒18日(金)午後・金沢の天気      くもり 

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