自在コラム

⇒ 日常で観察したことや環境問題、金沢大学での見聞、マスメディアとインターネットについての考察を紹介する宇野文夫のコラム

☆仕込みか、やらせか

2019年10月17日 | ⇒メディア時評

   ニュースを見ていて、「おかしなことになっている」とぶつやいた記事を2つ。16日午前10時10分ごろ、能登半島沖320㌔の日本のEEZ(排他的経済水域)の大和堆で「北朝鮮籍と見られる漁船が転覆し、乗組員が転落した」と水産庁から海上保安庁に通報があった。海上保安庁は救助活動のため巡視船や航空機を現場に向かわせた。水産庁の取締船が、北朝鮮籍とみられる漁船から「ほかの漁船が転覆した」との情報を得て、それを海保に通報した(17日付・日経新聞)。

   現場は今月7日、違法操業の取り締り中だった水産庁の取締船と北朝鮮漁船が衝突し、漁船が沈没する事故があったところだ。今回違法操業をしていたであろう北朝鮮の漁船が水産庁取締船に発信した「漁船が転覆した」という情報はどこまで信用できるのか。水産庁の取り締まりをかく乱し、惑わすためにわざと偽の情報を流したと勘ぐることもできる。偽情報によって、水産庁から通報を受けた海保が巡視船や航空機を出して捜索しているとしたら、と考えると虚脱感も漂う。7日の衝突事故では北の乗組員60人を全員救助して、事情聴取もせずにそのまま帰した。北朝鮮は12日、日本側が故意に衝突した犯罪的な行為だとして、沈没船の損害賠償を求めた。「日本人は騙しやすい」と北朝鮮は笑っているかもしれない。何とも、おかしなことになっている。

   テレビ朝日は16日夜に会見を開き、夕方の報道・情報番組「スーパーJチャンネル」で3月15日に放送した「業務用スーパーの意外な利用法」という企画コーナーで、スーパーを利用する一般の客などとして取り上げた男女5人は、実際には番組の契約ディレクターの知人で初対面のように偽っていたと発表した。テレビ朝日は「信用を著しく毀損する重大な問題」「仕込み、やらせと言われても否定できない」として謝罪した(17日付・朝日新聞)。

   49歳男性の契約ディレクターは俳優養成教室の講師も務めていて、男女5人のうち4人はこの教室の生徒だった。「出演」のギャラを払わなくても、「テレビに出演できるよ」というだけで生徒たちは喜んで集まっただろう。想像するに、初対面を装う演技はとても自然な仕草で、視聴する側にも違和感のない、見事な演技だった。契約ディレクターも「最高の演技だったよ」と俳優の卵たちをほめていたに違いない。「テレビ局は騙しやすい」と契約ディレクターは笑っていたかもしれない。何とも、おかしなことになっている。(※写真はローマのバチカン宮殿「ラフェエロの間」にある「アテネの学堂」)

⇒17日(木)夜・金沢の天気    はれ

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☆「焚きつけ」の任命責任はどうなのか

2019年10月14日 | ⇒メディア時評

     台風19号の被害が日を追うごとに拡大している。北陸に住む自身にとっては、千曲川の堤防決壊で長野市にある新幹線車両センターの北陸新幹線の車両が水に浸かった画像はショックだった=写真・上=。豪雪にも強いと頼っていた北陸新幹線だけに、10編成、120車両が並んで水に浸かっている様子は痛々しい。13日始発から金沢―東京間がすべて運休。浸水が床上に及んでいる場合は電子機械や変圧器の取り換えが不可能となり、廃車となる可能性もあると指摘されている。今後金沢への観光客が激減するだろう。さまざな後遺症が出てきそうだ。

  話はがらりと変わる。このニュースに接して、任命責任はどうなのか、と問いたい。韓国の文在寅大統領の側近で、家族を含めてさまざまな疑惑が出ている曺国(チョ・グク)法務部長官がきょう14日付で辞任することを明らかにしたとメディア各社が伝えている。韓国の聯合ニュースWeb版=写真・下=にアクセスすると、「조국, 취임 35일만에 사의 "檢개혁 불쏘시개 역할은 여기까지" 」(法相、35日で辞意表明 “検察改革焚きつけ役割はここまで”=グーグル翻訳)との見出しで詳細に報じている。以下、要約する。 

  曺法務部長官は14日、電撃的に辞意を明らかにした。先月9日に就任して35日目となる同日午後2時に「検察改革のための焚きつけ役割はここまでです」という声明文を出して辞意を明らかにした。長官は「検察改革は学者や知識人としての私のライフワークの使命であり、長い間悩んで追求してきた目標であった」としながらも、家族をめぐるいくつかの疑惑と検察の捜査があり、「これ以上大統領と政府に負担をかけてはならないと判断した」と述べた。さらに、検察改革の完遂が近づいてきたと明らかにし、「私は検察改革のための『焚きつけ』に過ぎない。その役割はここまで」と声明文で述べた。

  曺氏の辞意表明を受けて、文大統領は「結果的に国民の間に多くの葛藤を引き起こしたことについて非常に遺憾に思う」と謝罪し、「検察改革は最も重要な国政目標であり、完全な実現のために最後までやり遂げる」とのコメントを発表している。

  今月3日、ソウルでは文大統領に退陣を要求する大規模なデモがあり、「法務部長官、辞退を」と叫ぶ数十万人が光化門からソウル駅の2.1㌔㍍を埋め尽くした(韓国・中央日報)。9月28日に行われた大統領支持派のデモと同規模で、まさに「国民の間に葛藤」を起こす大問題になっていた。

  そもそも「玉ねぎ」ように次から次と疑惑は曺国氏の長官就任前から出ていた。曺氏の妻が娘の大学院進学に有利になるよう東洋大総長名義の表彰状を偽造したとされる事件。妻はその後、私文書偽造の罪で在宅起訴されている。不正入学疑惑では、すでに娘や息子も聴取するなど異例の捜査展開となっている。

  曺氏の長官就任直後の大統領支持率は韓国ギャラップによると、9月第3週の調査では支持率が40%(前回43%)、不支持率53%(同49%)で、支持率は落ち込んでいた。支持しない主な理由はやはり曺国氏を法務部長官に任命した人事問題だった。世論を甘く見て、長官任命を押し切ったことに、その任命責任は問われないのだろうか。曺氏の辞任で政権の求心力は再び高まるとはとても思えない。

⇒14日(祝)午後・金沢の天気    くもり

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☆韓国の荒れた日

2019年10月04日 | ⇒メディア時評

    台風18号から温帯低気圧に変わり、金沢でも今朝から非常に激しい雨が降っている。台風18号をネットで調べると、AFP通信(日本語版)が「韓国の行政安全省は3日、豪雨と強風を伴って同国に上陸した台風18号により、少なくとも9人が死亡、さらに数人が行方不明になっていると発表した。」と伝えている。この台風は2日夜に韓国に上陸し、洪水警報が発令された。同省によると、これまでに家屋1000戸以上が損壊したという。

    同じAFP通信によると、同日、ソウルでは文在寅大統領に退陣を要求するデモが開かれたと、写真(21枚)を掲載している=写真・上=。韓国の中央日報も「『チョ・グク法務部長官、辞退を』光化門~ソウル駅の2.1㌔㍍を埋め尽くした」との見出しで空撮映像を掲載している=写真・下=。産経新聞Web版によると、ソウル中心部で文氏退陣を求めるデモは数十万人規模。先月28日に行われた文大統領の支持デモと同規模で、「国論の二分が鮮明になった」と報じている。

    また、この日は疑惑の渦中にある曺国法相の妻である韓国東洋大教授のチョン・ギョンシム被告=先月23日に起訴=が検察に出頭し事情聴取が行われたとNHKなど日本のメディア各社も伝えている。チョン被告は、娘の大学進学に有利になるよう東洋大総長名義の表彰状を偽造したとし、私文書偽造の罪で在宅起訴された。韓国では逮捕状の請求に至るかどうかが注目されている。不正入学疑惑では、すでに娘や息子も聴取するなど異例の捜査展開となっている。検察改革を掲げる曺国法相との対立が増々深まっているようだ。

    文在寅大統領に退陣を要求するデモもこの国民不信によるものだろうか。韓国ギャラップのホームページをチェックすると、文大統領の支持率(9月第3週の調査)は支持率が40%(前回43%)、不支持率53%(同49%)で、支持率は落ち込んでいる。支持しない主な理由はやはり曺国氏を法相に任命した人事問題だった。

    3日は「開天節」と呼ばれる韓国の祝日で、建国記念日に相当するめでたい日だが、大荒れの日になったようだ。

⇒4日(金)朝・金沢の天気     あめ

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★「京アニ事件」、その後

2019年09月30日 | ⇒メディア時評

         大学で担当するマスメディア論では、メディアの5のチカラを解説することから始める。ニュースや情報を集める取材力、ニュースを選び扱いの順番をつける編集力、毎日紙面(番組)をつくる制作力、何が起きてもすぐ説明する解説力、世論を形成する論説力だ。

        そのチカラを発揮するのが、マスメディアの業界用語で「発生もの」だろう。事件や事故、災害など予期せぬことが起きて取材する場合、「発生ものだ。はやく現場に行け」と本社の報道デスクは記者に指示を飛ばす。発生ものの場合、本社の社会部や地域の支局の記者が現地に取材に入ることになる。たとえば火災現場なら、火災が起きた現場に行く(接近)。現場で消防や警察の関係者、火災の通報者、近所に住む住民から情報を多面的に収集する(取材)。その情報を得て、失火なのか放火なのか火災の原因性を調べる(調査)。その原因性の真実はどこにあるのか調査する(探求)。それらの取材を経て読者や視聴者に伝える(報道)。この5のポイントは報道記者の基本動作と言ってよい。

   ことし7月18日午前10時35分に発生したアニメ制作会社「京都アニメーション」への放火事件では35人が死亡、34人が負傷した。この事件から75日になるが、不可解な点がいくつか残る。犯行の動機だ。容疑者の犯行について、「『小説を盗んだ』恨みを抱く」(7月20日付・毎日新聞)と報じられた。実際、京都アニメーションは「京都アニメーション大賞」を設け、アニメ化を前提に小説やシナリオを公募していた。これについて、「京都府警は青葉容疑者自身が書いた小説を応募したとみて、京アニ側から作品を入手。捜査関係者によると、小説はストーリーを伴い、『ちゃんとした小説になっている』という。」(8月18日付・朝日新聞Web版)。犯行動機とされる著作権侵害に対し、「京アニの代理人弁護士は形式面で1次審査を通過しなかったとし、『これまで制作された作品との間に類似の点はないと確信している』」(同)と応えている。犯行の強い動機となった著作権侵害があったのか、なかったのか、さらに突っ込んだ取材が必要だろう。

   この事件めぐる犠牲者の実名報道についても「違和感」がある。京都府警は8月2日に10人の実名を公表し、同月27日に25人の実名を公表した。警察側の判断では、葬儀の終了が公表の目安だった。メディア各社は公表された実名を報道した。府警は同時に「犠牲になった35人の遺族のうち21人は実名公表拒否、14人は承諾の意向だった」(9月10日付・朝日新聞Web版)と説明している。その拒否の主な理由は「メディアの取材で暮らしが脅かされる」だった。遺族側が警戒しているのはメディアという現実が浮かび上がっている。

   被害者や遺族に対するメディアスクラム(集団的過熱取材)は以前からさまざまに批判を浴びている。「報道被害」という言葉も社会的にはある。冒頭で述べた現場記者が取材の基本動作を守れば、当然遺族への取材は必然になる。この矛盾をどう正せばよいのか。メディアスクラム化を避ける代表取材であったとしても、記者が玄関のドアホンを鳴らしただけで、生活を脅かされたと敏感に感じる遺族もいるだろう。

⇒30日(月)夜・金沢の天気    はれ

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★北の武装船、八千代丸事件の悪夢

2019年09月04日 | ⇒メディア時評

   これは韓国に続いて、北朝鮮からの「あおり運転」だろうか。報道によると、8月23日午前9時半ごろ、能登半島沖のイカ釣り漁場、大和堆で武装した船員が乗った北朝鮮籍とみられる不審船2隻を水産庁の取締船が見つけ、連絡を受けた海上保安庁の巡視船が駆け付けた。巡視船が警戒監視を続けたところ、不審船は去った。

   現場は、日本と韓国のいずれの漁船も操業できる日韓暫定水域の、日本の排他的経済水域(EEZ)内の海域でのこと。周辺では日本の漁船も操業していて、水産庁は漁船に対し、安全確保のため海域を離れるよう伝達した。北朝鮮海軍らしき旗を掲げた不審船は、小型高速艇と北朝鮮の国旗が船体に描かれた貨物船で、高速艇には小銃を持った船員がいたという。

   毎年のようにEEZには北の木造漁船が数百隻も押し寄せているが、今回武装船となるとただ事ではない。能登半島の先端、石川県能登町小木港のイカ釣り漁業関係者の心境を察する。それは、1984年7月27日に起きた「八千代丸銃撃事件」がまだ記憶にあるからだ。小木漁協所属のイカ釣り漁船「第36八千代丸」が、北朝鮮が一方的に引いた「軍事境界線」の内に侵入したとして、北朝鮮の警備艇に銃撃され、船長が死亡、乗組員4人が拿捕されるという事件だった。1ヵ月後の8月26日に「罰金」1951万円を払わされ4人は帰国した。当時私は新聞記者で船長の遺族や漁業関係者に取材した。「北朝鮮は何を仕出かすか分からない」と無防備の漁船を銃撃したこの事件に恐怖心を抱いていた。小木ではこの感情が共有され、今でも引きづっていることは想像に難くない。

   日本の海で操業していて、武装船が入ってきて、身の危険を感じなければならない状況というのは、まさに北の「おあり運転」だ。その狙いは、八千代丸事件のように、銃撃と拿捕により人質を取り、「軍事境界線」の内に侵入したとして「罰金」をせしめるつもりではないかと。なにしろ、今回武装船が確認された場所は北が主張する「軍事境界線」と近いのだ。(※写真は、能登町の小木漁港に停泊するイカ釣り漁船)

⇒4日(水)朝・金沢の天気     くもり

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★「パンダ大使」の行く末

2019年09月01日 | ⇒メディア時評

  毎日ニュースに目を通していて気になったものをいくつか。最初は、NHKが伝えていた、「パンダが日中貿易摩擦に巻き込まれる? 米有力紙報道」の報道(8月29日)。米有力紙とはワシントン・ポスト紙だと紹介されていたので、さっそく同紙のWeb版を検索する。

  Could pandas get caught in the U.S.-China trade war? と見出しが踊る=写真=。記事を読むと、ワシントンD.Cのスミソニアン国立動物園にはジャイアントパンダのメイシャン(メス・21歳)とティエンティエン(オス・22歳)、そして子のベイベイ(オス・4歳)の3頭がいる。パンダは毎年何百万人もの見学者を引き寄せ、桜と並ぶワシントンのシンボルにもなっている。 

  記事によると、パンダの中国側と動物園側のリース契約は20年で来年2020年12月7日に契約切れとなるが、現時点で更新に向けた話し合いは始まっていないのだという。ちなみに、年間リース価格は50万㌦と。愛くるしいパンダだが、中国にとっては外交の道具でもある。東西冷戦の最中、1972年2月にアメリカのニクソン大統領が中国を電撃訪問、国交樹立の足掛かりをつくった。その2ヵ月後に中国はパンダをアメリカに寄贈している。パンダは「親善大使」でもある。そのパンダが中国に戻ることになれば、米中関係が冷戦に戻ったことのシンボルにもなる。

  中国側と動物園側の契約が無事更新されるのかどうか。同紙は「the U.S. political landscape by late 2020 is a mystery. 」と伝えている。次にアメリカ大統領選挙が実施される2020年後半までは政治情勢はミステリーだ、と。

  もう一つ気になったニュース。30日の閣議で、読売新聞グループ本社の白石興二郎会長(72歳)をスイス大使に充てる人事を発表したと報じられた。新聞メディアに対する違和感を感じた。30日付で退職しているとはいえ、報道機関のトップが政府のプレーヤーに転身する。大使の民間起用には異議はないが、権力監視が本分であるはずのメディアの現職が、政府から起用されたからといって簡単に受けるものだろうか。メディアは権力と距離感を保っておかないと、読者・視聴者の不信を招くのは言うまでもない。メディアは権力のかわいいパンダにはなってはいけない。

⇒1日(日)午前・金沢の天気     くもり 

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★政治と「実行力」、問われる夏

2019年08月09日 | ⇒メディア時評

   きのう(8日)学生5人を連れて、輪島市をインターンシップの事前研修に訪れた。車中で女子学生と交わした話だ。こちらから「滝川クリステルが小泉進次郎と結婚するね」と水を向けると意外な言葉が返ってきた。「私だったら進次郎は避ける。お兄さん(孝太郎)がいい」と。その理由を尋ねと。「政治家の妻って大変じゃないですか。選挙もあるし」。少し間を置いて、「女子はみんなそう言ってますよ」と。

   なるほど、女性の視線からは選挙が大きなバリアに見えるのだ。逆に言えば、それを超えて進次郎と結婚を決めたクリステルの決断力は相当なものだったろう。記者会見(7日)で進次郎が発していた「(クリステルを)選挙には関わらせない」という言葉は、ひょっとしてクルステル側の結婚の条件だったのかもしれないと今ふと考える。

   話は変わるが、NHKが報じていた最近の世論調査(8月2、3日実施)で安倍内閣を「支持する」と答えた人は、3週間前の調査より4ポイント上がって49%、「支持しない」は2ポイント下がって31%だった。2017年10月の第4次安倍内閣では「49%」は最も高く、「31%」は最も低い。つまり、数字的には安倍内閣は絶好調ということだろう。

   支持する理由では「他の内閣より良さそうだから」が47%、「実行力があるから」が20%と続いた。3ヵ月前の5月の世論調査では「他の内閣より良さそうだから」50%、「実行力があるから」14%だった。相対評価が3ポイント下がり、実行力という絶対評価が6ポイント上がったことになる。この実行力とは何かを分析してみると、韓国を「ホワイト国」から除外したことだろう。8月の世論調査では、政府が韓国を輸出管理を簡略化する優遇措置の対象国から除外する決定をしたことについても尋ねている。この決定を「支持する」55%、「支持しない」8%、「どちらともいえない」27%の数字だった。つまり、「ホワイト国」除外が実行力としてイメージアップにつながったのではないだろうか。

   おそらく次に実行力が問われるのは「憲法改正」だろう。これも8月の世論調査で尋ねている。憲法改正に向けた議論を進める必要があると思うかとの問いに、「進める必要がある」34%、「進める必要はない」24%、「どちらともいえない」34%となっている。先の参院選挙(7月21日投開票)で「改憲勢力」と称される自民、公明、日本維新の会の議席は160となる、改憲の国会発議に必要な3分の2の(164)には届かなかった。

   ここに来て、アメリカが中東のホルムズ海峡の安全を確保するため結成を検討している「有志連合」に、日本を含む同盟国などに参加を呼びかけている。イギリスは参加を表明しているが、ドイツは不参加だ。自衛隊を有志連合に派遣するかどうか、改憲の肝(きも)が「自衛隊」の明記だけに安倍内閣はぎりぎりの選択を迫れるだろう。ちなみに、同じNHK世論調査では、自衛隊派遣に「賛成」22%、「反対」32%、「どちらともいえない」37%だ。(※写真は、小泉進次郎氏と滝川クリステルさんの結婚を伝える8日付の新聞各紙)

⇒9日(金)朝・金沢の天気    はれ

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★「タラタラ質問してるんじゃね~よ」

2019年08月06日 | ⇒メディア時評

   心が弾むニュースだった。女子ゴルフの全英女子オープンで渋野日向子選手が優勝した。日本選手として樋口久子選手が1977年に全米女子プロ選手権で優勝して以来、実に42年ぶりのメジャータイトルでの優勝だ。気さくに笑いながらインタビューに応じるその姿は海外でも「スマイルシンデレラ」というニックネームがついているそうだ。きょう6日午後3時30分から、帰国してた羽田空港で渋野日向子記者会見を行う様子を民放各社が生中継しているのを視聴した。

   会見で記者が海外で「スマイルシンデレラ」というニックネームで親しまれていていることについて質問すると、渋野選手は「そうやって名付けてもらえるのはうれしかったが、シンデレラは良く言いすぎ」「ゴルフは自分が楽しんでやらないとみんな楽しくないのでそこは心がけている」「世界でも笑顔は共通だと思った」と話していた。ギャラリーとのハイタッチが負担にならないかという質問に対しては、「無視されるより、注目されるほうがずっといい。大会中は、どんどんタッチをしてくれる人が増えていってすごくうれしかった」と笑顔で話していたのが印象的だった。

   また、昨年7月の西日本豪雨で出身地の岡山県が大きな被害を受けたことを質問された渋野選手は「豪雨災害のときと同じタイミングでプロテストに合格した」「被災地の人たちに何も手助けができなくて、このままでいいのだろうかと思っていた」「豪雨災害の日のことを忘れたことはない。地元の皆さんを元気づけるには私が結果を出さないといけないと思っていた」と郷土愛がにじみ出た言葉だった。

   記者会見で違和感を感じた質問も多かった。「ゴルフとソフトボール、どっちが好きですか」「うれし泣きする瞬間はありましたか」「樋口久子さんに新人類と言わせるぐらいのメンタルを身につけた秘訣は」「優勝の実感はわいてきましたか」などなど。渋野選手は笑顔で答えていたが、視聴しているこちらの方がいらいらと。

   記者会見での質問は基本的に相手の心情を引き出すものだろう。「優勝の実感はわいてきましたか」などと抽象的な質問しても、本人は「だんだんとわいてくると思います」としか答えようがなかった。つい、こちらが「タラタラ質問してるんじゃね~よ」とつぶやいてしまった。(※写真は、渋野日向子選手の優勝を伝えるイギリス「BBCニュース」Web版)

⇒6日(火)夜・金沢の天気    はれ

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☆「大騒ぎ」という病(やまい)

2019年08月02日 | ⇒メディア時評

      北朝鮮がまた2発のミサイルを発射した。報道によると、きょう2日午前2時59分と3時23分に、朝鮮半島の東部の咸鏡南道付近から日本海に向けて短距離の飛翔体を2回にわたって発射した。先月25日に新型短距離弾道ミサイルを2発、31日に新型多連装ロケット砲を2発それぞれ発射している。また、政府発表によると、日本の領域や排他的経済水域(EEZ)への弾道ミサイルの落下は確認されていないようだ。それにしても、日本海側に住む者にとって迷惑極まりない。

   アメリカと韓国の合同軍事演習が今月5日から始まるのを前に、韓国への「武力示威」だと警告(7月25日付・朝鮮中央日報HP版)している。3回連続となると、逆に合同軍事演習をチャンスととらえて、発射実験を繰り替えているのではないか勘ぐってしまう。単なる警告ならば、新型の短距離弾道ミサイルや新型の多連装ロケット砲を発射しないだろう。

   北の金正恩氏と負けず劣らずなのが、韓国の文寅在大統領ではないだろうか。日本が安全保障上の輸出管理で優遇措置を取る「ホワイト国」(優遇対象国)から韓国を除外する政令改正を行うことについて、韓国側が大騒ぎしている。今月末に更新期限を迎える日本と韓国の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)にも韓国側は更新しないと揺さぶりをかけている。

   そもそも、ホワイト国は政府が信頼できる輸出先だと認める国だ。武器や大量破壊兵器、それに関連する資材、兵器の汎用品などについて経産大臣の許可が必要だ。ところが、韓国側が認めているように、武器製造に転用可能な戦略物資の違法輸出を摘発した事例が2015年から19年3月までに156件あった(7月12日付・東京新聞HP版)。日本政府が信頼できないというのであればホワイト国を除外するのが道理だろう。それを、アメリカに、いわゆる「告げ口外交」で攻勢をかけたり、アメリカにとっても迷惑な話だろう。

   政府は午前中の閣議で、ホワイト国から韓国を除外する政令改正を決定した、とのニュース速報が流れた。政令公布の21日後に施行され、今月28日に発動する。冷静に対応すればまったく問題のない通商問題なのだが、あえて大騒ぎする。韓国の病(やまい)かもしれない。(※写真は、イタリアのフィレンツェにあるサンタ・クローチェ教会の壁画に描かれている「聖十字架物語」)

⇒2日(金)午前・金沢の天気     はれ

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★「マスメディアと現代を読み解く」の講義から-5-

2019年07月19日 | ⇒メディア時評

    記者会見をテーマにした講義では、学生たちに「最近印象に残っている記者会見は何か」とリアクション・ペーパー(感想文)に記述してもらった。65名から回答があったが、芸能人やスポーツ選手の会見が印象深いようだ。

    ~計算された記者会見、人生のドラマが凝縮される記者会見~

    お笑いコンビ「南海キャンディーズ」の山里亮太と女優の蒼井優の結婚発表会見(6月5日)は「予想もしなかった電撃結婚」。面識のない女性をコンビニで平手打ちしたとして逮捕された音楽グループ「AAA」のリーダー浦田直也のお詫び会見(4月21日)は「スーツを着てキリッとした格好で記者会見に現れたが、記憶にない、覚えていないとヘラヘラ笑っていた。違和感を感じた」。 ウィンブルドン・ジュニア選手権の男子シングルスで初優勝した望月慎太郎の記者会見(7月14日)には「16歳ながら、落ち着いた態度で記者を端々で笑わせる面白い会見だった」と。記者会見ではさまざま人間模様が見えてくる。

    講義では自分自身の印象に残る会見として、日本大学と関西学院大学のアメリカンフットボールの定期戦で悪質なタックルをし、関学大選手を負傷させた日大の加害選手の記者会見(2018年5月22日)を紹介した。特徴として、20歳で実名での会見だったこと、場所が日本記者クラブで会見したことだ。同記者クラブでの会見は弁護士は同席させないルールだが、本人が20歳ということで2人の弁護士が同席したことも異例だった。会見では、故意や動機、計画性、事件に至る心情、事件後の状況をとつとつと述べ、深い反省の態度を示した。その上で、悪質なタックルは前監督とコーチの指示だったと述べた。このことで、加害選手に同情が寄せられた。

    では、加害選手は誰に向けてメッセージを発したのか。けがの程度は全治3週間の軽傷で、会見の3日前に日大監督が西宮市内を訪れて被害選手と父親に謝罪、あわせて監督を辞任している。普通ならばこの一件はここで落着となるが、5月21日に被害選手の父親が(大阪市議)が記者会見で大阪府警に被害届を出したと発表した。加害選手の会見はその翌日だった。刑事処分になった場合、加害選手本人が傷害罪として罰せられる。この最悪のケースを防ぐ必要があり、弁護士2人が急きょ記者会見をセットした。ポイントは本人の深い反省の弁と、前監督とコーチの指示によるものだったと強調することだった。つまり、記者会見を通して、警察・検察にメッセージを送ったのだ。刑事処分を念頭に、計算され尽くした記者会見だった。

   記者会見にはさまざまなパターンがある。災害の緊急記者会見は混乱を伴う。原告団記者会見は大人数が並ぶ。謝罪会見ではお詫び、頭の下げ方まで注目される。記者会見は筋書きのないドラマでもある。「前代未聞の記者会見」と呼ばれた佐藤栄作総理の退陣表明の会見(1972年)は「新聞記者所払い」があった。「テレビカメラはどこかね。僕は国民に直接話したい。テレビは真実を伝える。偏向的新聞は大嫌いだ」と述べた。怒った新聞記者が退席した会見場で、総理はNHKのカメラに向かって一人でしゃべり続けた。これがノーベル平和賞を受賞した日本の総理の最後の会見だった。

   会社や役所内で不祥事があれば、記者会見での対応が必要となる。記者会見でさらに印象が悪くなることがある。記者会見は「危機管理」の対象でもある。誰が出席して対応すべきか、記者会見中に打ち合わせをしてよいのか、どのような服装で会見に臨めばよいのか、記者会見はどのようなタイミングで終わればよいか、謝罪会見の場合、「おじぎ」は何秒頭を下げればよいのか。記者会見には人生のドラマが凝縮される。 

      (※写真は首相官邸HPに掲載されている安倍総理の記者会見の様子。右側に設置されているプロンプターには原稿が映し出されている)

⇒19日(金)朝・金沢の天気     あめ

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