自在コラム

⇒ 日常で観察したことや環境問題、金沢大学での見聞、マスメディアとインターネットについての考察を紹介する宇野文夫のコラム

★ポスト都知事選をどう読む

2016年07月31日 | ⇒トピック往来
  東京都知事選の投票が終了するやいなや、小池百合子氏の当選確実とNHKが選挙特番で伝えた。孤軍奮闘するジャンヌ・ダルクのように、元総務大臣の増田寛也氏=自民、公明など推薦=、鳥越俊太郎氏=民進、共産、社民など推薦=と戦って破った。初の女性都知事が誕生することになる。ただ、地方から眺めると「東京の課題は山積、大丈夫か」である。

   朝日新聞が人口や資本が東京都に一極集中する傾向について、全国の知事にアンケートした結果が今月22日に掲載された。それによると、43知事が回答し、東京一極集中について、35知事が「問題だ」と回答し、6知事が「ある程度問題だ」と答え、「どちらとも言えない」と2知事が返答した。長野県の阿部守一知事は「企業や大学の地方分散が進まず、東京圏への人口流入が続いている」、東海道新幹線が走り、東京への人口流出が顕著な静岡県の川勝平太知事は「人口減少の最大の元凶」「若者を吸い込む『アリ地獄』の様相」と酷評している。東京の合計特殊出生率は1.17と全国最低であることについて、石川県の谷本正憲知事は「若い世代が、出生率が低い東京圏へ集中することで、少子化・人口減少につながっている」と指摘している。

   東京が日本をけん引しているとの発想はすでに過去のものだ。多くの地方の知事は東京が日本の問題だと指摘している。具体的な問題は間もなくやってくる。団塊の世代が75歳以上となってくる2025年度には、東京圏では75歳以上の高齢者が175万人増加し、医療・介護施設が極端に不足してくる。このとき、地方の介護人材(ホームヘルパーや介護福祉士など)が東京圏に集中すれば、まさに「地方消滅」に拍車がかかる。東京発のこの日本の危機を脱するために、高齢者の地方への移住を含めた抜本的な解決策が必要となる。東京オリンピック後にやってくる「不都合な事態」だ。

   しかし、この問題に小池氏はビジョンを示していない。都知事選での公約は「セーフシティ」(住宅の耐震化・不燃化の推進、都道の電柱ゼロ化、技術開発支援、多摩格差をゼロへ)、「ダイバーシティ」(待機児童ゼロを目標に保育所の規制を見直し、ライフ・ワーク・バランスの実現・都庁が先行実施、満員電車をゼロへ、給付型奨学金を拡充し、英語教育を徹底)、「スマートシティ」(エコハウス・スマートハウスの補助強化、街灯や公共施設のLED化、東京ブランドを確立、観光・インバウンド客を増大)なのだが、少子化・人口減少や高齢者問題についてはそれらしきビジョンがない。

   それより何より、東京一極集中を問題視する他の多くの知事たちと共存のためのアラインスを組めるのだろうか。都知事選への立候補のプロセスを見ていると、小池氏のマスメディアを意識した独走的なパフォーマンスは見事だったのかもしれないが、周囲を説得する努力や根回しをするといったエフォートは感じられなかった。

    今後、要介護の高齢者を受け入れる施設や人材の不足が深刻になる想定として、高齢者の地方移住などをどう提案していくのだろうか。この意味で、東京都知事に必要なのは、近未来を見据えた東京圏と地方の共存の道筋を模索する発想だと思う。上記の東京を見つめる地方の知事の冷めた目線に小池氏はどのような政策を打ち出していくのか、注目したい。

⇒31日(日)夜・金沢の天気   はれ
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☆「生前退位」という人間味

2016年07月18日 | ⇒トピック往来
   今月13日夜のNHKニュースを視聴していて、天皇の位を生前に皇太子さまに譲る「生前退位」の意向を天皇が示しているとアナウンスがあった。このとき初めて聞いた生前退位という言葉に戸惑ったものの、天皇陛下のなんとも人間らしい言葉かと感動したものだ。

  天皇陛下は82歳、皇后さまは81歳で、両陛下は実に多忙だ。報道によると、去年皇居で要人や海外の来客と面会したのは270件、全国植樹祭など地方訪問も75回あった。天皇の公務に関しては、憲法の第六条と七条に列記されている。「第六条 天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。「第七条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。二 国会を召集すること。三 衆議院を解散すること。四 国会議員の総選挙の施行を公示すること。五 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。七 栄典を授与すること。八 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。九 外国の大使及び公使を接受すること。十 儀式を行ふこと」と。

   このほかにも、公務として新年一般参賀、講書始の儀、歌会始の儀、天皇誕生日祝賀、園遊会、国賓として来日した外国の元首や王族との会見、外国の首相、大使らに対するご引見(謁見)、拝謁、宮中晩餐、宮中午餐、全国戦没者追悼式、日本学士院授賞式、日本芸術院授賞式、日本国際賞授賞式、国際生物学賞授賞式、全国植樹祭、国民体育大会秋季大会、全国豊かな海づくり大会、宮中でも神嘗祭、鎮魂祭、招魂祭、新嘗祭(大嘗祭)など。こうした公務や宮中の儀式はテレビでも放送される。昨年5月、石川県小松市で開催された全国植樹祭で、お手植えの行事に臨まれた両陛下の丁寧なしぐさをテレビでみて、感動したものだ。皇后さまは地べたに膝を着かれて、苗木を植えられたのだ。

   今回の生前退位は、こうした国事行為や公務を先々務めが果たせなくなることを見据えての天皇陛下のご意向だ、と。責任感から出てくる、人間味あふれるお気持ちだと考える。

   現在の公務の負担を軽減する手立てとして「摂政(せっしょう)」は今すぐにでも可能だ。憲法第五条では「皇室典範の定めるところにより、摂政を置くときは、摂政は、天皇の名でその国事に関する行為を行ふ」とある。天皇がご病気など理由に皇太子が摂政として天皇に代わり公務を執り行う(政を摂る)ことができる。

   天皇が生前退位にこだわるのであれば、皇室典範を改正して上皇(じょうこう)になることは可能だ。上皇は天皇を退き、死するまでの地位をいう。そうなれば、現天皇は「平成上皇」と称されることになるかもしれない。そのとき、果たして、上皇が皇位継承権を有するのかどうか、次なる難問が待っている。

⇒18日(祝)夜・金沢の天気  くもり
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★続・東京一極集中を問う都知事選が面白い

2016年07月12日 | ⇒トピック往来
   14日の東京都知事選の告示に向け、自民党都連の推薦を得た増田寛也氏(元総務大臣、元岩手県知事)には『東京消滅~介護破綻と地方移住~』(中央公論新社)という著書がある。若者が集まる首都東京だが、そのバックヤードでは大変なことが起きている。団塊の世代が75歳以上となってくる2025年度には、東京圏では75歳以上の高齢者が175万人増加し、医療・介護施設が元々不足している東京圏では将来、介護施設を奪いあうことになりかねない、というのだ。このとき、地方の介護人材(ホームヘルパーや介護福祉士など)が東京圏に集中すれば、まさに「地方消滅」に拍車がかかる。東京発のこの日本の危機を脱するために、地方への移住を含めた抜本的な解決策が必要というのが著書の内容だ。まさに、東京オリンピック後にやってくる「不都合な事態」なのだ。

  報道によると、増田氏は昨日(11日)都庁で記者会見を開き、正式に立候補を表明した。増田氏は「この4年間で都知事3人が代わり、都政は停滞、混乱している。東京都に必要なことは積み重なった課題を早く解決することだ」と意欲を述べている。その取り組む政策として、「三つの不安の解消」と「三つの成長プラン」を提示した。

  解決すべき不安として、①子育て②超高齢化社会③首都直下地震などの災害をあげた。待機児童を解消するための緊急プログラムも策定すると述べた、という。三つの成長プランは①東京オリンピック・パラリンピックの成功②観光の一大産業化③2020年の後の東京発展の道筋、を示した。冒頭で述べた、東京発のこの日本の危機を脱するための方策は確実にやってくる。その心の準備と政策の備えができるのは増田氏以外の立候補予定者では無理だろう。


  増田氏はこれまで、著書や講演で東京への一極集中の弊害について論陣を張ってきた。今回会見では、総務大臣時代に、東京など大都市に集中した法人事業税を地方に再配分する税制改正を手がけたことなどが記者から問われたようだ。これに対して「一極集中は東京にマイナス面がある。東京や地方が抱える問題を先頭に立って解決したい」と述べている。法人事業税は本社がある東京だけに使うべきではない、支店や工場がある地方にも再配分するべきというのは道理である。しかし、東京にいると地方の実情は見えないだろう。それを税制改正を通じて見るようにしたのは増田氏の功績である。

  これまで東京一極集中を批判的に論じてきたことについて増田氏は「東京が日本全体をけん引することで、地方と共に繁栄する真の共生社会を実現する」と述べた。これまでの東京都のリーダーにはなかった地方目線ではないだろうか。いまの東京都知事に必要なのは、近未来を見据えた東京圏と地方の共存の道筋を模索する発想だと思う。

⇒12日(火)朝・金沢の天気    はれ
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☆東京一極集中を問う都知事選が面白い

2016年07月08日 | ⇒トピック往来
   参院選も最終版、きょうは「最後のお願い」の日だ。ところが、ここにきて、東京都知事選(14日告示、31日投開票)の動きが俄然面白くなってきた。

  昨日8日午後には、俳優の石田純一氏が記者会見した。「普通の市民と政治がかけ離れている。野党統一候補なら、思いを力に変換できる」と野党各党に統一候補になることを条件に出馬表明した。タレントだけに、すでに出演しているテレビCMのスポンサーとの調整も進めているという。その会見の様子を民放テレビが中継していたが、面白かったは靴だった。上下黒のスーツにネクタイ、しかし素足に革靴という異例の足回り。条件付き出馬表明も突厥なら、そのいでたちもバランスを欠く。今の言葉でいえば、エッジが効いたいでたちなのだが。

  自民党では小池百合子氏は党の推薦が得られなくて出馬するという。昨日8日の日本外国特派員協会の記者会見でも「有権者に選んでいただくのは、自民党のアベノミクス一丁目一番地は女性の活躍なので、自信を持って手を挙げた」と。小池氏は英語が堪能らしい。そこで、2020年のオリンピックでは適材と一部で評価する向きもあるが、それでよいのか。東京都が抱える問題は、待機児童問題一つをとっても多難で根が深い。東京の問題点を分析して政策としてまとめて、都民に問うというスタンスならばそれでよいが、そのスタンスがまったく読めない。

  このままでは、政策論議よりも、人気度や知名度が勝敗を左右する「劇場型選挙」になるのではないかと想像していた。ところが、冒頭で「がぜん面白くなってきた」と述べたのは、元岩手県知事、元総務大臣の増田寛也氏が都議会自民党などの要請で、出馬が濃厚になってきたからだ。

  きょう9日付の新聞各紙は増田氏が選挙明けの11日に正式に出馬表明するという。増田氏といえば、「このままでは896の自治体が消滅しかねない。若者が子育て環境の悪い東京圏へ移動し続け、人口減少社会に突入する」(『地方消滅~東京一極集中が招く人口急減』(中公新書)と言い続ける東京一極集中の是正論者でもある。実際の政策では、増田氏が総務大臣だった2007年、東京都の法人事業税の一部を国税に回し、地方に再配分できるように税制を改定。それ以降、都の予算が地方に回され、その額はこの9年間で1兆5千億円とする試算もある。

  こうした東京一極集中の是正論者を東京都民はどう評価を下すのか、あるいは増田氏はどのような新たな政策を打ち出して地方と東京がともに反映するバランス論を展開するのか、これが見ものだ。地域問題に取り組む地方の人たちにとってもなじみの深い人物だけあって、増田氏が出馬する今回の都知事には関心を寄せる人も多いことだろう。興味深い展開になってきた。

⇒9日(土)朝・金沢の天気   あめ
  



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