自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆有権者の心に火を放つのは誰か、石川県知事選の混沌

2022年02月28日 | ⇒ドキュメント回廊

   石川県知事選はこれまで述べて来たように、金沢・加賀・能登という地域感情や「森奥戦争」といわれた政争が深く絡んできた。しかし、奥田敬和氏は1998年7月に没し、後継の子息・健氏も2012年12月の衆院選で敗れ政界を引退。森喜朗氏も2012年11月に政界を引退している。では、「森奥」はもう過去の話なのか。当事者はいなくなったが、双方を支持してきた有権者の心の中にはその残影がまだある。

   いくつか検証してみる。森氏がスカウトした馳浩氏と奥田健氏の石川1区での戦いも壮絶だった。2009年8月の衆院選は全国の投票率が69.2%に対し石川1区は72.2%と盛り上がった。勝った奥田氏が所属する民主党の政権交代をかけた選挙でもあった。逆に、2012年12月は有権者の民主政権への落胆が強く、全国投票率が59.3%と低調な選挙となり、石川1区も投票率58.5%に落ち込んだ。奥田氏も馳氏に4万7000票対9万9000票対の大差で敗れ、比例復活もならず政界から身を引いた。これで「森奥戦争は名実ともに終わった」という印象を金沢の有権者は抱いたに違いない。

   それ以降、石川1区では馳氏が独走態勢に入るが、投票率は下がった。2014年12月は全国は52.6%だったが、石川1区は43.1%と極端に低かった。2017年10月も全国53.6%、石川1区は51.9%だった。知事選に出馬表明した馳氏が後継の小森卓朗氏を立てた去年10月も全国55.9%だが、石川1区は52.2%と低調だった。この投票率の低さは、有権者の立場から両氏を支援してきた人たちの「森奥戦争のロス状態」ではないかとも推測した。

   これが3月13日投開票の知事選に反映されるのか。そうではない。興味深い選挙ストーリーが浮かび上がっている。知事選は事実上、馳氏(元衆院議員)、山田修路氏(元参院議員)、山野之義氏(元金沢市長)の保守系3候補の争いになっている。馳氏と山田氏は安倍元総理が率いる派閥「清和会」の議員だった。森氏はかつて清和会の会長をとつめた。

   朝日新聞Web版(2月13日付)によると、去年11月下旬、安倍氏は派閥の山田氏を議員会館の自室に呼んで知事選立候補への自制を求めた。その後、安倍氏は山田氏を何度も呼び、「困るんだよ」と迫ったが、山田氏は「出ると決めたんです」とかたくなだった。山田氏は国会の閉会直後の12月24日、議員を辞職し退路を断った。

   派閥の領袖からいさめられても、山田氏は臆することなく出馬の意向を打ち出した。自民党県連は馳、山田の両氏に「支持」を出しているが、自民党本部からは菅元総理、小泉進次郎氏らが馳氏の応援に駆けつけている。森氏がバックヤードで馳氏支援に回ってることは想像に難くない。この森氏の関与、そして山田氏の潔さが森奥戦争のロス状態に陥っていた有権者の心に再び着火するかもしれない。

   山田氏には立憲民主党や社民党県連、連合石川など推薦・支援に回っている。まるで1994年知事選の森奥戦争のように、「自民党」対「非自民連合」の構図のように見えるが、そのような単純な構図ではない。1区(金沢)と2区(加賀)の国会議員2人は馳氏だが、3区(能登)の議員2人と12市町首長のうち8人が山田氏支持を表明している。

   地元の北國新聞社と民放が調査した告示後の調査(2月24-26日)によると、1区は「山野の支持が厚く、馳をリード」、2区は「馳の支持が伸び、山田に並んだ」、3区は「山田は底堅いものの、馳や山野も徐々に浸透」と報じている。投票に「必ず行く」の答えは82.6%と高率で、関心の高さを示している。

   3候補はともに自らの退路を断っての出馬で日増しに選挙戦は熱くなっている。混沌としてきた知事選に有権者の感度もさらにヒートアップしそうだ。

⇒28日(月)午後・金沢の天気      はれ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

★「森奥戦争」と石川県知事選

2022年02月26日 | ⇒ドキュメント回廊

   石川県の少々年配の有権者だったらおそらく「森奥戦争」と聞けばピンと来るはずだ。森喜朗と奥田敬和の両代議士によるかつての激しい政争を指す。奥田氏は1998年7月に没し、森氏も2012年11月に政界を引退してはいるが、いまでも選挙があるたびに、「森奥戦争が」とささやかれる。今回の県知事選(3月13日投開票)でも何度か耳にしている。

   現在の衆院選小選挙区は1区(金沢)、2区(加賀地方)、3区(能登地方)と別れているが、両氏が初出馬した1969年は中選挙区で1区(金沢・加賀)と2区(能登)だった。同じ1区(定数3)で、金沢が地盤の奥田氏と加賀が地盤の森氏はトップ争いを演じた。当時は、森氏は自民党の福田赳夫派の清話会に、奥田氏は田中角栄派の経世会に属していたので、2人の争いは「角福戦争」と称された派閥抗争の代理戦というイメージも当時はあった。1994年に小選挙区が導入されて奥田氏は1区、森氏は2区となり直接対決に一応終止符が打たれた。

   この森奥の戦いは県政にも波及した。1991年2月の知事選だった。8期目を目指す中西陽一知事に対して、森氏は副知事だった金沢出身の生え抜きの県庁マン、杉山栄太郎氏を自民党公認として担ぎ出した。これに対して、奥田氏は多選批判もあった中西氏への支援を掲げて金沢を中心に支持を固め、中西8選へと導いた。このときの投票率は76%、1万1000票差の激戦だった。その後、奥田氏は自民党を離党し、新生党の結成に参加する。

   知事選をめぐる森奥戦争の第2ラウンドは1994年3月だった。中西氏が任期中に死去。後継の知事選で、奥田氏は副知事の谷本正憲氏を擁立。これに対して、自民党幹事長だった森氏は、参院議員で元農林水産事務次官の石川弘氏(金沢出身)を推した。このころは奥田氏が所属する新生党を中心とする公明党、民社党、日本新党、社会党のいわゆる「非自民」連立政権で、細川護熙総理が谷本氏の応援に駆け付け、街頭演説が行われた香林坊が聴衆で埋め尽くされたのを覚えている。谷本氏が1万600票差で競り勝ち、投票率は70%だった。その後、谷本氏は通算7期にわたって知事を務め、去年11月に引退を表明した。   

   話は国政選挙に戻る。奥田氏が死去し、後を継いだのは子息の奥田健氏だった。衆院石川1区の補欠選挙(1998年8月)に民主党公認で出馬し、自民党公認の岡部雅夫を下して初当選。新たな森奥戦争をほうふつさせたのが2000年年6月の衆院選だった。プロレスラーでもあった馳浩氏が、自民党幹事長の森氏から抜擢されて1995年7月の参院選石川選挙区(定員1)に出馬して初当選。2000年衆院選で馳氏は鞍替えして自民党公認で1区から出馬し、奥田氏を破った。2003年の衆院選では逆に奥田氏が馳氏に勝った。そして、2005年には馳氏が勝ち、2009年は奥田氏が勝利するという、まさに森奥戦争の再現だった。しかし、奥田氏は2012年12月の衆院選で4万7000票対9万9000票という大差で馳氏に敗れ、比例復活もならず政界から身を引くことになる。2021年6月に急性心筋梗塞で他界。62歳だった。(※写真は2012年衆院選石川1区のポスター掲示板)

   今回の知事選には、参院議員だった山田修路氏、衆院議員だった馳氏、そして金沢市長だった山野之義氏が立候補している。まさに退路を断って争う、近年まれに見る保守系3候補の激しい争いだ。森奥戦争はもう過去の話なのか。次回でさらに分析してみる。

⇒26日(土)午後・金沢の天気      はれ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

☆「金沢嫌い」と石川県知事選

2022年02月25日 | ⇒ドキュメント回廊

   けさの朝刊の一面見出しは、全国紙は「ロシア、ウクライナ進攻」、そして地元紙は「知事選 5新人立候補」だ=写真=。ウクライナ情勢めぐり世界をウオッチすると同時に、地元石川の将来のありようを知事選の各候補者の主張を読み解きながら考えるチャンスでもある。3月13日が投開票日で、金沢市長選もこの日に重なる。市長選もまた話題満載だ。

   地元に住む者として、知事選をめぐるポイントをいくつか点検してみたい。全国的に見れば、金沢市は百万石の伝統を現代に伝える優美な街というイメージで、観光需要は北陸新幹線の金沢開業(2015年3月)以来さらに高まった。石川の県庁所在地であり、市の人口は46万人と北陸3県(石川、富山、福井)でもっとも大きい。都市の強みや魅力など、いわゆる「都市力」を評価した2021年度版「日本の都市特性評価」(森記念財団都市戦略研究所)でも、神戸市、仙台市に次いで8位に金沢市がラキングされ、毎年全国ベスト10に入っている。

   では、「政治力」はどうか。金沢を中心に県内はまとまっているのか。金沢の市長がその政治手腕を県知事として発揮したことはあるのか。この59年間、15期にわたって知事を務めたのは中西陽一氏(故人)、谷本正憲氏の2人で、ともに官僚出身で副知事だった。官僚出身の知事は堅実に地域課題に取り組み、成果を出すという行政能力を請われて知事に擁立されるケースは全国的にも多いが、石川はその典型的なケースと言えるかもしれない。1947年4月に公選による知事選が始まって以来、金沢の政治家が知事となって県政を束ねたことはないのだ。

   県外の人が上記の話を聞けば、おそらく「えっ、なぜ」と驚くかもしれない。以下、想像を膨らませて書く。石川は能登、金沢、加賀の3つの地域に分かれていて、それぞれに独自の文化や歴史、それに基づく言葉がある。実はこうした文化風土の違いが、能登と加賀の人々の「金沢嫌い」を生んでいる。もう20年も前になるが、金沢市長が隣接の町長に合併を呼びかけたものの振られた。町長はその後再選されているので、自身は民意だったと解釈している。

   金沢のどこが嫌われるのか。日本史でも教わるように、戦国時代の北陸は「百姓の持ちたる国」として浄土真宗の本願寺門徒が地域を治めていた。その後、戦国大名・前田利家を中心とした武家集団が金沢に拠点を構えた。金沢の人は日常の言葉として「そうしまっし」と語尾にアクセントをつけて念を押すように話す。武家社会の上意下達の名残とも言えるが、初めて聞く人にとっては「上から目線」を感じることもある。金沢の観光パンフでよく使われる「百万石」。かつての栄華をいつまで誇っているのかと揶揄する向きもある。能登や加賀からの目線で、金沢はどこか「異質」に映る。

   とは言え、産業の集積など都市力で金沢は群を抜いている。県内の他の地域からすれば、やっかみや憧れが入り混じる。歴代の知事はそうした県民感情を巧みに政策として活かし、「能登と金沢・加賀の格差是正」をスローガンに能登半島の道路網などインフラ整備を積極的に進めてきた。知事選の候補者に必要なのはこうした地域の機微を理解した上でのバランス感覚なのだと感じている。

⇒25日(金)午後・金沢の天気      はれ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

★「瀬戸際外交」「人質外交」 日米はどう向き合うのか

2022年02月24日 | ⇒ニュース走査

   ウクライナ情勢は一線を超えたのか。ロシアはウクライナ国境付近に13万人規模の軍部隊を配置している。戦車、大砲、医療施設、後方支援態勢などすべてがそろっている(2月15日付・BBCニュースWeb版日本語)。ロシアのプーチン大統領はウクライナを攻撃して侵攻するつもりはないと繰り返してきた。しかし、ついに21日、停戦協定を破棄し、ウクライナ東部で親ロシア派の武装分離勢力が実効支配してきた2つの地域について、独立を自称してきた「共和国」を承認。加えて、この2地域にロシア軍部隊の派遣を命令した。「平和維持」が目的だと、プーチン氏は言う(23日付・同)。

   ロシアのこの手法は2014年3月にウクライナのクリミア半島を併合したときと同じだ。クリミア半島にはロシア系住民が多くいたことから、ロシアは主権・領土の一体性を保障する国際法を無視して半島に浸出し、現地での住民投票でロシアへの編入を望む声が圧倒的多数だったとして半島を併合した。このとき、プーチン氏は演説で「9割以上がロシア併合に賛成したことは、十分に説得力のある数字だ」と述べた(Wikipedia「ロシアによるクリミアの併合」)。正当性がありそうな主張に聞こえるが、そもそも国際法違反だ。ロシアのむちゃぶりな「瀬戸際外交」だ。ロシアによるクリミア併合は認めないとする国連総会決議も採択されている。

   中国のケースは「人質外交」を狙っていると言えるかもしれない。NHKニュースWeb版(23日付)によると、 北京の日本大使館の職員が21日午後、北京市内で公務中に中国当局に一時的に拘束された。日本の外務省の事務次官は、中国の駐日臨時代理大使を呼んで、正当な公務中の拘束でありウィーン条約に明白に違反していると厳重な抗議を行った。これに対し、中国大使館は23日、報道官の談話を発表し「日本の外交官は中国でその地位にふさわしくない活動を行っており、中国の関係部門が法律に基づいて調査を行った。中国は日本側のいわゆる抗議を受け入れない」と反論した。

   日本も中国も批准しているウィーン条約では外交官が現地の国内法に違反していても逮捕を免れる「不逮捕特権」を認めている。おそらく、中国は一時拘束はしたものの、逮捕はしていないので条約違反ではないと言いたいのだろう。それにしても、中国側が大使館員の情報収集活動などの公務を逐一チェックしていることが明白になった。中国には「国家情報法」がある。11項目にわたる安全(政治、国土、軍事、経済、文化、社会、科学技術、情報、生態系、資源、核)を守るために、日本の大使館員がこうした関係者に接触した場合、重大な機密情報を盗み出す行為と解釈すれば長期の拘束もありうるだろう。

   以下憶測だ。先月21日、岸田総理はアメリカのバイデン大統領とテレビ会議方式で会談を行った=写真、外務省公式ホームページより=。両者は台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、ウクライナ情勢について日米連携を確認した。これに対し中国は、日米は台湾に口出しするなと言いたいだろう。そして、駆け引き材料となるような「人質」を狙っているのかもしれない。
 
   そう憶測させる事件として、2018年12月に中国の通信機器「ファーウェイ」の副会長がカナダ当局に詐欺疑惑で逮捕された。その後、中国は国内にいたカナダの実業家と元外交官の2人をスパイ容疑で逮捕。2021年9月にファーウェイ副会長はアメリカに身柄の引き渡しが決まっていたが、アメリカとの司法取引に応じることで起訴猶予となり釈放。実刑が決まっていたカナダ人2人も釈放された。この事件、中国は「人質」を駆け引きの材料に、カナダとアメリカを相手に激しい外交協議を行っていたことは想像に難くない。

   ウクライナ、そして台湾海峡をめぐる情勢に、ロシアは「瀬戸際外交」を、中国は「人質外交」を駆使してくる。日米はどう向き合っていくのか。

⇒24日(木)午後・金沢の天気    くもち時々ゆき

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

☆重くのしかかる雪、そして「五輪のスタック現象」

2022年02月22日 | ⇒トレンド探査

   きょうは「2022年2月22日」、まさに2のぞろ目の日。朝起きると、自宅周辺は積雪が32㌢ほどになっている。昨夜9時ごろの積雪10㌢ほどだったので、ひと晩で20㌢余り積もった。庭の五葉松の枝にも雪がずっしりと積もっている=写真=。雪吊りを施しておいてよかったと思う。金沢地方気象台は大雪警報が出ている金沢市に「顕著な大雪に関する気象情報」を発表した。今夜にかけてさらに積雪が見込まれる。

   この気象情報が出され、市内でよく目にするのが道路でのスタック(立ち往生)だ。スタッドレスタイヤを装着していても、わだちにはまり、車の底が雪上に乗り上げて立ち往生する。車の「最低地上高」、つまり地上面から自動車の最も低い所までの垂直距離は道路運送車両保安基準で9㌢以上と定められている。積雪10㌢ほどであれば問題なく走れるが、積雪30㌢となるとスタックによる交通障害が発生する確率はかなり高くなる。

  前書きが長くなった。きのうのブログでIOCは公的な国際組織ではなく、非政府組織 (NGO) の非営利団体 (NPO)なので、国連機関に所管を委ねる方向で検討すべきではないだろうか、と述べた。けさ届いた「月刊ニューメディア」編集部ゼネラルエディターの吉井勇氏からメールマガジンは、オリンピックそのものの開催意義について疑問を呈している。以下その要約。

   東京の夏に続いて北京の冬と、アジアで連続した2つの五輪。ある新聞で、偉業ではなく「異形」という形容を使っている。そんな感じ(漢字)がピッタリだった。東京五輪は、都民や国民に数兆円の赤字を残している。これは開催都市が負担するのか、開催国が責任を持つのかという問題を残しながら、日本国民の負債となっている。負債だけが残され立ち往生、まさにオリンピックのスタック現象ではないか。開催したIOCはスポーツの民間団体で、本来そこが第一義的に負担すべき負債だと思う。ところが、「招致」というマジックで開催国や都市に責任がすり替えられている。

   こうした議論もなく、札幌に再び冬季大会を、という動きがある。1972年の札幌五輪は巨額の税金を使って日の丸飛行隊を応援した。この赤字開催の見通しを見て、アメリカのデンバーでは76年開催が決っていたものの、住民投票では反対多数で開催を否決した。そこで、オーストリアのインスブルックに急きょ開催が決まった。また、2024年のパリ開催は決まっているが、立候補を表明していたドイツのハンブルグやローマ、ブタペストでは住民の反対が強く撤退したのだ。28年のロス、32年のブリスベンも競争相手の都市がなくすんなりと決まったように思われているが、他の都市は住民の反対で立候補に至らなかったというのが実情だ。世紀の祭典は世界各地で「ノー」が突き付けられている。

   こうした報道が日本で少ないのは、メディアの立ち位置も関係している。オリンピックがあれば、NHKと民放が「ジャパン・コンソーシアム」を組んで放送する。新聞社も東京大会のケースだが、朝日、毎日、読売など大手6紙が協賛社として名を連ねている。では、今後メディアは札幌五輪の再誘致にどのように向き合うのか。

⇒22日(火)午前・金沢の天気     ゆき

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

★雪桜のような冬季五輪だったが

2022年02月21日 | ⇒ニュース走査

   ふと見ると、満開のヨメイヨシノのようにも見える。落葉した桜の木に雪が降り積もり、まるで満開の桜のようだ=写真=。北陸では「雪桜(ゆきざらく)」と言ったりする。ネットで調べると、「雪降桜(ゆきふりのさくら)」という言葉もあった。雪が桜の枝に積もり、風が吹くとまるで桜が舞い散るように雪が舞う。さらに、「桜隠し(さくらかくし)」という言葉もある。桜の咲く頃に雪が降ることを表現する。風流な言葉ではある。

            雪桜のように冬に「満開の花」を咲かせたのが、北京オリンピックでの日本勢の活躍ではなかっただろうか。冬のオリンピックで最多となる18個のメダルを獲得した。金が3個、銀6個、銅が9個で、これまで最多だった平昌大会の13個を上回った。カーリング女子の決勝はイギリスに3対10で敗れ、銀メダルだったが、「氷上のチェス」とも称される理詰めの試合展開にはテレビで観戦する側も息をのんだ。そして、スノーボード男子ハーフパイプで金メダルを獲得した平野歩夢選手は難度の高い大技「1440(斜め軸に縦3回転、横4回転)」を披露した。実況アナが「人類初めての公式戦での演技」と称賛していたのにも納得した。

   北京オリンピックをテレビで観戦していて、今ごろ気がついたことがある。それは、テレビのCMがなかったことだ。「がんばれニッポン」のCMを見かけなかった。平昌大会ではコカ・コーラやJALなどがCMを流していた。去年の東京オリンピックのとき、オリンピックの大口スポンサーでもあるトヨタは新型コロナウイルスの感染拡大が収束しない中での開催の是非について世論が割れていることを理由にテレビCMを見送り、今回の北京オリンピックでもCMを流していない。ウイグル族への強制労働など、中国の人権状況に対して「外交的なボイコット」を展開したことも背景にあるのだろうか。逆にCMを流せば、「東京で流さなかったに、なぜ北京で」とバッシングが起きたかもしれない。

   ともあれ、北京冬季五輪の17日間は幕を閉じた。開催国の中国は大会を盛り上げようと努力したが、前述の「外交的なボイコット」や新型コロナウイルスによる選手の「バブル」隔離、スーツ規定違反やドーピング問題や、ウクライナ有事などが複雑に絡んでいつの間にか幕を閉じた。次回オリンピックは2024年夏のパリ、26年冬のミラノ・コルティナダンペッツォだ。ここでも、
「Baron Von Ripper-off(ぼったくり男爵)」こと、IOCのバッハ会長がしゃしゃり出て来るのだろう。IOCは公的な国際組織ではなく、非政府組織 (NGO) の非営利団体 (NPO)だ。そろそろ国連機関に所管を委ねるべきではないだろうか。

⇒21日(月)夜・金沢の天気      くもり時々ゆき

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

☆五輪後に漂うキナ臭さ

2022年02月20日 | ⇒メディア時評

   日増しにキナ臭さが漂う世界の動きだ。時事通信Web版(2月15日付)によると、防衛省は15日、ロシア海軍の艦艇24隻が今月1日以降、日本海とオホーツク海南部で活動しているのを確認したと発表した。さらに、岸防衛大臣は次のように述べている。

   「(ロシア海軍は)オホーツク海および太平洋に広大な訓練海域を設定して演習を実施するとともに、2月12日には、演習に参加するロシア海軍の艦艇が、アメリカ海軍の原潜のロシア『領海』への進入に対応した旨、主張しています。こうしたことを踏まえれば、少なくとも昨今のウクライナ周辺におけるロシアの動きと呼応する形で、ロシア軍が東西双方で同時に活動し得る能力を誇示するため、ロシアの戦略原潜の活動領域であるオホーツク海においても、その活動を活発化させていると考えられます」(2月15日付・防衛省公式ホームページ「防衛大臣記者会見」)

   BBCニュースWeb版日本語(15日付)は「ロシアはウクライナ国境付近に約13万人規模の軍部隊を配置している。戦車、大砲、医療施設、後方支援態勢など、すべてがそろっている」と報じている。また、20日付では、イギリスのジョンソン首相がウクライナ問題について、「ロシアは1945年以来、ヨーロッパで最大の戦争を計画している」と語ったと報じている=写真=。その一方で、東側の日本海とオホーツク海南部にロシアは艦艇24隻を配備している。なぜロシアはこのような西と東の2正面展開を行っているのか。

   以下はあくまで憶測である。中国の習近平国家主席は今月4日、北京オリンピックの開幕に合わせて北京を訪問したロシアのプーチン大統領と会談を行っている。このときの確認事項は、中国はロシアのウクライナ併合を支援し、ロシアは中国の台湾併合を支援することではなかったか。そう考えると、ロシアの艦艇24隻が今後日本海を南下して台湾を囲んで、アメリカ海軍と対峙するのではないかと想像する。中国海軍とロシア海軍が合同でアメリカ海軍と向かう。同時に尖閣諸島を取り囲み、日本と対峙する、そのようなシナリオではないのか。

   CNNニュースWeb版日本語(20日付)によると、オーストラリア国防軍は19日、空軍の哨戒機が飛行中に中国軍艦からレーザー照射を受けたとして、「命を危険にさらす恐れのある行為」を非難する声明を出した。 声明によると、哨戒機は17日、豪州北部とインドネシア東部ニューギニア島の間に位置するアラフラ海の上空で、東進中の中国軍艦2隻のうち一方からレーザーを照射された。レーザーを照射された操縦士は方向感覚を失ったり、痛みやけいれん、視界の異常を起こしたりすることが知られている。

           中国軍の挑発的とも読めるこの行為は何を意味しているのか。北京オリンピックの後、何が始まるのか。軍事力による一方的な現状変更が西と東で起きるのか。

⇒20日(日)夜・金沢の天気     くもり

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

★「そだねー」が聞きたいカーリング女子決勝

2022年02月19日 | ⇒ニュース走査

   昨夜は北京オリンピックのカーリング女子の日本代表「ロコ・ソラーレ」の準決勝の中継をNHK総合で視聴していた。相手のスイスには17日の予選リーグ最終戦で敗れていて、2日連続の対戦。見せ場は第5エンド。スキップ藤沢選手が相手のストーン2つを一気にはじき出すダブルテイクアウトを決め=写真=、日本側に試合の流れを引き寄せる。これが4点を奪うビッグエンドとなり、逆転の5対2に。その後も第6、第8、最終第10エンドにそれぞれ1点を加えて8対6で逃げ切った。

   カーリングにはまったく興味はなかったが、2018年の平昌オリンピックでロコ・ソラーレのメンバーたちが競技中に「そだねー」と声をかけ合っていたのが印象的で何度か見た。今回も競技よりもむしろ、「そだねー」が聞きたかったので、新聞のテレビ欄を見てチャンネルを合わせた。ところが、きのうの試合では「そだねー」が聞こえなかった。「ナイッスー」に変わっていた。なぜだろう。

   標準語だと「そうだね」だが、「そだねー」は「う」が抜けて、語尾が下がらない独特なイントネーションだ。北海道の北見市出身の選手が多く、北海道地方の独自の言い回しなのだろう。アスリートたちが自然に発した意思疎通のための地の言葉だが、初めて聴く視聴者にとっては新鮮で心が和み、ほっとする光景でもあった。

   ここからは憶測だ。北海道に住む人とそうでない人で、言葉で受ける印象に違いがあるのかもしれない。北海道の人たちが「そだねー」を聞けば、普段聞き慣れているだけに、「ウザイ」と感じた人がいたかもしれない。ましてそれが、テレビ中継されて全国に広まったことで、恥ずかしと感じた人もいたかもしれない。金沢でも似た意味の言葉で「そうながや」「そうしまっし」という方言がある。もし、金沢のアスリートたちが使い、テレビで全国に広まったとしたら、観光のキャッチで使えると喜ぶ人もいるかもしれないが、競技では別の言葉でモチベーションを上げてほしいとモノ申す人もいて、金沢で意見は2分するかもしれない。

   そう考えると、今回は「そだねー」は北海道の人たちの気持ちや、言葉の賞味期限ということを考えてチームとして使わないことにしたのだろうか。また、逆なことも憶測してみた。「そだねー」は世相を反映した言葉を選ぶ「2018ユーキャン新語・流行語大賞」で年間大賞に選ばれた。そこでチームとして2022流行語大賞を狙うため、あえて「ナイッスー」を使っているのかもしれない。

   金メダルをかけた決勝はあす20日、イギリスとの対戦だ。「ナイッスー」も悪くはないが、「そだねー」をもう一度聞きたいものだ。

(※写真は、民放テレビ局オリンピック公式競技動画配信サイト「gorin.jp」のカーリング 女子準決勝・日本×スイス戦 ハイライトより)

⇒19日(土)午前・金沢の天気      くもり

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

☆能登の「岩のり」とユネスコ無形文化遺産のこと

2022年02月18日 | ⇒ドキュメント回廊

   先日、能登の知人から「岩のり」が届いた。この時節に「季節のものです」と一筆添えて送られてくる。岩のりは能登の福浦海岸べりの岩場で採れた天然のノリで、送られてきたものは干したもの。さっそくうどんをつくり、岩ノリをさっとあぶって、うどんに入れる。磯の香りが広がり食欲がわいてくる。

   能登には海藻の食文化がある。とくにかく海藻の種類が多い。半島の尖端の珠洲市でいまでも採れている海藻は10種類ほどある。地元ではカジメと呼ぶツルアラメやモズク、ワカメ、ウスバアオノリ(あおさ)、ウップルイノリ(岩のり)、ハバノリ、アカモク(ぎばさ)、ウミゾウメン、マクサ(てんぐさ)、ホンダワラなど。海藻ごとにそれぞれ料理がある。

   能登で精進料理(お講料理)としてよく出されるのが「カジメの煮物」だ。冬場に海がシケると、翌日は海岸に打ち上げられる。これを刻んで乾燥させる。油揚げと炊き合わせる。それぞれ家庭の味があり、能登で代表的なゴッツオ(ごちそう)でもある。また、生のカジメを刻んで味噌汁や納豆汁に入れて食する。ねばねば感と独特の風味がある。カジメはヨード分が多く滋養豊富なことから、「海の野菜」と言われ、血圧の高い人や冷え性の人に重宝がられてきた。能登では古くから産後のうるち(古血)おろしにカジメを食べるという風習もあった。

   能登では夏には貝類を、冬には海藻類を多く採っている。また、こうした海産物を加工保存することにより、年間を通して海の恵みにあずかる。塩漬け、乾燥、粕漬け、味噌漬け、発酵などにより食材を保存し、素材に応じて様々な料理の工夫を凝らしている。まさに、食文化がここにある。

   2013年12月にユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産に「和食:日本人の伝統的な食文化」が登録されている。自然を尊び活かした食文化が国際評価を受けている。ただ、「和食文化」は分かりにくい。能登の海の恵みを活かした食文化をアピールしてはどうかと思ったりもする。能登では田の神をもてなす農耕儀礼「あえのこと」が2009年9月にユネスコ無形文化遺産に登録されていて、相乗効果も生まれるのではないだろうか。いただいた岩のりからふと浮かんだ思いつきではある。

⇒18日(金)午前・金沢の天気    あめ時々あられ    

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

★聞き捨てならないニュース

2022年02月17日 | ⇒ニュース走査

   聞き捨てならないニュースをいくつか。秋篠宮家の長男悠仁さまが書かれて受賞したという、「第12回子どもノンフィクション文学賞」(北九州市主催)の作品『小笠原諸島を訪ねて』がネットで掲載されているので読んだ。報道では、ガイドブック『世界遺産 小笠原』(JTBパブリッシング、2012年刊行)と一部文章が似ていて、コピーペーストではないのかと問題が指摘がされている。自身の手元にこのガイドブックがないので比較はできないが、悠仁さまの作品を読んだ感想を述べてみたい。

   この作文は悠仁さまが2017年、小学5年生のときに母の紀子妃と旅行された小笠原諸島の思い出を綴ったものと冒頭で記されている。執筆したのは中学2年のときで、「ノンフィクション文学賞」にふさわしく、事実関係がしっかりと描かれ、形容詞もほとんどない。なので、読み手の想像力を膨らませ、一気に読ませる。むしろ読んでいて、気になったのはこれが中学2年の文章表現と思うほど、大人っぽいのだ。

   たとえば、受賞作品集の77㌻にある、「あるものは海流に乗って運ばれ、あるものは風によって運ばれ、翼をもつものは自力で、あるいはそれに紛れて、三つのW、Wave(波)、Wind(風)、Wing(翼)によって、海を越えて小笠原の島々にたどり着き、環境に適応したものだけが生き残ることができました」という下り。海流、気象、生物に熟知したプロが表現するような文章との印象だ。さらに、「です」「ます」調なら少年らしいと読めるが、「でもあります」という表現も出てきて少々大人っぽい。文章表現だけでなく、ぜひご本人の言葉で小笠原諸島の旅の話を聞いてみたいものだ。

   総務省は放送制度について検討する有識者会議で、特定の事業者が多数の放送局に出資し、経営支配することを避ける「マスメディア集中排除原則」を緩和する方針を示した(16日付・共同通信Web版)。集中排除原則は表現の自由を確保することを目的に多くの企業に放送事業に参入する機会を与えるもので、ローカル局が別の局を経営することを原則として禁止している。地方局の経営環境が厳しさを増していることから、今後、東京キー局を中心とした持ち株会社が系列局を傘下に収めることになるだろう。

   そもそも、ローカル局には放送法で「県域」という原則があり、放送免許は基本的に県単位で1波、あるいは数県で1波が割り与えられている。1波とは、東京キー局の系列ローカル局のこと。現在は地方にいても、パソコンやスマホ、タブレットがあれば動画配信サービス「TⅤer」で東京キー局の番組を視聴できる。ローカル局は視聴されなくなるかもしれないという不安がローカル局にはある。テレビ業界における「ポツンと一軒家」化だ。マスメディア集中排除原則という理念そのものがすでに形骸化している。

⇒17日(木)夜・金沢の天気      あめ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする