自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★「誰一人取り残さない」SDGs的な選挙活動の現場

2022年03月11日 | ⇒トレンド探査

   金沢市長選の個人演説会に誘われ、昨夜、市内のある集落を訪ねた。場所は中山間地、いわゆる里山だ。乗用車のナビを使って、曲がりくねった山道を走行する。午後7時からの演説会に間に合うように出かけたが、すっかり周囲は暗くなっていた。ぎりぎりに到着した。会場は市北部にある加賀朝日町の公民館。廃校になった小学校校舎だ。地域の人たち20人余りが集まっていた。

   個人演説会を開いたのは、永井三岐子候補。テーマは「公共交通について考えよう」だった。なぜ山間地の集落でこのテーマなのか。この地域の唯一の公共交通であるJRバスが7月から廃線となることが決まっている。そこで、永井候補はこの地域課題をテーマに住民との意見交換を求めて演説会を開いた。「公共交通は都市の装置です。民間企業の資金やアイデアを求めるのも一つのアイデア」と事例を紹介した。「チョイソコ」は愛知県豊明市でトヨタ系の民間会社が運営しているオンデマンドによるバス運行のシステム。通院や買い物の移動に困る高齢者を救いたいと同市が民間企業と連携している。

   地元の人からも声が上がった。「バスに乗っても乗客は多い時で3人くらい。空気を運んでいるようなものでバス会社には申し訳という気持ちもある」と廃線についてはやむを得ないと話した。また、「バスの本数が少なくなるほど、利用する人が減ってきた」 「中山間地にまだ新しい家が空き家になっている。これをどうにかしたい」 「里山には環境や教育、観光など、その特色を活かした活用がある。どう工夫すればよいか」 など、バス問題だけでなく地域の活性化など意見は多岐に及んだ。

   確かにバスの問題は地域課題の一つであって、その根底には過疎化・人口減少の問題がある。それにしても思ったことは、これは永井候補にとって失礼な言い方かもしれないが、選挙運動期間も残り2日と限られているのに、10数世帯しかない小さな集落でなぜ時間を費やすのか。市内の中心街でもっと人を集めて、訴えた方が遊説効果があるのではないか、と。

   そう考えているうちに、これは本人の根っからのポリシ-なのかもしれないと思い浮かんだ。永井候補は金沢にある国連大学研究所の事務局長だった。SDGsの実践を掲げてきた。今回の選挙でも、公約に「SDGsファンドを創設し、課題解決ビジネスを興す」と掲げている。SDGsの原則は「誰一人取り残さない」だ。小さな集落の課題こそ放ってはおけないと考えたのだろうか。とすれば、まさにSDGsを実践した選挙活動なのかもしれない。

⇒11日(金)夜・金沢の天気     はれ

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