金委員長が安倍総理と首脳会談を行うとなると、また、演出されたシナリオが透けて見えてくる。以下は想像だ。金氏は日朝首脳会談の前に、ある人物を日本に送り込んで、日本のメディアの論調を自らに引き込む。そのカードは寺越武志氏(68歳)ではないだろうか。年老いた母・友枝さん(86歳)に会いに日本に来るという涙を誘うシナリオだ。
1963年5月、能登半島沖へ漁に出たまま行方不明になり、87年1月に北朝鮮で生存が判明した寺越武志氏。2002年10月、39年ぶりに一時帰国し、故郷の石川の地を踏んだ。その時は朝鮮職業総同盟の訪日団の一員として訪れた。本人はこれまで一貫して「自分は拉致されたのではない。遭難し、北朝鮮の漁船に助けられた」と拉致疑惑を否定してきた。「金英浩」という現地名を持ち、妻と子供3人をもうけているので、拉致疑惑を否定せざるを得なかったのかもしれない。
演出されたシナリオはたとえばこうだ。北朝鮮側が寺越武志氏の拉致を認め、公式に謝罪する。その他の拉致被害者については調査中だとして、まず、寺越氏を日本に帰国させるのだ。母の友枝さんはこれまで65回も息子に会いに北朝鮮を訪問している。武志氏は「もう母親に辛い思いをさせたくない」とインタビューに応じる。そうすると日本の世論は沸騰する。拉致を認め、帰国させれば、その時点で金氏の一本勝ちだ。このムードで今度は日朝首脳会談に臨む。過去の歴史清算を基盤とした日朝国交正常化を切り出し、賠償金や経済援助の引き出しを狙う。ざっとそんなシナリオではないだろうか。
もう一つの思惑もあるだろう。北朝鮮の一連の「平和外交」の狙いは、自分たちは世界に「危険な存在」ではないとアピールしながら国連の経済制裁を緩和させることだろう。アメリカのトランプ大統領との米朝首脳会談がそのヤマ場だが、その前にさらなる一手を打つとすれば、上記の「拉致カード」だ。なぜなら、トランプ大統領は安倍総理の意向を受けて、拉致問題を切り出すことは目に見えている。その前に、「トランプさん、拉致問題は解決済みですよ」と機先を制するのだ。
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