自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆NHKの「義務化を」の背景を読む

2020年10月31日 | ⇒ニュース走査

   自家用車に乗っていてもNHKラジオで時刻ごとの5分ニュ-スをよく聴く。仕事から自宅に戻れば、午後7時や同9時のNHKのニュース番組を視聴する。受信料を払っているからという理由ではないが、自身のNHKへの接触度は高い方だと思っている。そのNHKで違和感があったのが、受信料制度の在り方などを検討する総務省「放送を巡る諸課題に関する検討会」で、NHK側が家庭や事業所でテレビを設置した場合はNHKへの届け出を義務化するよう放送法の改正を要望したというニュースだ(10月17日付・共同通信Web版)。

   NHKは受信契約を結んでいない世帯の居住者の氏名や、転居があった場合は転居先などの個人情報を、公的機関などに照会できるようにする仕組みの導入も求めた。受信契約の対象者を把握することで不払いを減らし、営業経費の削減にもつながるとみている。NHKはテレビがない場合の届け出も求めており、今後、有識者会議で検討する(同)。このニュースを見た視聴者は「NHKの上から目線」を感じたのではないだろうか。

   このNHKの要望で不快感を露わにしたのは民放サイドだ。いわゆる「テレビ離れ」。今月26日、日本テレビの小杉社長は定例会見で、テレビを設置した際のNHKへの届け出を義務化の要望した件について、「テレビ離れに拍車をかけるようなことになってはいけない」と懸念を表明(10月26日付・産経新聞Web版)。また、受信契約を結んでいない世帯の居住者氏名や、転居した際の住所などの個人情報を公的機関などに照会できる制度の導入についても、小杉社長は「視聴者には心理的なハードルがある」と指摘。「(総務省の有識者会議で)有識者の反対の意見が多かったと聞いているが、注視していかないといけないことだ」と述べた(同)。

   NHKも不評を買うことをある程度予想して要望を出したに違いない。その背景にNHKの相当な「焦(あせ)り」というものを感じる。それは、公共放送の有り様が国際的に見直されようとしているからだ。

   たとえば、イギリスの公共放送であるBBCについて、イギリス政府はTVライセンス料(受信料)を廃止し、希望者のみが視聴料を払う課金制(サブスクリプション)の導入など見直し作業を始める意向だという(2020年2月16日付・「The Sunday Times」Web版)=写真=。ジョンソン首相(保守党党首)は昨年12月の総選挙を前に、BBCの受信料制度の廃止と、視聴する分だけ金を払う有料放送型の課金制への移行を検討すると表明していた(2019年12月11日付・時事通信Web版)。選挙に勝利したジョンソン氏はその公約の実行段階に入ったと言える。

   イギリスの場合は、テレビを見たい視聴者は近くの郵便局で1年間有効の受信許可証を購入する。この許可証がなければ、電気屋でテレビそのものが買えないシステムだ。ところが、インターネット時代で、この受信許可モデルは果たして妥当なのか、その見直しがイギリスで起きているのだ。NHKの焦りというのは、日本でも受信料の見直し議論が起きる前に、NHKへテレビ設置の届け出を義務化するなど受信許可モデルを制度として早々に確立したいという意向ではないだろうか。

   BBCは世界の公共放送のモデルのような存在である。NHKにとってはギョーカイの大先輩であり大御所だ。そのBBCが直面する大問題を自らも焦燥感を持って成り行きを見守っているのだろう。NHKの「義務化を」の言葉の背景を探ってみた。

⇒31日(土)午後・金沢の天気    はれ

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★「山のダイヤ」 コノミタケの話

2020年10月30日 | ⇒トピック往来

    紅葉が街や山々を彩っている。山のふもとにある金沢大学キャンパスも紅葉の真っ盛りだ。青空にイチョウ、ケヤキが映える=写真・上=。そして、秋はキノコのシーズンだ。先日、金沢から能登有料道路、主要地方道「珠洲道路」を経由して、半島の先端・珠洲市に行ってきた。沿道のあちこちに車が止まっていた。おそらくキノコ狩りの車だ。また、沿道近くの山ではビニールテープが張り巡らされている。これは、ナワバリ(縄張り)と言って、山林の所有者が「縄が張ってあります。立ち入ってはいけません」とキノコ狩りに人々に注意を促すものだ。つまり、マツタケ山の囲いなのだ。

   キノコ狩りのマニアは、クマとの遭遇を嫌って金沢や加賀地方の山々を敬遠する。そこで、クマの出没が少ない能登地方の山々へとキノコ狩りの人々の流れが変わってきている。能登地方の人々にとっては迷惑な話なのだが。

   能登の人たちが「山のダイヤ」と呼ぶキノコがある。コノミタケだ=写真・下=。ホウキダケの仲間で暗がりの森の中で大きな房(ふさ)がほんのりと光って見える。見つけると、土地の人たちは目が潤むくらいにうれしいそうだ。1㌔1万円ほどで取り引きされ、能登ではマツタケより値段が高い。高値の理由は、コノミタケはすき焼きの具材になる。能登牛(黒毛)との相性がよく、肉汁をよく含み旨味で出て、香りがよいのだ。

   能登の人たちは、キノコのことをコケと呼ぶが、コノミタケとマツタケをコケと呼び、それ以外はゾウゴケ(雑ゴケ)と呼んで区別している。金沢や加賀地方からキノコ狩りにやってくる人たちのお目当ては、シバタケだ。アミタケと呼ぶ地域もある。お吸い物や大根のあえものに使う。でも、能登に人たちにとってはゾウゴケなのだ。コノミタケへの思い入れはそれほど強い。

   能登で愛されるコノミタケは能登独特の呼び名だ。でも詳しいことは分かっていなかったので、金沢大学の研究員が調べた。能登町や輪島市の里山林に発生しているコノミタケの分類学的研究を行ったところ、ホウキタケの一種でかつて薪炭林として利用されてきたコナラやミズナラ林などの二次林に発生していることが分かった。研究者は鳥取大学附属菌類きのこ遺伝資源研究センターや石川県林業試験場と協働で調査を進め、DNA解析でコノミタケが他のホウキタケ類とは独立した種であることが確認された。そこで、「ラマリア・ノトエンシス(Ramaria notoensis、能登のホウキタケ)」という学名を付け、コノミタケを標準和名とすることを、2010年の日本菌学会で発表した。

   たかがキノコ、されどされどキノコなどと言いながら、能登の人たちはコノミタケと能登牛のすき焼きをつつく。そして来月になれば、食の話題は11月6日に漁が解禁となるカニに移る。

⇒30日(金)夜・金沢の天気    くもり

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☆信なくば立たず

2020年10月29日 | ⇒ニュース走査

   韓国のメディアでは「国民情緒法」という言葉で、国民の気持ちをくんだ司法判断を揶揄することがある。私見だが、これも「国民情緒法」ではないだろうか。韓国人の元朝鮮女子勤労挺身隊員による韓国での訴訟で、勝訴が確定した原告が裁判所に申請した被告の三菱重工業の資産売却を巡り、韓国中部の大田地裁が売却命令を出すかどうかを11月10日以降に検討する見通しであることが分かった(10月29日付・共同通信Web版)。

   同地裁が9月7日に、売却について三菱重工業の意見を聞く審問書をホームページなどに掲載することを決定。11月10日午前0時に、書類が同社に送達されたと見なされる「公示送達」の効力が生じる。原告側が明らかにした。売却命令を出すには三菱重工業への書類送達などが必要だが、日本側が受け取りを拒んでいる(同)。日本と韓国の間で結ばれた1965年の日韓請求権協定は完全に反古にされている。被害者ビジネスそのものだ。

          もう一つの韓国の司法判断が「積弊精算」「過去断罪」だ。その典型が、同じ日のこの判決だ。韓国最高裁は29日、大統領在職中にサムスン電子などから巨額の賄賂を受け取ったとして、特定犯罪加重処罰法上の収賄罪などに問われた元大統領、李明博被告の上告審判決で、懲役17年、罰金130億ウォン(約12億円)などとした二審判決を支持し、李被告と検察の双方の上告を棄却し、実刑が確定した(10月29日付・共同通信Web版)。李被告は保釈されており、近く収監される。

   韓国の歴代の大統領経験者のうち、刑事事件として起訴され実刑判決が確定したのは、全斗煥、盧泰愚、そして、朴槿恵に続いて4人目となる。韓国の大統領というのは、前任者が後任に裁かれるというシステムではないだろうか。後任者が支持率を上げるために、前任者を貶める。これに司法が加担する。

   韓国政府はいわゆる徴用工訴訟で、2018年10月に韓国最高裁が日本企業に賠償を命じる判決を出して以降、「三権分立」を言い始め、司法の判断を尊重すると言い続けている。三権分立は司法、行政、立法の3権で相互に抑制を効かせ、権力の集中を防ぐことで国民の自由と権利を確保する民主主義のシステムだ。決して政治的に利用するものではない。国家と国家の約束を反故にして司法判断を尊重するのであれば、外交も国際条約も必要ない。信なくば立たず、である。お隣の国のニュースを見て感じた違和感ではある。

⇒29日(木)夜・金沢の天気    はれ

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★哲人政治家ホセ・ムヒカ氏の「ことばのチカラ」

2020年10月28日 | ⇒メディア時評

   「世界一貧しい大統領」として知られた元ウルグアイ元大統領のホセ・ムヒカ氏が今月20日、政界からの引退を表明した。新型コロナウイルスの感染拡大で、政治の身上である「議員の仕事は人と話し、どこへでも足を運ぶこと」ができなくなり、免疫系の持病もあるとして、この日議会で演説し明らかにした。(10月21日付・共同通信Web版)。

   ムヒカ氏は85歳で2010年から15年まで大統領を務めた。以降は上院議員として活動した。ホセ・ムヒカ論については、朝日新聞の萩一晶記者が現地での単独取材を元に出版した朝日新書『ホセ・ムヒカ 日本人に伝えたい本当のメッセージ』(2016年発行)に詳しく記されている。以下引用させていただく。(※写真は、朝日新書『ホセ・ムヒカ 日本人に伝えたい本当のメッセージ』の帯から)

   ムヒカ氏は政治的な辣腕をふるって自国を経済的に豊かにしたのか、実はそのようなタイプの政治家ではない。むしろ、教育に全力を注いだ政治家である。南米ウルグアイには、スペインからの独立戦争、封建制度と貴族政治、軍政との長い戦いがあり、民政に移管されたのは1985年だった。本人もかつて極左ゲリラ組織のメンバーとして誘拐などに関与、「投獄4回、脱獄2回、銃撃戦で6発撃たれた」(同書)という過去もある。

   ムヒカ氏の言葉は日本人に心によく刺さる。「私が思う『貧しい人』とは、限りない欲を持ち、いくらあっても満足しない人のことだ。でも私は少しのモノで満足して生きている。質素なだけで、貧しくはない」。まさに人生訓だ。もう一つ。「生きていくには働かないといけない。でも働くだけの人生でもいけない。ちゃんと生きることが大切なんだ。たくさん買い物をした引き換えに、人生の残り時間がなくなってしまっては元も子もないだろう」

   日本にも「清貧」という言葉がある。昔から「清く貧しく美しく」という生き方が良しとされてきた。清貧であることを美化するつもりはまったくない。ただ、日本人の発想の根底には清貧があって、それが、現在のReduce(消費削減)、Reuse(再利用)、Recycle(再生利用)という環境活動の3Rなどにつながっていると考えている。話が横にそれた。

   ムヒカ氏がよく使う言葉は「Nobody is more than nobody」(英訳、同書)。誰も誰かより偉いということはない、という意味だろう。近い響きが、福沢諭吉の「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らずといへり」(『学問のすゝめ』)ではないだろうか。こうしたムヒカ氏の言葉はどこからくるのだろか。ウルグアイの軍政下で13年にも及んだ刑務所生活での悟りのなのだろうか。ちなみに福沢の「天は人の上に・・」はアメリカの独立宣言の一節「・・ that on all men are created equal on、・・」 を意訳したものといわれている。 

   ムヒカ氏は世界に向けても言い放った。2012年6月、ブラジルのリオデジャネイロで開催された「国連持続可能な開発会議」(Rio+20)での演説。「西洋の豊かな社会と同じような消費と浪費を、世界の70億、80億の人ができると思いますか」「発展することが幸福を損なうものであってはなりません。発展とは、人間の幸せの味方でなくてはならないのです」と。

   12月から始める金沢大学での教養科目「ジャーナリズム論」では講義(12月23日)に萩記者を招いて哲人政治家、ホセ・ムヒカ氏について語っていただいく予定だ。ぜひ、この話の続きを聞きたい。

⇒28日(水)夜・金沢の天気   はれ

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☆やはりこうなるのか、脱炭素=原発促進

2020年10月27日 | ⇒ニュース走査

   きのう26日の臨時国会で菅総理は所信表明演説を行った。テレビで視聴していて、「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを、ここに宣言いたします」と声高に述べていたシーンが印象的だった。

   総理は演説で、成長戦略の柱に経済と環境の好循環を掲げて、グリーン社会の実現に最大限注力するとし、「もはや、温暖化への対応は経済成長の制約ではない」と強調していた。そして、石炭火力発電に対する政策を抜本的に転換し、次世代型太陽電池、カーボンリサイクルをはじめとした、脱炭素社会に向けてのイノベーションを起こすため、実用化を見据えた研究開発を加速させると述べていた。

   菅総理はきょう国連のグテーレス事務総長と電話で会談し、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする政府の方針を伝えた。そして、小泉環境大臣はきょうの閣議のあとの記者会見で、「いままでの考え方では実現できないのは明らかで、環境省一丸となって責任と役割を果たしていきたい」と述べた(10月27日付・NHKニュースWeb版)。菅総理が小泉氏を環境大臣として留任させた理由はこれだと納得した。

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★コロナに負けず、「RE:START」金大祭

2020年10月26日 | ⇒キャンパス見聞

           大学の一斉メールでうれしい案内が届いた。新型コロナウイルスの影響で開催が危ぶまれていた金大祭を実施することになったとの通知だった。ただし、開催期間は今月31日と1日の2日間で、参加者はことしの新入生に限定、そして場所も屋内運動場(体育館)となる。かなり「3密」を意識したものだ。それでも、開催することに意義があると学生たちが大学当局と綿密な交渉で実施にこぎつけたようだ。以下、実行委員会のメッセージを紹介する。

                      ◇ 

   今年の金大祭は、角間キャンパス体育館を会場に、パフォーマンスステージとサークル・部活説明会を開催します。新型コロナウィルス感染症が拡がる中で全国的に学園祭が中止にされています。金大祭も開催が危ぶまれましたが、大学側との交渉の末に開催にこぎつけることができました。

   今年の統一テーマは「RE:START~雨にも負けず、風にも負けず、冬の寒さにもコロナにも負けず~」。参加団体からの公募で選びました。巷では"withコロナの時代"と言われますが、私たちは困難に負けず新しい時代を自分たちの手でつくりだしていこう、という思いで今年の金大祭を実現します。

   現在金沢大学では対面授業が再開され、課外活動も本格的に始まっていますが、この4月以降は誰も予想出来なかった困難の連続でした。普段であれば、サークル・部活勧誘の声で賑わうキャンパスから学生の姿が消え、新入生歓迎の様々な行事も行うことができませんでした。学生文化が危機的な状況に置かれた中で、私たち金大祭参加団体は力を合わせて金大祭を開催する術を一から模索してきました。例年とは大きく異なる形にはなりますが、参加団体の団結によって金大祭を実現できることを嬉しく思います。

   今年は、パフォーマンスステージに15団体、サークル・部活説明会に44団体が参加します。例年金大祭に参加している団体は勿論、今年はじめて参加する団体も多くあります。また、本サイトにおいてサークル紹介を行う団体もあります。コロナの影響があるなかでも、新入生を歓迎する場として・学生文化を発信する場として、盛大に実現します。新入生の皆さん、ぜひご期待ください!    第57回金大祭本部実行委員会

⇒26日(月)夜・金沢の天気     くもり

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☆裁判で問うべき、学術会議の任命拒否問題

2020年10月25日 | ⇒ニュース走査

   前回の続き。 日本学術会議が新会員候補に推薦したものの、菅総理が任命を拒否した6人が23日、外国特派員協会で記者会見した。この会見で、教授サイドから「独裁者」「恐ろしい話」という言葉が出た時点で、政権との敵対関係を宣言するために記者会見を開催した、と記者たちは解釈したのではないかと述べた。そして、この記者会見について、国民はどのようなイメージを持っただろうか。

   とくに、刑事法の教授が「ナチスドイツのヒトラーでさえも全権を掌握するには、特別の法律を必要としましたが、菅総理大臣は現行憲法を読み替えて自分がヒトラーのような独裁者になろうとしているのか」 と述べたことに、ネット上で批判的なコメントが集中している。

   「会見には何の関係も無いのに、独裁者とかヒトラーなどの用語を用いるのは、聞いている人達に菅総理や政府への悪印象を与える事が目的だからです。・・・」(ユーチューブ)、「自国の首相をヒトラーと同じだって。しかも外国記者クラブで世界に向かって宣伝。このようなおかしな”学者”が主導権を握っている学術会議ってなんだ。このよう組織を税金を使って持つ必要は無い。・・・」(ヤフーニュースのコメント)。それにしても、すさまじい数の批判コメントだ。

   この会見を仕掛けた側の意図がよく理解できない。当事者たちに思いや本音を自由に語らせるために開いた会見だとすれば、それは大間違いだ。会見の仕組みや意義を理解していないのではないか。会見で記者が読むのは、会見を開いた理由・意図・目的である。会見に臨んだ理由が、6人が総理の任命拒否について裁判で総理の権限をめぐって争うというのであれば、とても分かりよい。会見の開催は、目的性を持ったものである。言葉で「ヒトラーのような独裁者になろうとしているのか」などと政府批判を言うよりも、アカデミックな闘争として裁判を仕掛けた方が国民の理解を得るのではないだろうか。

   学術会議サイドは、学術会議の独立性は破壊され、学問の自由の制度的枠組みを破壊することになるので、憲法23条違反と主張している。 官邸サイドは、憲法15条1項の国民の公務員選定罷免権を根拠にして今回の措置が合法としている。だったら、裁判で決着するしかないだろう。

※写真は、FCCJ(日本外国特派員協会)公式ホームページの会見動画より

⇒25日(日)夜・金沢の天気     はれ

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★記者会見で逆に問われること

2020年10月24日 | ⇒ニュース走査

        日本学術会議が新会員候補に推薦したものの、菅総理が任命を拒否した6人がきのう23日、外国特派員協会で会見した。任命拒否は「学問の自由を破壊する憲法違反」「政治権力に左右されない職務の大きな妨げ」などと訴え、早期撤回を求めた。また、「会員の適否を政治権力が決められれば、憲法23条が保障する『学問の自由』の破壊になる」との主張もあった(10月23日付・共同通信Web版)。テレビでも会見のニュースを見たが、感想をひと言でいえば、「記者会見はもう少し戦略を持って臨むべき」ということだ。

   まず、この会見は誰に向けて発信したのだろうか。外国特派員協会なので、単純に世界に向けての発信なのだろうか。つまり、世界に向けて、日本の菅総理は「学問の自由を破壊する憲法違反を犯した」、あるいは「学問の自由の破壊者だ」と訴えたかった、のか。しかし、外国特派員はそう単純に受け取るだろうか。世界のメディアの目線は、政府批判を繰り広げた学者を捕捉し隔離する中国のケースならば、人権弾圧や「学問の自由」の侵害をとらえるだろう。海外メディアは、政府機関への任命拒否を単純に憲法違反や人権弾圧、学問の自由の侵害と解釈するだろうか。

   記者会見で記者サイドが読むのは相手の表情や言葉のバックボーンからにじみ出る思想信条だ。刑法専門の教授は「官邸側は憲法15条1項が定める国民の『公務員の選定・罷免権』を根拠にして、今回の措置は合法だと説明している。総理大臣は国民を代表しているからどのような公務員であっても自由に選び、あるいは選ばないことができる、その根拠は、憲法15条だと宣言したということだ。『独裁者になろうとしているのか』と思うほど、恐ろしい話だ」と述べた(同・NHKニュースWeb版)。

   おそらく学者から「独裁者」「恐ろしい話」という言葉が出た時点で、記者たちはこの言葉を発するために記者会見に臨んだに違いない、と読む。つまり、政権との敵対関係を宣言するために記者会見を開催した、と。

   動画(同・朝日新聞Web版)をチェックすると、ロイター通信の記者は「将来的に菅総理はどのように権力を使っていくか」と質問した。刑法専門の教授は「すべての公務員について自分が好き勝手に任命・罷免できるというところまで突き進む危険性がある。日本の国民の世論が内閣をどう評価するかが今後の行方を左右する」と答えていた。

   記者会見で述べれば、言いたいことすべてを記者が記事や放送で流してくれると勘違いしているのではないだろうか。ロイター通信が今回の会見をどのように報じたのかとWeb版をチェックしたが、この会見の模様はニュースになっていない(24日午前9時現在)。世界に発信するニュースではないとの記者判断なのだろう。国内メディア各社は報じている、が。

⇒24日(土)午前・金沢の天気    くもり

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☆世界の研究者を誘惑する中国「千人計画」

2020年10月23日 | ⇒ニュース走査

   このところ気になるニュースのキーワードの一つが「千人計画」だ。ことし7月にアメリカ政府は、テキサス州ヒューストンにある中国総領事館について、中国が科学技術の先端情報を違法に収集するための拠点だったとして閉鎖措置に踏み切った。ビッグニュースとなったが、そのときに知った言葉が「千人計画」だった。

   中国の「千人計画」は、世界レベルの理工系人材1000人を高待遇で国外から引き抜き、中国の経済発展に貢献させるのが狙いとされる。2008年から中国が肝入りで行っている研究人材の囲い込みプロジェクトで、外国人を対象とした計画のほか国外で研究成果を上げている中国人を呼び戻す取り組みでもある。ただ、アメリカ政府は、このプロジェクトに関わった研究者が「経済スパイ」の役割も担わされ、中国に軍事や科学技術が盗み取られているとにらんでいる。

   その典型的な事例が、ことし2月に摘発されたハーバード大学の教授のケースだった。「China’s Lavish Funds Lured U.S. Scientists. What Did It Get in Return?」。ニューヨーク・タイムズWeb版(2月6日付)=写真=で詳細な経緯が記されている。教授はハーバード大学化学・化学生物学部のチャールズ・リーバー氏で、ナノサイエンス・ナノテクノロジーの分野で世界最先端の研究を行っている化学者だ。

   記事を要約すると、教授は中国政府からの学術・研究協力の名目で多額の研究資金などを受け取っていたことを報告していなかったとして、アメリカ司法省は1月下旬、リーバー教授を「重大な虚偽、架空請求、詐欺」の容疑で訴追(逮捕は2019年12月10日、その後、21種類の生物学的研究を中国に密輸しようとした罪で起訴)していた。記事から、その厚遇ぶりがうかがえる。教授は中国の武漢理工大学の「戦略科学者」として2011-16年までの雇用契約を結び、5年間で毎月5万㌦(540万円)の研究費と年間15万㌦(1620万円)の生活費を支給されていた。さらに、教授には「武漢理工大・ハーバード大共同ナノテクノロジー研究所」の設立費として150万㌦(1億6200万円)の資金も提供されていた。この魅力的な研究資金による囲い込みが「千人計画」だ。

   アメリカ司法省は、リーバー教授が中国側と契約を結んでいた時期と、アメリカ国防総省と国立衛生研究所から研究資金を受け取っていた期間が重なっていたことを問題視した。教授が中国と、アメリカ国防総省と国立衛生研究所からダブルで研究資金を受け取っていたころ、武漢理工大学に出向いていたのだ。教授はアメリカ国防総省と国立衛生研究所からの受託でどのような研究をしていたのか、記事では詳細は記されていない。単純に、生物化学兵器を連想させる、のだが。そして、研究と言うより、アメリカ国防総省での生物学的研究の成果・情報を中国に持ち込ませることが、中国側の狙いだったのか。さらに気になるのは、リーバー教授の生物学的研究の中国への持ち込みが、武漢でのコロナウイルスの感染拡大とどう関連があるのか、だ。

         アメリカの捜査当局はアメリカの71機関で、中国当局によって180件もの知的財産権が盗用された疑いがあるとして捜査を行っている。

⇒23日(金)朝・金沢の天気   あめ

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★「いのち短し 恋せよ乙女」

2020年10月22日 | ⇒ニュース走査

             このニュースを見て、『ゴンドラの唄』を思い出した。「いのち短し恋せよ乙女 紅き唇あせぬ間に・・・」。一般社団法人「いのち支える自殺対策推進センター」は、ことし1月から8月の自殺者数の動向を分析した中間報告を公表した。7月以降、同居人がいる女性や無職の女性の自殺が増加していて、新型コロナウイルスの影響で配偶者からのDVや、子育ての悩み、経済問題などが深刻化していることが要因になっている可能性があると指摘している。

   警察庁の発表では、全国で自殺した人は7月以降で昨年の同じ時期より増加にあり、とくに8月は1854人と昨年を16%上回った。このうち女性は651人で40%も増加している。

   自殺対策推進センターの公式ホームページによると、自殺に関する相談として、配偶者と暮らす女性から「コロナでパートの仕事がなくなり、夫からは怠けるなと毎日怒鳴られる。こんな生活がずっと続くなら、もう消えてしまいたい」といった相談や、シングルマザーの母親から「子どもが発達障害で子育てがとても大変なのに、ステイホームでママ友とも会えず、実家にも帰れない。子どもの検診もなくなって、一人でどうやって子育てをしていけばいいのか分からない。死んで楽になりたい」といった相談が多く寄せられているという。

   同ホームページによると、筑波大学の研究者の調査で、出産後の母親の「産後うつ」が新型コロナウイルス感染症の影響で、以前の2 倍以上に増えているとの報告があるなど、コロナ禍で、人と接する機会や場が少なくなり、経済的にも不安定な生活を強いられる女性が増えている中で、今後女性の自殺リスクがさらに高まっていくことが懸念される、としている。 

   また、ことし7 月の自殺者数が増加したのは「若手有名俳優の自殺報道」(俳優の自殺それ自体より、それに関する報道)が大きく影響している可能性が高い、と指摘している。自殺報道よって、自殺が増える現象は「ウェルテル効果」と呼ばれ、国内外で過去にも同様のことが起きている。有名人の自殺報道の後は「自殺報道で心が揺れて怖い。自分も自殺してしまいそう」「二ュースを見て、死にたい気持ちが呼び起こされてしまった」といった相談が増えるのだという。自殺は連鎖する。切ないニュースである。

⇒22日(木)夜・金沢の天気   あめ


   

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