自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★「ウォーホル」23億円 世界はどう反応するか

2022年03月31日 | ⇒ニュース走査

     このブログの今月18日付「☆『森のたまご』が投げかけるアニマルウエルフェア問題」の続報。石川県と富山県の地元紙はきょうの朝刊で、アメリカのポップアートの旗手といわれたアンディ・ウォーホル(1928-87年)がハリウッド女優のエリザベス・テイラーのポートレイト作品「Silver Liz(シルバーリズ)」(1963年制作)が23億円で落札されたと一斉に報じてる=写真・上=。

   競売はきのう30日午後6時から、羽田空港第1ターミナル内6Fギャラクシーホールで開催された。オークションを開催した会社「シンワ・ワイズ・ホールディングス」の公式ホームページをチェックすると、確かに「落札価額23億円」と記されている=写真・下=。

   では、なぜ地元紙が大きな見出しで取り上げているのかというと、作品の出品者がイセ食品の前会長、伊勢彦信氏92歳だからだ。世界の「エッグ・キング」と称される実業家で、世界的な名画や彫刻、陶磁器の収集家としても世界的に知られる。もともと北陸・富山県高岡市の養鶏・鶏卵企業をグローバル企業として成長させたその人である。

   そのイセ食品とグループ会社は今月11日、債権者から東京地裁へ会社更生法を申し立てられ、同地裁から保全管理命令を受けた。「帝国データバンク」Web版(11日付)によると、M&Aなどで業務内容を拡大するなか金融機関からの借り入れが増加。新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて卵価が下落、資金繰りが悪化していた。負債はイセ食品とグループ会社の2社の合計で453億円(うち金融債務は260億円)とみられる。その債務処理のため、伊勢氏は収集した美術品の売却を進めているとされる。ちなみに落札した人物は、北國新聞(31日付)によると、温浴施設・ホテル経営会社「大江戸温泉物語」を運営したことがある東京都在住の会社役員70歳という。

   この落札価格23億円は国内の競売作品では2018年のパブロ・ピカソの油彩「泣く女」10億円を大きく上回ったことから、「国内最高額」と紙面の見出しが躍っている。ただ、北陸中日新聞(31日付)によると、彦信氏の長男・俊太郎氏の申立書では、彦信氏は高額な美術品を会社の資金で購入しと主張している。ウォーホル作品の価値とは別に購入をめぐってドロドロした争いがあるようだ。

   前回のブログの繰り返しになるが、東京でウォーホル作品の落札価格はニュースは世界を駆け巡るに違いない。ただ、世界の眼は養鶏・鶏卵業者に対して厳しくなっている。とくに、狭いケージにニワトリを閉じ込めて生産性を上げる従来の養鶏・鶏卵のシステムは、「アニマルウェルフェア(Animal Welfare、動物福祉)」に反するとして、欧米ではケージフリー・エッグ(平飼いの卵)が主流になっている。これまでの手法で養鶏・鶏卵ビジネスで成功し、世界の美術品を買いあさって来たとなれば、世界の論調は今後厳しいものになっていくかもしれない。

   午前中にBBCやCNNのWeb版ニュースをチェックしたが、東京でウォーホル作品「Silver Liz」が23億円で落札のニュースはまだ報じられていない。

⇒31日(木)午後・金沢の天気    くもり時々あめ

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